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劇場に集合! 全編IMAX撮影『デューン2』は“画音最高”のド迫力&爽快復讐ムービーだ

『デューン 砂の惑星PART2』
公開日:3月15日(金)全国公開(3/8(金)、9(土)、10(日)3日間限定先行上映)
配給:ワーナー・ブラザース映画

「映画館で観なければもったいない」、なんてレベルじゃない。

今日(3月8日)から3日間限定(IMAX・DolbyCinemaなど60館のみ)、そして翌週の3月15日から全国劇場で公開される映画『デューン 砂の惑星PART2』(デューン2)を一足先に試写で体験したが、“大画面鑑賞”がこれほどドハマりした映画は久々だ。

もちろん貴方が、SF映画好きとか、オーディオ・ビジュアルファンならば、問答無用で映画館に全員集合。「ストーリーがややこしそう」「長すぎ」「“見放題”まで待ち」なんて考えている方も、騙されたと思って映画館に行って“砂の惑星”へ降り立つことを激しくお薦めしたい。なんせ『デューン2』は、アタマを空っぽにして楽しめるド迫力の爽快復讐ムービーに仕上がっているのだから。

映画『デューン 砂の惑星PART2』スペシャル予告 2024年3月15日(金)公開

“デューン”ってなんですか

“デューン”について、ザックリ説明しておこう。なお、ここからは前作『DUNE/デューン 砂の惑星』(デューン1)、そして最新作『デューン2』のネタバレも含まれるので、何の情報も入れずに楽しみたいというピュア男とピュア子さんはご注意いただきたい。

ポールとフレメンの戦士・チャニ
(c) 2024 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation.
Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories.

『デューン1』『デューン2』は、米国の作家フランク・ハーバードの同名小説(「デューン/砂の惑星」)を、2部作で描いたSF映画だ。

“未来が視える”能力を持つ青年ポール・アトレイデスが主人公の物語となっており、中毒性がある一方で人間の精神を拡張させる“香料(スパイス)”が唯一採掘できる砂の惑星デューンをめぐり、宇宙帝国の皇帝、政治を裏で操る女性組織、帝国に属する領家達、そして砂の惑星の先住民らの攻防が繰り広げられる。

ポール
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原作小説が発表されたのは、今から半世紀以上も前の1965年。優れたSF文学に与えられるネビュラ賞やヒューゴー賞にも輝いたほか、小説で描かれている世界の文化や社会、生態などは、『スター・ウォーズ』や『風の谷のナウシカ』、『アバター』など数多くの作品にも影響を与えたと言われている。映像化も試みられ、これまでにホドロフスキー版(未完)やデイヴィッド・リンチ版(1984)、テレビシリーズ版(2000)が作られた。

今回の“新”デューンで監督を務めたのは、『ボーダーライン』や『メッセージ』、『ブレードランナー 2049』を手掛けたドゥニ・ヴィルヌーヴ。壮大な世界観ゆえ“原作の完全な映像化は不可能”と言われ続けてきた物語だが、2021年製作の『デューン1』は4億ドルを超える全世界興行収入を記録し、さらに第94回アカデミー賞においても「作曲」「音響」「美術」「撮影」「視覚効果」「編集」の6部門を獲得するなど高い評価を得た。

主人公ポールを演じるティモシー・シャラメとドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
(c) 2024 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

今月1日から各国で順次公開されている続編『デューン2』も、米国の初日3日間のオープニング興行収入が前作約2倍の8,150万ドル、全世界累計でもすでに1億7,850万ドル(約267億9100万円)を記録。主要なレビューサイトの反応もよく、前作超えのヒットも期待されている。

やられたら倍返し。息子と母アゲアゲの復讐劇

最新作『デューン2』は、主人公ポール(ティモシー・シャラメ)とその母ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)が先住民フレメンらと行動を共にするところで終わった前作の続きから始まる。

ジェシカ
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前作では、皇帝の命令で砂の惑星に移住したポールのアトレイデス家が、長年の宿敵であるハルコンネン家の策略にはまり、一夜の奇襲攻撃で父や仲間が全滅するというややダウナーな展開だったが、デューン2は一転。

ポールはフレメンらから砂漠での戦い方や生きる術、砂虫操縦を学び、戦士そして指導者へとみるみる成長。そして、勇敢な戦士スティルガー(ハビエル・バルデム)や美しき戦士チャニ(ゼンデイヤ)らと共に採取機を破壊するなどして、ハルコンネンの香料採掘事業を妨害。男爵(ステラン・スカルスガルド)とその甥ラッバーン(デイブ・バウティスタ)をじわじわと疲弊させてゆく。

スティルガー
チャニ
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また、ポールは戦闘の混乱で行方が分からなくなっていたアトレイデス軍司令官ガーニイ(ジョジュ・ブローリン)とも再開を果たし、軍が隠していたリーサルウェポン92基をゲット。そして砂虫液で完全にキメたポール(母も!)はフレメン・砂虫軍団を引き連れ、皇帝とハルコンネンらに復讐するべく殴り込みをかける――まさに、大逆転のアゲアゲ爽快サクセスストーリーが展開するのだ。

おまけに、新登場のキャラクター達も、インパクト大の曲者ぞろい。

ラッバーンの弟で、ポールを抹殺するべく砂の惑星へ降り立つイっちゃってるフェイド・ラウサ(『エルヴィス』のオースティン・バトラー)。そのフェイドに近づき種を宿すレディ・マーゴット(『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のレア・セドゥ)。宇宙を牛耳る嫉妬深き皇帝シャッダム四世(『ディア・ハンター』のクリストファー・ウォーケン)。そして、皇帝の娘でポールの妻となる皇女イルーラン(『ブラック・ウィドウ』のフローレンス・ピュー)など、濃ゆい面々がこれでもかと追加投入され、片時も目を離すことができない。

フェイド・ラウサとレディ・マーゴット
皇女イルーラン
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画音も最高。唯一の残念ポイントは“PART2”止まりなこと

そんなヒーロー・ヒロイン級の豪華キャストや欲望渦巻く展開も見どころなのだが、筆者が最も惹かれたのは、IMAXフォーマットを最大限に活かした映像描写だ。

『デューン1』、そして今回の『デューン2』は、IMAX劇場での“究極の映画体験”を目指した「Filmed for IMAX」認定の作品である。

“Filmed”とは言っても、70mmのIMAXフィルムカメラが使われているわけではなく、IMAX社が認定した“高解像・大判センサー搭載のデジタルシネマカメラ”を使って、IMAXデジタルのノーマルアスペクト比である「1.9:1」や、フィルム規格と同じフルサイズアスペクト比「1.43:1」の映像を生み出している。

撮影風景
(c) 2024 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

試写が行なわれた東京・池袋のグランドシネマサンシャインは、1.43:1のフルサイズ投影が可能なIMAX劇場の1つ。映画冒頭、縦18.9m×横25.8mの巨大スクリーンにフルサイズのカットが流れるや、観ている者を一瞬で砂の惑星へと引きずり込む。

思えば前作は、会話などのドラマパートは2.39:1のシネスコサイズで撮影されており、一部の象徴的なシーン(例えば、調印式やアラキスへの着艦、羽ばたき機での飛行、ハルコンネン軍の襲撃など)でのみIMAXアスペクト比が使われていた。

しかし『デューン2』は全編がIMAXアスペクト比。つまりシネスコシーンが登場せず、1.9:1と1.43:1の映像だけで構成されている。画面の切り替えや素早いパンを抑え、ひとつひとつのシーンをじっくりと俯瞰で映すショットが多いのも、上下に広い縦長アスペクト比での大画面鑑賞を想定してのことと思われる。

しかも、前述した通り『デューン2』は“復讐劇”。前作のアクションパートとIMAXアスペクト比の少なさにしょんぼりだったIMAXラバーも、今回のウルトラ重機爆破、砂虫操縦、白黒スタジアムでの決闘、総攻撃によるタブール破壊、クライマックスでの大戦などなど、眼前に襲い掛かる大スペクタクルシーンの連続にアドレナリン大噴出は必至。筆者同様、ニヤニヤが止まらないはずだ。

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更に興奮ポイントを付けたすと、フルサイズのシーンを含め画質が上がっている。前作はシネスコ→フルサイズに切り替わるや上下に拡張された画力に圧倒される一方で「ちょっと画が甘いな」と感じる場面も散見された。

しかし今回は心配御無用。1カット1カットが高解像度スチルのような鮮明さになっており、たとえフルサイズのシーンに切り替わっても画に甘さが見られない。顔面どアップのカットも肌の階調がリアルで、周辺のボケもとろけるような滑らかさがある。撮影監督のグレイグ・フレイザーによれば、『デューン2』ではARRIの大判カメラ「ALEXA 65 IMAX」(6.5K)をメインに使ったと語っており、大画面投影にも耐えうる、最新デジタルシネマカメラの威力が発揮されたと思われる。

撮影風景
皇女イルーラン
(c) 2024 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation.
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映像のクオリティもさることながら、サウンドの出来も秀逸だ。

中でも、砂の中を「ゴゴゴゴゴゴ……」と高速で移動しながら近づいてくる巨大な砂虫の低い音は、まるで大きな地震でもやってきたかのような空気の振動で、座席と共に身体がビリビリと震える。

そして砂虫の背中にポールがライドオンするシーンでは、場内が砂嵐のような轟音に包まれ、強い風と一緒に「バチッバチッバチッバチッ」と細かい砂が顔に吹き付けてくるかのような錯覚に陥った。ビデオ化された際には、地鳴りのような砂虫の低音や砂虫操縦時の移動音をどれだけ恐ろしくかつ迫力あるサウンドとして再現できるか、システムの実力を試す素材としても活用できそうだ。

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『デューン2』の残念ポイントを挙げるとすれば、シリーズがいまのところ“PART2止まり”になっていることくらいだろう。鑑賞後、まだ続きが見たいと考えるファンは筆者だけではないはず。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の次回作は、アーサー・C・クラークのSF小説「宇宙のランデヴー」との話もあるが、是非同じキャスト・スタッフで『デューン3』を作って欲しい。

ちなみに、筆者が興奮したIMAXアスペクト映像が楽しめるのは、全国50カ所のIMAX劇場だけとなる。3面投映のScreen Xを除く、その他の劇場に関しては、横長の2.39:1のシネスコサイズでの上映だ。

IMAX劇場(池袋、吹田除く)での表示サイズ(1.9:1)と、シネスコでの表示サイズ(青色囲み)の比較
池袋と吹田のIMAX劇場での表示サイズ(一部シーンで最大1.43:1)と、シネスコの比較

個人的には4K/HDRとAtmosが楽しめるDolby Cinemaも気になるものの、既発のUHD BD『デューン1』は“シネスコ”のVision/Atmosデータで、IMAXアスペクト映像は未収録となっている。

映像と音声にこだわるAV Watch読者なら、這ってでも映画館での大画面鑑賞はマスト。そしてできれば近場のIMAX劇場、欲を言えば、1.43:1アスペクト映像の投影が可能な「グランドシネマサンシャイン」(東京・池袋)か「109シネマズ 大阪エキスポシティ」(大阪・吹田)でデューンしてほしい。もちろん筆者も残った有休を使い、池袋の特等席で香料吸引&おかわりデューンするつもりだ。

阿部邦弘