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ネトフリ版『三体』は「三体世界」への入り口。改めて『三体』をおさらい
2024年3月21日 08:00
Netflixが大作SFドラマ『三体』を、本日3月21日から配信する。
筆者は一足先に全話視聴した。
一言で言えば「これもまた『三体』世界」。
特に、「三体って聞いたことあるけど、長そうだから原作を読んだことがない」という人におすすめだ。
それはどういうことなのか? 可能な限りネタバレを回避しつつ、ちょっと語ってみたい。
近年SF界最大のヒット。大河ドラマ『三体』とは
『三体』は、中国の作家・劉慈欣氏によるSF大河小説。中国近代史との関わりから始まり、そこから続く「三体人」との戦いによって変容していく世界を描いた物語で、全世界では2019年の段階で累計2,900万部以上が発行されている。
日本では2019年から刊行がスタート。現在のところ、本編である「地球往事三部作」こと『三体』『三体II 黒暗森林』『三体III 死神永生』、前日譚となる『三体0 球状閃電』、そして、宝樹氏による公式スピンオフ『三体X 観想之宙』と、5作7冊が日本でも読める。紙の書籍版については、第一部である『三体』が、2月から文庫版として刊行も始まった。
中国SFの持つ躍動感と、ある種の「ファーストコンタクト」を描く物語としての大河性が生み出す世界観が魅力的だ。個人的にも、近年一番ハマった作品群である。
大ヒット小説だけに、すでに色々な形で映像化が進んでいた。
中国ではアニメとドラマが制作され、特にドラマの方は、日本でも昨年10月からWOWOWで放送・配信がスタート。現在はWOWOWオンデマンドのほか、U-NEXT・Huluで視聴できる。
アニメの方は筆者も未視聴だが、中国版ドラマは観た。第一巻・『三体』を、忠実かつ丁寧にドラマ化しており、好感をもった。
ただ、丁寧すぎてちょっと長い。30話あるので、ちょっとテンポが良くないのだ。三体世界に浸りたいファンとしてはうれしい部分があるものの、三体入門者に「まずこれを見ろ」はちょっと厳しいかな……と感じた。
ちなみに、「30話」という長さは中国国内の要請から生まれているもので、日本やアメリカなどのドラマ事情とはちょっと異なる、という点に留意する必要はあるのだが。
ハマると面白いが長い、という話は原作にも言える。一冊一冊が結構重い。
この「重さ」が、『三体』の課題ではあるのだ。
物語をテンポよく大胆にアレンジ、それでも間違いなく『三体』世界
といったところで、(前置きが長かったが)いよいよNetflix版『三体』の話に入る。
Netflix版は、原作や中国語版とはかなり構成が違う。登場人物の多くが再構成されているためだ。
原作の第一巻では、まず主人公の汪淼(ワン・ミャオ)を軸に話が進んでいく。
だが、Netflix版では、舞台をイギリス・オックスフォードに移した上で、汪淼とそこに関わる科学者達をリミックス。オックスフォード大学で学んだ5人の友人たち(通称:オックスフォード・ファイブ)の物語として組み立てている。
「欧米化したの?」
そうなのだが、ちょっと違うのだ。
舞台がオックスフォードになったが、やはりこれは『三体』。原作では衝撃的だった、文化大革命に端を発する中国の姿、その歴史に翻弄される物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)を巡る物語などは存分に描かれる。
その上で、より世界中の人にわかりやすく再構成したのが「オックスフォード・ファイブ」を軸とした群像劇、という形だ。それぞれの立場や関係が描かれることで、『三体』世界に入り込みやすくなっている。
今回公開される「シーズン1」に当たる部分は8話。これで、中国版ドラマよりも先の『三体II』まで踏み込んだところまでが描かれる。だから相当にテンポはいい。
科学者はなぜ次々に自殺しているのか?
その背後に見え隠れする「組織」とは?
そして、突如送り付けられてくる、現在の技術水準をはるかに超えた「VRデバイス」。そこで展開されるゲームの狙いとは?
まるでバラバラに思えた事象が次々とつながっていき、その中でオックスフォード・ファイブの人生は大きな影響を受けていく。
「ゲーム・オブ・スローンズ」で制作の核であるショーランナーを務めたデヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスが本作でも制作を担当、実に「それらしい」ジェットコースター感ある作品に仕上がった。1話のダイナミズムを見ると、「なるほどこれは、ゲーム・オブ・スローンズ風味の『三体』世界だ」と納得する。
あまりネタバレはしたくないが、ぜひこの作品の「続き」が観たい。オリジナルから生まれた「ネトフリ版『三体』世界」がどのような流れになっていくのか、もっと知りたいと感じる。