西田宗千佳のRandomTracking
開発陣に聞くPS Vita版「torne」のカタチ
タッチでもボタンでも操作。「torne PS Vita」
(2012/12/19 10:00)
この記事の公開翌日の12月20日に、SCEがPlaystation Vita向けテレビ視聴ソフト「torne Playstation Vita」(以下torne Vita)を発売する。価格は800円('13年2月27日までは無料)。同社が8月に発売したテレビ録画ハードウエア「nasne」と連携して動き、Vitaで録画番組やリアルタイムのテレビ視聴を実現するソフトになる。
その名でおわかりの通り、このソフトは、PS3向けのテレビ視聴ソフト「torne」のVita版にあたる。企画/開発にも、PS3版と同じスタッフがあたっている。
ではどこまでPS3版に近づいているのだろうか? 開発陣に聞いた。今回ご登場いただいたのは、ソニー・コンピュータエンタテインメント ソフトウェアソリューション開発部 次長の石塚健作氏と、JAPANスタジオ 制作部ゲームデザイングループ クリエイティブディレクターの西沢学氏だ。
ボタンでもいつも通り、タッチでも思った通り
まずなにより、torne Vitaの画面を見ていただきたい。率直に言って、PS3版との差がほとんどわからない。取材時には、「画面だけ見るとリモートプレイに見えますね」というジョークが出たほどだ。
だがもちろん、これはリモートプレイではない。
西沢:ぱっと見同じなんですけれど、絵はVitaに合わせて全部作り替えてあります。操作は、基本的には、デュアルショックをそのまま持っていただいたような感じで使えると思います。ボタンの機能もそのままです。
そして、Vitaですから、もちろんタッチに対応しています。ピンチイン・ピンチアウトで拡大縮小もできますし、タップしてそのまま予約操作もできるようになっています。すべての操作が、キーとタッチで使えるようになっているんです。
石塚:元々PS3では、番組表の拡大時に、4段階にフォントを変えて対処していました。しかし、今回Vitaでは「無段階」としました。そのため、フォントのレンダリングなども全部変えています。Vitaで行なうのはなかなか厳しいのですが、PS3での発売以来のノウハウの積み重ねで可能になっている、とご理解ください。
西沢:いままで通りのメニューでもタッチで操作ができます。タッチ用にカスタマイズしたメニューを出していまして……。キーで行くとキーに合わせた、PS3と同じものが出るようになっています。
実は画面の右下端に「△ボタン」が、左下端に「×ボタン」が割り当てられているんです。これで、ボタンを使わずに操作することもできます。そして上が「R2」ボタンと同じ役割、いわゆる「シフトキー操作」になります。音量調整などに使ってください。
西沢:ちょっとしたおまけなんですが……。一番下などに移動しているカーソルを、ワンアクションで「トップに戻す」という操作、がありますよね。PS3版には。L3の押し込みで実現していたのですが。Vitaの場合には、アナログスティックの押し込みがなく、同じ操作ができません。
そこでえいやっとVitaを揺らしてもらうと、トップに移ります。振って向こうへやる、という感覚でしょうか。こうやって地味に本体の機能を使いこなして、特殊な機能に対応しています。ただし、バックタッチについては向いていないかな、ということで、今回は使用していません。
石塚:ボタンの数が微妙に、PS3とVitaでは違うんですよ。どうやって実現するかが大変で……。実は、部分的なタッチ対応にしよう、という話もあったんです。そういう落としどころもあったんですが、中途半端に出来るとイライラする、ということで全部。
西沢:だいたい似ているんですが、完全に同じ(操作)にしようとすると違う、という。なので、泣きながら、全部タッチに(笑)
石塚:いままで使っていた方はいままで通り、携帯などでタッチになれた方にはタッチで、と両方で使えるようにしています。両方をどうやって満足させるかを、必死にやって、やっちゃった、と……。
西沢:しっかり両手で握った場合には、やっぱりキーの方が使いやすいと思うんですよ。しかし、Vitaは卓上のテレビにもなったりします。例えばクレードルの上に置いて充電しながら使うような時には、片手でタッチで操作した方が使いやすくなります。こういったように、携帯機の操作に合わせた使い勝手を実現しています。
やっぱり、torneの良さはスピード感なんですよ。そこは石塚が凄くがんばっているところかと思うのですが。おおむね維持されているのではないかと思うのですが。
当然のことだが、動作速度もPS3版とまったく遜色ない。nasneからの映像呼び出しについては、むしろ若干、Vita版の方が素早く感じるほどだ。
石塚:PS3のものに比べ、システム的な最適化をしてもらっています。DTCP-IPの認証回りを最適化したので、その分速いかもしれません。
結論から言えば、「見る」という面において、PS3版とVita版の間での差異はきわめて小さい。だが、誤解してほしくない点が1つ、機能として搭載されていないものが3つある。
石塚:一番大きいのは「黒い箱」つまりPS3用の地デジチューナとはつながらない、ということです。torne Playstation Vitaはnasne用。PS3を待ち受け状態にして、torne for Vitaから視聴する機能はない、という点は強調させていただきたいです。一番、お客様に誤解されると困るな、と思っているところはそこです。PS3には「DLNAサーバーになって待ち受ける」機能がないので、PS3版torneの地デジチューナで録画した番組を、nasneで見る方法がないのです。
西沢:それから、Twitter連携の「ライブ機能」は入っていないです。現状では対応していません。我々も入れたい願望はあるのですが、今入れるとリスクが高いかな、ということで機能としてはドロップしています。
また、アプリ内ストアである「トルネ屋」はあるのですが、今のところは、商品がのっかっていません(笑) 今後のために載せた、というお話です。スキンについても、やりたい、という意向はあるのですが……。
石塚:そこはご要望次第ですね。どこまでできるのか、ちょっと詰めようとしています。もうちょっとこうしたい、ああしたい、という機能面での考えもあるので、どこからやるか、ということではあるのですが。
西沢:それから、Vita版は「トロフィー」に対応していません。制作側としてはいれたかったんですが。入れる条件がPS3とは異なっていて、モバイル機器的な要素が必要で、もう少しゲーム的なものにするつもりでした。しかし、諸般の事情があって入らなかったんです。
解像度が「480p」である理由。PS3版にはまだ秘密があった!
やはり気になるのは「画質」だ。torne Vitaでは、nasneからの映像をすべて「480p」(640×480ドット/プログレッシブ)で再生する。数字だけを見ると、HD全盛の今、足りないように思われるかも知れない。だが、ここにはSCE側の考えもある。
石塚:解像度については、色々試してみました。しかし、Wi-Fi(無線LAN)の制約が一番大きいんです。一番いい環境であれば、(HD解像度でも)問題なく表示できるかもしれません。しかし、PS3の時にも「Wi-Fiでなく有線を推奨」としていましたが、ちょっと厳しいかな、という感触になりました。
元々nasneの方では、Vitaで使うことを考えて480p/SDを用意してもらっていました。画質を評価すると、確かにHDの方がいいんですけれど、ユーザーの体験としてはSD、この辺にするのがいいのかな、という話になりました。
この「ユーザーの体験」という点には、torneチームの考える「画質のあり方」が存在する。
石塚:まず、これはいままでお話していなかったことなんですが……。PS3版のことなんですが、PS3版torneの地デジチューナによる「3倍モード」が、横解像度が720ドットしかないんです。これはずーっと内緒にしていました。ビットレートは下げたい。でも、画質は落としたくない。
そういうことで、我々の中で悩んで、「720×1080i」という、変態的な解像度を作りました。横だと意外とわからないんですよ。
画角を大きくすれば大きくするほど、データ量は大きくなっていきます。面積が増えるのでビットレートがすごく必要なんですね。torneの場合最初の段階から、いわゆる超解像をやっている部隊がいたので相談をして、「720×1,080で、少なくともアニメはわからないようにできないか」という話を詰めてきたんです。改めて見ていただいても、それはほとんどわからないと思いますよ。早送りなどをすると、一瞬だけ720ドットの絵が見えることもありますが。早送り中には一瞬だけ、アップコンバートを切っている瞬間がありますので。
なので、torneの場合、ビットレートは低いんですが、すごくきれいな絵が出るんですね。
なぜそれを公表してこなかったかというと、当時BDレコーダが「フル解像度でいかにビットレートを低くするか」という方向性に行っていたからです。我々は逆行していたんです。
でも、それはお客様の体験を向上させるためにやっていたこと。数字をわざわざ見せる必要はないだろう、という判断だったんです。数字を見せると比較されて「なんだこちらの方が低いのか」と言われてしまう。なので「3倍モード」と表記したのです。逆に言えば、BDレコーダと競合しないで独自の場所にいくように企画したのがtorne、でもあったので。そのために「ビットレート競争」に乗らないでいられた、ということはあります。だからビットレートなどの数字は出さなかったんですが。
Vitaの場合も同様です。解像度は低くともビットレートを十分に割り当てて、よりきれいに、という考え方はあると思います。現状ではどこまでのビットレートでどの解像度でいけるのか、ということが検証しきれていないので、HD化やさらなる快適化は、今後の課題としています。
石塚氏のいうやり方には、筆者も同意する。解像感はもちろん大切だが、解像度だけを上げてビットレートがそのままであれば、実際にはノイズが増えて解像「感」は上がらない。だからこそ、nasneとtorne Vitaでは「480p」が採用されているのだ。
石塚:nasne側の変更で720pが出るようにならないのか、という話が出ることは想定していまして、我々も色々考えました。検討はしております。今回はまだ確約ができないですけれど、もっときれいな画質で見たいという要求について、どのくらいのビットレートをどのくらいの画角で実現すればいいのか、Vitaや他のタブレット、携帯電話も含め、nasneのファームウエアチームと詰めているところです。
しかし、なかなか無線の速度というところが……。まだ11g(IEEE 802.11g。現在の主流製品はより高速のIEEE 802.11n)の環境が多いんですよ。(HDにするには)まだちょっと早いかな……と。
もう一つ疑問がある。それはVitaならではのことだ。Vitaのディスプレイの縦解像度は544ドット。この数、もしくは540ドット程度に最適化して、できればドットバイドットで表示してやれば、480pよりもさらに画質が向上する可能性がある。石塚氏もそれを認める。だが、それはできなかった。
石塚:nasneについては、「そのデータをDLNAに流せるのか」、という話もあるんです。
例えば、先ほど挙げた「720×1,080ドット」というtorne3倍モードの解像度は、DLNAに規定がないんですよ。nasne側だけを考えるなら、変わった解像度を流してもいいんですけれど、そうするとそれはDLNAの規格上にないので、「汎用の機械で使えます」と言えなくなる可能性がありました。ですので、一般的な解像度を採用し、あとはクライアント側の表示能力に依存、としています。
「持ち出し」速度は最大で3倍速。ゲーム中でも裏で「持ち出し」が動く!
「視聴」以上にもう一つ、torne Vitaにとって重要な機能が「持ち出し」だ。nasneで録画された番組を、Wi-Fi経由でVitaへと転送し、メモリーカード内に蓄積した上で、外出先などで見る機能である。以前より「ウケトルネ」というアプリが公開されていたが、このアプリはPS3やソニーのBDレコーダを使って映像を持ち出せるものだったが、ケーブルでの接続が必要だった。しかしtorne Vitaは、Wi-Fi接続となるため、ケーブルは不要になるし、nasneとVitaだけがあればいい。
石塚:「持ち出し」には、ウケトルネと同じように、Vitaのメモリーカード内に作った「専用の領域」への保存が必要となります。ウケトルネでこれまでに作ったものでも結構ですが、torne Vitaからも作れますので、torne内で作業を完結させられます。
ウケトルネで使っていたのはEMPRという、ウォークマンなどで使っているMP4形式に暗号化をかけているものです。それだとできないこともあるので、今回、torneでは、DTCP-IPで持ってきた後に独自暗号化をかける、という方式にしています。
こうすると、ほぼほぼnasneの中にあるコンテンツが、そのままtorneというアプリケーションの中で使えることになります。
従来のウケトルネで転送した映像も、このリストに入ってきます。普通に見られますし、サムネイルも表示するようにしました。しかし、サムネイルの位置は変えられないですし、番組詳細情報は全部なくなっていますし、再生をブーストするようなメタデータがないので、再生していると、nasneから転送したものに比べ、「あれ?」と思うタイミングがあるかもしれません。
また、Vita OSの「ビデオ」からは、nasneから転送した映像は見られません。どうしても、専用の形式になってしまったので……。そこも、汎用性を高めるのか、専用データになっても操作性を高めるのか、というせめぎ合いはあったのですが、操作性を重視させていただきました。
西沢:nasneに入っているコンテンツとVitaに入っているコンテンツが、同じように見えます。「再生」機能の中で、タブを切り換えて使います。nasne側にあるものも、「持ち出し」したものも、まったく同じデータですから、見た目は変わらないですね。
石塚:まさに同じデータをもってきているので、家の中でも電車の中でも同じ体験が、ものすごく素早い操作でできますね。番組詳細情報だとか、音声だとかについても。いわゆる「ストレージが違う」くらいの感覚で捉えてもらえれば。
気になるのは転送速度だ。これはどのくらいになるのだろうか。
石塚:現状では、2倍速から3倍速。3倍いくとうれしい、くらいですね。
西沢:映像の半分の長さより短いくらいの時間で転送できる、というところでしょうか。
石塚:この速度は、ほぼWi-Fiの転送速度です。中で暗号をかけているのですが、律速していくのはWi-Fiのスピードですので、速い環境ならば速く、という感じです。
システム側に話をして、もっと速くならないか努力はしているのですが……。ただし、転送したい映像を選んでから、まとめて転送をすることもできます。クレードルに載せて、充電しながら転送することもできますから、出張前の夜に転送をかけて、後は寝ている間に終了、といった形でもOKです。
ちなみに、ここで表示される「転送終了までの時間」は、Wi-Fiの理論値などから出した「仮想の値」ではない、という。
石塚:いろんな条件から計測して、利用している環境の状況を把握し、そこから決めています。ご自宅で使っていただくと、その環境に近い数字になります。使っているうちに、だんだん近い数字になっていきます。あくまで目安としての数字、ではありますが。
どうしても快適にしたいなら、Wi-FiをIEEE 802.11nにしておく、ということが重要になりそうだ。
なお「持ち出し」についてはもう一つ重要なことがある。torne Vitaは「ゲームと同時に動く」ようになっているのだ。
西沢:書き出している時に、一旦torneを終了することもできます。VitaOSの上で平行起動しますので、ノーティフィケーションが出て、ダウンロードが継続します。また一応、ゲームの裏でも同時動作しますよ。
石塚:そこはシステムとだいぶ詰めたんですが、書き出しているところについては、ゲームが使っていない部分を使って動いています。PS3の時にはCellを使い、ゲームの邪魔をしないように動いていたわけですが、Vitaはそもそもゲームに影響を与えないように動きます。基本的には大丈夫です。I/Oがかち合うことはあるでしょうが、基本そのくらいです。
ですが、ゲームの中にはWi-Fiを止めて動作するものもあります。例えば、Vita用の「初音ミク -Project DIVA- f」などが代表です。その時には、書き出しが一時的に停止します。ネットワーク対応しているゲームであれば、問題なくできます。
動作という点では、Vitaをサスペンドした後の挙動の早さにも注目だ。ネットワークへの再接続→再生というプロセスも素早く行なわれ、ネット越しになにかをしている、という印象は薄い。
西沢:ここまで来るのは、大変でしたね。
石塚:ユーザーの方に、できる限りストレスを感じていただかないように工夫はしていますね。再生中に電源をサスペンドにした場合でも、次にはきちんと続きから再生できるようになっています。要はそこで一時停止するようになっているのですが。
西沢:PS3の時には「torneの立ち上げに時間がかかる」と言われたのですが、アプリを待機状態に出来るので、すばやく使い始められるようになります。ずっと立ち上げっぱなしに……とまではいいませんが、この仕組みによって、スピード感のあるテレビ体験ができるようになったかな、と思います。
「OS」にも相当な改良が必要。「nasneのベストパートナー」として開発
nasneは汎用のDLNAサーバーにもなる。それと連携して使うtorne Vitaは、DLNA機器を活用するソフト、ともいえる。だが、torne Vitaはあくまで「nasne専用」であり、他の環境には対応していない。
石塚:torneが「PS3で録画番組を楽しみましょう」というものでした。torneで扱うハードウエアとしてnasneが登場したので、それも扱う、という形です。汎用のDLNAサーバーなどにつなげる、ということは、いまのところないです。torneのサクサク感がそこで出せるか、という話がありますし、DLNAといっても広いので、実際につながるのか、ということもあります。レコ×トルネについては、ソニーのレコーダチームと一緒に色々やることができたのですが、なかなか一般的なレコーダまで広げる、というところには至っていません。
レコ×トルネ(ソニーのBDレコーダと、PS3版torneの連携機能)については、まず、レコーダのコンテンツをVitaでちゃんと扱えるのか、というところから検証をはじめようと思っています。すべてのものがVitaでいけるのか、まだ検証しきれていないので、その辺がクリアーになって、対応を望む声が多ければ、ということになるかと思います。
torne Vitaでは、Vitaのシステムソフトウエアとして、最新の「2.02」を必要とする。2.02は、12月19日に公開され、torne Vitaの登場を待つことになる。
西沢:nasneに特化してチューンしたアプリケーション、という位置付けなので、汎用的にどれもこれも、ということだと、ここまでのスピード感・機能面を再現するのは難しいと思います。nasneのベストパートナーと考えていただければ。
外見で見ると、いかにも「PS3版をVitaに移植しただけ」に見えるtorne Vitaだが、中身は相当に異なる。実際、タッチとボタンの併用など、Vitaそのもののコンセプトに関わる変更も、ここからスタートした部分があるようだ。
石塚:実は、システム側の開発に1年ぐらいいて、Vitaのシステム側開発の方々と綿密に、最適化をどうするか、操作方法をどうするかなど、色々やってきました。システム的な修正も色々入れています。
元々VitaがDLNAの機能をもっていないので、そこの下回りの部分であるとか、DTCPのカギ管理をどうするかとか、そこも含めて、ここ半年ほど、ずっとシステム側に詰めてやってきました。そのようなことがあったので、アプリの公開がnasneの発売とずれて、お客様にはご迷惑もおかけしたのですが、快適さの点については、どうにか確保できたのかな、と思っています。
Vitaのシステムでは、タッチとボタンの同居を考えたので大変だったわけですが、まだ我々の方が「ボタン」から来たので楽だったかもしれませんね。タッチから来ると、カーソルが存在しないので、それをどうすればいいのか、という話になりますし。
実は、番組表スクロールの時も、タッチではカーソルを表示させませんが、キーで動かす時には中央に登場します。タッチではカーソルが消えているものの、ボタンを押すと、そっと現れるんです。そこで良くあるのは、タッチで操作しても、その後元々のカーソルの位置にカーソルが出てしまって、いきなり思わぬスクロールが発生する、というパターンです。そうならないように、地味に色々やっています。技術的には大変なんですけれど、それを意識しないようにやっています。気づかないと思うんですが、そういうところに手をかけていることで快適になるんです。
西沢:タッチとボタンを同時に使うデバイスって、現状ではほぼVitaしかないわけじゃないですか。ゲームもタッチを使うのですが、このシーンはボタン、このシーンはタッチと、完全に分かれてしまっています。
そういう風に切り分けるのが一般的なのですが、torne for Vitaでは、常にどっちがメインになるかわからない。だからどっちもメインにしないといけない、ということで、地味なノウハウが必要なんです。
気になるのは「今後」だ。現状、torne Vitaは「LAN」の中で使うアプリになっている。宅外からの録画予約や、宅外から宅内にアクセスしての映像視聴には対応していない。
西沢:ライブエリアに「Chan-Toru」への窓口を設けました。Wi-Fiや3Gなどで屋外から録画予約する場合には、ここをつかっていただければと思います。
石塚:宅外からのアクセスについては、PS3の時代から要望はいただいているので、放送局の方々と話したりもしてはいるのですが、権利関係もあり、なかなか「やりたい」だけで「やっていい」にはならない、ということです。DTCP+(家庭内だけでなく、インターネットを介した外出先のデバイスへの配信)の話も、まだARIBの中で揉んでいるところだと思いますので、そういった部分がはっきりしたら、放送局の方々と話し合ってやっていくことになると思います。
OSへの改良や「目に見えないが新しい」UIへの取り組みなど、意外なほどの苦労を経て、torne Vitaは登場した。これからまだ改善したい点も多いようだ。
現在も今後も、PS3版、Vita版torneと、nasneの開発チームは一体でやっていくという。現実問題、チームメンバーも大きくは変わっていないそうだ。
「ソースなどの共有は考えてあるので、思ったほど大変な作業にはならないと思うのですが、まあ、それでも仕事は増えています」。石塚氏はそう笑う。
テレビを見る環境を整備するという意味で、この2年間、torneチームは色々やってきた。Vita向けやnasneに連携するスマートフォン・タブレットなども動きもあり、彼らが休めるタイミングは、まだまだ先になるようだ。
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