ニュース

富士通とパナソニック、LSI事業統合に向け新会社設立へ

次世代TV用など。富士通はLSI再編などで通期赤字950億円

 富士通とパナソニックは、富士通の100%子会社である富士通セミコンダクターとパナソニックが、それぞれ手掛けているシステムLSI事業の設計・開発機能などを統合、外部投資家の出資を得て、システムLSIの設計・開発などを手掛けるファブレス形態の新会社を設立、そこへ事業移管することを検討することで基本合意したと7日に発表した。今後両社は具体的な検討を進め、すみやかに最終的な契約の締結を目指す。

 市況の急激な悪化や、海外半導体メーカーの台頭などにより、両社のシステムLSI事業は厳しい状況に直面している。そのため、ファブレス化し、マーケティング・設計・開発機能に特化すると共に、両社の先端技術や顧客基盤を集約、グローバルに競争力のある事業体制を構築する必要があるとの認識で一致したという。

 統合新会社では、次世代デジタルテレビや画像認識の応用分野などの「ビジュアル&イメージング・ソリューション」、高性能サーバ、超高速ネットワークなどクラウドインフラを支えるための「ハイパフォーマンス・ソリューション」、モバイル・微弱無線などのコネクティビティ・ソリューションを支える「ワイヤレス・ソリューション」などを手掛ける予定。

 これらの分野で、「グローバルトップレベルのシステムLSIカンパニーとなることを目指し、両社がこれまでに培った技術力を結集すると共に注力分野への新規投資を重点的に進める」としており、注力分野におけるグローバルな競争力を高めるための投資資金の調達については、日本政策投資銀行と具体的な協議を行なっていくという。

 なお富士通と富士通セミコンダクターはこれまでも自社での製造規模を最小限維持し、大部分の製造を外部へ委託するファブライト戦略を進めており、2012年10月1日付で岩手工場をデンソーへ、LSI後工程事業を同年12月21日付でジェイデバイスに譲渡するなどしている。

 また今回、三重工場をTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)を含む新ファウンドリ企業へ移管する方針も決定。具体的な検討に入ったという。マイコン・アナログ事業については、「お客様への安定供給とビジネスの発展を目指し、今後、あらゆる可能性を検討していく」と説明。さらに、再編に伴う固定資産の減損を行なった後で、稼働率の改善が課題となっている基盤系工場などは会津若松地区へ集約して生産能力や人員規模の適正化を行い、コンパクトな事業体へ転換して経営を安定化を図る。

 富士通は7日、'12年度第3四半期の決算も発表。売上高は前年同期比2.9%マイナスの1兆482億円。営業利益は前年の31億円に対し、73億円悪化し、41億円の赤字。経常利益はマイナス17億円の25億円。純利益は、前年同期比747億円の悪化となる、790億円の赤字。これは、LSI事業の再編を中心とした事業構造改善費用591億(工場の譲渡損失331億円、基盤系工場の固定資産減損損失239億円)、減損損失280億円を特別損失として計上したことが影響している。

 また、通期の業績見通しは、売上高が4兆3,700億円と10月公表時から500億円のマイナス、営業利益は1,000億円と前回予想から変更は無いが、純利益は前回予想から1,200億円マイナスとなる950億円の損失を見込む。これは、前述のLSI事業の再編などに伴う特別損失871億円に加え、第4四半期にもLSI事業や海外事業を中心とした事業構造改善費用を追加で織り込んだため。

(山崎健太郎)