エコポイント効果で薄型TVは5月に台数/売上とも急増

-BCNとNRC調査。エコポイントの認知度は8割


BCNアナリストの道越一郎氏

6月10日発表


 株式会社BCNは10日、家電量販店など全国22社、2,313店舗(2009年5月時点)のPOSデータを集計した「BCNランキング」のデータをもとに、薄型テレビとBD/DVDレコーダ、パソコン、デジタルカメラのデジタル製品の市場分析結果を発表した。

 デジタル家電やパソコン関連など116品目の実売データから、平均販売単価と販売価格の前年同月比をまとめた「BCN指数」の推移から、「デジタル製品はエコポイント実施による買い控えと年度末の反動で、4月は-6.6%と落ち込みボトムを形成したが、5月には1.7%プラスで回復傾向に転じた」とした。

今回のポイントBCN指数でみる販売動向

■ 薄型テレビはエコポイントの影響で好調。20~30%の押し上げ効果

薄型テレビの販売動向

 薄型テレビは、4月の販売実績が台数ベースで120.4%(前年同月比)、金額ベースで100.9%(同)と2~3月に比べ、エコポイント実施の買い控えと年度末の反動により落ち込みを見せたが、5月はエコポイント実施により、台数で142.9%(同)、金額で121.0%(同)という急回復した。

 エコポイントが開始された5月15日を挟んだ期間の週次販売動向を見ていると、開始前の5月4日~10日の週に台数ベースの前年同週比が117.2%に対し、11日~17日の週は146.7%、18日~24日の週では171.5%と急激に伸長。「エコポイント制度が効いている」と分析。

 このエコポイントの影響を受け、薄型テレビは夏のボーナス商戦に向けて、台数ベースで2008年の7月の北京五輪需要を超える勢いを見せているが、金額ベースは台数ほどの伸長はなく「前年並み程度」と推測する。なお、このエコポイント効果は夏ボーナス商戦までは維持し、20~30%程度の押し上げ効果があると見ている。

エコポイントが与える影響薄型テレビは台数ベースで北京五輪需要を超える勢いを見せる

サイズ別構成比

 サイズ別で見ても、エコポイントの影響を受けており、40型以上が急伸。台数別構成比では40型以上のシェアが全体の24.3%を獲得。今年に入って一番の伸びとなった。金額別構成比では40型以上が全体の4割以上を占めるまでとなっている。

 エコポイントの付与条件でもある省エネ基準を満たした薄型テレビについても言及。32型以上の薄型テレビの5月の消費電力別台数構成比を見てみると、消費電力150W未満のテレビは全体の51.3%と半数を超えるシェアを獲得。前年同月の22%と比べると倍以上の増加となっている。

 メーカーシェアを見てみると、シャープが独走を維持。3月まではシェア40%を切っていたが、4月以降再び40%以上を獲得。5月には44.8%とほぼ半数近くを占めるまでになっている。2位争いはソニーとパナソニック。さらに、この2番手グループの一角を占めるまでに伸びてきている東芝が、この後に続いている。

 メーカー別の平均単価では、2月~5月あたりから下落に歯止めがかかり、上昇に転じている。新製品のリリースが影響したと考えられる。例えばシャープでは3月に104,900円だったが、5月には110,000円に上昇。パナソニックでは2月に97,800円だったのが、5月には118,700円に上昇した。平均単価はメーカー間で差があり、異なる価格戦略を実施していると見ている。

消費電力別台数構成比メーカー別台数構成比メーカー別平均単価

■ “ついで買い”で伸びるレコーダ。「BDはあたりまえ」

レコーダの販売動向

 BDやDVD、HDDなどを含むレコーダも好調に推移。4月は薄型テレビと同様に2~3月と比べ、台数で112.8%(前年同月比)、金額で106%(同)と低調だったが、5月には台数で120.4%(同)、金額で113.9%(同)と回復。これは、薄型テレビのエコポイントの影響を受けて一緒に購入しようとする「ついで買い」効果だと分析している。

 エコポイント開始された5月15日を挟んだ期間のレコーダの週次販売動向を見ていると、開始前の5月4日~10日の週に台数ベースの前年同週比が111.6%に対し、11日~17日の週は117.2%、18日~24日の週では130.9%と伸長しており、薄型テレビのエコポイント特需が追い風になっていると分析する。

 このジャンルを牽引しているBDレコーダの5月の構成比は、金額でレコーダ全体の約79.5%、台数で66.4%と過去最大の比率となっており、もう「BDはあたりまえ」としている。

 メーカー別のBDレコーダの販売台数シェアを見てみると、5月の実績ではパナソニックが36.8%、シャープが33.8%で、この2社がトップを争っている。そのあとに28.6%でソニーが続く。

 今回、BD/DVDメディアについての調査結果も発表。メディアの種類別販売数比を見てみると、2008年12月からBDは1割程度を推移し、そのまま足踏み状態が続いている。これは、BDの平均単価が高い(5月の実績でBDが470円、DVDが54円)ことが影響しているとし、「レコーダの普及が進んでいけば、BDメディアの単価も下がる」と分析している。

BDとその他レコーダーの構成比メーカー別台数シェアBD/DVDメディアの構成比

■ デジカメ/パソコンは苦戦

PCについて説明する森英二氏

 デジタルカメラはコンパクトデジタルカメラが不調。金額の対前年割れが1年以上続き、3月からは台数も前年割れ。依然苦戦が続いている。5月の販売実績は金額ベースで対前年81.8%、台数で90.7%。

 デジタル一眼は4月に台数ベースで104.4%(前年比)、金額で88.1%と落ち込んでいたが、5月は新製品が登場し、台数で122.4%、金額で110.1%と回復。動画対応モデルは5月には台数で全体の32.1%のシェアを占めるまで拡大している。

 PCはネットブックの拡大で台数は前年を上回るも、金額はマイナス傾向が続いている。5月の実績で台数は前年比128.0%、金額は93.4%。そのうちノートPCは台数ベースで141.9%と1月以来の40%増。デスクトップはWindows 7リリース前の買い控えか、台数で前年比87.8%と2ケタのマイナスとなった。

コンパクトデジカメの販売動向デジタル一眼の販売動向動画対応一眼の構成比
パソコン全体の販売動向ノートの販売動向デスクトップの販売動向

■ 「エコポイントには約1.3倍の意向創出効果が」

NRCの小牧奈津子氏

 今回、株式会社日本リサーチセンター(NRC)が実施する全国訪問調査である「日本リサーチセンター・オムニバスサーベイ」(NOS)で収集したデータと連動した分析も行なっており、デジタル家電や地上デジタル放送普及率、エコポイント認知度、夏のボーナス概要の詳細などもNRCの小牧奈津子氏より発表された。

 NOSで実施したエコポイント認知調査では8割以上が把握しているという結果になった。これは、「政府が省エネタイプの地デジテレビなどを購入するとエコポイントを付与する制度を実施するが、このことを知っていたか?」という設問に対しての回答を集計したもの。ポイントの制度内容まで認知している人は全体の23.1%。

 このエコポイントがきっかけで地デジ対応テレビを購入したいと考えている認知者は全体の12.9%で、エコポイントには約1.3倍の意向創出効果が期待できると分析。「意向創出効果を実需要につなげるために、ポイント交換先など制度内容の充実や、仕組みのPRが重要」としている。

エコポイントの認知度約1.3倍の意向創出効果が期待できると分析

 また同じくNOSの調査で、地デジ放送視聴世帯率も発表。地デジ視聴世帯は全体の46.5%で、そのうちの77.1%が地デジ対応テレビで視聴しているという。なお、この統計は総務省が行なう調査とは違う方式を採用し、「より詳細な結果がでる」としている。

 地デジ放送切替時期(地上アナログ放送の終了時期)の認知調査も実施。全体の98.1%が切替時期を認知しているという結果になった。これは「地上アナログ放送が2011年7月24日で終了し、2011年7月25日から地デジ放送に切り替わることを知っているか?」という設問の回答を集計したもの。

 夏のボーナス概況についても発表。ボーナス用途で、支給後にデジタル家電などを購入すると答えた人が全体の15.4%だったという。

地デジ放送視聴世帯率地デジ放送切替時期の認知度夏のボーナス概況

(2009年 6月 10日)

[AV Watch編集部 大類洋輔]