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ソニー、音に没入して本番前のコンディションを整える「NOUS ARE」
2026年7月29日 18:57
ソニーフィナンシャルグループは、ソニーのハプティクス技術を活用して、音に没入することで本番前のコンディションを整えるサービス「NOUS ARE」の開発を進めている。今回、メディア向けにアスリートやアーティスト領域向け、およびオフィス領域向けの椅子型ハードウェアのプロトタイプを公開した。
NOUS ARE(ノウスアレ)は、スポーツの試合、ライブや舞台、商談など、重要な局面で自身の実力を発揮するために、本番前の状態を整えるパフォーマンス・コンディショニングサービス。
アスリート、アーティスト、ビジネスパーソンにとって、「本番前に、自分の状態をどうつくるか」は、共通する大きなテーマ。力を発揮しやすい状態は、人によっても、場面によっても異なり、単にリラックスすれば良いわけでも、気持ちを高めれば良いわけでもないため、「その時に自分に必要な状態を、自ら選び、切り替える」という発想からNOUS AREが生まれたという。
例えば野球選手の場合、気持ちを上げた方が打てる選手も居れば、平常心の方が打てる選手がいる。対象の人が一番実力を発揮できるように整えるのが、本サービスの目的となっている。
NOUS AREでは、東京大学大学院 情報理工学系研究科の大黒達也准教授の技術指導を受け、ソニー内の研究活動を通じて開発を進めてきた、“音に深く没入する体験を触覚から生み出す独自のハプティクス技術”を核としたもので、音を身体で感じることで、必要な状態をつくる。
対応の椅子型ハードウェアには、アクチュエーターと、体験空間に合わせて設計された専用スピーカーを搭載。音楽に連動したハプティクスを身体で感じることで、音を耳で聴くだけでは得られない、音楽への深い没入体験を生み出す。
この没入体験により、頭の中の雑念や本番前のプレッシャーから一度距離を取ることを促すとともに、音楽の持つ多様な状態変容の力を活かして、「高める」「静める」「高まりと静まりのバランスをとる」など、その時の自分に必要な状態への切り替えを支援する。
気持ちや活力を高める「RISE」モード、緊張や高ぶりを落ち着かせる「COOL」モード、気持ちを適度に高めながら落ち着いて目の前のことに向かえる「FLOW」モードの3つのモードを用意している。
アスリート領域では、横浜DeNAベイスターズとの「パフォーマンスコンディショニングパートナー」の契約を5月に締結。選手や球団関係者からの助言や知見を取り入れながら、本番前の状態づくりの実現に向けて、実際の競技現場での活用可能性を検証しているという。
ビジネスパーソン領域では、コクヨとの共同開発のもと、オフィス環境における取り組みを開始。共同開発中のオフィス向けのチェア型プロトタイプ「(仮称)コンディショニングチェア」を活用し、プレゼンテーションや商談といった働く現場に存在する本番のビジネスシーンにフォーカスした検証を進める。
実際のワークスペースにおける具体的な利用シーンの開拓や、ワーカーのパフォーマンス・コンディショニングの切り替えに寄与する新たな体験価値の創出を目指す。ほかにも、領域を越えて、NOUS AREによる本番前に必要な状態に切り替える状態設計の実用性も検証する。
今後は、アスリートやアーティストを始めとしたパフォーマー領域での検証をより一層進めるとともに、オフィス領域での取り組みを開始し、実際の現場での利用シーンにおける体験価値や運用性を検証。各領域のパートナーと連携しながら、新たな価値提供を目指す。
なお、この取り組みは現時点では実用化に向けた検証フェーズで、必要に応じて関係当局の認可取得を前提に進めているという。
体験会では、NOUS AREの取り組みをソニーフィナンシャルグループが行なう狙いについて説明が行なわれた。
同社は「感動できる人生を、いっしょに。」を理念に掲げており、その感動できる人生を支えるための3つの寿命として、経済的な健全性の「資産寿命」、自分らしく生きるための「感動寿命」、生きる土台としての「健康寿命」を挙げている。
この感動寿命の領域を支える上で、金融の枠を越えて、新しくユニークな価値を創造するための取り組みとして実施。多様なクリエイティビティとテクノロジーを持つソニーグループとの連携を活かし、「自分らしい生き方を支える可能性を秘めた取り組みであると考えている」とした。
音に没入して“自分の状態”を調整する
今回の体験会には、技術指導を行なった大黒達也准教授と、横浜DeNAベイスターズ チーム統括本部 運営部 ハイパフォーマンスグループ リーダー 川尻隆氏も登壇した。
大黒准教授は、音楽を聴いて感動したり、興奮したりといった心を動かされているときについて、まずその音を聴いて「心臓がドキドキした」「胸がキュッとした」など、身体の起きた変化を自覚することで、感情に変化が起きていると感じることができると説明。
これに加えて、人は高い音を聴いたときに頭など身体の高い部分に音を感じ、低い音は腹部や足などの身体の低い部分で感じるなど、音に寄って身体が感じる位置関係の違いがあると説明。その傾向をボディマップ理論としてまとめた。
NOUS AREのハプティクス技術では、このボディマップを基に、音に合わせて振動するデータを作成。自分の身体が楽器となって音楽と一体化していくような「意識の没入」体験を作り出すことを目指した。
そして、実力を持っていてもそれを本番で発揮できないことについて、横浜DeNAベイスターズ チーム統括本部 運営部 ハイパフォーマンスグループ リーダー 川尻隆氏は、そのキーは「状態設計」にあるとコメント。そのときの自分の状態に応じて出せる実力の違いを認識することがまず大事、と話した。
大黒准教授もこれに同意。本当の自分の実力である「トレート」と、その時の状態「ステート」を掛け合わせたものが、実際の状況で発揮できる実力になると説明。本番で実力を発揮できないと、練習などに打ち込んで、トレートの部分を頑張って伸ばそうとしがちだが、実際にはステートの部分を自覚することが大事だと話した。
川尻氏も、「人はロボットではないので、状態は常に変わります。そういうときに、毎日同じ状態にできるスイッチがあることはとても大事なことになると思います」と、ステートの部分を調整できるNOUS AREの有用性を評価していた。
実際に検証に参加していたベイスターズの選手達は、練習やトレーニングのタイミングでNOUS AREを体験した後は良いコンディションでの練習やトレーニングができているという声が出ているとのことだ。
実際に試してみた
実際にNOUS AREを体験。既存のスピーカー搭載チェアに振動機能を搭載したリファレンスモデルと、コクヨと共同開発中のオフィス向けプロトタイプでそれぞれ体験した。今回は3種類のモードの内、気分を高めるRISEから、落ち着かせるCOOLへと移行するFLOWモード。
リファレンスモデルでは、RISEの曲に「白日/King Gnu」を選択。プロトタイプの方では「唱/Ado」にしてみた。どちらもCOOLの部分は今回の体験では曲が固定になっていた。振動の強さや音量はスマホアプリから設定できる。
心拍も計測するため、クッション型デバイスのセンサー部に指を入れつつ、クッションが腹部に来る用に抱える。
どちらも体験は似通っており、RISEモードの時は、曲に合わせて背中や腰、脚など、点で振動を感じるような感覚のシーンが多く感じられる。跳ねるような感覚と、腰から上の方が重点的に振動していたような印象だ。
COOLモードに切り替わると、腰から脚に掛けて身体の下の方を面で振動するような感覚が多めで、ゆったりとした心地の良い感覚になる。
今回筆者は、完全に受け身の体勢で体験してしまい、RISE、COOLともにリラックスして曲をぼーっと聴いているような感覚を強く感じてしまい、調整中のため写真を撮ることはできなかったが、アプリの心拍数の結果画面を見ても、どちらも落ち着いているような結果になっていた。
実際に自分のコンディションを整えるためには、しっかり気分を高めるぞと意識してRISEモード、気分を整えて落ち着くぞとCOOLモードを聴くような形で能動的な姿勢も必要とのことだ。
ちなみに、コクヨと共同開発中のプロトタイプの方が音に包まれている感覚がハッキリとしていて、椅子の座り心地も相まって、かなり心地の良い体験ができる。個人的には首元にも振動が来て、バイノーラル音源と組み合わせても相性が良さそうな印象だ。NOUS AREやこの椅子型ハードウェアが、実用化されたら弊社にも導入してほしいところだ。


















