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富野監督「今回のメカ作画は凄いな」、『ガンダム ククルス・ドアンの島』

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』全国公開中
配給:松竹ODS事業室
(C)創通・サンライズ

公開中の『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』。7月21日に、新宿ピカデリーにおいて、スタッフトークイベント第4弾が開催され、安彦良和監督や3D演出の森田修平氏らが登壇、ガンダムの生みの親である富野由悠季監督が本作を鑑賞し、「今回のメカ作画は凄いな」と率直な感想を述べていた事も明らかになった。

登壇者は、安彦良和監督、YAMATOWORKS 森田修平氏(3D演出)、YAMATOWORKS 安部保仁氏(3Dディレクター)、小形尚弘エグゼクティブプロデューサー、ライターの石井誠氏。

安彦監督は初めに「これが上映期間中の最後のイベントになると思います。何回も来ているという方もいらっしゃると思いますが、その方達は、もう身内なんじゃないかなと思っております。長い間、応援ありがとうございます」と感謝の言葉と共に挨拶した。

安彦良和監督

サンライズ作品といえば“手描きのメカ”というイメージが強いが、本作のメカはCGで描かれている。CGを導入した意図について小形氏は、「メカを描くことは職人芸で、これまで培ってきた能力を持つ方々が高齢化してきていることもあり……」と制作現場の現状に触れ、全体的な制作進行上「今は3Dというものがアニメの制作工程で重要な役割を担っている」とCGの制作現場における重要性を語る。

(C)創通・サンライズ

そんなCGパートを担当したのは、サンライズ作品に昔から縁のあるYAMATOWORKS。

作画のアニメが大好きで、2Dアニメの監督経験もある森田氏は、「3Dはあくまでも鉛筆だと思っていて、作り方、言語が違ったりする……でも手描きもCGも目指しているものは同じだと思うんです。そこをうまく一緒になって出来ないかなと思っていたところ、今回お仕事をいただけて、とても楽しかったです」と話す。

制作当初、安彦監督から受けた「ガンダムはヒーローなんだ」という言葉が有難かったとのことで、森田氏は、「言葉一つで方向性を伝えられるなんて、改めてすごいなと思ったんです」と安彦監督との仕事を振り返った。

YAMATOWORKS 森田修平氏(3D演出)

メカの中でも注目ポイントとなるドアン専用ザクについて、3Dディレクターを担当した安部氏は「カトキ(ハジメ)さんと一から話をさせて頂き、いろいろなアイデアを受け取りながら、特徴的な鼻のフォルムなどを作っていきました」と工程を話し、さらに「カトキさんが実際に当時の作画崩壊といわれるあの顔を描かれてデザインを模索されていて、それを受けて悩みつつも最終的には素敵なデザインになったかなと思います」と納得の仕上がりになったと話した。

(C)創通・サンライズ
YAMATOWORKS 安部保仁氏(3Dディレクター)

TVアニメ第15話「ククルス・ドアンの島」放送当時の作画に寄せたことで話題になったドアンザクのデザインに関して小形氏は、「作画崩壊を再現していいのか富野(由悠季)さんに怒られるのではと考えていましたけど、カトキさんとYAMATOWORKSさんにやってもらうからには、結果かっこよくなると思っていたので、信頼してお願いしました」と語る。

小形尚弘エグゼクティブプロデューサー

続いて、40年ぶりに“ガンダム再び大地に立つ”ということで、冒頭のRX-78-02ガンダムが大地に立つシーンについて話題が展開。

森田氏は、「まず今回の作業工程として、3Dを紙に落とし込んで、その中から原画を選んで、安彦さんに全部チェックして頂き、その修正が入ったものに、さらに田村(篤)さん(キャラクターデザイン・総作画監督)が修正や捕捉を入れてくださって…‥で、僕らがそれを取り入れていくという形で進めました」と説明。

一からのCGのメカ描写が初体験の安彦監督は、「CGはエフェクトが得意じゃないの?」と質問を投げかけ、これに対し森田氏は「得意不得意があるんですよね。作画って時間をコントロールするじゃないですか……それが結構CGだと流れていくので、雰囲気を出すためのエフェクトだったらいけるんですけど、今回の土煙とかの激しさが出るのものは作画による力っていうのがあるので、CGだと弱いんですよね」と答えた。

安彦監督はガンダムのCGの動きが柔らかいことにも驚いたようで、「手描きのアニメーターでも、金田伊功だってこんなデフォルメしないぞと驚きました(笑)」と、キャラクターの動きを大胆に手がける有名なアニメーターの名を挙げるほど大絶賛。

こういった動きを描くために安部氏は、動きがより緻密になるようモデルを伸ばしたり縮めたり、田村氏(キャラデザ・総作監)からアドバイスをもらって、モデリングに反映させ、またモデルを変形できるような機能を足して、創意工夫したという。

動く78ガンダムを見た小形氏は「ある程度映像に色がついた状態で見たんですけど、78ガンダムが動くって、なかなか僕の中でも久々というか、それを見ることができたという感動がありましたね」と特別感を味わったと話し、仕上がりに対しては「発注の時点で、3Dのメカアニメというよりかはファーストガンダムの柔らかい動きがある安彦ガンダムになるなと……森田さんたちならやってくれると信じていたので、完成したものを見て良かったなと思いました」と、CGによる安彦ガンダムの再現度への信頼を語った。

(C)創通・サンライズ

さらに、なんとガンダムの生みの親である富野由悠季監督が本作を鑑賞し、「今回のメカ作画は凄いな」と率直な感想を述べていた話が飛び出し、小形氏は「今回のメカ作画、富野さんの目には2Dに見えてるんですよ。これはもう勝ちですね。ちなみに、『THE ORIGIN』の時はCMを見て、安彦のガンダムなのになんで3Dなんだと言ってましたが、今回は全然言ってなかったです」と、その出来栄えの凄さを話した。

それを受けて森田氏は、「コンセプトとして、安彦監督の画にあるような、筋肉があるような表現のガンダムと、カトキさんのロボットとしての正確なデザインのガンダムの良いとこどりをして、全部詰め込むということを前提に、イム副監督と相談しながら子ども目線からは巨大な鉄の塊に見えるように、戦闘シーンでは任侠映画的な演出だったり、ヒーローに見えるようにと、モビルスーツの雰囲気をシーンごとに演出わけできたら面白いなと思いながら作りました」と、こだわりを説明。

また、「高機動型ザクの市街地戦」シーンのスケートのような動きは、ドムとの差別化を意識しつつ、スケートの軽さとモビルスーツの重さのバランスを、安彦監督のレイアウトから想像して上手く仕上げたそうだ。

最後の挨拶では、安彦監督と小形氏が「皆さんに観ていただける限り上映は続きますし、このようなイベントもできると思いますので、末長く応援のほど、よろしくお願いいたします」と、会場にメッセージを投げかけた。

(C)創通・サンライズ