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東京五輪も見据え、TV多言語字幕やCM字幕への取り組み加速を提言。総務省検討会

 総務省は、「スマートテレビ時代における字幕等の在り方に関する検討会」の検討結果を3日に公表した。この中で、英語など多言語対応の実現や、字幕付きCMの本格導入などについて提言されている。

 同検討会は、獨協大学法学部の多賀谷一照教授を座長として1月~6月に開催。テレビ放送のデジタル化による字幕放送の増加や、社会のグローバル化、スマートテレビなど放送サービスの高度化、CMを含む放送番組に対するユニバーサルアクセスの確保といった環境変化や社会的要請を踏まえ、字幕の在り方について検討。その結果が取りまとめられ、3日に公表された。

多言語字幕サービス

 訪日外国人旅行者数の増加や、2020年の東京五輪開催などを受けて、外国人に対する情報サービスの提供が必要との見方から、スマートテレビと多言語翻訳システムを活用した多言語字幕サービスが有効としている。また、子供の外国語学習への活用も期待できるという。

 まずは正確性(翻訳内容/遅延)についてのベストエフォートを前提に、ユーザニーズに応じた柔軟なサービスとして早期実現を目指す。英語から取り組み、英語以外の言語にも拡大。ニュース番組のほか、スポーツ、文化、バラエティなどへの採用を見込んでおり、具体的なニーズを踏まえて検討する。

 その後、現在の障害者向け日本語字幕のような高い正確性を確保したサービスの導入を、今後の実証実験の結果やユーザニーズや翻訳技術の動向なども踏まえて検討する。サービスの実現に向け、NICT(情報通信研究機構)の多言語翻訳システムの精度向上を目指し、同システムを用いた実証実験を行なう。また、「多言語字幕サービスの実現に向けたロードマップ」の策定も提言している。

多言語翻訳システムを用いた実証実験の内容

字幕付きCM

 NHKとキー局は、2017年度に技術的に可能な番組の100%に字幕を付与するという目標を設定しており、現状で80~90%の水準まで到達。字幕番組は着実に増加している一方で、放送時間の2割に及ぶCMの字幕は現在トライアル段階であり、2010年以降にパナソニック、ライオン、花王など10社程度がトライアルを実施。2013年度は7番組程度での実施となっている。

 2013年9月に閣議決定された「障害者基本計画」で字幕放送の普及に関して新たに「字幕付きCM」が明記されたことを受けて、取り組みを加速。取り組み目標や達成時期を定めたロードマップの策定などを提言している。

字幕付きCMの対象枠のイメージ

 具体的には、現在のトライアルを早期に通常の取り扱いに移行することを目指し、現在の暫定的なガイドラインによる運用から、通常の「テレビCM素材搬入基準」に基づく運用に移行。CMが1社枠の番組から、複数社枠の番組にも順次拡大する。

 放送局設備は、改修時期に合わせて順次字幕付きCM対応のものに変更。民放連、広告業協会、広告主協会の連携の場として、字幕付きCM普及推進協議会(仮称)を設け、検討会終了後も課題の検討を行なう。

(中林暁)