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ソニー、4K/ライブ制作拡大に向けカメラなど強化。フルHD有機ELビューファインダも

 米国ラスベガスにおいて13日(現地時間)に開幕した、映像関連の国際展示会「2015 NAB Show」から、ソニーブースの内容をレポートする。

ソニーブース

 ソニーは「Beyond Definition」をテーマに、「ファイルベース」(ファイル運用によるワークフロー効率化)、「4K」(4K映像制作ラインナップ拡充)、「ライブ」(4K/HDハイブリッドライブシステム)の3つをテーマに、カムコーダやモニタ、アーカイブシステムなどの製品や、IPソリューションなどを提案している。Inter BEE 2014などでも語られたキーワードであり、これらに関する最新情報がNABで発表された。

ソニーの3つのキーワード

 ファイルベースの運用が今後も拡大することを見越して、ランダムアクセスや堅牢性などを特徴とする同社オプティカルディスク・アーカイブの第2世代製品が2016年に登場する予定。第1世代の容量1.5TB/転送速度1Gbpsから、第2世代は3.6TB/2Gbpsへと進化。両面ディスクを、上下に備えた8chのレーザー(映像×4、音声×4)で読み書きするもので、NAB会場にプロトタイプを展示している。なお、第3世代は6TB/3Gbpsを想定している。

オプティカルディスク・アーカイブの第2世代製品は2016年に登場予定
第2世代製品の試作機
中央付近にある4つの四角い部分がピックアップ部。上下それぞれに配置している

 XAVC形式は、賛同メーカーが4月現在で73社に達している。4K試験放送「Channel 4K」の番組送出機材として運用されているXAVCサーバー「PWS-4400」向けに、レコーディングコントロールソフト「PWA-RCT1」も用意。録画や停止、再生、早送り、巻き戻しなどの基本制御をポートごとに、ソフトウェアのGUIから操作可能。ライブ収録の使い勝手を向上させるという。

ファイル運用によるワークフロー効率化
XAVCフォーマットの現状
XAVCサーバーと、収録アプリケーションでライブ収録運用の機能を強化

 4K関連では、スポーツ/音楽などの用途を想定した2/3型3板式4Kイメージセンサー搭載の4K/HD対応カメラ「HDC-4300」を7月に発売。ドキュメンタリー制作には、4Kアクションカム「FDR-X1000V」の活用も想定している。

 さらに、再生方法として、4Kメモリープレーヤー「PMW-PZ1」を6月に発売予定で、価格は56万円。小型の本体でSxS PRO+カードや外部SSDからの4K再生ができるため、展示会場などのサイネージプレーヤーとして利用できるほか、SxS PRO+からSSDへワンプッシュでコピーできることから、制作現場でのバックアップがすぐにできることも利点となっている。

4Kを取り巻く環境
4K/HD対応カメラ「HDC-4300」
4Kメモリープレーヤー「PMW-PZ1」

 4Kと合わせて注目されているのがHDR(ハイダイナミックレンジ)。4Kの高解像度と、BT.2020の広色域、HDRにより表現力が豊かになることで臨場感ある映像の制作を実現可能にするという。

HDR関連の動き
従来のSDRコンテンツとの比較
有機ELモニタ「BVM-X300」で、HDR(右)とSDR(左)を比較再生

 4KカメラのHDC-4300をHDライブに活用する提案として、60pで最大8倍のスーパースローに対応。さらに、120pで2倍速のスローも対応を検討中としている。そのほかにも、4Kからの高画質ダウンコンバートや、オプションでの4KからHD切り出し機能などで、より高画質なHD運用を提案している。

 ライブ配信の核となるのはIP技術を用いたネットワークメディアインターフェイス。ソニーは「SDIからIP」をキーワードに、高画質映像の同期伝送などで、IP活用のメリットをアピールしている。

HDR-4300をHDライブに運用する場合の優位性
HDR-4300の8倍速スロー映像。1倍速と比べても明るさなどを落とさずに実現可能になっている
IP技術を使ったネットワークメディアインターフェイスで「SDIからIPへ」を推進
IP対応を進めることを示す、ネットワーク対応機器のイメージ

 その他にも新製品として、F65で撮影したRAWデータから、自由な解像度/アスペクト比で切り出せるスーパーレゾリューションデモザイキングプロセッサ「PWS-300SR1」(4月発売/320万円)や、テープ資産のファイル変換を最大4系統まで同時に可能なデジタイズステーション「PWS-100TD1」(7月発売/214万円)、XAVC初となる1/2型 3MOSショルダーカムコーダのXDCAM「PXW-X320」を出展している。

 さらに、初のフルHD有機ELビューファインダも参考展示。これまでも、カメラの上部などに装着するモニター型の有機EL EVFは既に存在するが、アイカップを着けてのぞき込むタイプでフルHD 有機ELは初だという。なお、センサーサイズは明らかにしていない。ブースでは、XAVCショルダーカムコーダのXDCAM「PXW-X500」と組み合わせて試せるようになっている。

参考展示されたフルHD有機ELビューファインダ
XDCAM「PXW-X500」と組み合わせて試せる

 スイッチャーコントロールパネル「ICP-X7000」(海外仕様)も展示。有機ELディスプレイの採用により従来の液晶に比べ視認性を向上。複数の薄型パネルを組み合わせたデザインのため、下の写真のようにカーブした面に沿った置き方も可能。平面でも利用できる。

ICP-X7000は、曲面上に置いて使うことも可能
多くの機材を積んだ大型トレーラーも展示
ブース入口には8K/2Kで投写するスクリーンを用意。NABでのプレゼンテーションやイベントなどに使っている

(中林暁)