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AMD、RadeonでHDMI 1.4ベースのHDR出力が可能に。PCゲームでもHDR表示へ
(2016/1/11 10:00)
AMDはCES 2016において、PCのGPU向けに新たなマクロアーキテクチャ「Polaris」を発表した。これに関連し、「HDR」や「可変フレームレート表示」といった、AV系のいくつかの要素技術もアップデートしている。
Polarisアーキテクチャを発表
Polarisアーキテクチャとは、3Dグラフィックスレンダリングを実践するGPUコア部分と、ディスプレイ出力、ビデオエンコード/デコードエンジンなどの周辺機能までをセットにしたマクロアーキテクチャだ。
Polarisは、「GPUコアが第四世代目のGCN1.3(1.0から数えるため)」「HDMI2.0a対応」「Display Port 1.3対応」「H.265による4K/60pエンコード/デコード対応」などへの対応をセットにしたアーキテクチャとなる。
なお、Polarisとは北極星のことで、今後、新しいマクロアーキテクチャを登場させるたびに新しい星の名前を与えるとしている。
PolarisアーキテクチャのGPUは、2016年中頃までに登場予定で、恐らく台湾で毎年6月に行なわれるCOMPUTEXの時期を想定しているものと思われる。ただし、より詳しい製品発表自体は春先に行なわれる可能性があるという。
ブースにはPolarisアーキテクチャベースのミドルレンジクラスGPUのサンプルチップを実動させ、競合のNVIDIA GeForce GTX 950と比較し、同程度のパフォーマンスで消費電力が半分から3分の2程度に抑えられていることを示すデモを行なっていた。
現行のRadeonもHDR表示に対応へ
Polarisアーキテクチャは、HDMI 2.0aに対応するため、搭載PCからハイダイナミックレンジ(HDR)映像をHDR対応テレビ/ディスプレイに出力できるようになる。
ブースでは、HDR映像出力のデモも公開。一般公開としては恐らく世界初となる、リアルタイムにHDRレンダリングされたCGを、LGの有機ELテレビ「55EF9500」でHDR表示していた。
もともと近年のゲームは、内部的にはHDRレンダリングを実践しており、最終表示段階で、フレーム単位の平均輝度から算出された階調マップで現行テレビ/ディスプレイ規格内で表示出来る階調に変換するトーンマッピングを実践している。HDR対応テレビ/ディスプレイへの出力に際しては、このトーンマッピング処理を省く(あるいは簡略化する)ことで直接表示させている。
AMDの担当者も「2016年以降に登場する多くのPCゲームタイトルは、HDR表示に対応してくることだろう」と述べていた。
デモをよく見ると、HDMI 2.0a対応のPolarisアーキテクチャのGPUではなく、2015年モデルの「Radeon R9 Fury X」で実践されていた。
話を聞くと、AMDは2016年内に、HDMI 1.4対応のRadeon GPUに対して、ドライバ更新のみでHDR出力に対応させる機能アップデートの計画を進めているという。
HDMI 2.0aどころか、HDMI 2.0対応でもないHDMI 1.4ベースのRadeonで、なぜそんなことが出来るのか。実は、HDMI 2.0xは4K/60p出力に対応させるための物理伝送速度の規格であり、HDR映像信号であることを示すメタデータの伝送は、HDMI 1.4の規格内で行えるのだ。
これにより、2015年モデル以前のHDMI 1.4対応Radeonでも、4K/60p伝送は出来ないが、、フルHD(1080p)解像度でのHDR映像出力が行なえるという。
AMD Free SyncがHDMI対応に
現在の映像信号は毎秒60コマないしは30コマ、24コマを基準で規格化されている。ここからずれたフレームレートの映像は、垂直同期オンの表示でカクついたり、あるいは垂直同期オフの表示では既に表示進行中の映像と新しく表示する映像のオーバーラップ表示が発生し、テアリングと呼ばれる分断表示となってしまったりする。
これを解消する技術が、AMDの「FreeSync」であり、NVIDIAも「G-SYNC」という技術を導入している。これらは映像の表示タイミングをGPU主導で変えられる仕組みを実装することで実現している。
しかし、その実現アプローチは、これまでFreeSyncもG-SYNCもDisplay Port経由に限定されていた。
そこでAMDは、FreeSyncをHDMI上で実装する新技術「AMD Free Sync with HDMI capability」を発表した。
これは、ディスプレイ側に搭載されるHDMIインターフェースチップに、HDMI規格の範囲内で実装が認められているメーカー拡張コマンド(オプションコマンド)の仕組みを実装し、DisplayPortでのFreeSyncと同等の機能を実現させるという。
そのため、既存のテレビ/ディスプレイ製品がFreeSync対応になるわけではない。今後登場してくる「AMD Free Sync with HDMI capability」機能対応のテレビ/ディスプレイとRadeon系GPUとの組み合わせで実現される。
ブースでは、昨年モデルの「Radeon R9 Nano」と、これから発売されるLGのフルHD、75Hzリフレッシュレート対応のゲーミングモニタ「27MP68」を組み合わせ、HDMIベースでのFreeSync効果が確認出来るようになっていた。
AMDとIntel、Razerの3社共同プロジェクトとは?
AMDとIntel、パソコンメーカーのRAZERによる、ユニークな3社共同プロジェクトも発表された。
RAZERはCESで、ノートパソコン「Razer Blade Stealth」を発表したが、この製品はシャープの12.5型のIGZO 4K液晶パネルを搭載し、薄型のUltra Bookカテゴリに分類されている。CPUにCore i7プロセッサを搭載するも、いわゆるゲーミングパソコン然としたスタイリングをしていない。重量は1.25kg、厚さはわずか13mmで、外観は普通のUltra Bookパソコンだ。
しかし、「Razer Blade Stealth」にはUSB-C形状のThunderbolt3端子が搭載されており、この端子を使用して、外付けのGPUボックスの「Razer Core」が接続することで、ゲーミングデスクトップPC並の性能を発揮出来るようになっている。
ブースに展示されていたデモ機では、GPUボックス「Razer Core」にはRADEON R9 Nanoが実装され、「Plants vs. Zombies GARDEN WARFARE 2」を4K解像度で実行していた。
GPUボックスとノートパソコン自体はThunderbolt3で接続されていることから、データ伝送速度は40Gbpsとなり、ノートパソコンからGPUボックスには描画コマンドが送られ、GPUボックスからノートパソコンにはレンダリングされた映像が送られてくることになる。
ノートパソコン側は、この外部GPUボックスから伝送されてきた映像をノートパソコンの液晶パネルに表示することになるが、GPUボックス側のディスプレイ出力端子と外部ディスプレイを接続すれば、そちらにも映像を出力することは出来る。
Thunderbolt3は給電機能もあるので、GPUボックスとノートパソコン本体が接続状態にある時には、ノートパソコンがこのThunderbolt3端子から充電まで出来る
。
ノートパソコン本体のRazer Blade Stealthは4Kモデルが1,599ドルで、CES会期中から発売が開始されている。外付けGPUボックス「Razer Core」については発売日・価格共に未定となっている。