ミニレビュー

Shure SE215を手軽にリケーブル。低価格なNOBUNAGA TRシリーズで音は変わる?

Shure「SE215」

 イヤフォンを使っていると、避けて通れないのがケーブルの断線だ。筆者はShureの「SE215」をここ2年ほど愛用しているが、最近になって左側から音が出たり出なくなったりするようになってしまった。SE215はMMCXコネクタを採用しており、ケーブルの交換が簡単にできるのだが、SEシリーズ用の純正交換ケーブル「EAC64」は実売価格8,000円前後と、同9,500円前後のSE215がもう一つ買えそうな価格のため、なかなかケーブル交換に踏み切れずにいた。

 そこで今回試したのは、WiseTechがNOBUNAGA Labsというブランドで販売している、低価格な「TRシリーズ」のケーブルだ。TRシリーズには、MMCX対応の「TR-SE」のほか、ゼンハイザーIE8/IE80用「TR-IE」と、Ultimate EarsのTriple Fi 10用「TR-UE」もラインナップする。

 MMCX対応モデルは、2014年3月発売の第1弾「TR-SE1」と、5月発売の第2弾「R-SE2」があり、プラグの形状やケーブルの外装などの仕様が異なっている。実売価格は、SE1が2,980円前後、SE2が4,500円前後だ。

TR-SE1
TR-SE2

 なお、注意点として、「TR-SE1/SE2」はいずれもMMCX対応だが、MMCX対応のイヤフォンでも機種によっては使用できない場合もあるという。メーカーが公開している対応機種は、Shure「SE846/SE535LTD/SE535/SE425/SE315/SE215/SE215SPE」、Ultimate Ears「UE900」、Westone「W10/20/30/40」と「UM Pro10/20/30/50」、JVCケンウッド「HA-FX850」となっている。

NOBUNAGA「TR-SE1/SE2」を試してみる

 最初に、TR-SE1とTR-SE2の違いを確認しておこう。大きな違いは、"プラグの形状"、"ケーブルの外装"、"耳掛け部のワイヤーの有無"の3点だ。TR-SE1は、45度に曲がった独特な形状のL型ステレオミニプラグを搭載し、ケーブルの外装は凹凸のあるビニールのような素材を採用している。耳掛け部は、純正ケーブルと同様に形状固定用のワイヤー入りだ。一方、TR-SE2は、プラグがストレート型で、ケーブルはタッチノイズを抑えた布巻き仕様。耳掛け部にワイヤーは入っておらず、柔らかく耳にフィットするようになっている。

 共通の仕様として、プラグ部分にはモールディング加工が施され、耐久性を向上している。また、MMCXコネクタにはワッシャーがついており、イヤフォンとの接続性を高めている。導体は銅で、48時間のクライオ処理(超低温処理)が施されている。

プラグ形状の比較。左から純正、SE1、SE2
ケーブルの比較。左から純正、SE1、SE2
耳掛け部の比較。左から純正、SE1、SE2
SE215のケーブルを外したところ

 早速、SE215から純正のケーブルを外し、ケーブルを取り替えてみる。ケーブルを外す際は、ケーブルを引っ張らずにコネクタ部分を持って下に引っ張る。外れにくい場合は、イヤフォンとコネクタの隙間に爪を引っ掛けると外しやすい。

 まずはTR-SE1の方を、イヤフォンとケーブルのL/R表示に気をつけて、"パチッ"と音が鳴るように取り付ける。SE1は純正よりも細いので、見た目が少し軽やかな印象に変わる。普段通り、iPhoneをズボンのポケットに入れて耳掛け方式(通称Shure掛け)で装着してみると、ケーブル長が純正品より40cmほど短いため、ケーブルがもたつかずスマートだ。純正のケーブルは162cmと、ポータブル用途としては少し使いにくい長さなので、TRシリーズの方が外では使いやすい。耳掛け部にはワイヤーが入っているため、純正品と同様にしっかりとした装着感が得られる。

TR-SE1をSE215に取り付けたところ
装着イメージ。ケーブルが短いほうがTR-SE1、長い方が純正ケーブル

 続いてTR-SE2を試してみる。TR-SE1はL型プラグや耳掛け部のワイヤーなど、純正ケーブルに近い仕様だったのに対し、こちらは仕様がかなり異なっている。Shure掛けすると、ワイヤーが入っていないぶん装着性は落ちるが、眼鏡のツルなどを避けて装着できるので、眼鏡がワイヤーに干渉して装着しずらいという不満を持っていた人などはTR-SE2の方が快適だろう。Shure掛けを想定していないMMCX対応イヤフォンにもこちらの方がマッチする。布巻きケーブルのためタッチノイズが少なく、適当に丸めてカバンにしまっても絡みにくいのもポイント。ケーブルはSE1よりも若干太めだ。

TR-SE2をSE215に取り付けたところ
眼鏡のツルに干渉せずにShure掛けできる

 iPhone 5に直接繋ぎ、ミュージックアプリで再生してみると、SE1/SE2とも純正ケーブルより低音が控えめで、スッキリとした印象。ケーブルの導体はどちらも銅を使用しており、2つのモデルで音質の差はほとんど感じない。ポール・サイモンの「僕とフリオと校庭で」はカッティングギターのリズムが楽しい曲だが、純正ケーブルで聴くとベースの低音がブンブンと存在感を出して、ギターが低音に隠れてしまう。ケーブルをTR-SE1/SE2に変えると、ベースが一歩下がって、ギターの軽やかなリズムが前に出てきたような見通しのいいバランスに変化する。傾向としてはフラットな方向に変わるので、アコースティックな曲や、音数が少なく1音1音を楽しむような曲と相性が良い。

 一方、低音の迫力を楽しみたいヒップホップや打ち込み系など、ジャンルによっては、ややあっさりし過ぎる場合もあるので、低音が強めなイヤフォンと組み合わせるのがいいだろう。劇的ではないが、ケーブルの違いによる音質の変化はしっかり感じられる。

お手頃価格で簡単リケーブル

 NOBUNAGAシリーズは、純正ケーブルの代わりに使用するのに十分な性能を備えた交換ケーブルだ。低価格ながら音質の変化も楽しめるので、自分好みの音を追求するリケーブル入門としてもよいだろう。

 どちらか1つを選ぶとすれば、個人的にはL型プラグとワイヤー入りのSE1の方が好みだ。しかし、SE2の布巻きケーブルのタッチノイズの少なさや絡まりにくさは魅力的だし、眼鏡使用者にとってはワイヤー無しの方が装着性が良いと感じるだろう。2つ買っても純正ケーブルより安いので、両方購入してみて自分にしっくりくる方を使うというのも手だ。

 ひとつ欲を言えば、今回試したSE215はブラックなので問題なかったが、SE215のクリアモデルや、それ以外の機種にも合わせやすいように、ケーブルカラーのバリエーションが欲しい。また、最近はカラフルなケーブルも増えているので、ファッション感覚でケーブルの色を変えるというのもありだと思う。今後のNOBUNAGAシリーズの展開に期待したい。

一條徹