拡大を続ける「IFA 2011」のプレスカンファレンス開催

-電子書籍エリア新設。日本の震災について海外の反応も


主催のドイツ民生通信エレクトロニクス協会(gfu)の監査役会議長、Rainer Hecker氏

 国際コンシューマ・エレクトロニクス展「IFA 2011」の概要を発表する「IFA 2011 Global Press Conference」がスペイン・アリカンテで現地時間16日に開催された。

 IFAは、9月2日~7日にドイツ・ベルリン国際見本市会場で開催。1924年の初開催から、今年で51回目を迎える。AV/IT機器や、白物家電などの最新製品が展示され、日本からもソニーやパナソニックなどの大手メーカーをはじめ、多数の企業が出展している。50回記念となった前回の2010年は、実質展示面積134,400m2に1,423社が出展。ドイツ国内外から23万5,000人(前年比5%増)が訪れている。



■ 電子書籍コーナーを新設。2014年には新ホール建築も

展示ホールの規模も拡大(立体の部分)。左の水色がインターナショナルホール、中央上の黄色が写真関連のホール

 IFA 2011の詳細な出展者数はまだ発表されていないが、「既にかなりの数の参加が予定されている」(Messe BerlinのChristian Coke COO)とのこと。今回、出展エリアは一部拡張することも決定した。また、前回も用意されたiPhone/iPod/iPad関連の「IFA iZone」や、中小メーカーや大学などが先端技術を披露する「TEC WATCH」のコーナーに加え、新たに電子書籍関連の「IFA eLibrary」を設置する。

 アジア系メーカーなどが集う「インターナショナルホール」の規模を拡張するほか、新たに写真関連のホールも新設される。さらに、2014年には、従来のホール2と7をつなぐ、15,000m2に及ぶ新棟を建設することも正式に発表した。

 新設される「IFA eLibrary」は、電子書籍端末やタブレットPCのメーカーに加え、出版社などが展示するコーナー。ホール13を中心に展開する。

 展示会場は、大きく7つのジャンルに分けて展開される。

  • Home Entertainment
     テレビやBlu-ray、ホームシネマ、レコーダなど

  • Audio Entertainment
     スピーカーやハイエンドオーディオなど
  • Home Appliance
     白物家電
  • My Media
     写真やビデオ、MP3。「IFA iZone」、「TEC WATCH」、「IFA eLibrary」も含まれる
  • Public Media
     放送/プロ向け機材など
  • Communication
     通信、携帯電話、カーナビ、IPソリューションなど
  • Technology & Components
     サプライヤ、半導体など
2014年には新ホール(グレーの部分)も建築されるというTECH WATCHやiZONEに加え、電子書籍の「eLibrary」コーナーを新設毎年登場する「ミスIFA」も新世代に。彼女は4代目だという


■ ネットワーク化と省電力が家電のキーワードに

gfuのRainer Hecker氏が家電業界のトレンドなどを説明

 IFAの主催者であるドイツ民生通信エレクトロニクス協会(gfu)の監査役会議長のRainer Hecker氏は、「簡単な操作で様々な機能が使える“スマート化”や、“ネットワーク対応”、“小型化”、“エコロジ―”などの要素が、現在と未来の需要を満たす」との認識を示し、「コンテンツへいつでも、どこでも簡単にアクセスできること」の重要性を強調。

 「様々な機器で放送と通信が融合したことにより、“プロダクト重視”から“アプリケーション重視”に変わっている」とし、テレビやBlu-ray機器などだけでなく白物家電もネットに接続され、簡単に様々なサービスが受けられるようになることの必要性を説いた。Hecker氏は「IFAは、こうした傾向を読み取れるパーフェクトなプラットフォーム。現在の製品群や、未来を見据えた技術革新に触れられる、業界や消費者、メディアにとってNo.1のイベント」と述べた。


GfKのJurgen Boyny氏

 GfKの家電部門においてグローバルディレクターを務めるJurgen Boyny氏は、デジタル家電市場の推移を、地域や機能の違いの点から説明。欧州市場の安定した成長や、中国などアジア諸国の急成長に触れる一方で、日本の現状については厳しい見方を示した。

 世界規模で見ると、テレビやオーディオ機器、PC、カメラ、スマートフォンなどデジタル家電製品の市場は2010年に「予想以上」という19%の伸び(6,320億ユーロ)を示しており、2011年は鈍化するものの6%の増加(6,680億ユーロ)を見込んでいるという。

 地域別では、特にラテンアメリカ(37%)や中国(9%)の伸びが引き続き著しいと見ており、北米や欧州についても、2010年に比べると弱いながら、プラス成長と予測している。

 一方で、日本については2010年が24%の伸びだったのに対し、2011年はマイナス18%と、かなり悲観的な予測。理由についてBoyny氏は、「巨大地震だけのせいではない」と断った上で「政府のエコポイント制度が省エネ製品の購入を促進したが、2011年はこの効果が無くなる。その反動に、今回の災害が加わった」と述べた。「この数字は、経済がどれだけ早く回復するかによって変わるが、立ち上がりは2011年後半、または2012年に入ってからになるのでは」と予測。今回の震災の影響については「日本には大きな打撃だが、世界市場への影響は限定的」と述べた。

デジタル家電の市場規模のこれまでの推移と2011年の予測地域別の市場。写真は2010年のもの2011年、エコポイントの反動などから日本(グラフのピンク色)だけは大きなマイナスと見積もられている

 製品別にみると、2011年~2012年の液晶テレビ販売台数予測は欧州、アジア太平洋、中東+アフリカ、南米のいずれの地域でも2012年はプラスで、北米のみ横ばいになるとみている。

 2011年は世界規模で2億5,000万台のテレビが販売され、2012年は2億6,200万台に伸びると予測。その中で3Dテレビは世界で1,200万台、うち欧州で450万台販売されると見ている。そのほか、テレビのトレンドとしてはBoyny氏も「ネット接続」と「省エネ」を指摘。特に2011年11月からは欧州において、「Energy Label」による格付けが義務化。「A+++」~「D」の7段階で表示されることから、消費者は一目で消費電力の違いが分かるようになるという。加えて、「特に最近は原子力発電の是非も問われているが、少なくともメーカーにとって、省エネ化は将来的に渡り求められていく要素」と指摘した。

テレビの市場規模の推移と予測ネット接続の重要性を強調欧州で義務化される「Energy Label」表示

日本へのお見舞いの気持ちを述べた、Messe BerlinのChristian Coke COO

 発表会の冒頭、運営社であるMesse BerlinのChristian Coke COOは、「我々の友人である日本の方々に一言申し上げたい」と東日本大震災に言及。「今回は大きな災害に見舞われているが、あなた方ならこの局面を乗り越えられるものと確信している。我々もできる限りの手助けをしたい」と述べた。

 Coke氏は、これまでのIFAの海外からの商取引の来場者数や取材に訪れたプレスの数の拡大などを振り返り、「トレードとメディアにとってNo.1のグローバルショー」であることを強調。また、「欧州市場はデジタル家電と白物家電の世界最大の市場。IFAは欧州すべてに行き届いている」として、西欧10カ国、東欧5カ国からの来場者の割合を紹介。さらに、海外のショーと比較し、「IFAは年後半に行なわれる唯一のグローバルトレードショーである」と加えた。

取引での来場者とプレスの数の推移欧州各国の来場者やプレスの数「年の後半にに行なわれる唯一のグローバルトレードショー」と述べた


■ 震災のディスプレイメーカーへの影響について懸念も


Display SearchのPaul Gray氏

 開幕の前日に、IFA参加企業らが行なったプレゼンテーション「Power Briefing」では、調査委会社のDisplay Searchが、東日本大震災のテレビ製造への影響について言及した。

 TV Electronics & Europe TV Research DirectorのPaul Gray氏は被災地へのお見舞いの言葉を述べた後、ディスプレイ関係で、震災後に懸念されることについて各国メディア向けに説明を行なった。

 まず、多くのフラットパネルディスプレイは震災地域から離れた南側で生産されていることを明言。パナソニックが26/37型パネルを製造している茂原工場は被害を受けたものの、32型以上向けの大型パネルを生産する姫路工場は影響を受けていないことを説明した。

 一方で、フラットパネルディスプレイやテレビに使われる半導体工場のいくつかはダメージを受けた。なかでも材料のITO(インジウムスズ化合物)と、ACF(異方性導電フィルム)が大きく関連するという。4月の終わりから5月にかけて、この問題がいくつかのパネルメーカーに影響する可能性があると指摘した。

 ACFは、ガラスパネルを電気的に接合するために使われるもので、日立化成(茨城県)と、ソニーケミカル(栃木県)が主要サプライヤーとなっている。両方の工場は被害を受けたが、再稼働は始めており、各パネルメーカーにも1~2カ月分の在庫はあることから影響は最小限に留まっているという。一方で、ACFの原料を供給するメーカーが福島原子力発電所から50㎞内にあることに懸念を示した。

 ITOは、世界シェア50%のJX日鉱がダメージを受け、パネルメーカーも1カ月分の在庫はあるものの、台湾のパネルメーカーは主に同社から供給を受けており、今回の被害がリスクとなる恐れが否定できないと指摘した。そのほか、化学洗浄を行なうNF3(三フッ化窒素)は地震の前から供給がタイトになっており、地震で状況がさらに悪化したという。

 また、東北と関東の電力不足についても説明。これは長期化するとの見方を示し、東日本と西日本の周波数の違いにより、西日本から変換して供給する量が限られており、企業や家庭が消費電力を抑えなければならない実情を述べた。

東日本大震災の被災者に、英語と日本語でメッセージ震災のパネルメーカーなどへの影響深刻な電力不足など、日本全体に与えられたインパクトを説明


(2011年 4月 18日)