NHKオンデマンド、ロンドン五輪を見逃し配信。約250時間

-放送12時間後に配信。SHV公開上映の競技も決定


 NHKは5日、ロンドンオリンピック(日本時間7月28日~8月13日)に関連した施策を発表。VOD配信サービスのNHKオンデマンドにおいて、オリンピックの中継番組を見逃し番組サービスで配信することを発表した。

 また、東京と福島で期間中に行なわれるパブリックビューイングの上映競技も決定。陸上の男子100mやシンクロナイズドスイミング、競泳、自転車、バスケットボールを、スーパーハイビジョンの映像と22.2chの音声で上映することを明らかにした。



■ NHKオンデマンドで、大会後30日まで配信

 NHKオンデマンドでは、総合テレビとBS1で放送された主要な競技を中心に、日本語の解説と実況付きで競技別に「まるごと配信」する。テレビ放送後、12時間程度でPC向けに配信を開始。テレビ向けはPCに比べ開始時間が遅くなるという。大会期間終了後も30日間配信を継続するため、オリンピック終了後も楽しめる。配信する本数は未定だが、総配信時間は約250時間程度になる予定。

 視聴可能な端末は、PC、スマートフォン/タブレット(iOS/Android)のほか、アクトビラ、J:COM 、ひかりTV、KDDI CATV、auひかりの対応機種。料金は単品購入が210円(24時間視聴可能)で、見逃し番組月間見放題パックでも利用できる。開会式を含め全コンテンツの配信終了日は、大会期間終了から30日後の9月11日。

 夏のオリンピックをNHKオンデマンドで配信するのは初めて。なお、2010年の冬季バンクーバーオリンピックの配信本数は85本、延べ配信時間は139時間だった。

 NHKは、今回の発表に合わせて、NHKオンデマンドの利用数などの現状も明らかにした。NHKオンデマンドは、2014年度の単年度黒字化を目指しており、4月からはAndroid端末に加えiOS端末にも対応している。

 第1四半期(4~6月)の売上見込みは約3億2,000万円(前年同期比158%)で、PC系の無料登録会員数は6月末に88万人に達した。5月のPC系月間視聴数は99万5,000回。「特選ライブラリー」のサービス拡大により、特選番組の全てが見放題パックで視聴可能となり、PC系では売上で「見逃し番組」を逆転。スマートフォン/タブレットの訪問者数は、3月は3.3%だったが、4月は23.6%、5月は22.6%、6月は20.8%となっており、タブレットの利用が着実に伸びているという。



■ スーパーハイビジョン公開上映の競技が決定

パブリックビューイング会場のイメージ

 既報の通り、ハイビジョンに比べ16倍高精細とするスーパーハイビジョン(SHV)映像と22.2chの音響で、ロンドンオリンピックのパブリックビューイングを実施予定。国内の会場は、東京・渋谷のNHK「ふれあいホール」と「スタジオパーク」、秋葉原の「ベルサール秋葉原」、福島の「NHK福島放送局」。なお、海外でもロンドンとワシントンで関係者向けに実施予定。

 今回のパブリックビューイングでは、開会式のほか、競泳、バスケットボール、陸上競技、自転車競技、シンクロ団体の上映が決定。7月28日は開会式の一部ハイライトを上映するほか、7月29日から8月12日までに、開会式や各競技を1時間単位で繰り返し上映する。

【上映スケジュール】
7/29(日) ~31(日)8/1(水)~3 (金)4(土)~6(月)7(火)~8(水)9(木)~11(土)12(日)
SHV紹介SHV紹介SHV紹介SHV紹介SHV紹介開会式
開会式開会式開会式開会式開会式シンクロ団体
競泳バスケットボール陸上競技自転車競技自転車競技
バスケットボール陸上競技陸上競技
競泳競泳競泳競泳

 会場ごとに上映設備は異なり、渋谷のふれあいホールは520型プロジェクタ、スタジオパークは360型液晶ディスプレイ、ベルサール秋葉原は300型プロジェクタ、NHK福島は350型プロジェクタを使用する。

 なお、パブリックビューイングの開催に合わせて、各会場でスペシャルイベントを展開。詳細はNHKのサイトで案内している。



■ 水中合成カメラ「ツインズカム」がシンクロに採用

 NHKが独自開発した水面合成カメラ「ツインズカム」が、オリンピックで初めて採用。シンクロナイズドスイミングの中継で幻想的な映像を制作できるとしており、OBS(オリンピック放送機構)からの協力依頼を受けて、機材と技術を提供。この映像が各国の放送局に提供される。

 「ツインズカム」は、水上と水中のそれぞれで撮影した映像を、水面をはさんだ1つのスムーズな映像として合成するもので、あたかも水面にレンズを置いて撮影したような映像を表現できることが特徴。

ツインズカムツインズカムを使った映像の効果撮影のしくみ

 単純に2つの映像を合成した場合、水と空気中での光の屈折率が異なるため、水中の物体が拡大表示され、つながりの悪い映像になってしまう。この屈折率の問題を解決するために、ツインズカムでは上下のカメラのズーム比を自動調整。さらに、2台のカメラ間で精密な位置調整や高精度の連動動作や、レンズの光学的な歪み補正などで、スムーズな映像の合成が可能になったという。

 これまで、国内の中継で運用を行ないながら改良を重ね、水中と水上を撮影する2つのカメラの配置や制御方法を工夫することでズーム・パン操作を実現。競技選手の動きをスムーズにフォローする映像を、生中継で提供できるようになったという。シンクロの水上の美しい演技を作り出すための難しい水中の動きや、ジャンプの高さを確保するための水中でのコンビネーションなどを、これまでにない演出で中継できるという。



(2012年 7月 5日)

[AV Watch編集部 中林暁]