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シャープ高橋社長退任へ。鴻海No.2が新社長に。本社は堺へ

 シャープは12日、2015年度(2015年4月~'16年3月)通期決算の発表とともに、鴻海精密工業グループとの戦略的提携について発表。6月23日の株主総会の選任決議を経て、鴻海からの払込完了後に、シャープ高橋興三社長が退任。現鴻海精密工業の副総裁の戴正呉(タイセイゴ)氏が新社長に就任する。

シャープ高橋興三社長

 鴻海との連携については。堺工場への本社移転や海外拠点集約、IoT、健康・環境事業の拡大を狙ったCEカンパニーの再編、人事制度の改革などを目指すという。戦略的提携は株主総会による承認取得後、6月30日までに完了予定。

 '15年度の売上高は前年比11.7%減の2兆4,615億円、営業利益はマイナス1,619億円、純利益はマイナス2,559億円。コンシューマ・エレクトロニクスやディスプレイデバイスの業績悪化が響き、営業損失が拡大した(前年度は480億円の赤字)。

'15年度連結業績

白物やビジネス系は好調。債務超過だが事業継続は可能

 2015年度実績のセグメント別では、コンシューマーエレクトロニクスが前年度比11.5%減の8.107億円、営業利益はマイナス218億円と赤字となった。

コンシューマーエレクトロニクスの業績

 国内4Kテレビや、ヘルシオが好調だが、欧州と米州のテレビ事業のブランドビジネス移行や中国における液晶テレビや白物家電売上減少が響き減収で、欧州撤退や販売対策費用の増加にともない、収益が悪化した。ただし、白物家電などは黒字基調で、今後、ロボホンやAQUOSココロビジョンプレーヤーなどのAIoT製品や、液晶テレビ、蚊取空清、新興国向けローカルフィット製品などを生み出し、「クラウドによる付加価値と利便性で、新たな家電を提案する」(高橋社長)とした。

 エネルギーソリューションは、売上高が前年度比42.1%減の1,568億円、営業利益はマイナス184億円。国内住宅、産業用の減少が響き大幅な減収となっている。

 ビジネスソリューションは、売上高が前年度比3.5%増の3,551億円、営業利益は同14.4%増の358億円と好調を維持。市場拡大が見込まれるロボティクス事業などの新規事業を強化する。

 電子デバイスは、スマートフォン向けや車載向けのカメラモジュールが好調で、売上高が前年度比5%増の4,900億円、営業利益は14億円。カメラモジュールのほか、カラー監視カメラ、新規センサーによる付加価値領域拡大を目指す。

 大きな損失を計上したのが、液晶などのディスプレイデバイス。売上高は前年度比14.9%減の7,715億円、営業利益はマイナス1,291億円。テレビ用大型液晶や中国用スマートフォン向け中小型液晶の販売が減少。さらに、「大手スマートフォン顧客」向けが第4四半期に落ち込んだことで、売上減に加え、工場の稼働調整などが発生し、赤字拡大した。

 今後は、PCやタブレット、車載などの中小型液晶領域での安定的な事業拡大に加え、フリーフォームやIGZOなどの高機能化、さらに鴻海との協力による顧客基盤の拡大などで収益改善を目指す。

ディスプレイデバイスの概要
将来のディスプレイデバイスポートフォリオ

 なお、多額の営業損失、当期純損失を計上した結果、単体及び連結ともに債務超過となったが、「金融機関からは期限の利益を喪失させることは検討していない旨の内諾を得られている」とのことで、「継続的な支援のもと、資金不足となるリスクを回避し、財務基盤の安定化を図ることができ、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められない」と説明。高橋社長も「各取引の方にしっかりと丁寧に説明していく」とした。また、6月末を目標としている鴻海グループとの提携と、資金の払込を持って債務超過は解消見込みとする。

本社は堺へ移転。鴻海のナンバー2がシャープ社長に

 鴻海との戦略的提携は最短で6月30日を目標にクロージング(契約)予定としており、シャープのブランドと革新的技術力、鴻海の世界最大の生産能力やグローバルな顧客基盤を活かしたシナジー創出に取り組むという。

鴻海との提携交渉は6月30日のクロージングを目指す

 現時点では独占禁止法等の審査もあり、細かな調整はできていないとのことだが、経営体制の最適化や、事業推進体制の改革、新人事制度の確立などに取り組む。

 経営体制の最適化については、本社の堺事務所への移転や、東京(芝浦)オフィスの幕張ビルへの一部移転、鴻海の海外拠点の活用などを想定。事業体制については、コンシューマーエレクトロニクスにおいて、IoT、健康・環境事業拡大を目指し、従来の5カンパニーから6カンパニー制に移行するとともに、それぞれのビジネスユニットの収益責任を明確化する。

提携効果の最大化、早期黒字化に向けた3つの構造改革

 人事制度については、契約締結後の早期に、管理職5%、一般社員2%の給与削減を廃止し、黒字化実現の暁には賞与を回復。また、魅力あるストックオプション制度導入や、職務に見合った処遇の導入などに取り組むとする。

 また、6月23日付けで水島繁光会長など取締役11名が退任。シャープ出身の取締役は、新任の野村勝明 副社長執行役員と、沖津雅浩執行役員、さらに現代表取締役 兼 専務執行役員の長谷川祥典氏の3名となる(高橋興三社長は鴻海による払込完了をもって退任)。

 新たな社外取締役として、元ソニー/ソニーモバイルで、現在楽天やLGディスプレイジャパンのコンサルタントを務める石田佳久氏、コニカミノルタ事業開発本部顧問の中谷一也氏の2名が6月23日に就任。鴻海からの払込完了後は、戴副総裁など鴻海系の取締役が4名就任する。9名の取締役のうち、社内の3名以外の6名については「鴻海の指名によるもの」という。

 高橋社長は、約3年間の任期の施策や経営責任について問われ、「その時に最善と思われる施策は打ち、なんとか自主再建を目指していた。しかし、11、12年度で9,000億の損失という数字はいかんせん大きかった。最終的な判断として自主再建は無理だと考えた」と説明。自身の任期についても「'14年度は黒字化したが、成功し続けなければいけない。一個失敗したら、それまでの成功はすべて吹き飛ぶ」と振り返った。

 次期経営陣に引き継ぐものについては、「前任者があれこれいうものではない。我々も(元社長の)奥田、片山からとやかく言われたことはない。自分のいまの判断が3カ月後も正しいとは限らない」と語り、新経営陣に一任する方針を説明。シャープの社長に就任予定の鴻海 戴副総裁については、「鴻海のナンバー2で、日本語も堪能で経験豊富」と語った。

シャープ新社長に就任予定の鴻海精密工業 戴正呉副総裁(4月2日の両社提携会見時)

(臼田勤哉)