レビュー
映画を楽しむタブレットを探せ、4万円台「Lenovo Tab Plus」、AKGチューニング「Galaxy Tab S11」を試す
2026年3月16日 08:00
タブレットは動画を気軽に見るものであり、音は“必要な情報さえ伝わればいい”と思っていた筆者。しかし、動画配信サービスで海外ドラマを見るようになってから、その考えは変わりつつある。
日常的にYouTubeなどの動画コンテンツを楽しんでいる私は、ここ最近Huluで海外ドラマを視聴するのにハマっている。本稿では、iPad Proで満足していた筆者が、音にもこだわった他のタブレットを2機種を使ってみたところ、「タブレットでも音は諦めちゃいけないのでは?」と気付くに至った顛末をお届けする。
まずは、普段使用しているタブレットから紹介しよう。筆者は、長年iPadを愛用しており、iPad mini 4、iPad Air(第4、第5世代)を経て、現在はM4チップを搭載したiPad Proの11インチを持っている。M1搭載のiPad Airでも実用的には何の問題もなかったが、有機ELを初搭載したiPadは魅力的だった。
オーディオ面は、4スピーカーオーディオを搭載。縦置き・横置きでステレオ感が保証されるのはもちろん、本体の天地をひっくり返しても自然な音場を再現できるように、音を出すユニットを可変してくれる。
対する、 “音に自信あり!”のタブレットは、価格もブランドも違う2機種をチョイスした。Lenovo「Lenovo Tab Plus」と、Samsung「Galaxy Tab S11」のいずれも11インチモデルだ。自前のiPad Proと極力同じ画面サイズを選び、画面の迫力に釣られて音を過大評価しないよう考慮した。
各タブレットの特徴
Lenovo Tab Plusは、見た目からして普通のタブレットとは異なる。リアに備わったキックスタンドは、別途スタンドを用意しなくても自立する便利な機構。動画鑑賞だけでなく、ペンを使うクリエイティブ用途でも活用できるよう、傾斜はリニアに変えられる。
Dolby Atmosに対応した8つのJBLスピーカーを備え、26Wの出力パワーと22ccの大型スピーカーボックスによって、静的ノイズをカットしクリアなサウンドを実現するという。ヘッドフォンジャックはハイレゾオーディオに対応。
ディスプレイは、11.5インチの2K。解像度は2,000×1,200だ。SoCはMediaTek Helio G99。ストレージは256GB、メモリは8GB。質量は約650g。IP52相当の防塵防滴性能を備える。価格は、直販で43,780円。
Galaxy Tab S11(Wi-Fi, 11.0インチ)は、Dynamic AMOLED 2Xディスプレイを採用したGalaxyタブレットの最上位モデルだ。見た目は、筆者の所有しているiPad Proに近く、厚さも5.3mmと5.5mmとほぼ同じ。重量は、iPad Proが444gでGalaxy Tab S11は469gとわずかに重い。IP68相当の防塵防滴。
有機ELディスプレイは、HDR10+と120Hzのリフレッシュレートに対応し、解像度は2,560×1,600。SoCは、MediaTek MT6991(Dimensity9400+)。ストレージは、128/256/512GBから選べる。メモリは12GB搭載。
4つのDolby Amos対応スピーカーは、あのAKGによってチューニングされ、バランスの取れたクリアな音質で低音も強化されているという。価格は、直販で129,030円から。
Lenovo Tab Plusをチェック
まず、4万円台というリーズナブルなLenovo Tab Plusからチェックした。
低価格モデルということもあり、初期設定をしていて気付いたのは、全体的に挙動が半テンポ遅い。メニュー画面の遷移やアプリの立ち上がりなどでほんの一瞬待つ。Geekbench 6でベンチマークを試したところ、CPUスコアはシングルコア746、マルチコア2,039、GPUスコアは1,363だった。
Huluのストリーミング画質を「最高画質」にすると、頻繁にコマ落ちやスロー再生が起きてしまう。だが、画質を維持しながら通信量を削減するアドバンストモードを有効にするか、「高画質」設定にすれば問題はない。ただ、2Kの画面でも「最高画質」と「高画質」の区別は付く。アドバンストモードはわずかな画質劣化に抑えてくれるので、「高画質」設定よりも「最高画質」での利用がベターだ。
キックスタンドと全8スピーカーのおかげもあって、本体は重く感じる。一方、手に持ったときのホールド感はとても良かった。縦でも横でもリア側の段差がちょうど手に収まる。
筆者は普段、タブレットの固定に小型の簡易スタンドを使用していて、これを使わないなら壁などに立て掛けるしかなかった。キックスタンドを使うと、本体だけで完結する。これが想像よりだいぶ便利。デザイン的にダサく見えるないか心配もしていたが、杞憂だった。
画面は、液晶(IPS)パネルということもあり、普段iPad Proの有機EL(タンデムOLED)を見慣れている自分にはバックライトの明かりがキツく感じた。明るさ自動調節はオフにして、環境ごとに最適な案配を探るのが自分には合っている模様。視野角は、やや狭め。斜めから見ると、色味が変わってくる。
サウンドの設定からDolby Atmosを見ると、オフにすることができない。ヘッドフォンを挿せば、オン/オフが切替えられた。Dolby Atmosのモードはダイナミックで視聴した。
画面表示の設定もチェック。画面カラーモードは、まずは「標準」で見た方がよいと思う。「鮮やか」は、ビビットな色調で画がパリッとするし、好きか嫌いかでいえば好きだ。しかし、正しい映像かというと、ちょっと違う気がする。まずは「標準」で使ってみて色味が薄いとか、なんかパッとしないと思うなら「鮮やか」に変えるとよさそうだ。
視聴するタイトルは、自宅でBlu-ray版を見たことのある映画に絞った。洋画、邦画、アニメーションから1本ずつチョイス。自宅のシアタールームでは、6.1.2chの物理スピーカーによるサラウンド(センタースピーカー無し)で終わりまで見たタイトルだ。タブレットのスピーカーと音場効果に過度な期待はどうなのかと思いつつ、せっかく音のいいタブレットを試すのだから、あえてハードルを上げてみるのも一興だ。
まずは、映像面から軽くインプレッションを紹介しよう。まず、手持ちのiPad Proで視聴するシーンを見た後、各機器の映像をチェックした。
洋画は「コヴェナント/約束の救出」。アフガン人通訳と、その通訳に命を助けられたアメリカ兵士の約束と絆の物語。アフガン人通訳の身に起こった現実をフィクションとして描いた作品で、ストーリーの美しさと大国がはじめた戦争の不条理さが自然に同居しているのが見事。
主人公のキンリー曹長が通訳のアーメッドと初任務を行なう場面。夜の街中で情報源の男を車で拉致。人気のいないところで車のライトを照らしながら、札束(アメ)と囚人服(ムチ)を投げつけて、タリバンの爆弾工場の場所を聞き出そうとする曹長と通訳。
Lenovo Tab Plusの2Kのディスプレイだが、フルHD配信の作品ということもあって、精細感はそれほど気にならない。車のライトは、そこそこ明るく見えるものの、暗闇の黒は十分に締まらない。コストの問題もあるので、コントラスト表現には厳しさもあるようだ。
邦画は「SCOOP!」。元凄腕の報道カメラマンだが今では中年パパラッチの都城静と、新人女性記者の行川野火がコンビを組まされ、最初は芸能スキャンダル、終盤に掛けて事件ネタも拾っていくが……というストーリー。1985年のオリジナル版にノータッチの自分は、まっさらな気持ちで本作を鑑賞した。何がどう面白いのか言葉にし難いのだが、圧倒的な引力を感じた名作だ。
邦画によくある“明るめの絵作り”は、逆に本機との相性がいいかもしれない。映像の明暗にかかわらず、画面全体がうっすらとバックライトの明るさで光っているのだが、違和感はコヴェナントよりも小さい。
アニメーションは、「ガールズ&パンツァー 最終章 第4話」。筆者のレビューではすっかり恒例となったタイトルで、もはや説明不要の大人気シリーズ。「映画館の音にこだわるファン」を大量に生み出した音響にも気合いの入った作品だ。
冒頭からOPが終わって数分の間を視聴した。ややiPad Proと比べると色褪せて見える。アニメーションを見るときは、「鮮やか」設定がよさそうだ。
続いて、サウンド面をチェックする。
コヴェナント/約束の救出は、タリバンに追われ、救出ポイントのダムで銃撃戦を行なうクライマックスのシーン。トンネル手前で乗ってきたトラックを爆破し、大ピンチの銃撃戦を経て、アメリカ軍がヘリで助けに来るところまでを視聴した。
本作は、それほど銃撃戦は多く無いものの、戦争映画に属すると筆者は見ていて、Blu-ray版のサラウンドはまさにそのものだった。だが、配信版はダイナミクスが圧縮されているよう感じた。Huluでは5.1chサラウンド対応の作品はほぼ存在しない。またタブレットでは全作品がステレオミックスとなる。戦闘シーンと通常の会話シーン、この音量差は聞きやすいように整えられていて、本来のバランスで楽しむならBlu-rayを買うのが妥当だ。
Lenovo Tab Plusで聴く銃撃や砲撃の音の迫力は、タブレットとして十分以上である。画面からの音離れが未体験のクオリティだ。一発一発の解像感も高いし、音の広がりも(画面との距離にも依るが)おおむね耳の左右にまで迫る。JBLは、映画館でも使われているスピーカーのブランドであり、シネコンではよく見かける。個性の1つとして、聴き疲れしにくい暖かみのある優しい音色があると思っていて、本機もそのキャラクターを受け継いでいる。殺伐としたシーンでも、音に疲れないだけでちょっと心が楽になる。
SCOOP!は、現場検証で凶悪犯の顔をスクープ撮するシーン、チャラ源が暴走して都城静に衝撃的なことが起きるシーンあたりを視聴。
JBLのスピーカーを使った映画館は、台詞がしっかり聞こえて、中域のふくよかさが印象に残っているのだが、本機も同様である。劇伴のピアノも豊潤な中域と、場面のムードを盛り上げる響きの色気が効いていて心地良い。
ガルパン 最終章 第4話は、聖グロリアーナVS黒森峰の戦い。砂嵐の直前から決着までを見た。耳の真横近くまで砂嵐の音で包まれる感覚に、タブレットであることを疑ってしまう。だが、実際そうなのだから楽しむしかない。さすがに「真後ろに音がある」とまでは言えないが、十分なサラウンド感。劇伴のパーカッションが鳴らす「ドン、ドン、ドン」はタブレットらしからぬ音の質量に驚く。砲撃音もしかり。
SEと劇伴、台詞の分離感は申し分ない。砲弾が装甲に当たる「カン!」「キン!」という瞬間的なSEも素早く立ち上がって収束していく。
前述したとおり、JBLのスピーカーが入っている映画館ってこんな音だなぁって思えるバランスだ。しっかりと情報量はあるのに、決して聴き疲れしない音だ。
Galaxy Tab S11をチェック
続いて、Galaxy Tab S11(Wi-Fi、11.0インチ)をチェックした。価格的には自前のiPad Pro(M4)より数万円安いものの、決してエントリーとはいえない高級機だ。
持ってみた感覚は、iPad Proに非常に近く、手の感触や収まり具合もほぼ同等。これで映像も音も好みだったらどうしようと別の意味の不安がよぎる。
結論を先に言ってしまうと、音も画面も素晴らしかった。Samsungは、有機ELパネルの世界的なメーカーであることは周知のとおりだが、オーディオ面でも決して侮れない。2017年にHarman Internationalを買収、2025年9月にはそのHarmanがあのSound Unitedを買収しているだけに、オーディオノウハウの蓄積は膨大だろう。
まずは画質からチェックしていく。設定は、動きの滑らかさを「最適化(最大120Hzで自動的に調整)」、画面モードを「ナチュラル(色味)」にした。
コヴェナント/約束の救出は、iPad Proよりも夜景が自然に見える。黒の沈み込みは深く、車のライトや街明かりは輝度が十分感じられる。色味もナチュラルで作品世界へのトリップ感が高まった。
翌朝、作戦経路を打ち合わせる場面は昼間なのだが、どことなく殺伐しているというか、薄ら寒い感じが伝わる。意図的な画作りだと推察するが、そこにハッとさせられるほどの説得力がある。iPad Proと比べても、コントラストや色味のクオリティはGalaxy Tab S11が上のように感じた。iPad Proはコントラストのメリハリが大味で、細かな描き分けがいまひとつ物足りない。色味については、True Toneをオンからオフに切替えて比べてみたが、やはりオンの方が自然だった。
SCOOP!は、序盤の静と野火の初仕事のシーン。人気タレントが夜の店で羽目を外す様を激写するシーンだ。画面全体が明るめに見えるのは前述の通りだが、バックライトの白っぽい明かりが無い分、カメラフラッシュの明るさはかなり臨場感がある。東京の夜の街のワクワク感やちょっとアブナイ感じは、色味やコントラストが作品意図に近いからなのか、より伝わってきた。
ガルパン 最終章 第4話は、OP~雪原の戦闘シーンをしばらく視聴。戦車内の暗い部分はしっかり締まった漆黒。黒っぽい服や髪の色も自然だ。雪原の白はLenovo Tab Plusでは白飛び感が否めなかったが、まったく違和感のない真っ白の雪。全体的に色味も自然で、アニメを見るのにも非常に適していると感じた。
なお、Huluで最高画質にした際、表示は正常だった。Geekbench 6のベンチマークは、CPUスコアはシングルコア2,684、マルチコア7,878、GPUスコアは20,361を記録している。
続いてサウンドのチェックに移る。サウンド設定は、Dolby Atmosをオンに。イコライザーは、フラットの「バランス重視」とした。
コヴェナントは、銃声の一つ一つが鮮明で、音像もシャープで好みドンピシャだ。耳の左右辺りまで包み込む感じがあるが、さすがに球筋までは分からなかった。物理スピーカーになると、タマが飛んでくる感が圧倒的に増す。ホームシアターではなかなか後方、ましてや天井にスピーカーを設置するのは困難ではあるが、1組でいいのでサラウンドスピーカーを設置してみてほしい。世界が変わる。
Lenovo Tab Plusよりもローエンドは高めで、砲撃音などに重量感はない。しかし、鮮明でスピード感があって、スリルは味わえた。劇伴のシンセトラックに包み込まれると、タブレットで見ていることを忘れそうになる。
SCOOP!では、Dolby Atmos機能のオン/オフを比較してみた。Dolby Atmosをオンにすると、音場が横方向に広がるだけでなく、耳の左右までつまり試聴位置の真横まで音場が広がるのに驚かされる。真上や後ろの定位感はないものの、街中に響くパトカーのサイレンの音や街の暗騒音までリアリティは半端じゃない。報道ヘリの音に至っては、やや上方で鳴っている感覚まであった。映画らしいサラウンドの仕上がりはLenovoを越えている。物足りないのは中低域の量感くらいだ。
音色的にはモニターバランスというか、JBLより個性は薄め。トランジェントも精密で、音像はクッキリ描くタイプだ。劇伴と台詞、SEの分離も良好である。
Dolby Atmosをオフにすると、音像の明瞭感はやや向上する。ただ、映画で表現されている部屋の鳴り(会議室の反響)のような”空間の響き“が曖昧になった。例えば、エレベーターホールの響きはDolby Atmosオンの方が断然リアルだ。
ガルパン 最終章 第4話は、メインが戦車戦ということもあって、低音の量感が不足している点は迫力を削いでしまう。Lenovo Tab Plusは、改めて常識を越えたスピーカー構造なのだと実感する。ただ、分離の良さやサラウンドに包まれる感覚は、Galaxy Tab S11の方が優れている。砂嵐は、耳よりもやや上、頭のてっぺん辺りまで音で埋まる。
リーズナブルだが迫力サウンドのLenovo Tab Plus、絵も音もハイレベルなGalaxy Tab S11
ここまでLenovo Tab PlusとGalaxy Tab S11(11インチ)、iPad Pro(M4)の3機種を使って、動画視聴におけるサウンドの傾向をみてきた。
動画配信で海外ドラマをひたすら見ていて思うのは、いつでもどこでも、たとえ”ながら見“であっても、感動が少しでもプラスになるなら求めたいのが性なのではということ。現に、Dolby Atmosを有効にして、キッチンで見る「FBI: 特別捜査班」や「シカゴ・メッド」は、動画視聴専用のタブレットを本気で検討しようと思えるほど貴重な体験となった。
もちろん、物理スピーカーのシネマサウンドを家庭に用意するなら、それに越したことはない。だが、タブレットであっても、映画っぽいサラウンドを味わえるという希望が見えたのは収穫だった。
動画配信サービスは、日本ではソフト化していないタイトルも見られるし、Blu-rayを買うまではいかないが、DVDレンタルだと画質が気になる方にとってもメリットはある。宅配レンタルを今でも利用している筆者は、それこそ海外ドラマのためにチマチマ何枚もDVDを借りるのがいかに無理ゲーかを理解しているつもりだ。それにレンタルするなら、Blu-rayの映画タイトルを1本でも多く鑑賞したい。
Lenovoは、JBLらしい暖かみのあるリラックスできるサウンドと、映画館らしい音色を味わえる。低域の量感もあって、迫力も一般的なタブレットとは別格だと思えた。
Samsungは、Dolby Atmosによる音場の広がりや、空間表現のリアリティが光る。音像のディテールや解像感に優れ、分離もよく、癖の少ないバランスを備えている。
2機種とも、価格からすれば、本当に大丈夫なのかと心配になるほどのクオリティを魅せてくれた。総合的には画質面の圧倒的な優位性を含めて、Galaxy Tab S11(11インチ)がベストシネマタブレットだ。ちなみに画質と音質に絞るなら、iPad Proよりも高評価である。
ただ、約13万円のGalaxy Tab S11と、4万円台のLenovo Tab Plusを直接比較してもあまり意味はないだろう。それよりも、4万円台ながら、ハイレベルなサウンドを楽しませてくれるLenovo Tab Plusのコストパフォーマンスの高さも見事だった。
一方で、中低域の量感やローエンドの浅さは、タブレット内蔵スピーカーだけでは限界もある。何か他の機器との連携を考えるのも良いだろう。タブレットで楽しむ動画ライフ。さらに上を目指して、これからも探求を続けて行きたい。



















