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良アニメのアニソンをいい音で。ブレンド・Sやクジ砂OPなどのハイレゾ名曲

 年末のコミックマーケット、お正月が過ぎたら、すぐに冬のアニメ新番組が次々と始まる。4月/7月クールに続き、最終回を迎えた10月クールのアニメを、主題歌などのアニソンで振り返りたい。

 よいアニメはいつまでも私たちの心に残る。アニソンも聴く度にあのときの感動と興奮を呼び起こしてくれるものだ。音質はもちろん音楽としても魅力的だった楽曲を選んだ。

ブレンド・S OP「ぼなぺてぃーと♡S」(96kHz/24bit)

 喫茶店スティーレを舞台に個性豊かなキャラたちが織り成す倒錯的ワーキングコメディ。制作はA-1 Pictures。原作はまんがタイムきららキャラットにて連載中だ。芳文社の4コマ原作アニメはやはり登場キャラによるユニット形式の主題歌が嬉しい。本ナンバーも、メインキャラ3人によるユニット「ブレンド・A」が担当する。作編曲はy0c1eが担当。

ブレンド・A/ぼなぺてぃーと♡S

 まず、ミックスの仕上がりが秀逸であり、音の解像感や各パートの分離がすこぶる良い。ボーカルはクリアで歪み感がなく、96kHzならではの実在感は申し分ない。AメロからBメロ後半へと盛り上がる流れは、エレキギターを含めたダイナミクスが格別であり音量を上げてスピーカーで聴くとより楽しめる。打ち込み中心のポップチューンでも喧しく感じないのはエンジニアの匠の技があってこそだろう。音の粒子がきめ細かく所狭しと乱舞しているが、サウンドステージは整理され、ゴミゴミした感じはない。3人のキュートな歌声と中毒性のあるメロディに思う存分浸れるクオリティだ。

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・ブレンド・A/ぼなぺてぃーと♡S

クジラの子らは砂上に歌う OP「その未来へ」(96kHz/24bit)

 原作が月刊ミステリーボニータにて連載されている、J.C.STAFF制作のアニメ。少女漫画の域を超えた重厚な世界設定と多数の死者が出る戦闘シーンに目が行く一方、泥クジラで生きる人々が現実(真実)に抗い立ち上がっていく姿に心揺さぶられる傑作である。劇伴は堤博明が担当し、ベルリンと東京の2カ所で録音を敢行したという。ED主題歌の「ハシタイロ」は、テレビアニメ主題歌として業界でも極めて希少となる192kHz/32bit-floatネイティブでデジタル録音されており、音楽面でも気合いの入った作品だ。

RIRIKO/その未来へ

 主題歌は本作がデビューとなる新人・RIRIKOが作詞作曲ともに担当。アレンジには、楽曲プロデュースも手掛けた原田アツシが参加している。

 疾走感と力強さを前面に押し出したアコースティックサウンドで、ギターの鋭いカッティングのもさることながら、複数使われたパーカッションの効果が著しい。生命感や息吹といった泥クジラで暮らす人々を見事に表現している。RIRIKOのボーカルは、これがデビューとは思えないほど堂々と歌い上げており、空気感や情感のニュアンスをより丁寧に聴き取れるハイレゾ版はファンならずとも必聴と言いたいレベル。低域の密度感はリッチに、音場感はランティスらしい攻めのマスタリングで前後の広がりや高域のブライトさなど含めて楽しんで聴ける。RIRIKOの歌唱力と楽曲のセンスは、きっと多くの視聴者を驚かせたことだろう。“期待の新人”なんていう言葉には収まらないその才能は、ぜひマスタークオリティで堪能して欲しい。

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・RIRIKO/その未来へ

結城友奈は勇者である-勇者の章- ED「勇者たちのララバイ」(96kHz/24bit)

 Studio五組によるオリジナルテレビアニメの「結城友奈は勇者である」は、第1期が2014年に放送された。その後、劇場公開された「-鷲尾須美の章-」が過去編に当たり、同章をテレビ放送用に再構成した前半6話と第1期の続編となる「-勇者の章-」6話を合わせて第2期が放送された。小説版などのメディアミックスもここ数年に渡り展開されており、ファンにとっては待望の第2期となった。

讃州中学勇者部(照井春佳、三森すずこ、内山夕実、黒沢ともよ、長妻樹里、花澤香菜)/勇者たちのララバイ

 楽曲は、劇伴を担当したMONACAの岡部啓一が作曲、同氏と高橋邦幸が共同で編曲を手掛ける。壮大なオーケストラをバックに、何百年も続く“勇者システム”によって戦う少女たちを神々しい歌声がねぎらうようだ。歌唱は勇者部の6人であるが、作品世界を俯瞰したテイストで歌い上げているのも聴きどころ。

 おそらく劇伴と同一の編成と思われるフルオーケストラの伴奏は、実に豪華で荘厳なハーモニーを奏でる。ハイレゾならではの空間の奥行きや広がり、弦楽器の倍音の豊かさ、空気感、ボーカルの息づかいなど、トータルでとても音質がいい。一度ハイレゾを聴いてしまうと、ダウンサイジングされたCDなどの音源には戻れなくなるかもしれない。特に間奏終わりのソロパートは鳥肌が立った。配信中のサントラと合わせて楽しみたい。

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・讃州中学勇者部(照井春佳、三森すずこ、内山夕実、黒沢ともよ、長妻樹里、花澤香菜)/勇者たちのララバイ

ヤマノススメ おもいでプレゼント「おもいでクリエイターズ」(48kHz/24bit)

 '14年からテレビ放送された「ヤマノススメ」が、オリジナルストーリーを引っ提げてこの秋OVA化した。制作はエイトビット。あおいとひなたの幼き日の尊い絆を描き、ここなの相変わらずな健脚天使ぶりを見せ付けた今回のOVAは、来年放送のテレビアニメ第3期を期待させるに充分な良作。主題歌ではヤマノススメで初のハイレゾ版がリリースされた。なお、シングルの1曲目だけが配信されていたので、ご存じない方もいるかもしれない。テレビ放送はされていないが、特に良質の音源ということで紹介したい。

あおい(CV:井口裕香)、ひなた(CV:阿澄佳奈)/おもいでクリエイターズ

 一聴してかなり低めの音圧に驚くが、その分、ストリングスやバンドの躍動感は抜群で、アコースティック楽器の質感もナチュラルに感じられる。かといってマスタリングしていない2mixの味気無さとも違う。フィニッシュ作業をハイレゾ版のためにやり直していると思われる。あおいとひなたのユニゾンはクッキリと描かれ、伴奏との分離は良好。マイクで収録する生楽器がほとんどで音数も多いのだが、音場の混濁は最小限に抑えられストレスなく聴ける。

 48kHzながら、音場の広がりや楽器の実在感は一般的なアニソンの限界を突破してその先を行っているように感じた。フォーマットの違いによる音質の影響は確かにある。しかし、録音やミックスの手腕による音の違いはフォーマットの優劣を時に逆転させてしまう。本楽曲は、96kHzなどのアニソンでもなかなか及ばないオーディオ的な音の良さと音楽的な満足度も兼ね備えた奇跡のようなナンバーだ。

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・あおい(CV:井口裕香)、ひなた(CV:阿澄佳奈)/おもいでクリエイターズ

 上記のほか、最終話が放送された後でもハイレゾ版がリリースされていない作品もあるが、諦める必要は無い。例えばWake Up, Girls! 新章の楽曲は、従来のパターンから考えるとベスト盤などによるハイレゾ版が期待できる。また、リスナーの強い要望やハイレゾ市場の盛り上がりに応えて登場するケースもあるようだ。10月期では、「けいおん!」や「みなみけ」のハイレゾ化がトピックだった。我々アニソンファンが「ハイレゾ版、いいね」「ハイレゾ版が聴きたい」と声を上げ続けることが重要。なお、私は「Just Because!」のハイレゾ化を熱望している。


    【使用機材】
  • NAS「RockDiskNext」(アイ・オー・データ機器)
  • ユニバーサルプレーヤー(ネットワーク再生)「BDP-103DJP」(OPPO Digital Japan)
  • AVアンプ「AVR-X6300H」(デノン)
  • スピーカー「MENTOR2」(DALI)

橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト