剣をとって戦う白雪姫「スノーホワイト」

悪の女王様が実は主役!? な異色作


ディスコレ(Disc Collection)は、Blu-ray/DVD/CDなどから、ジャンルを問わずに選んだ作品のショートレビューコーナーです




■ 75年ぶりの「白雪姫」映画化

スノーホワイト ブルーレイ+DVDセット(デジタル・コピー付)
Film (c)2012 Universal Studios. All Rights Reserved. Artwork (c)2012 Universal Studios. All Rights Reserved.

 “戦う白雪姫”として制作された「スノーホワイト」は、グリム童話200周年を機に「これまでの白雪姫のイメージを覆した」という新たなストーリーで展開する物語。

 白雪姫を演じるのはクリステン・スチュワート、“悪いお妃”はシャーリーズ・セロン。製作のジョー・ロスなど、「アリス・イン・ワンダーランド」のスタッフも参加している。監督のルパート・サンダースはこの作品が長編デビューで、期待度は未知数。BD/DVD発表時点では、既に続編の製作も決定し、3部作構成を予定しているとのこと。誰もが知っているこの物語の映画化は、1937年のディズニーアニメ以来。どのようにアレンジしたのかが気になっていた作品だ。

 今回購入したBlu-ray版(GNXF-1023/4,190円)は3枚組で、BDとDVDの本編、デジタルコピーDVDがセットとなっている。BD本編は、約127分の劇場公開版に加え、約132分のエクステンデッド版も収録されている。このほかにも、DVD単品版(3,360円)や、Amazon限定で、アパレルブランドの「N.Natural Beauty Basic」とコラボレーションしたオリジナル鏡・ポーチ付きの500セットBD&DVD BOXや、スチールブック仕様も用意されている。

 スノーホワイト(クリステン・スチュワート)は、マグナス王と王妃に大切に育てられた外見も心も美しいプリンセス。しかし、母亡きあと、新しい王妃に迎えられたラヴェンナ(シャーリーズ・セロン)に父王を殺されたスノーホワイトは、国を乗っ取られた上、幼馴染のウィリアム王子(サム・クラフリン)とも離ればなれとなり、7年間の幽閉生活を送る。女王となったラヴェンナは魔法の鏡にいつも問いかけていた。「鏡よ、鏡。この世でいちばん美しいのは誰?」、鏡は答える「もちろん女王様です」。

 しかしある日、鏡はこう答えた「やがてあなたよりも美しい娘が現れます。その時、娘の心臓を手に入れれば、あなたの美しさと力は永遠のものとなるでしょう」。その娘がスノーホワイトであると知った女王は彼女を殺そうとするが、闇の森へ逃げられてしまう。女王は森に詳しいハンターのエリック(クリス・ヘムズワース)を雇い、彼女を捕らえようとする。だが、スノーホワイトはエリックと手を組み、危険をかわしながら、たくましく生きる能力を身につけていくのだった。女王はその後も、あの手この手でスノーホワイトを追跡、罪のない命と自然を破壊していく。やがてスノーホワイトは抵抗軍を組織し、女王を倒すべく進軍を開始する……。



■ 圧倒的な“ラスボス感”を放つ女王様

 アクションが見どころの作品ということもあり、始まってから間もなく大軍が入り乱れて戦闘シーンを展開。原作の印象を変えようという意図がよく伝わってくる。ラヴェンナ女王率いる闇の軍隊は、一見すると普通の兵士なのだが、倒されると黒い石ころのようになって粉々に砕け散る姿が不気味だ。映像全体としても暗いシーンが多く、この世界を覆っている陰鬱さを表している。

 そして、全編を通じて最も印象付けられるのは、鏡(液体金属のような“ミラーマン”)に向かって「この世で一番きれいなのは誰?」と問いかける悪いお妃・ラヴェンナの存在感の大きさ。若いエキスが足りなくなると、急にシワシワになる不安定な美貌なのだが、“完全体”の時の美しさは鳥肌もの。普段の感情を押し隠すような話し方や、無言で何かを考え込んでいる姿などもすべて様になっていて、これが悪い人物だとわかっていても、ついつい気になってしまう。製作側がどこまで意図しているのかは分からないが、結果として、王妃のダークな美しさも作品の大きな魅力の一つになっていて、「いま女王は何を考えているんだろう」と気になるシーンが何度もあった。

 前述した通り、「アリス・イン・ワンダーランド」のスタッフも参加している。「アリス~」は、登場キャラクターが個性的なのが魅力だが、最後まで救われない赤の女王の結末が悲惨すぎて、おとぎ話の悪者とはいえスッキリしないという印象を持っていた。スノーホワイトのラヴェンナ女王も、最初から最後まで“悪”そのものだが、弟とともに子供時代を振り返るシーンや、彼女の顔から時折見える、狂気の中のわずかな悲しみの部分に、少しずつ引き込まれてしまった。シャーリーズ・セロンの演技からは、嫉妬に燃える女性というだけではない感情がにじみ出ていて、監督や脚本家も、作っていくうちに女王に魅入られてしまったのではと思うほど。ちなみに、日本語吹替え版はラヴェンナを小雪が担当している。もし実写でリメイク版を作るなら、彼女の美しさは悪の女王にもハマりそうだが、吹替え版を聴いた率直な感想は「まずは字幕版で楽しむのがオススメ」。

 一方、「トワイライト」シリーズなどで知られるクリステン・スチュワート(吹替版は坂本真綾)が演じるスノーホワイトは、美しさの中に芯の強さを持っているのが伝わり、鎧をまとって剣で戦うシーンもカッコいいが、ラヴェンナ女王の強烈な存在感と比べてしまうと、描かれ方に物足りなさもあった。また、毒リンゴにやられてしまった姫にキスをする王子様も、登場シーンは多いが、印象的なところはほとんどなく(BDジャケットにも姿が見当たらない)、原作では目立たない狩人の方が重要な役割になっている。これは、映画の原題が「Snow White and the Huntsman」であることを知れば納得いくものであり、こうした予想外のストーリーが「新解釈」なのだろう。

 その他にも、“七人のこびと”などを含め、多くのキャラクターが出てくるが、やや人物を詰め込み過ぎな感があるのは残念。中盤には、日本の有名な姫が登場するアニメ映画をオマージュ(?)したようなキャラクターが出てくるが、このキャラの登場シーンとその後の展開があまりにそっくりで、まじめなシーンにも関わらず笑ってしまった。偶然の一致なのか真相は分からないが、そのシーンを知っている人は、興をそがれるかもしれない。続編の製作を前提に多くのキャラを出したのかもしれないが、個々の人柄などが分かるシーンがもっとあれば、物語にもより感情移入できたと思う。

 大まかに言えば、原作から遠く離れた内容にはなっていないが、CGをふんだんに盛り込んだアクションシーンなどで、最後まで飽きさせずに「新しい白雪姫」として楽しめる。それに加え、女王の悲しい心情を要所に挟むことで、大人が観ることを強く意識した作品に仕上がっている。続編の行方も気になるが、三部作の予定なら、前日譚のような話も検討されていることだろう。本作を観ていくうちに、ラヴェンナやその弟が今のような人になってしまった背景が気になったので、彼らの過去にフィーチャーした作品の制作を強く希望する。

「スノーホワイト」の評価ポイント(5段階)
物語展開の意外性★★★
アクションの迫力★★
悪の女王の存在感★★★★★

価格:4,190円
発売日:10月17日発売
品番:GNXF-1023
収録時間:本編127分(劇場版)、132分(エクステンデッド版)
映像フォーマット:MPEG-4 AVC
画面サイズ:シネスコ
音声:英語(DTS-HD MasterAudio 7.1ch)、日本語(DTS 5.1ch)
発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント

 

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(2012年 10月 30日)

[Reported by 中林暁]