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Dolby Atmos最適化イヤフォン「Jabra Elite 10」聴いてみた

Dolby Atmosに最適化したという完全ワイヤレスイヤフォン「Jabra Elite 10」

GNオーディオジャパンは9月28日、Jabraブランドより、Dolby Atmosに最適化し、Dolby Head Trackingにも対応した完全ワイヤレスイヤフォン「Jabra Elite 10」と、米国MIL規格準拠の「Jabra Elite 8 Active」の限定先行予約を開始し、これにあわせてDolby Japan本社で「Jabra Elite 10」「Jabra Elite 8 Active」新製品発表会を開催した。

どちらも9月28日から限定先行予約と限定先行試聴がスタートしており、10月12日より限定先行発売される。価格はオープンプライスで、店頭予想価格はElite 10が39,600円前後、Elite 8 Activeが32,780円前後。

「Jabra Elite 10」

Elite 10は、Jabraのフラッグシップモデルとなる完全ワイヤレスイヤフォン。最大の特徴はDolbyとのパートナーシップにより、Dolby Atmosでの最適化を実現。Dolby Head Tracking機能をオンにすることで頭の動きにサウンドが追従し「常にサウンドの中心にいるような臨場感とディテール、そしてクリアで自然なサウンドを実現する3Dオーディオ環境を作り出す」という。

「Jabra Elite 10」ココア
「Jabra Elite 10」のイヤフォン。画像のカラーはココア

アクティブノイズキャンセリング(ANC)についても、アルゴリズムを改良し、マイク2基を使ったハイブリットANCとなっており、Jabra Elite 4比で約2倍強力になっている。ANCは周囲の状況に応じて強度が自動調整されるが、任意の強度に設定することはできない。

ヒアスルー(外部音取り込み)機能も利用可能。ヒアスルー時に風切り音を検知した場合、その音を低減する「風切り音抑制ヒアスルー」を利用できる。

カラーバリエーションはマットブラック、チタニウムブラック、クリーム、ココアの4色を用意。販売店舗ごとに取り扱うカラーが異なり、全色取り扱うのはJabraオンラインストアのみ。Amazonはマットブラックの1色、e☆イヤホン、ビックカメラ、ヨドバシカメラではチタニウムブラック、クリーム、ココアの3色を取り扱う。

「世界で最もタフなイヤフォン」という「Jabra Elite 8 Active」

もうひとつの新モデルであるElite 8 Activeは、米国MIL規格(MIL-STD-810H)の環境耐久テストで、湿度や温度、衝撃など9項目をクリアしており、「世界で最もタフなイヤフォン」と位置づける。こちらはDolby Audioによる臨場感あふれるサウンドを楽しめるという。

ケースはIP54準拠の防水・防塵仕様。画像のカラーはネイビー
「Jabra Elite 8 Active」のイヤフォン

イヤフォンがIP68準拠、ケースがIP54準拠と、高い防水・防塵性を確保。イヤーウィングやフックなしでも耳にフィットし、どんな激しい動きにも対応するという「Jabra シェークグリップテクノロジー」は、イヤフォン表面にリキッドシリコーンラバーコーティングを施すことで、さらにグリップ力を高めている。

こちらもアダプティブハイブリットANCを利用可能。Jabra標準ANCの約1.6倍強力だといい、こちらもその場に応じた強度にANCが自動調整される。風切り音抑制ヒアスルーも利用可能。

「Jabra Elite 10」(上)と「Jabra Elite 8 Active」(下)のケースを並べたところ。Elite 8 ActiveはJabraロゴが彫り込まれている
「Jabra Elite 10」(左)と「Jabra Elite 8 Active」(右)のイヤフォン。Elite 8 Activeのイヤフォンはシリコーンラバーコーティングされているため、マットな手触り

カラーバリエーションはダークグレー、ネイビー、ブラック、キャラメルの4色。こちらも販売店舗ごとに取り扱うカラーが異なり、全色取り扱うのはJabraオンラインストアのみ。Amazonはダークグレー、e☆イヤホン、ビックカメラ、ヨドバシカメラではネイビー、ブラック、キャラメルを取り扱う。

両モデルとも発売時点でBluetoothコーデックはSBCとAACをサポートするが、今後のファームウェアアップデートでLC3、LC3 plusに対応する。

2モデルとも販売店舗によって取り扱うカラーが異なる

「Dolby AtmosとDolby Atmos Musicは同じ技術」。Elite 10/8 Activeの違いも解説

Dolby Japanのマーケティング部部長、金重聡一郎氏

Elite 10がDolby AtmosとDolby Head Trackingに、Elite 8 ActiveがDolby Audioに対応していることもあり、製品発表会にはDolby Japanのマーケティング部部長、金重聡一郎氏が登壇。「Dolbyの技術を広い範囲で使っていただくことを大変嬉しく思います」とし、改めてDolby Atmosに対応した楽曲コンテンツの現状について説明した。

「Dolby AtmosとDolby Atmos Musicで使っている技術は同じものです。一般的に映画や映像配信サービスで使われている音の技術が“Dolby Atmos”と呼ばれていますが、映像のない音楽ストリーミングサービスで使われているものを、“Dolby Atmos Music”と便宜的に呼んでいて、使っている技術自体は同じものです」

「音楽サービスについては、全世界で16サービスがDolby Atmosに対応しています。Amazon MusicやApple Music、日本では未サービスですがTIDALなどですね。あとは韓国の『Melon』や中国の『QQ音楽』などもあります。また2022年に限って言えば、ビルボードトップ100アーティストの87%がDolby Atmos楽曲をリリースしています」

「Dolbyの技術は『作る・届ける・再生する』という3つが揃うのが特徴です。このうち『作る』という点では、世界で850以上の音楽スタジオがDolby Atmosでの楽曲制作に対応しています。これは映画スタジオやTVスタジオは含まない、音楽スタジオだけの数字です。個人でスタジオセットを組まれている場合も含みませんし、最近はアップルの『Logic Pro』だけでもDolby Atmos楽曲を作ることができますが、これも含めていない数字です」

「日本で使えるサービスとしてはDolby Atmos Musicに対応したサービスとしてはApple MusicやAmazon Music、さらにはNeSTREAM LIVEやLive Extremeなどが対応しています」

また、Elite 8 Activeに搭載されているDolby Audioと、Elite 10に搭載されているOPTIMIZED FOR Dolby Atmosの違いについても言及。

対応コンテンツとiPhoneやハイエンドAndroidスマートフォン、対応PCなどデコーダーを搭載した機器があれば、今回の2製品に限らず、どの製品でもDolby Atmosを聴くことはできるとした上で、「Elite 8 Activeに搭載されているDolby Audioでは、ステレオのサウンドをより空間的に広げる処理を行なっています。Dolby Atmosのコンテンツでも、ステレオのコンテンツでも空間的に聴こえるというものです」とコメント。

対して、Elite 10は「Elite 8 Activeと同じ技術を搭載しつつ、さらにヘッドトラッキング機能の『Dolby Head Tracking』が搭載されています。Dolby Atmosを聴く、ステレオのサウンド空間を広げて聴くという点までは同じですが、さらにステレオ、もしくはDolby Atmosコンテンツに対して、ヘッドトラッキングが利用できるので、より臨場感・没入感のある体験ができます」と説明した。

GN Audio APACリテール&オンライン マーケティングマネージャーのエミテシュ・パンハニ氏

発表会にはGN Audio APACリテール&オンライン マーケティングマネージャーであるエミテシュ・パンハニー氏が登壇し、GNグループが1869年設立で150年の歴史を持つグループであること、Jabraのほか、ゲーミング製品を手掛けるスティールシリーズ、補聴器を手掛けるGNリサウンドを傘下に抱えていることなどを説明。

そして「医療機器、ビジネス/消費者用オーディオ、3分野の研究開発を集結していること」が、GNグループやJabraの強みであると語った。

イアン・スコット・ポッティ氏

デンマークからオンラインで参加したデザインチームのイアン・スコット・ポッティ氏も、「(GNリサウンドによる)補聴器ビジネスにより、私たちは実際に採取した何十万もの耳スキャンデータを持っており、優れた製品を生み出すために、(イヤフォンを)どのようにフィットさせるべきかを知っている」と、グループ3社の知見がElite 10/Elite 8 Activeの製品デザインに活用されていることを明かしている。

音を聴いてみた

「Jabra Elite 10」(右)と「AirPods Pro(第2世代)」(左)のイヤフォンと並べたところ

発売に先駆けて、新モデル2機種を借りたので、音質レビューをお届けする。

今回はiPhoneとAAC接続で再生した。Elite 10は、低域から高域までバランスの良いモニターライクな音で、曲のジャンルを選ばずに楽しめる印象。SN比も良く、音の出ていない状態からスッと立ち上がるほか、AAC接続でも細かい音まで聴き取れる解像感の高さも兼ね備えている。

低域はタイトでスピード感があるので、「虚像のCarousel / Mori Calliope × Reol」のようなビートの効いた楽曲が心地良くテンション爆上げで楽しめる。また、ズーンと深く沈み込んでいく様子もきっちりと描き出すので、低音の迫力もしっかり楽しめる。

「Jabra Elite 10」(右)と「AirPods Pro(第2世代)」(左)のケースと並べたところ

Dolby Atmosの空間オーディオをオンにすると、楽曲の音場が自然に広がる。“広く聴こえるように加工しました”という不自然さがなく、ほんのりと奥行き感が出てくるような印象だった。

さらにこの状態でAmazon MusicでDolby Atmos配信されている曲を再生してみると、グッと臨場感が増す。低域が自然に広がってくるので、通常のステレオで再生しているときよりも量感が増したように感じられるのだが、細かな音の解像感はそのまま。ボーカルの存在感もしっかりとブレないので、イヤフォンではなく、スピーカーで聴いているような感覚を味わえた。

音質面は満足感のある仕上がりだったが、少し気になったのがANC。自動的にANCの強度が調整されるのだが、自分で強度を調整できないため、場合によっては外音取り込みとANCを切り替えたときに変化がまったく感じられないということも。ANCが一番強く働いている時は、しっかりと周囲の音を遮断しつつ、圧迫感を感じない自然な付け心地で好印象なのだが、テストした環境では人や車通りが少なく、おそらくANCが一番弱くなっているであろうタイミングで風が吹く、その風切り音がとゴオオオっと耳につくような印象があった。

Elite 8 Activeの方は、付け心地の面ではElite 10よりもホールド感が良く、「激しく動いても耳から脱落しないな」という安心感が強い。音は、全体的にバランスの良いモニターライク傾向なものの、Elite 10と比較すると若干低域の量感が増えているように感じられる。イヤフォンを装着した際に流れる起動音でも、その違いは感じられ、Elite 8 Activeのほうが、より低域の主張が強く感じられる。

「アイドル / YOASOBI」や「飛天 / Ayase&R-指定」など、激しめな曲調にはElite 10よりもElite 8 Activeの方がマッチする印象で、「ちょっと体を動かす気分じゃないな」という気だるい日でも、Elite 8 ActiveでEDMなどを聴けば、5kmくらいのランニングはこなせそうだ。

ANC性能については、ANC強度が最大になっているだろう状況で聴き比べると、Elite 10よりElite 8 ActiveのほうがANCは少し弱め。ただジョギングやランニングなどワークアウトの相棒とするなら、外音取り込み機能をメインに使うはず。その場合は自然な聴き心地なので、ストレスなく音楽を聴きながら運動できるだろう。