BCN「薄型TV買い替えループ終了。スマートTV化へ」
-単価下落を止める価値創造を。被災3県で特需
BCNの道越一郎アナリスト |
BCNは12日、薄型テレビやBlu-rayレコーダ、デジタルカメラなどの市場分析と今後の予測を発表した。
BCNの市場分析は、家電量販店など全国23社、2,378店舗(2012年3月現在)のPOSデータを集計したBCNのデータをもとに行なっている。Amazonなどを中心としたネット店舗のデータも加味した形で前年同月比を算出。メーカー直販店の売上は含まれない。発表データ内の金額は全て税抜きとなる。
■薄型テレビ
薄型テレビ全体の、販売台数、金額前年同月比と、平均単価。タイプ別の台数構成比 |
薄型テレビ全体における平均単価は、昨年の3月が約58,500円だったがろ、今年の3月では約43,000円と下落が続いており、新生活需要で小型が伸びている事も手伝い、最低平均単価を更新した。「台数はエコポイントが始まる前、デジタル移行特需前の'09年と同程度に戻っているが、問題は金額で、'09年の半分以下になっている。ここまで単価が下がると利益を出すのは難しい。ここまで下がってくると下げ幅は減少してはいるが、まだ下落のペースに大きな変化はない」(BCNの道越一郎アナリスト)という。
こうした状況を見越して、シャープなどは単価の高い大型モデルに注力しているが、「画面サイズ帯別の前年同月比で、50型以上の金額を見てみると、昨年12月で前年同月比173.6%、今年1月で153%、2月で123%と、伸びは縮小しており、3月は95.1%と、前年を割ってしまった。大型モデルで単価と利益率を確保するのはある程度成功しているが、50型以上が伸びているわけではない」(道越氏)。
一方で、道越氏は一番のボリュームゾーンである30型台の単価変動に注目。「30型台も1年間で単価は3割下がっているが、この2カ月で単価が戻ってきている。全体的に下げ基調ではあるが、一番大きなボリュームゾーンに変化があると、全体も徐々に変わってくる可能性があり、そうなれば各メーカーも一息つけるのではないか」と予測した。
唯一伸びていた50型以上の勢いにも陰りが出ている | 30型台で単価下落が止まった |
機能面では、録画対応のモデルが8割を占めるまで拡大。3D対応のモデルは、今年3月で全体の14.8%まで拡大。50型以上では85%まで上がり、40型台は48.5%。道越氏は、「全体の単価下落と3D対応モデルを比べると、下落幅はマイルドであり、下落を抑える効果はまだ残っていると言って良いのではないか」という。
メーカー別台数シェアでは、'12年3月の段階でシャープが33.8%で首位。ソニーが19.2%、東芝が18%、パナソニックが17.5%で続いている。ソニーは1月からシェアを伸ばしており、小型サイズの伸びが中心になっているという。
これらを踏まえ、道越氏は「薄型テレビへの買い替えという意味では、ループが終わってしまったという状態。今後は何を付け加えれば良いのか、ユーザーが買い替えに何を望んでいるのかを真剣に考えなければならない。それがスマートテレビなどであり、機器連携によって価値を生み出す事がテレビとしては重要。また、3D機能が典型だが、本当にユーザーが求めていたのかという機能もある。こういう時期だからこそ、ユーザーとしっかり向き合った製品提案が必要。しかし、“ユーザーが言うから作った”というだけでもダメで、自らの哲学を持って作る事が重要。当然やらなければならなかった事だが、これまでなかなかできなかった事でもある。これから新しい挑戦が必要になるだろう」と語った。
なお、被災三県(岩手・宮城・福島)に限定した動向も調査。三県では今年の3月31日にアナログ放送が終了したが、3月には薄型テレビの駆け込み需要があり、2010年11月のピークに並ぶ勢いだったという。この結果、全国に対する、3県の販売台数構成比は、通常1~2%程度であるところ、3月は8.9%まで増加したという。
■BDレコーダ
BDレコーダの販売台数は、'09年をやや上回る水準。単価下落は下げ止まり傾向にあるという。また、BDXL対応機は8割にのぼっている。HDD容量は1TB以上の台数構成比が2011年11月頃から伸びており、11月で18.8%、12月は23.5%、2012年1月が20.5%、2月が26.1%、3月が26.9%と推移。「レグザサーバーなど、大容量HDDモデルが増えてきたため」(BCNの岩渕恵アナリスト)だという。
3月のメーカー別の台数シェアでは、パナソニックが27.4%で首位。ソニーが25.2%、東芝が23.3%、シャープが21.3%となっている。「直近3カ月で見ると、パナソニックのシェアは落ち気味で、ソニーと東芝がアップしている。これは新製品の投入でパナソニックの平均単価が上がり、逆にソニーと東芝は単価が下がっているため」(岩渕氏)。
逆に、パナソニックは比較的高単価でもシェアを獲得している。理由として、地デジ3チューナ以上の搭載、BDXL対応、、メモリーカードスロット、3D対応、無線LAN内蔵(オプション対応含む)などの項目で、各社モデルの機能搭載率を導き出すと、パナソニックが各機能をバランス良く搭載している事がわかるという。BCNでは、これが安定したシェア獲得に繋がっていると分析している。
レコーダの販売台数・金額指数と平均単価 | 平均単価/BDレコーダのHDD容量帯別販売台数構成比。1TB以上の大容量化が進んでいる | メーカー別の平均単価 |
■デジカメ
レンズ交換型デジカメの販売台数・金額前年同月比/平均単価 |
デジカメ市場では、一眼レフが好調。3月の販売台数は、前年同月比で139.6%、金額も前年同月比135.8%と大きく伸びている。依然として好調を維持しているミラーレス一眼と合せ、市場全体が活性化しているという。
一眼レフのシェアでは、キヤノンが3月に59.6%を記録する一方、2011年8月に42.2%のシェアがあったニコンは、洪水の影響による品不足が響き、2012年1月には19.2%までシェアが低下。しかし、2月になると28.5%、3月に28.1%と回復の兆しはあり、新製品の投入で単価面では大幅に回復しているという。
ミラーレス市場では、ニコンが「Nikon 1」の投入により、台数シェアで3月には20.4%を獲得。パナソニックの29.4%、オリンパスの28%に迫り、16.2%のソニーを追い抜いている。「Nikon 1はロケットスタートにはならなかったが、現在は価格も下がってきており、販売は好調。ミラーレス市場で存在感を発揮している。ソニーはNEX-7の投入などで、単価は大幅にジャンプアップしている」(道越氏)という。
■タブレット/スマホ
タブレット端末では、第3世代iPadの投入により、アップルが3月時点で68.7%と、7割目前まで台数シェアを戻している。搭載OS別の販売台数構成比は、3月時点でiOSが69.2%、Androidが28%、Windows 7が2.7%となった。ただし、第3世代iPadは初代や第2世代と比べると、累積販売台数指数の伸び率は最も低くなっている。
普及期に入ったスマートフォンは、3月時点の販売台数構成比が携帯電話全体の77.8%に達している。3月の販売台数シェアは、アップルが23.2%でトップだが、Xperia acro HDを投入したソニーモバイルコミュニケーションズが20.8%と急上昇。3月の搭載OS別販売台数構成比は、iOSが23.2%に対し、Androidが76.6%となっている。
スマートフォンの販売台数構成比をキャリア別に見ると、ソフトバンクが75%、ドコモが79.6%、auが70.6%。auは2月の58.3%から急激に上昇しており、他のキャリアと同様に7割を超えた。
(2012年 4月 13日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]