シャープ、2011年度通期連結決算は3,760億円の赤字

-'12年度の液晶TV販売目標は2割減の1,000万台


常務執行役員 経理本部長 大西徹夫氏

 シャープは2011年度通期連結決算を発表した。連結売上高が前年度比18.7%減の2兆4,558億円、営業利益はマイナス375億5,200万円(前年度比1,164億円減)、経常利益はマイナス654億3,700万円(同1,245億円減)、純利益はマイナス3,760億円(同3,954億円減)と大幅な赤字を計上した。

 同社は第3四半期決算発表時に'11年度業績を下方修正し、純利益はマイナス2,900億円としていた。その後、経営陣の交代や、鴻海精密工業(ホンハイ)との資本提携などの施策を打ち出しており、事業構造改革費用などが追加されている。'11年度の特別損失として、大型液晶操業損失が258億円のほか、構造改革費用1,171億円(IGZOパネル生産転換のために377億円、大型液晶の経営体制改善で681億円)など、合計1,547億円を計上している。


'11年度売上高営業利益純利益

■ 液晶テレビは'12年度も前年割れで収益改善へ

 部門別業績では、エレクトロニクス機器の売上高が17.2%増の1兆6,309億円、営業利益は35.6%減の510億円。そのうち、AV・通信機器の売上高は25.6%減の1兆610億円、営業利益はマイナス61億円と赤字化となった。

液晶テレビ事業の状況

 液晶テレビの販売台数は前年同期比17.1%減の1,229万台。米国ではテレビの大型化が功を奏し、海外販売は台数、金額とも前年を上回ったという。しかし、国内販売の大幅減、中国の伸び悩み、単価下落で減収となった。BDプレーヤー/レコーダの売上高は、前年比25.3%減の533億円。携帯電話の売上高は前年比26%減の3,058億円、販売台数は20.9%減の770万台。市場競争の激化により、前年を割り込んだ。

 2012年度の薄型テレビ事業の見通しは、売上高が'11年度比14%減の5,000億円、販売台数目標は同18.7%減の1,000万台。60型以上の大型テレビを国内外で強化し、事業を拡大するとともに、国内を中心に営業体制を見直し、スリム化をはかり、収益を改善。「特徴が生かせる大型に力を入れるが、前期は厳しい」(大西経理本部長)という。

 携帯電話も売上高が'11年度比で8.5%減の2,800億円、販売台数は変わらず770万台。最新OSやサービスへの対応など基本性能で他社をリード、デザインも重視するという。高精細、使いやすさ、長時間駆動などのシャープの特徴を生かした端末に取り組むとする。

 健康・環境機器は売上高が前年比8.3%増の2,923億円、営業利益は同47.6%の294億円。情報機器は売上高1.7%増の2,776億円、営業利益49.5%増の277億円。LED照明や、空気清浄機など白物家電が好調なほか、情報機器ではカラー複合機などが堅調という。

液晶事業の状況

 損失拡大の大きな要因となったのが電子部品セグメントの液晶事業。売上高は前年比29.8%減の7,209億円、営業利益はマイナス422億円。モバイルは堅調だが、大型の世界的な市場環境悪化により、工場の稼働率低下が響いたという。

 2012年度はIGZO液晶の本格量産開始やモバイル端末用液晶の販売増で収益を改善。売上高は'11年度比29%増の9,300億円を目指す。「現在、スマートフォンやタブレット向けの高精細パネルの需要が拡大している。IGZOは高精細表示と低消費電力の高いレベルの両立が可能で、モバイル家電に最適と評価されてる。予定より遅れたが、順次出荷量を拡大している」という。

 太陽電池も収益が悪化。売上高は前年比15.7%減の2,239億円、営業利益はマイナス219億円。国内の「全量買取制度」開始により、市場成長を見込むほか、メガソーラーや発電事業の取組みを強化し、事業と収益の構造を転換。システム構築など川下領域の取り組みを強化するという。2012年度の売上高目標は'11年度比16.1%増の2,600億円、販売量は30.4%増の1,400MW。その他電子デバイスは、売上高が8.9%減の2,381億円、営業利益は17.5%減の95億円。


■ '11年度下期を底に回復へ

 2012年度は液晶事業と太陽電池事業の構造改革、経営組織刷新と人員の重点部門シフト、財務体質改善などの業績改善対策に取り組む。

 液晶事業は、4月より亀山第2工場で本格生産を開始したIGZOに注力。「タブレットだけでなく、液晶モニターなど大きなものに広げ、事業拡大に取り組む」という。大型液晶は堺のホンハイとの業務提携や、液晶カラーフィルター事業統合など「新しい戦略的垂直統合へ進化させ、稼働率を向上し、コスト競争力を強化する」とした。ただし、大型については、今後の事業展開のための協議中であり、今回発表した業績予想には織り込んでいない。

 太陽電池については、7月にスタートする国内における全量買取制度に向けた体制強化のほか、海外工場の生産体制強化などをすすめる。事業領域としては、メガソーラーや産業システムの強化のため、システムサポート体制を整える。

 そのほか、在庫の圧縮や設備投資の圧縮などで財務体質を改善。「2011年度下期を底に回復に向かう」とし、2012年度の売上高は'11年度比9.9%増の2兆7,000億円、営業利益は200億円、純利益マイナス300億円を見込む。

'12年度連結業績見通し売上高、営業利益の半期推移

(2012年 4月 27日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]