シャープ、液晶TV好調で黒字の上期決算。通期は下方修正

-片山社長「3Dスマートフォンを今年度中に国内展開」


片山幹雄社長

 シャープは28日、2010年度上期(2010年4~9月)連結決算を発表した。

 売上高は、前年比16.7%増の1兆5,039億円、営業利益は419億円改善して約28倍となる434億円。経常利益は382億円改善し、262億円と黒字化。当期純利益は320億円改善して143億円と黒字転換した。

 片山幹雄社長は、「売り上げ、利益ともに大幅に改善を遂げた」と前置きしたものの、「液晶テレビについては、前半には各社ともに強気な姿勢であり需給バランスが厳しい状況だったが、欧州の金融不安、中国のローカルブランドメーカーの販売不振、北米市場の景気低迷などの影響があり、在庫が積みあがったり、価格下落が進展しており、7~9月は環境変化の変わり目となっている。こうした動きが計画を狂わせている」などとして、通期の業績を下方修正した。

 2010年度の連結業績予想は、売上高がは3兆1,000億円と据え置いたが、営業利益は4月公表値に対して、300億円減の900億円、経常利益は400億円減の550億円、当期純利益は200億円減の300億円とした。想定為替レートは4月公表値のドル90円/ユーロ123円から、ドル82円/ユーロ110円に修正している。

 「今後想定される大型液晶パネルの価格下落の影響、予想を上回る円高の為替の影響を折り込んだ。先行きの不透明感があるが、経費削減、特徴製品の創出、リソースを成長領域へ大胆にシフトしていくことで乗り切りたい」(片山社長)などとした。

 

四半期の連結業績概要営業利益経常利益
四半期の純利益と配当部門別売上高部門別営業利益

 



■ 液晶テレビ/レコーダが好調。3Dスマートフォンは今年度中に展開

 2010年上期のセグメント別業績では、エレクトロニクス機器部門は、売上高が8.6%増の9,532億円。営業利益は259.5%増の375億円。そのうち、AV・通信機器の売上高が8.6%増の6,841億円、営業利益は256億円改善し、195億円の黒字。健康・環境機器事業の売上高は13.2%増の1,336億円、営業利益は48.0%増の82億円。情報機器事業は、売上高が4.2%増の1,355億円、営業利益は11.8%減の97億円となった。

 「国内のエコポイント制度の影響もあり、液晶テレビおよびBDレコーダの販売が好調。これは、電機メーカーにとってはありがたい制度であり、この動きは、来年まで続くだろう。昨年下期からのテレビ事業の黒字化が定着していること、国内向けの携帯電話の収益が改善しているほか、冷蔵庫、エアコンの販売が好調。また、デジタルカラー複合機の伸張が見られた」とした。

クアトロン3Dの「LV3シリーズ」

 液晶テレビの売上高は、19.4%増の3,654億円。出荷台数は43.0%増の628万台。

 そのうち、国内は前年同期比55%増の約356万台、海外は30%増の約272万台。海外の内訳は、北米が17%減の75万2,000台、欧州が24%増の64万2,000台、中国が126%増の94万4,000台、その他地域は55%増の38万5,000台となっている。

 2010年度における液晶テレビの販売計画は、期初の計画通り、前年比47.2%増の1,500万台。だが液晶テレビの売上高は期初の8,200億円を、8,400億円に上方修正した。

 「クアトロンシリーズのなかでは、最上位の60型が好調である。北米では、大画面需要が高いことに加えて、初期のフラットテレビを購入したユーザーが買い換えによって、さらに大画面モデルを購入する傾向が見られている。中国でも60型の製品が好調だ。今後も大画面の製品ラインアップの強化、コストダウン、販売チャネルの拡大などにより、さらに大画面需要を拡大させていく。グリーンフロント堺では、第10世代のパネル生産を行っているが、この効果が発揮できるのは60型以上。この市場を切り開いていかなくてはならない」などとした。

 また、片山社長は、「中国市場では、販売チャネルを地方都市にまで広げており、さらに、米国でもリーマンショック以降、販売チャネルを絞り込んでいたものが、これを拡大しはじめている」などとして販売拡大の素地があることを示した。

 3Dテレビについては、「思い通りにいっていないのは事実。3Dコンテンツも揃っていない。今後のコンテンツの広がりを期待しているが、シャープはメガネをかけてテレビ視聴を楽しむというだけでなく、3Dカメラやを裸眼で3D視聴できる小型ディスプレイを搭載したスマートフォンなど、自らが3Dを楽しむ環境を提案していきたい。3Dスマートフォンは、まずは国内市場向けに、今年度中に展開する。3Dは時間をかけて成長していけばいいと考えており、3Dテレビの構成比は、マーケットの流れに従うしかない」とした。

 BDプレーヤーおよびレコーダは、前年同期比20.5%増の321億円となっており、「国内エコポイント制度の影響で、テレビと一緒に売れている」とした。



■ スマートフォンの拡大に期待。GALAPAGOSにも言及

auが11月に発売するシャープ製スマートフォンのIS03

 携帯電話の売上高は、5.1%減の2,149億円、出荷台数は3.6%増の531万台となった。

 2010年度の携帯電話の売上高は、期初には5,050億円としていたが、これを4,500億円に下方修正。出荷台数は1,370万台から、1,100万台へ大幅に下方修正した。国内市場の成熟化、KINの事業停止などが影響している。

 「既存の携帯電話市場がシュリンクする一方、スマートフォンの市場が拡大している。これをチャンスと捉えて、オープンOSを搭載した製品を投入していく」などとした。

 また、片山社長は、12月に発売予定のGALAPAGOSについても言及。「ユーザーに新しい体験を提供するクラウドメディア事業。商品単体の売り切り型ビジネスではなく、ソリューションビジネスへの転換を図る」と位置づけた。


 

3D対応スマートフォンのコンセプトモデル12月より電子書籍端末の発売とコンテンツ配信サービスがスタートする「GALAPAGOS」

 

 一方、電子部品等部門の売上高は29.6%増の8,121億円、営業利益は119.3%増の161億円。そのうち、液晶は、売上高が35.4%増の5,405億円、営業利益が52.0%増の54億円。太陽電池は、売上高が50.7%増の1,299億円、営業利益が286.4%増の40億円。その他電子デバイスの売上高は0.3%増の1,416億円、営業利益は143.4%増の66億円となった。

 太陽電池の販売量は前年同期比77.3%増の579MW。通期では、64.2%増の1,300MWの販売を見込む。

グリーンフロント堺におけるテレビやスマートフォン用の液晶などに期待を寄せる

 「昨年10月に稼働したグリーンフロント堺での生産能力の拡大によるテレビ用液晶の増産、中小型液晶では上期後半からのスマートフォンの伸長などにより、販売は回復基調にある。下期は3D液晶、高精細液晶がゲーム機、タブレット、スマートフォンなどに採用されるなどニーズが高まる。最適生産体制を構築し、強みを生かしたビジネスを推進したい」とした。

 だが、大型液晶パネルの生産設備については、北米市場における液晶テレビの需要低迷などを背景に、7~9月に稼働率を引き下げたほか、液晶パネルの外販比率が当初計画の5割にまで届かず、4割程度に留まったという。

 「生産調整は続いているが、標準化、共通、円高活用による調達推進などにより、グリーンフロント堺の強みを生かした60型以上の大画面テレビ、マルチディスプレイシステムなどによって事業拡大を図りたい」とした。



(2010年 10月 28日)

[Reported by 大河原 克行]