ソニー、'12年度第2四半期は155億円の赤字に

TVのコスト削減で赤字縮小。通期黒字予想は維持


加藤優執行役EVP CFO

 ソニーは1日、2012年度第2四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比1.9%増の1兆6,047億円。営業利益は前年同期16億円の赤字から、303億円の黒字。税引前利益は197億円。純損益はマイナス155億円の赤字だが、前年同期のマイナス270億円から縮小している。

 なお、4月1日付の組織変更から、イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)、ゲーム、モバイル・プロダクツ&コミュニケーション(MP&C)、ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)、デバイス、映画、音楽、金融の各セグメントでの集計となっている。

 売上高は、主に液晶テレビの販売台数減少により、HE&S分野が大幅な減収となったが、MP&C分野が大幅な増収により、前年同期比1.9%増の1兆6,047億円となった。MP&C分野の増収は、前年同期は持分法適用会社であったSony Mobile Communications AB(ソニーモバイル/旧ソニー・エリクソン)を2月に100%子会社化し、連結した影響。


2012年度第2四半期の業績

 ソニーモバイルが前年同期にも100%連結されていたと仮定すると、分野全体の売上高はほぼ横ばい。販売台数の減少によるPCの大幅な減収はあるが、フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトに伴う平均販売価格の上昇や、スマートフォンの販売台数増加などで相殺された。

 営業損益が303億円の黒字に改善したのは、主にデバイス分野、液晶テレビのコスト削減などによるHE&S分野によるもの。液晶テレビ販売台数が減少し、売上高は前年同期の3,148億円から、2,360億円に25%減少したが、営業損益は前年同期に比べて260億円改善し、158億円の損失となった。2011年11月に発表したテレビ収益改善プランに沿って進められている液晶パネル開発費用や営業経費の削減によるもの。液晶パネル関連の削減には、S-LCD合併解消にともない、S-LCD低稼働率に起因する費用を計上していない影響も含まれている。

 第2四半期の液晶テレビ販売台数は350万台。通期の見通しは、従来の1,550万台から、1,450万台へ100万台下方修正した。営業損益は800億円の損失と、8月の想定から変更しない。液晶テレビの売上高は、数量拡大から安定的収益基盤の確立への転換に重点を置いた事業運営や、価格下落の影響により前年同期比32%減少の1,467億円、営業損失は102億円で、前年同期と比べて305億円の改善となった。

 業務執行役員 SVP 広報センター長 神戸司郎氏は「当四半期の販売台数は前年同期比で減少しているが、営業損失は大幅に改善しており、8月時点の想定よりも改善している。収益構造の転換が着実に進んでおり、想定以上の進捗だが、第3四半期以降も市場動向を慎重に見ているため、800億円の損失という見通しは変更しない。引き続き、'13年度の黒字化達成に向けて、収益構造の改善を進めていく」とした。




■それ以外の各セグメント

セグメント別の売上高と営業利益

 IP&S分野の売上高は前年同期比16.7%減少の、1,826億円。景気減速の影響や、スマートフォンの普及の影響によりコンパクトデジタルカメラの低価格帯モデル市場が縮小した事が響いた。営業利益も、前年同期から132億円減少し、26億円となっている。

 通期の見通しは、売上・営業損益ともに8月時点の想定を若干下回るが、前年度比では増収・大幅増益を見込んでいるという。レンズ交換式一眼カメラや高級コンパクトなどでデバイスの強さで差別化を図るほか、「新しい分野のアクションカメラにも注力する」(神戸氏)という。

 ゲーム分野の売上高は、前年同期比15.8%減少の1,482億円。PlayStation Vitaが貢献したが、プレイステーション 3やプレイステーション・ポータブルのハード、ソフトの減少が響き、分野全体で減収。為替の悪影響もあり、営業利益は前年同期から7億円減少した23億円。

 なお、第2四半期のゲーム販売台数は、据え置き型が350万台、携帯型(PSP/PS Vita)が160万台。この内、携帯ゲーム機の年間売り上げ台数見通しを、8月の時点では1,200万台としていたが、11月の見通しでは1,000万台に下方修正した。売上高は8月時点の想定を下回る見込み、営業利益に変更はない。

 携帯ゲーム機の今後について神戸氏は、「Vitaのプラットフォーム拡大に向け、年末年始の商戦期に向けて魅力的なソフトの拡充、アクセサリのバンドルなどの販促も実施。急拡大するスマートフォンなど、モバイル機器向けにも、PlayStation Mobileを通じてPlayStationならではの世界を展開していく」とした。


業務執行役員 SVP 広報センター長 神戸司郎氏

 MP&C分野は、売上高が前年同期比112.1%増の3,004億円。PCの大幅な減収があったものの、前述の通り、ソニーモバイルが100%子会社として連結された影響などで相殺。しかし、営業損益は、前年同期に比べて170億円悪化、231億円の損失となっている。

 デバイス分野は、前年同期比16.6%減の2,499億円。需要が増加しているイメージセンサーが大幅な増収になったが、前年同期には中小型ディスプレイ事業の売上が含まれていたことや、ゲーム向けシステムLSIの減収が響いた。

 営業損益は、前年同期の184億円の損失、298億円の黒字に。前年同期に中小型ディスプレイ事業売却にともなう資産の減損184億円が計上されていたことや、イメージセンサーの増収、ケミカルプロダクツ関連事業の売却益を計上したため。タイの洪水による損害や損失に対する保険収益(純額)も計上されている。

 映画分野の売上高は、前年同期比3.7%減の1,630億円。前年同期に、スパイダーマン関連商品売上の分配を受領する権利を売却したため。当四半期中に公開された映画では、
「アメイジング・スパイダーマン」が好調だった。営業利益も、前年同期に比べ127億円減少した79億円だが、これも前年同期に前述のスパイダーマン関連商品に関する権利売却にともなう214億円の利益計上があったため。

 音楽分野は、売上高が前年同期比4.3%減の992億円。前年同期にデジタル配信ライセンス料に関連する一時的な収入の計上があったことや、パッケージメディア音楽市場の継続的な縮小が影響。金融分野は、ソニー生命の好調により、収入が前年同期比25.7%増の2,314億円、営業利益は前年同期から67億円増加し、312億円となった。




■通期黒字予想は変更せず

連結業績見通し

 2012年度通期業績見通しは、8月の発表時予測から売上高を2,000億円下方修正し、6兆6,000億円とした。営業利益は1,300億円、純利益は200億円で変更はない。

 テレビ事業について、加藤優執行役EVP CFOは、「数量拡大から安定的な収益基盤の確立を目標として進めているが、売上を追ったり、シェアを追うとどうしても価格競争に巻き込まれる。こういうことは今年度はやらない。販売台数の見通しも下方修正したが、台数が落ちても、売上が落ちても収益は改善の方を向くような事業方向を目指している」と説明。

 また、「コンパクトデジタルカメラや(PCの)VAIO、携帯電話の台数見込みも下方修正したが、中長期的には成長を期待している。スマートフォンは今後発売するモデルに自信を持っており、下方修正はしない。コンパクトデジタルカメラは市場自体が縮小しているが、センサーやレンズなど、様々な要素技術を駆使して高付加価値モデルにシフトし、収益改善を目指す。PCは、Windows 8搭載モデルにも期待している」と語った。

 最後に加藤氏は、「今年は年初に、エレクトロニクスの営業利益、連結最終損益、キャッシュフローの黒字化を目指すとお話した。最終損益やキャッシュフローの黒字化は実現できるとみている。エレクトロニクスはマーケットや市況が大変厳しい中におり、厳しめにみているが、年末商戦もこれからなので、収益改善に向けてよりいっそうの努力を積み重ねていきたい」とした。



(2012年 11月 1日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]