「ヘッドフォン祭'12」ハイレゾ対応「HiFiMAN」に新機種
ALO、フォステクス、TDK、アニソン用「萌音」など
会場入り口のポスター |
東京・青山で10月27日~28日の2日間行なわれている「秋のヘッドフォン祭 2012」の展示ブースから、「HiFiMAN」などを扱うトップウイングや、「ALO Audio」などのミックスウェーブ、フォステクス、イメーション(TDK)などの新製品を中心に紹介する。
■ トップウイング
HiFiMAN HM-901 |
春のヘッドフォン祭でも展示され「2012年秋発売」としていた、高音質ポータブルプレーヤー「HiFiMAN」の新モデル「HM-901」を展示。11月中に入荷予定としており、価格は10万円前後。交換可能なヘッドフォンアンプカードとして、スタンダード版(約1万円)とハイエンド向け(約3万円)を発売するほか、専用ドック(約4万円)も用意する。
ESS製の32bit DAC「ES9018」を2個搭載し、24bit/192kHzのハイレゾ音源に対応するポータブルオーディオプレーヤー。「Apple Losslessを含むほとんどのロスレスフォーマットを再生でき、24bit/192kHzを安定して再生できる」としている。同軸デジタル入出力や、USB入力、ライン出力にも対応する。さらに、無線LANを搭載し、ワイヤレスのミュージックサーバーとしても利用できるという。DAC部のローパスフィルタにはOPA2107とOPA627を2個ずつ使用している。
天面のジョグダイヤル採用などで操作性も向上。電源は7.4Vの電池パックを使用し、DCスイッチングコンバータを使わず電圧差14.8Vの直流電源で動作する。
さらに、国内初披露というHiFiMAN用のカナル型(耳栓型)イヤフォン「RE600 Songbird」も11月発売予定。価格は4万円前後。HiFiMANの開発チームが1年以上の研究を重ねて完成したというもので、「HM-901の良さを余すことなく発揮するフラッグシップイヤフォン」としている。8mm径のダイナミック型ユニットを搭載し、ネオジウムマグネットとチタン振動板を採用している。ケーブルは単結晶銅と単結晶銀を使用。
専用ドック接続時 | カナル型イヤフォン | HM-901に接続して、本体のスイッチを「Balanced」にすることで、より高音質な再生が可能だという |
M2TECH製品では、発表されたばかりのヘッドフォンアンプ内蔵DAC「VAUGHAN」(11月1日発売/オープンプライス/直販84万円)を展示。USB接続で最高32bit/384kHzに対応でき、この筐体にバッテリも内蔵したことなどが特徴。「Evo Clock」と同品質という2つのカスタムクロックを搭載。DACチップは4基搭載しており、ステレオ仕様のものをモノラルで動作させ、SN比の向上を図っている。
同じくM2TECH製品として、既発売のUSB DAC「YOUNG」(147,800円)とデザインを統一した筐体の32bit/384kHz対応ADC「Joplin」(147,800円前後)と、AC/DC電源ユニットの「Palmer」(95,000円前後)を11月に発売予定。
VAUGHAN | 上から、YOUNG、Joplin、Palmer | CECの新製品では、発売中のDAC「DA3N」(上)などを展示 |
■ ミックスウェーブ
上がPanAm、下が電源のPassPort |
ALO Audio製品では、真空管とトランジスタを併用した据え置き型ヘッドフォンアンプ/USB DACの「PanAm」(パンナム)と、同製品用のバッテリ「PassPort」を展示。11月中旬発売で、価格はPanAmが75,000円前後、PassPortが3万円前後。DACチップはウォルフソン製で、USB入力は最高24bit/96kHz対応。アンプ部の周波数特性は40Hz~30kHz。
Cypher Labs製品では、ヘッドフォンアンプの「AlgoRhythm Solo -dB」と「AlgoRhythm Solo -R」を展示。従来は入力が48kHzまでだったが、192kHzまでの対応となった。両機種の大きな違いは、「-dB」のみバランス入力に対応し、ALO AudioのRx MK3-Bと組み合わせることでアナログ部のオールバランス接続が可能になる。価格は-dBが74,000円前後、-Rが6万円前後。
JH Audio製品では、3ウェイドライバ搭載イヤフォンのJH13PRO、JH16PRO、JH-3A with JH16PROの3機種をマイナーチェンジして発売。主な変更点は、低域/中域/高域のタイムアラインメント調整などを行なっていることで、定位などが向上しているという。価格は、JH13PROが14万円前後、JH16PROは15万円前後。
左が「AlgoRhythm Solo -dB」と「AlgoRhythm Solo -R」 | JH13PRO | JH16PRO |
Audezeブランドでは、開発中の製品として密閉型のモデルを参考展示。同社は「LCD-2/3」など「平面磁界・全面駆動式」のオープンエア型ヘッドフォンを製造しているが、今回の開発品は、ポータブルも意識したモデルとのこと。駆動方式などを継承しつつ、ユニットはやや小型化。ハウジングの素材などは検討中だという。
新たなブランドとしては、米ポートランドでカスタムモニターイヤフォンを製造する「1964EARS」の4製品を参考展示。実際に発売するかどうかは未定だが、カスタムモニターイヤフォンとして、比較的低価格で購入できる点などが特徴。会場で試聴可能となっており、イベントでの反応を見て、発売するかどうかを検討するという。
その他にも、ALO製のバランス接続ケーブルや、Beat Audioのイヤフォン用リケーブル製品など、多数の新製品を展示している。
Audezeの密閉型ヘッドフォン試作機 | 1964EARSの製品。写真は、2ドライバ内蔵(黄色のモデル)や、3ドライバ(赤)、4ドライバ(紫)、6ドライバ(白)のモデル | ALO製のヘッドフォンアンプ用バランス接続ケーブル |
■ フォステクス
TH600 |
フォステクスは、マグネシウムハウジング採用の密閉型ヘッドフォン「TH600」を参考展示。価格は明らかにしていないが、TH900(最上位モデル/15万円前後)よりもお手頃になる」とのこと。
TH900は木製ハウジングを採用し、1.5テスラの磁束密度を持つ磁気回路を搭載しているが、TH600の磁気回路は1テスラ強だという。音質面のフィックスはこれから行なうとしているが、現段階での試作機が会場で試聴できる。
なお、このTH600の試聴には32bit DAC搭載アンプの「HP-A8」だが、この製品は、近日行なわれるアップデートにより、新たにUSB入力からのDSD再生に対応することが明らかにされた。従来はSDカードに収めたDSDを再生できるというものだが、アップデートするとPC内にあるDSDファイルをUSB経由で再生できるようになるという。なお、DSD再生にはDoP(DSD over PCM)を採用する。
アップデータの公開方法については検討中とのことだが、SDカード経由でアップデート可能とのこと。なお、アップデート後に、前のファームに戻すこともできるという。
ハウジングにマグネシウムを採用 | ハウジングの内側 | HP-A8は、アップデートによりUSB入力からのDSD再生も可能になる |
■ zionote
X10(左)とX20(右) |
バランスド・アーマチュア(BA)ユニット搭載の「UBIQUO」カナル型イヤフォンや、「izo」のヘッドフォンアンプ「S1」などを展示。
UBIQUOの「X10」はシングル、「X20」はデュアルのBAユニットを搭載。価格は、X10が8,000円前後、X20が2万円前後で、いずれも年末に発表予定。そのほか、ケーブルが着脱できるモデル「X15」や、近日発表予定とする、純銀ハウジング採用のJL Acoustic製インナーイヤフォン「SE925」も展示している。
左からX10、X20、X15 | X15はケーブル着脱も可能 | 純銀ハウジング採用のSE925 |
izo製品では、24bit/192kHz対応のUSB DAC/DDC「M1-z」(11月1日発売/54,800円)を展示。izmo M1をベースにカスタムしたコラボレートモデルで、入力はUSBとステレオミニ、出力はステレオミニのヘッドフォン/ライン。そのほかにも、年内発売予定とするアナログ入力2系統のポータブルヘッドフォンアンプ「S1」を展示している。
BAB製のヘッドフォンアンプ「BAB3」(4万円前後)と「BAB1」(3万円前後)は、4時間充電で300時間再生という超低消費電力が特徴のアンプ。両製品の主な違いはパーツのグレードで、BAB3には処理性能の高いコントロールチップなどを採用している。
その他のブランドでは、取り扱いを検討中という「Smart Audio」のBluetooth対応オーディオ製品や、年内にUSB DDCを発売予定とする「Sarajida」の製品などを展示している。
M1-z(右)と、S1(左) | BAB3/1(外観は両機種共通) | Smart Audioの製品 |
■ イメーション/TDK
TH-ECMA600 |
イメーションは、「TDK Life on Record」の一磁極型のバランスドアーマチュアドライバ「MAドライバ」を搭載したイヤフォン「TH-ECMA600」を出展。11月下旬発売で、6,980円前後。今後の製品として、より大径のMAドライバも開発可能で、より音圧が高く、低域が豊かなモデルなども実現できるとしている。
スポーツ向けのイヤフォン新モデルも用意。耳掛け型の「CLEF-Active Reverse sound」(1,980円前後)と、「CLEF-Active」の耳掛け型(1,980円前後)/ネックバンド型(2,980円前後)を12月より発売する。
「CLEF-Active Reverse sound」は、音楽を聴きながら周囲の音も聞こえることが特徴。「CLEF-Active」の耳掛け型は、イヤーフック部が回転し、外れにくいという。ネックバンド型は、ゴーグルを着けるウインタースポーツなどでの利用を想定している。
スポーツ向けイヤフォン。左から「CLEF-Active Reverse sound」、「CLEF-Active」耳掛け型、ネックバンド型 | ネックバンド型の装着例 | 今後発売予定のBluetoothスピーカーも展示 |
■ ラディウス
W n°2のリニューアルモデル |
ラディウスは、2枚の振動板を搭載した「DDM方式」採用のカナル型イヤフォン「W n°2(ドブルベ ヌメロドゥ)」をリニューアルして発売。
ユニットは従来と共通だが、ケーブルの耐久性を高めたことが大きな変更点。低域が豊かな第1弾モデル「HP-TWF11」と、高域までのバランスも重視した上位モデル「HP-TWF21」をそれぞれリニューアルして、価格は従来と同じで、上位モデルが24,800円前後、下位モデルが15,800円前後。
そのほか、開発中のiPhone/iPodトランスポートや、ヘッドフォンアンプを展示。いずれも発売時期や価格は未定。トランスポート「RA-DTF21」は、iPhoneなどの16bit/44.1kHz音源をデジタルのまま取り出して、光/同軸デジタル出力可能な製品。アナログ入力やヘッドフォン出力も備える。
ヘッドフォンアンプは2機種で、据え置き型とポータブル型を用意。いずれも、新日本無線のオーディオプロセッサIC「NJM2707」を搭載し、圧縮音源で失われる高域の補間を行なえることが特徴となっている。据え置き型の「HP-SAF11K」は、オペアンプに「MUSES8920」を使用。LRの分離構造などで高音質化を図っている。また、ポータブル「HP-PAF11K」のアンプICは「NJU72801」を使用。電源技術の改良により、出力コンデンサを不要とし、低音再生を改善したという。
開発中のiPhone/iPodトランスポート | 据え置き型のヘッドフォンアンプ | ポータブルヘッドフォンアンプ |
■ アニソン用カスタムイヤフォン「萌音」など
萌音(Monet) |
カスタムイヤーモニター「FitEar」の新製品として、アニメソングの再生に適したというモデル「萌音」(Monet)を発表した須山歯研。今回のヘッドフォン祭で購入も可能となっていたこともあり、開場後すぐに多くの人が試聴に集まる人気ブースとなっていた。
「萌音」は、耳型をとって製作されるオーダーメイドのイヤフォンで、価格は157,500円(耳型採取は別料金)。3ウェイ3ユニット4ドライバー構成で、低域~中域用に2基、高域用に特性の異なる2基のドライバーを搭載したダブルウーファ仕様。「音楽鑑賞に求められる切れと音抜けの良さ、聴覚的にフラットで高解像度な周波数バランスを与えた」という。
前回までのヘッドフォン祭の展示では、「自分の耳に最適なカスタムイヤフォンを作れる」ことを中心に訴求していた同社だったが、今回、「萌音」の発表で「“アニソン用”がここまで話題になったことに驚いたが、その結果、幅広い人に関心を持ってもらえている」とのことだった。
主な特徴 | 右は萌音のセット内容。左は会場にあったクリアファイル | 多くの人が試聴に訪れていた |
ソニーは、ヘッドフォンのMDR-1シリーズや、ポータブルヘッドフォンアンプのPHA-1などの製品を多数展示して、試聴可能となっている | パイオニアは、12月発売のDJヘッドフォン「HDJ-2000」と「HDJ-1500」の新色ホワイトなどを展示 |
ヤマハは、密閉型ヘッドフォンの「HPH-PRO500」と「PRO300」を展示している |
オンズは、年末に発売予定とするMATRIX製のポータブルヘッドフォンアンプ「Matrix Mini-Portable」を展示。24bit/192kHz対応で、価格は52,500円前後 |
(2012年 10月 27日)
[AV Watch編集部 中林暁]