バッファローの地デジ録画が、TMPGEncでフレーム編集可能に

-無償アップデート。薄型新USBチューナも発表


新モデルの「DT-H70/U2」

5月24日アップデータ公開

 バッファローとペガシスの2社がコラボレーションし、ペガシスのMPEG編集ソフト「TMPGEnc MPEG Editor 3」において、バッファローのPC用地上デジタルチューナで録画したファイルが読み込めるようになった。これにより、PCで録画したデジタル放送番組の1フレーム単位での高精度な編集や、スマートレンダリングを使った高速な出力などが可能になる。

TMPGEnc MPEG Editor 3
 既発売の「TMPGEnc MPEG Editor 3」で同機能を実現するアップデータが24日に無償公開された。なお、今後も同ソフトの価格(パッケージ版7,680円)に変更は無い。また、対応を記念し、ソフトとバッファローのUSB 2.0接続タイプの地デジチューナ「DT-H33/U2」をセットにしたモデル「DT-H33/U2-TM」を3,000台限定で6月中旬より発売。価格は14,280円で、個別に購入するよりも2,000円程度低価格になるという。

 さらにバッファローは、地上/BS/110度CSデジタルの3波に対応した、新しいUSB 2.0接続のPC用デジタルチューナ「DT-H70/U2」も発表。6月上旬に16,485円で発売する。「TMPGEnc MPEG Editor 3」での編集に対応するほか、1チューナタイプながら、地デジとBS、地デジとCSという組み合わせでの2番組同時試聴/録画ができるのが特徴。ワンセグのiPhone/iPod touchへの転送にも対応するモデルとなる。なお、「TMPGEnc MPEG Editor 3」とのセットモデルは用意されない。



■ TMPGEnc MPEG Editor 3がバッファローの地デジ録画データに対応

 PCでのデジタル放送録画では、コンテンツ保護の観点から、録画データを各社の製品が個別に暗号化して保存している。そのため、録画データの編集には、暗号を解除できる製品付属ソフトの編集機能を用いて行なう必要があり、他社の市販編集ソフトで編集する事はできなかった。

TMPGEnc MPEG Editorとのセットモデルが3,000台用意されるUSB 2.0チューナ「DT-H33/U3-TM」
 しかし、今回バッファローとペガシスが協力。バッファローの対象製品で録画したデータを、「TMPGEnc MPEG Editor 3」で読み込み・編集できるアップデータが公開された。対応するのはバッファローの「DT-H33/U2」、「DT-H33/PCI」、「DT-H55/U2W」と、新モデル「DT-H70/U2」で録画したデータのみ。また、「DT-H70/U2」以外のモデルでは、付属ソフト「PCastTV3」の最新版へのアップデートも必要となる。

 「PCastTV3」の編集機能よりも「TMPGEnc MPEG Editor 3」の編集が優れている点は、1フレーム単位での精密な編集ができる事。さらに、スマートレンダリング機能を備えており、書き出し時に編集点前後のみを再エンコードするため、ソース画質の劣化を最小限に抑えつつ、高速で出力できるのも特徴。


TMPGEnc MPEG Editor 3での編集画面。タイムラインを高速スライドさせてプレビュー表示をしているところを、低速シャッターで撮影したもの。プレビューが高速描写されている事がわかる
 また、デジタル放送の編集ソフトでは、編集の際に暗号化されたデータを解除しながらプレビュー表示などを行なうため、レスポンスが遅くなりがちになる。「TMPGEnc MPEG Editor 3」では、レスポンスの低下を抑えるために「1から全て見直し、新たに(プログラムを)組み直した結果、普通の動画ファイルを違和感を感じないレベルのレスポンスを実現している」(ペガシス グローバル営業部の齋藤要氏)という。この描画速度には、ペガシス独自技術「Intuitive Draw Technology」が使われている。

 また、音ズレを防止し、安定した動作を実現するため、DirectShowを使っていないのも特徴。チューナ付属の編集ソフトではできない、アンドゥ機能(やりなおし機能)も利用できる。AAC音声の解析機能も備えており、映画放送とCMなど、5.1chと2chの変化点を検出し、カット編集の利便性を向上させる機能や、各種メディアの容量に合ったサイズに圧縮するトランスコード機能なども備えている。

 使用の流れとしては、予約や録画、視聴などには、従来通りチューナ付属の「PCastTV3」を使う。編集時に「TMPGEnc MPEG Editor 3」を起動すると、ウィザード形式のメニューの中に「PCastTV3で録画したファイルから読み込む」ボタンがあり、これを押すと、自動的に録画済み番組の一覧が表示。読み込み・編集後に、完成ファイルとしてムーブ作業用フォルダに書き出し。それを、「PCastTV3」のBD/DVDライティングソフトで読み込み、ディスクに書き出すという流れになる。ムーブ作業用フォルダのデータは保存されず、ライティング後に自動消去される。


新公開のパッチを当てたTMPGEnc MPEG Editor 3の起動画面。一番下にバッファローのチューナで録画した番組を読み込むボタンが追加されているボタンを押したところ。録画済み番組がリスト表示され、編集したいものを選ぶ編集した後のカットを登録していく画面。ディスクに書き出したいものをここで選び、最後にPCastTV3側の書き込みツールでライティングする

 編集に対応するのはダビング10とコピーフリーの番組のみで、BSデジタルのWOWOW(コピーワンス)や110度CSデジタルの番組には対応していない。また、編集中にプロジェクトファイル形式で一旦保存する際にはダビング10の回数は減らず、光ディスク描き込みツールを用いて描き込みをする際に回数が減る。なお、録画データの中のデータ放送の部分と、字幕はカットされる。BDへの書き出しはBDAV形式で、メニューなどを作る機能は備えていない。

 「TMPGEnc MPEG Editor 3」のデジタル放送編集以外の仕様は、既報の通り。対応OSはWindows XP/Vista/7で、Windows 7の64bit版にも対応している。


■ 3波でUSB 2.0接続の新チューナ

 バッファローが6月上旬に発売する「DT-H70/U2」は、USB 2.0接続の外付けデジタルチューナ。地上/BS/110度CSデジタルに対応したチューナを1基内蔵した3波対応タイプとなる。

DT-H70/U2の背面。USBバスパワーで動作するが、ACアダプタ接続も可能正面のB-CASカードスロット。12mmという薄型ボディが特徴

地上デジタルとBSデジタルの2番組を同時視聴しているところ
iPhoneとiPod touchに無線LAN経由でワンセグ番組を書き出せる
 最大の特徴は、地デジとBS、地デジとCSという組み合わせでの2番組同時視聴/録画に対応する事。チューナユニットは1基ながら、「内部で地上デジタルと、BS/110度CSデジタルのデータ出力が分かれており、それぞれの出力に対して処理用のCPUを配置して、2番組同時録画が可能になった」(バッファロー 事業本部 市場開発事業部 デジタルホームマーケティンググループ 山口勝寿氏)という。なお、同時録画は予約録画時のみの対応となる。

 従来モデルと同様に「PCastTV3」を付属しており、予約録画や再生が可能。EPGからの予約や「Gガイド.テレビ王国」との連携、おまかせ録画機能、タイムシフト機能、携帯からの録画などの豊富な機能を踏襲。

 従来モデルと同様に、付属のソフトを使った簡易カット編集、BD/DVDへの書き込みも行なえるが、前述のように別途用意した「TMPGEnc MPEG Editor 3」で編集する事もできる。

 録画時にワンセグデータも保存。プレイステーションポータブル(PSP)やウォークマンにUSB経由で転送できるほか、新たに無線LANを通じて、iPhone/iPod touchにワンセグをムーブできるようになった。転送・表示ソフトとしてiPhone/iPod touch側では、マキエンタープライズのアプリ「TVPlayer」(無償)を使用する。なお、以前のモデルでiPhone/iPod touchへのムーブに対応する予定は現在のところ無いという。

 バッファローではワンセグ放送の無いBS/CS番組でも、録画番組の持ち出しを実現するため、12セグの録画番組データから、ワンセグよりも高画質な持ち出し用動画ファイルをソフトウェアトランスコードで作成する機能を開発中。PSP向けに720×480ドット/30フレームの動画を書き出せるようにする予定。

 ハードウェア面では、従来製品(DT-H70/U2)と比べ、約半分の薄さを実現。外形寸法は73×105×12mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約59g。USBバスパワーで動作するが、ACアダプタを接続する事もできる。対応OSはWindows XP/Vista(32/64bit)、Windows 7(32/64bit)。



■ 7月発売モデルの参考展示も

 24日に行なわれた発表会場では、7月に発売を予定しているPC用デジタルチューナの2モデルも参考展示された。「DT-H70/U2」相当の機能を持った、PCI Express接続モデル「DT-H70/PCIE」と、Windows 7のMediaCenter専用の3波Wチューナモデル「DT-H70/PCIEW7」。

 「DT-H70/PCIEW7」は、MediaCenterのUIを使いつつ、2番組同時録画や、2ch録画中の録画済み番組再生などができるのが特徴。ただし、2番組同時視聴、編集、ディスクへのムーブには非対応になるという。Compatible with Windows 7ロゴを取得予定。

参考展示モデルの概要説明Windows 7のMediaCenter専用の3波Wチューナモデル「DT-H70/PCIEW7」「DT-H70/U2」相当の機能を持った、PCI-Express接続モデル「DT-H70/PCIE」

 発表会において、バッファローの事業本部 市場開発事業部 デジタルホームマーケティンググループ 山口勝寿氏は、BCNやGfKの調査で、地デジチューナのシェアNo.1を獲得した事などを紹介。その上で、ペガシスとのコラボレーションは、バッファロー側としては1フレーム単位の編集が可能になる事での商品力の強化、ペガシス側には編集ソフトの用途の拡大が期待でき、「両社の市場拡大の思惑が一致して、今回のコラボレーションが実現した」と説明した。

 ペガシスの海老根崇代表取締役CEOは、「シェアNo.1のデジタルチューナとジョイントできて嬉しい。既にTMPGEnc MPEG Editor 3をお持ちの方には無償でアップデータを提供し、ソフトとしての価格も現状維持する。今回のジョイントにより、ユーザーの利便性が向上すると自負しており、今後もユーザーの利便性向上をテーマに努力していきたい」と抱負を語る。

 ペガシス グローバル営業部の齋藤要氏は「コンテンツ保護のために、アナログ放送時代と同じような利便性が実現できず、ユーザー様が不便な思いをしたり、グレーな製品も出てくる事に繋がっていると思われる。コンテンツ供給側とユーザーの思いが平行線のまま進んでしまっている状態だが、我々はその状況を見ているよりも、今のルールにのっとって、今できることを提供し、ユーザー様の利便性を向上させる事が重要だと考えている」と、今回のアップデートに込めた想いを説明。今後はより幅広い層に、動画編集ソフトを訴求していく考えも示した。

バッファローの事業本部 市場開発事業部 デジタルホームマーケティンググループ 山口勝寿氏ペガシスの海老根崇代表取締役CEOペガシス グローバル営業部の齋藤要氏


(2010年 5月 24日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]