ソニー、'11年度は4,567億円の純損失。今期は大幅回復へ

-テレビの赤字圧縮に手応え。Vita販売は180万台


加藤優 EVP CFO

 ソニーは10日、2011年度の連結業績を発表した。売上高は、前年同期比9.6%減の6兆4,932億円。営業損益は673億円のマイナス、税引前利益は832億円のマイナス、純損益は4,567億円の最終赤字となった。

 売上減の要因としては、為替の悪影響や東日本大震災及びタイの洪水の影響、先進国における市場環境の悪化などを挙げている。また、営業損益の悪化は、売上高の減少や持分法による投資損益の大幅な悪化などによるものとしている。

 液晶テレビなどが含まれるコンスーマープロダクツ&サービス(CPS)分野の売上は、前年度比18.5%減の3兆1,368億円で、営業損益は2,298億円の損失を計上している。

'11年度連結業績
 2012年度の連結業績予想については、大幅な回復を見込んでおり、売上高は前年比14%増の7兆4,000億円、営業損益は1,800億円のプラス、当期純利益は300億円の黒字の見通しであることを明らかにした。


■ 液晶テレビ売上額は28%減、Vita販売は180万台

 2011年度第4四半期(1~3月)単体の業績は、売上高が前年同期比1.2%増の1兆6,004億円、営業損益は14億円のマイナス、税引前利益は5億円のマイナス、四半期純利益は2,552億円のマイナスとなった。増収の要因としては、前年同期は持分適用会社だったソニーモバイル(旧ソニー・エリクソン)が連結対象となり売上が計上されたことや、金融分野の増収などを挙げている。

セグメント別の売上高と営業利益
 液晶テレビやゲーム機などが含まれるコンスーマープロダクツ&サービス(CPS)分野の売上は、前年度比18.5%減の3兆1,368億円で、営業損益は2,298億円の損失を計上している。減収の主な要因としては、液晶テレビ、PC、デジタルカメラ、ゲームの減収を挙げ、そのうち液晶テレビの減収については日本の市場縮小や、欧州/北米の市場環境悪化などによる販売台数減少/価格下落の影響を指摘。ゲームの減収は、価格改定によるPS3売上の減少やプラットフォーム移行により売上が減少したPS2の影響によるものだという。

 CPS分野の営業損益は、前年度108億円の利益だったが、'11年度は2,298億円の損失。減収による売上総利益の減少(為替による影響を除く)や、売上原価率の悪化などを要因として挙げている。構造改革費用は、前年度の287億円に対し、'11年度は96億円を計上した。

 また、2012年1月に売却したS-LCD持分の減損634億円とその後の為替調整の合計600億円の損失や、S-LCDの低稼働率に起因する追加的な液晶パネル関連費用228億円、前述の液晶テレビ関連資産の減損167億円、ネットワークビジネス資産の減損126億円が含まれている。一方、Blu-ray Disc特許費用引当金の戻し入れ143億円は、当年度の営業損益に対しプラスの要因として貢献。これは、最新のライセンス契約状況にもとづき特許権の見積りロイヤリティ料率が変更されたことによるもの。

CPS分野の営業利益増減要因の内訳
 '11年度の液晶テレビは、売上高が前年度比28%減少の8,400億円。台数は1,960万台(第4四半期370万台)。営業損益は、1,480億円の損失を計上。前年度から730億円の悪化だが、「’11年11月に収益改善プランを発表した時点では、見通しは1,750億円だったため、これに比べると270億円の改善となっており、「S-LCD合弁解消等による効果が既に出ている。テレビ事業の収益性は、想定以上に改善してきている」(神戸司郎業務執行役員 SVP 広報センター長)とした。

 その他の製品の売上台数は、BDプレーヤー/レコーダが700万台、ビデオカメラは440万台(同100万台)、コンパクトデジタルカメラは2,100万台(同360万台)、PCは840万台(同160万台)。ゲーム機は、PS3が1,390万台(同190万台)、PSPが680万台(同90万台)、PS2が410万台(同60万台)。PS Vitaは180万台。スマートフォンは2,250万台だった。

 '12年度のCPS分野については「液晶テレビは数量を追わず、収益構造の改善に向けたオペレーションを行なう」ことを強調。この結果減収となると予想されるが「東日本大震災やタイの洪水の悪影響からの回復が特にデジタルイメージング製品やPCで見込まれることにより、前年度比大幅な増収」とし、営業損益は、震災や洪水の悪影響からの回復に加え、液晶テレビの損失がS-LCDの合弁解消などによって前年度に比べ大幅に縮小し、分野全体で大幅な損失縮小を見込む」としている。

 '12年度の売上台数見通しは、液晶テレビが1,750万台、BDプレーヤー/レコーダが770万台、ビデオカメラが420万台、コンパクトデジタルカメラが2,100万台、PCは1,000万台、スマートフォンは3,330万台。 また、PSPとPS Vitaを合わせた台数は1,600万台となる見通し。



■ テレビの赤字幅改善に手応え、エレキ黒字化へ

PDS分野の営業利益増減要因
 プロフェッショナル・デバイス&ソリューション(PDS)分野の'11年度売上は前年比12.6%減の1兆3,138億円。減収の主な要因としては、主に電池やストレージメディアで東日本大震災の影響や為替の悪影響を受けたことなどを挙げている。営業損益は202億円のマイナス。構造改革費用には、ジャパンディスプレイへの中小型ディスプレイ事業売却にともなう損失192億円が含まれている。

 映画分野は、売上高が6,577億円で前年度比9.6%のプラス。米国のネットワーク向け売上や、CATV向けに制作した番組の売上の増加、スパイダーマン関連商品売上の分配を受領する権利を売却したことや、劇場公開された映画作品の有料テレビ局向け/VOD向け売上が増加したことが影響したという。営業損益は11.7%減益の341億円。今後公開予定の大型映画作品数の増加などで広告宣伝費が増えたことなどを要因として挙げている。

 音楽分野は、売上高が前年比5.9%減の4,428億円で、営業利益は5.2%減益の369億円。アデルの「21」などヒット作品はあったものの、円高や、パッケージメディアの縮小などが影響したという。

 2月にソニーの100%子会社となったソニーモバイル(旧ソニー・エリクソン)は、売上高が前値日12.4%減の5,289ユーロ、税引前利益が536億円の赤字、当期純損失1,145億円となった。一部の部品の供給不足や、フィーチャーフォン販売台数減などによる減収などが影響したという。

 2012年度の連結業績予想については、前述の通り大幅な回復を見込んでおり、売上高は前年比14%増の7兆4,000億円、営業損益は、増収と液晶テレビの損失の大幅縮小などを見込んで、1,800億円の利益となる見通し。営業損益に含まれる持分法による投資損益は、S-LCDやソニー・エリクソンが含まれなくなることで、2011年度の1,217億円の損失から50億円の損失まで縮小すると見ている。当期純利益は300億円の黒字の見通し。通期の前提為替レートは1ドル80円前後、1ユーロ105円前後を想定している。

CPS/PDSのセグメント合計棚卸資産(地域別)'11年11月に発表した赤字改善の施策’12年度の連結業績見通し

神戸司郎業務執行役員 SVP 広報センター長(左)と、加藤優 EVP CFO(右)
 また、テレビの販売について前述したとおり「数を追わない」との基本方針を示したが、加藤優 EVP CFOは「今年度やって行かなければいけないのは新興国における売上の拡大。マーケットが伸びているので、そこでは必ずしも台数を追わないというのではなく、マーケットに沿って競争していきたい。一方、成熟したマーケットでは、やたらと競争することは控える。新興国にはかなり期待をかけており、台数ベースでは、全体の7割くらいが新興国」とした。

 また、「液晶パネルの調達については、S-LCDとのジョイントベンチャーの解消により、Samsungからのパネル調達は続けているが、入手する価格も市場に合わせたものになる。固定費削減などの改善なども見えており、損失が去年見ていたものから半分以下に圧縮できるのでは」とした。

 加藤氏は、「エレクトロニクス分野は震災や洪水からの復興などもあり、全社挙げて収益の改善に取り組んでいる。なかなか厳しい状況ではあるが、特にテレビの赤字幅の圧縮は、かなり手ごたえがあり、進捗も昨年の想定より少し早めに結果が出ている。エレクトロニクス全体(CPSとPDS分野の合計)では、黒字化を見込んでいる」とした。



(2012年 5月 10日)

[AV Watch編集部 中林暁]