ニュース
撮影からTV視聴まで、4K/HDR対応進めるソニー。新4Kカメラなど業務用新製品
(2015/6/11 16:11)
ソニーは11日、映像制作機器の業界向け展示会を開催した。4月の「2015 NAB Show」でお披露目した機材やシステムの中から、世界初の2/3型、3板式4Kイメージセンサーを搭載した4K/HD対応カメラ「HDC-4300」などの新製品を紹介。撮影、編集、送出、アーカイブ、家庭での視聴といった各セグメントで、4Kやハイダイナミックレンジ(HDR)への対応が進んでいる事をアピールした。
世界初2/3型3板式4Kセンサー搭載カメラ
撮影に用いるカメラの注目機種は「HDC-4300」。世界初となる2/3型、3板式4Kイメージセンサーを搭載したモデルで、カメラ本体とビューファインダ、ベースバンドプロセッサユニット、カメラコントロールユニット、リモートコントロールパネルを含めたシステムで、価格は約1,400万円(構成により価格は異なる)。
新規開発の4K CMOSセンサーには、プリズムを含む光学システムに3枚の4Kイメージセンサーを正確に貼り合わせる超高精度な独自の固着技術を投入。次世代放送の映像制作規格「ITU-R BT.2020」にも対応し、高精細で幅広い色域での色再現ができる。
大きな特徴は、スポーツ中継などでの利用を想定している事。4Kカメラはどちらかというとシネマ用途を想定したモデルが多かったが、HDC-4300は操作系をスポーツ中継向けカメラと似せてある。さらに、高倍率なレンズと組み合わせる事で、被写界深度の深さを活かした撮影ができ、野球でマウンドのピッチャーの後ろ姿、バッターとキャッチャー、さらに背後にあるスポンサーのロゴまでキッチリ撮影するといった事も可能。
放送局で広く使われているHD用B4マウントレンズも装着でき、「使い慣れたHDカメラの操作性を維持したまま4K撮影ができる」事をアピールしている。
4K撮影では、ピントがシビアになるが、それを補佐する機能も搭載。例えばピッチャー、バッターなど、あらかじめピント位置を登録。そのピント位置と、現在のピント位置をファインダーにグラフィカルに表示し、素早く登録した位置に戻るといった機能も備えている。
また、HDC-4300は4K/60pの撮影が可能だが、HD解像度では1080/180p(3倍)、1080/480p(8倍)のスーパースロー撮影も可能。スポーツのドラマチックなシーンをスローで放送する際に活用できる。なお、今後のファームアップなどで4K/120p撮影への対応も検討されており、4Kの2倍スローも表現方法として使えるようになる見込み。
なお、超高速撮影した映像はマルチポートAVストレージユニット「PWS-4400」にXAVCで記録し、スーパースローモーション映像として再生する形となる。オプションでカットアウト機能も利用でき、4K映像の任意の部分をHD解像度で切り出す事もできる。
ベースバンドプロセッサユニット「BPU-4000」、カメラコントロールユニット「HDCU-2000/HDCU-2500」もラインナップ。カメラヘッドへの電源供給やインターカム、タリー、リターン映像など、ライブ中継やスタジオ番組制作に必要な機能を構築できる。
さらに、既に放送局や制作現場で使われている「HDCシリーズ」も活用でき、そこに「HDC-4300」を追加する事で、4K/HDの混在運用ができ、HD制作から4K制作への円滑な移行を実現に寄与できるとしている。
4K映像をケーブル1本で伝送
従来は撮影した4K映像を、SDIのケーブル4本で伝送していたが、スタジオや中継車のケーブルの数が膨大になり、機器も大型化する要因となっていた。
そこで、IP技術を用いた、ネットワーク・メディア・インターフェースを開発。光ケーブル1本で4K映像が伝送できるようになっている。処理を行なうシグナルプロセッシングユニット「NXL-fR318」や、SDI-IPコンバータボード「NXLK-IP40T」なども展示された。
現在このインターフェイスは規格化に向けて準備が進められており、東芝やシスコなど、賛同メーカーは6月現在で32社にのぼっている。
4Kを見せる場を広げるために
4K映像はデータ量が大きく、再生時にハードウェアにかかる負荷も大きいため、気軽に表示することが難しく、従来は再生のためだけに撮影に使った4Kカメラを持ってきて、そこから直接ディスプレイに表示するといったシーンも多かったという。
そこで、HDMI 2.0や3G-SDIなどのインターフェースを備え、様々なディスプレイにSxSメモリーカードやUSB 3.0ストレージ内の4Kコンテンツを再生・表示できる4Kメモリープレーヤー「PMW-PZ1」が開発された。6月発売予定で、価格は56万円。
コンパクトな据置型の4Kプレーヤーで、撮影した4Kデータをマスターモニターでチェックするといった用途に加え、展示会場などで使うサイネージプレーヤーとしても利用可能。
さらに、4Kカメラの映像を記録したSxS PRO+のカードから、USB接続したSSDへワンプッシュで高速コピーできることから、高価なSxSカードを沢山用意しなくても、撮影データをすぐにSSDに移動させて、空いたSxSカードを再び撮影に使う事で、コスト低減も図れるという。
HDR映像の撮影、編集、家庭での表示に向けて
4Kと合わせて注目されているのがHDR(ハイダイナミックレンジ)。次世代の高画質映像の要素として、4Kの高解像度、BT.2020の広色域、量子化ビット数が従来の8bitから10bit/12bitへの対応といったものがあるが、それに加え、HDRにより表現力が豊かになることで、臨場感ある映像の制作が可能になるという。
展示では、S-Log対応のカメラで撮影した、S-LogのRAWデータを、HDRに対応した30型の4K有機ELマスターモニター「BVM-X300」に表示。カメラの広いダイナミックレンジで撮影したデータを、マスモニの表示で確認しつつ、編集やグレーディングの作業を行ない、HDRの完パケとして納品するまでの流れが紹介されている。
ユーザーは、対応放送や、HDR対応のネット映像配信を予告しているNetflixなどのサービス、UHD(4K) Blu-rayを介して、HDR対応テレビでそれを視聴する事になる。展示では、HDRへの対応を予告している4K液晶テレビBRAVIAの新モデルを用意。2015年内のソフトウェアアップデートでHDRに対応する予定だが、一足先にHDRに対応させたBRAVIAの試作機と並べて、HDR対応になる事での見え方の違いをデモしていた。
映像は富士山の麓の湖でキャンプを行なっているものだが、富士山の脇に出ている太陽の光の眩しさ、湖面に反射するキラキラとした光、夜の焚き火などで、HDR対応テレビならではのまばゆい光の強さを感じる。同時に、テントの中など、暗い部分は黒が良く締まっており、1つの映像の中に、強い光と、深い暗さが同居。実際に湖のほとりにいるような臨場感が体験できた。
なお、テレビ向けのHDRにおける、階調圧縮のガンマ関数は、UHD BLU-RAYが採用したものと同じSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)のST.2084規格が採用されると見込まれており、前述の4K有機ELマスモニ「BVM-X300」は8月のバージョンアップで、ST.2084規格に対応予定。これにより、撮影編集の現場から、視聴するユーザー宅のテレビまで、同じガンマカーブに統一した環境が構築できる見込み。
HD関連では、4G/LTEやWi-Fiネットワークを活用し、カムコーダーからダイレクトに映像・音声をワイヤレス送信するライブストリーミングソリューションを報道向けに提案。2015年発売予定のネットワークRXステーション「PWS-100RX1」を使い、独自のQoS技術を用いる事で、安定したライブストリーミングが可能になるとしており、XDCAMカムコーダーの「PXW-X180」、「PXW-X200」、「PXW-X500」は、今後のバージョンアップによりQoS対応のライブストリーミング機能を搭載する予定。