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グリーと中国bilibiliが提携。VTuberやスマホゲームを日中で展開
2018年10月30日 17:20
グリー(GREE)と中国のbilibili(ビリビリ)は30日、日本と中国におけるスマートフォンゲームやVTuber事業において業務提携契約を締結したと発表した。共同出資により「bGゲームス株式会社」を12月に設立してスマホゲームアプリを開発。また、グリー子会社のWright Flyer Live Entertainment(WFLE)とbilibiliが、日本と中国でVTuber事業で協業する。
ゲーム事業、メディア事業、広告事業、投資事業を展開するグリーと、中国で「二次元」と呼ばれるアニメ/サブカルの最大手プラットフォーマーであるbilibiliが協力し、ゲームとVTuber(バーチャルYouTuber)の事業を、日本と中国の双方で展開する。
グリーの田中良和会長兼社長は、「グローバル展開の中で、特に中国へのアプローチを考えてきた。中国のスマホゲームの市場は2020年に日本の2倍以上に成長し、日本にとっても大きな事業機会がある。しかし外資の参入規制など課題もあり、現地とのパートナーシップが重要」とbilibiliとの提携の背景を説明。
VTuberの中国での市場性については、「日本のアニメ世界輸出金額が数年間、右肩上がりが続いており、お金を出しても観たいという人が増えている。日本のIPを使ったゲームも売れている。日本のコンテンツの絵柄や雰囲気、ストーリーが好きな人が世界中に増えている。映画は日中合作がトレンドになっているが、ゲーム、アニメ、映画に続き、新しく登場するVTuberも同じように中国で受け入れられるのでは」と期待を示している。
bilibiliのプラットフォームには日本のアニメ/ゲームが好きなユーザーも集い、全世界のデイリーアクティブユーザー(DAU)は3,000万人。月間アクティブユーザー(MAU)は1億人に上り、そのうち82%が中国の若年層「Z世代」。今後のコンテンツ消費を支えるユーザーがbilibiliに集まっているという。
bilibiliの陳睿 董事長/CEOは、「アニメ・ゲーム文化は重要なカテゴリ。日本には熱量の高いユーザーがいるだけでなく、豊富な人材、クリエイティブ、完成されたサプライチェーンがある。一方で中国はアニメ・ゲーム産業にとって最も新しい、重要な市場。今後世界最大のエンターテインメント消費のマーケットに成長する」と日中の現状を説明した。
同社は'15年以降に日本アニメの海外放送ライセンスの主要取引先となり、アニメ作品の製作委員会にも参加。'16年に東京オフィスを設立し、同年に制作したアニメ「TO BE HERO」が放送され、'17年の東京アニメアワードのアニメファン賞で7位を獲得した。'18年には合併や協業を通して、日本でアニメスタジオを設立した。
今回の協業で、中国と日本で巨大な市場に成長しているゲームにおいて共同事業を展開。中国で今後の成長が見込まれるVTuberの配信を、bilibili動画で配信することなどを計画している。
グリー子会社のWFLEは、VTuber専用ライブ視聴アプリとして日本で人気の「REALITY」を運営している。今回のbilibiliとの提携で、日本国内でのVTuber配信も強化していく方針。なお、現時点で日本国内においてbilibili動画を展開する計画は無いという。
日本と中国の良さを活かして双方でスマホゲームを展開
スマートフォン向けゲームにおける具体的な事業提携内容については、取締役 上級執行役員の前田悠太氏が説明。中国のモバイルゲーム市場は'17年に1.9兆円となり、日本(1兆円)の約2倍まで成長。一方、中国特有の事情としてAndroidアプリのストアが200~300ものプラットフォームに分かれ、それぞれ別の会社が運営しているという。そこで、大手プラットフォームであり、多くの二次元コンテンツファンを持つbilibiliとの協力により、中国での日本のゲームの拡大を目指す。
共同出資で設立するbGゲームスについては、bilibiliのゲーム事業責任者を務める張峰 副総裁が説明。これまでの日本と中国のゲームのトレンドについて振り返り、第1段階としては、「ミリオンアーサー」シリーズや「Fate/Grand Order」といった日本の作品が中国で成功。第2段階として「アズールレーン」や「崩壊3rd」といった中国本土のゲームが日本のユーザーに評価されているという。その次の第3段階として「両国のゲーム開発者が共同でゲームを作り、日中それぞれのユーザーに良いコンテンツを送り出す」と予測。「日本のゲーム開発者は、IP企画、ゲーム・キャラの構成、美術表現で優位性を持っている。中国の開発者は、技術開発、遊び方の設定、有料システムの設定の面で豊富な経験を持っている。互いに学び合うことで、より良いコンテンツを作り上げることが期待できる」と述べた。
bGゲームスの第1弾事業として、「ソードアート・オンライン」や「とある魔術の禁書目録」などを手掛けてきた三木一馬氏(ストレートエッジ)と、「拡散性ミリオンアーサー」などで知られる安藤武博氏(シシララ)をプロデューサーとして迎え、日本と中国市場向けのスマホ向けゲームアプリの企画を開始している。
三木氏は「最強のプラットフォーマーにご指名いただいた。私の仕事は、最強のクリエイティブを作ること。優秀なクリエイターに声を掛け、色々なプランを練っている」とコメント。安藤氏は「ファン目線で見ると、日本と中国の垣根がなくなっているのは分かり切っている。今まで通りに日本のユーザーが楽しめるような座組で進める。ワクワクするメンバーとしか組んでいない。最初から中国のスタッフがいることは今までと大きな違いだが、さらに一枚岩になって良いゲームを作っていきたい」と意気込みを見せた。
VTuber事業は「ゲーム部」や「道明寺ここあ」と協業
VTuber事業の協業第1弾としては、VTuberの「ゲーム部プロジェクト」や「道明寺ここあ」を展開する株式会社バーチャルユーチューバーと、グリー子会社のWright Flyer Live Entertainment(WFLE)が共同でプロジェクトを推進。今後VTuber配信について相互連携を図っていく。
WFLEは、2018年8月から「ゲーム部」のIP展開をライセンシーとして支援。今回の資本業務提携により、今後はパートナー企業としてVTuber事業連携を強化。WFLEが出資するVTuber専用音楽レーベル「RK Music」から「道明寺ここあ」への楽曲提供や配信などに向けたプロジェクトを進める。また、bilibiliの持つサービスやネットワークを活用した日中双方での動画配信やイベント出演、グッズ化やローカライズ業務のサポートなどを展開。ゲーム部や道明寺ここあのグローバル展開も支援する。