民放連、被災3県の地アナ延長経費は最大4億円と試算

-政府に支援要請。広瀬会長「1年延長は長すぎる」


 日本民間放送連盟(民放連)は26日、都内で会長会見を開催。東日本大震災の民放局への被害や、地上デジタル放送完全移行の現状などについて広瀬道貞会長がコメントした。

 震災の被害額については、「被害の大きかった岩手、宮城、福島の3県の設備被害の合計は9億2,000万円。この他に被害のあった青森、茨城、栃木、千葉県も合わせると9億4,000万円に達する。ただし、流出した中継局以外は既に復旧しており、放送への影響はない」とした。

 その他、震災の影響について「ローカル局は社員数も限られる中で取材力が危惧されたが、ただちに各系列局から200名規模の応援がかけつけた。一方で、放送局の自家発電機の燃料枯渇の問題があった。通常の備蓄量では間に合わず、他県から補給しようとしたが緊急措置としての車両通行は認めてもらえなかった」と指摘した。

 広告収入については「被災地の4月のスポット投下量は前年の半分から60%台。東北にとどまらず、多くの地区でマイナス10~15%、関東でもマイナス10%程度で、5月はさらに厳しいということで、今後、悪化することを覚悟しなければならない」とした。

 被災3県で延長されるアナログ放送については「民放はデジタル放送を変換して放送する。あえてアナログ放送を延長するという政府の要請に応えるので、その支援を政府に申し入れている。延長経費を精査したところ、最長1年間延長した場合、放送設備の改修、保守、ランニングコストなどで4億円程度かかる見込み」としている。また、「アナログ放送の1年延長は長過ぎる。年内終了を目標に政府と折衝をしていきたい」との意向を示した。

 被災3県以外については、「4月末の戸建住宅やビル陰共聴施設、集合住宅の地デジ未対応世帯は約70万まで減少した。その8割が関東ブロックなので、これからは関東を中心にPR強化を行なう。これまで、23区内や市街地は電波状況がよく、そうした世帯についてはPRだけで進展するとの考えもあったと思うが、対応が遅れている。今週(5月23日~29日)を強化ウィークとして、各キー局はそれぞれ合計で10分間のアナログ放送のみのPRを実施している」と述べた。

 夏期の節電については「在京キー局はいずれも契約電力500kW以上の大口需要家だが、15%削減はほぼ実現できる見込み。東北電力管内にも大口需要家に該当する放送局があるが、電力のほとんどを放送の維持に使っているので、15%削減が難しいところもある」とした。資源エネルギー庁の「家庭の節電対策メニュー」で、「必要のないときにはテレビを消しましょう」とされていることに対しては、「一方で、政府の節電対策には、必要な情報を伝達するように書かれている。私たちは自主判断で情報提供をしていく」とした。



(2011年 5月 27日)

[AV Watch編集部 中林暁]