TI、DLP Picoの進化や4K対応予定などDLP技術を説明

-3次元計測への活用などの非ディスプレイ展開も


DLP事業部 シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのケント・ノバック氏

 テキサス・インスツルメンツ(TI)は10日、DLPビジネスの現状について報道関係者向け説明会を開催。プロジェクタ向けデバイスや4K化への目標のほか、非ディスプレイアプリケーションへの展開についても説明した。

 ディスプレイ向けのDLP技術については、15年の歴史を振り返るとともに、プロジェクタ市場におけるDLPのシェアが50%を超えたこと、特に文教とビジネス向けのDLPプロジェクタが増えていることなどを解説。文教市場では、ランプ交換などのメンテナンスコストが嫌がられることもあり、LEDやレーザー光源によるランプ交換の排除を進めており、技術開発においても重点的に取り組んでいるという。

 また、デジタルシネマにおけるDLP Cinemaの増加にも触れ、「フィルムでの撮影/投射はこれから割高になっていくだろう。デジタルシネマはこれからさらに増える」と説明。日本におけるDLP Cinemaスクリーン数は1,366スクリーンで、中国の7,745に続いて、アジアパシフィック地域で2位。

DLPプロジェクタのシェアDLP Cinemaのシェア
DLP Picの市場予測

 ディスプレイ製品で今後の拡大を見込むのが「DLP Pico」。携帯電話やデジタルカメラ/ビデオカメラのほか、iPhoneの“ケース”でもプロジェクタを搭載できるなど、さまざまなモバイル機器がプロジェクタになる点を強調。スマートフォンなどの市場拡大に合わせ、「DLP Picoの市場は、この2~3年で大きく拡大する(DLP事業部 シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー ケント・ノバック氏)」とした。

 DLP Picoのラインナップも、これまでは最高解像度はSVGA(800×480ドット)までだったものの、2012年にはHD/WXGA(1,280×768ドット)まで選択可能になる。さらに、「DLP Picoの大きな課題」という輝度も向上。携帯電話向けでは現在5ルーメンを'12年は10ルーメンにするほか、解像度も向上。2013年にはHDで20ルーメンを実現する。

 ビデオカメラ向けは10ルーメンから'12年には20ルーメン、'13年には40ルーメンまで高輝度化するとともに、HD対応を図る。また、iPad用ドックやスピーカーへのPicoプロジェクタ内蔵など、新しいアプリケーション展開もパートナーとともに進めていくという。

各社のDLP Pico搭載製品を展示ニコンのプロジェクタ内蔵デジカメ「COOLPIX S1200pj」
DLP Pico製品ポートフォリオDLP Picoの輝度/解像度を順次向上する

 ホームシアター向けの4K製品の展開については、「検討はしているが、現時点ではデジタルシネマでも4Kのコンテンツが少ないという状況。ホームシアター向け4Kコンテンツはほとんど無いといってよく、個人的には普及には数年かかると実感している」と回答。ただし、「ホームシアター向けの4Kへの技術的なアイデアは2つほど出ている。市場のニーズが出てきて、コンテンツがそろえば、ソリューションとして展開する」とした。


■ 3次元計測にDLPを使う「DLP LightCrafter」

DLP LightCrafterのデモ

 また、これまでのようなディスプレイ機器だけでなく、非ディスプレイアプリケーションにも展開することを表明。空間光変調を必要とする産業機器や医療機器、セキュリティ機器などへの応用を目指す。

 DLP技術を3次元計測などに使い、産業機器向けに展開。そのリファレンスキットとなる「DLP LightCrafter」を開発した。米国では599ドルで販売しており、日本でも10日から開発者向けに販売する。

 DLP Picoの処理性能と応答速度を引き上げ、小型化。USBインターフェイス経由で接続できるAPIやGUIを介し、開発者は形状計測用の構造化光を簡単に生成、保存、表示できる。PC用ソフトウェアと、カメラなどを組み合わせることで、複雑な形状の物体の3次元計測などに応用できる。

 DLP LightCrafterの中核部は、0.3型WVGA解像度の「DLP3000」とコントローラ「DLPC300」から構成される。DLP Picoによるプロジェクタのような階調表現が不要なため、R、G、Bのいずれかの光源のみを利用し、1秒間に最大4,000枚のバイナリパターン(1ビットの縞パターン)を表示できる。DLP技術を生かして、計測機器や組み込み機器への展開を予定。また、近未来のDLPの姿として自動車のフロントウィンドウ用のディスプレイへの応用なども計画しているという。


DLP LightCrafterで3次元解析自動車のフロントウィンドウにDLP

(2012年 2月 10日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]