小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1228回

あれ? これ本気のヤツだ。Hasselblad共同開発スマホ、OPPO「Find X9 Ultra」
2026年7月29日 08:00
Hasselbladで動画が撮れる?
スウェーデン発祥の中判カメラの名門と言えば、Hasselbladである。現在は中国DJIの傘下にあるが、意外にもDJIのカメラにはHasselbladとの協業は少ない。現在確認できているのはMavic 2 Pro以降のMavicフラッグシップに搭載されているメインカメラぐらいで、カメラ単体には製品がない。
一方協業や共同開発では、古くは富士フイルムやソニーの名が挙がるが、スマートフォンではモトローラやOnePlusがある。ただOnePlusはOPPO傘下となったのちHasselbladとの協業を中止し、北米・欧州市場からも撤退したようだ。
そんなOPPOは2022年より同社Findシリーズ向けカメラをHasselbladと共同開発で進めており、昨年契約延長を発表している。
老舗カメラメーカーによる共同開発という点では、Leicaの活躍が目立つところではあるが、現在HasselbladはDJIを除いてはOPPOとしか協業していないので、スマホを使ってHasselbladで撮りたければOPPO、というのが実質的な選択肢となりつつある。
そんなOPPOの最新かつフラッグシップモデルが、7月8日より発売開始の「OPPO Find X9 Ultra」だ。価格は274,800円。加えてオプションレンズ「300mm超望遠ユニット」を中心としたカメラキット「Hasselblad Earth Explorer Kit」も販売されている。こちらは59,800円だ。
今回はこの2つをお借りすることができた。どちらかというと写真ユーザーに注目されている製品だが、Hasselbladで動画撮影ができるカメラはほぼ存在しない。今回は動画撮影を中心に、その表現力をテストしてみよう。
5眼カメラ搭載、Hasselblad推しのボディ
Find X9 Ultraは、ツンドラアンバーとキャニオンオレンジの2色展開。今回はツンドラアンバーをお借りしている。
ボディを特徴づけているのは、背面に搭載された大きなリングだ。ここにカメラが4つ搭載されており、インカメラを入れると合計5つのカメラが内蔵されたスマートフォンということになる。
背面にはOPPOとHasselbladのロゴが刻印されており、側面のシャッターボタンとカメラ部のリングにHasselblad特有の差し色であるオレンジがあしらわれている。なおボディにHasselbladのロゴがあるのはツンドラアンバーのみで、キャニオンオレンジは写真で確認する限り、Hasselbladのロゴは記載されていないようだ。
ロゴの表記に従ってカメラを横に構えると、一番下が等倍のメインカメラ、左が0.6倍のワイドカメラ、上部が3倍の望遠カメラとなる。右は光学10倍の望遠カメラだ。順にスペックを見てみよう。
まずメインカメラだが、レンズは35mm換算23mmのF1.5で、センサーに2億画素の1/1.12インチセンサーを搭載。センサーズームで3倍の直前まで拡大し、3倍から望遠カメラにスイッチする。
上部の3倍の望遠カメラは、35mm換算70mmのF2.2で、こちらも2億画素1/1.28インチセンサーを搭載。センサーズームでは10倍まで拡大できる。
0.6倍のワイドカメラは35mm換算14mmのF2.0で、5,000万画素の1/1.95インチセンサーを搭載。
世界初となる光学10倍望遠カメラは、35mm換算230mmのF3.5で、5,000万画素の1/2.75インチセンサーを搭載。プリズムを使って光を5回屈折させ、フランジバックの距離を稼いでいる。
なおリング内にはもう一つ小さなレンズが見えるが、これは色を正確に把握するためのマルチスペクトルカメラで、実質的にはホワイトバランスや色温度を決定している。
インカメラの方は、35mm換算21mmのF2.4で、5,000万画素の1/2.75インチセンサーを搭載する。インカメラでも4K60p撮影が可能だ。
Hasselblad Earth Explorer Kitの方も見ておこう。グリップ付きのスマホカバーには、ズームレバーとシャッターボタンがある。この機構はスマホと電源を共有するわけではなく、グリップ部にバッテリーが内蔵されており、カメラとはBluetoothで接続する。
またカメラが集まっているリング部の周囲がバヨネットマウントになっており、付属の3つのリングが付け替えられる。右から、300mmテレコンバータを取り付けるためのリング、真ん中はスマホを三脚に固定するためのリングだ。
左は特に機能はないが、前出の2つを使わない時はマウント部がむき出しになるので、これを保護するためのリングなのだろう。せっかくだからフィルターでも付けられれば面白かっただろうが、あいにくそうしたネジが切ってあるわけでもない。
テレコンバータは、正式には「OPPO Hasselblad 300mm エクスプローラー・テレコンバーター」という名称になっている。16枚のガラスレンズを使い、光学で300mmの焦点距離を持つ。F2.2で、光学手ぶれ補正も内蔵している。これで3倍の70mm望遠カメラを拡張すると、13倍となる。センサーズームを併用すると、最大60倍となる。
動画撮影性能としては、最高8K/30pでの撮影が可能だが、撮影できるのは等倍メインカメラと3倍の70mm望遠カメラのみとなる。要するに2億画素センサーだけ8Kが撮れるというわけだ。また8K記録時と120p記録時には、自動的にダイナミックレンジは「O-Log2」というオリジナルのLogフォーマットに固定される。O-Log2用のLUTはここからダウンロード可能だ。
本機はドルビービジョンによるHDR撮影も可能だが、8Kとは排他仕様になっており、4Kと1080pのみ可能となる。
| 解像度 | フレームレート | ダイナミックレンジ |
| 8K | 24,30p | O-Log2 |
| 4K | 24,30,60p | SDR, HDR, O-Log2 |
| 4K | 120p | O-Log2 |
| 1080p | 24,30,60p | SDR, HDR, O-Log2 |
| 1080p | 120p | O-Log2 |
幅広い画角が魅力
まずはカメラでカバーできる動画の焦点距離を調べてみよう。
8K撮影の場合、メインカメラと3倍カメラしか撮影できないので、センサーズームなしでは等倍23mmか3倍70mmになる。センサーズームを入れれば等倍から最大18倍の約400mm相当となる。
4K撮影の場合は0.6倍ワイドカメラからメインカメラ、3倍カメラに加え、光学10倍カメラも使え、それぞれがセンサーズームできるので、画角のバリエーションは広い。実質14mmからから960mmまで、4つのカメラを乗り換えながら連続ズームできる。
加えて3倍カメラにテレコンバータを装着すれば、センサーズームなしで13倍の約300mm、そこからセンサーズームを組み合わせて最大60倍の約1,380mmまで撮れる。
ただレンズを装着すると画像の上下が逆になってしまうので、撮影モードの「その他」から「HASSELBLADテレコンバーター」と書かれた専用モードを使用する必要がある。またテレコンバータを取り付けると他のカメラの画角に干渉するので、装着時は他のカメラは使えなくなる。
では4K/30p撮影時の望遠の画質を見てみよう。テレコンバータなしでは光学10倍の230mmまで撮影できる。テレコンバータをつければ、センサーズームなしで13倍約300mmになるので、ディテールも含め十分な画質が得られるのがポイントだ。そこからさらにセンサーズームが使えるが、さすがに最大の60倍1,380mm相当では、アラが目立つ。
そもそも1,380mmで撮影の場合は、手持ちでは被写体を狙うのは無理で、三脚を使う必要がある。よってテレコンバータは頻繁に付け外しするようなものではなく、望遠中心で狙うときに三脚とセットで装着するという使い方になる。手ぶれ補正も効いているので、ブレはあまり気にならないが、被写体を追う時はカメラの動きと補正の動きがお互いに干渉するので、なかなか難しい。
手ぶれ補正は、メニュー内にON・OFFの切り替えがある。ただ比較してみると、ここがOFFでもある程度の補正が入っているようで、補正具合はそれほど違いがない。FIX撮影では多少メリットはあるようだが、動きながらの撮影ではあまり気にしなくていいようだ。
マイク性能もテストしてみた。動画撮影では「サウンドフォーカス」という機能が搭載されており、主要な被写体の音声を優先的に拾うことができる。これはフロントカメラだけでなくインカメラ側でも同じように使える。今回のサンプルはインカメラで撮影したものだ。
機能的には完全に周囲の音をカットするわけではないので、効果がナチュラルだ。Vlogなどの撮影でも便利だろう。
今回のサンプルは、4K/30pのドルビービジョンによるHDR撮影をカラーグレーディングしたものである。これまでのスマートフォン撮影と違って、望遠側の画角の幅が広いので、構図にもテーマ性を持った撮影ができる。
特殊撮影機能を試す
続いて夜間撮影を試してみた。撮影モードとしては夜景モードもあるが、これは写真のみである。撮影モードの「その他」から「プロ動画」を選ぶと、ISO感度のマニュアル設定やLog撮影が選択できるようになる。
まずはメインカメラで絞り開放のF1.5、シャッタースピード1/30s固定でISO感度を順に上げていった。最低ISO400、最高ISO12800まで可変できる。最高感度でもノイズ感は少なく、感度も良好だ。
夜間撮影のサンプルは、4K/30pでO-Log2で撮影し、カラーグレーディングした。絞り目で撮影したカットの暗部に若干ジリジリしたノイズを感じる部分もあるが、感度を上げてもノイズ処理が上手いので、なるべく感度上げ目に撮影するのがコツのようだ。高感度センサーを備えたフルサイズ機には敵わないところだが、それに準ずるレベルと考えていいだろう。
スロー撮影に関しては、メインカメラと3倍カメラで対応している。最高4K/120pで撮影できるので、30p再生なら4倍スローとなる。それほど高倍というわけではないが、本機のポイントは等倍と3倍のカメラがほぼ同性能というところだろう。スローはメインカメラしか対応しないスマートフォンが多い中、光学3倍でも撮影できるのは強い。
動画の撮影モードとしては、「ステージ」と「花火」が用意されている。これは8Kでも使用可能だが、あいにく筆者宅近隣の花火大会は今週末なので、試すことができなかった。
そのほかフィルムを意識したフィルターも用意されている。ただしこれを使う場合は、解像度が720/30pまたは1080p/30pとなる。
総論
スマートフォンの差別化要因としてはカメラ性能が常に問われるわけだが、Find X9 Ultraの場合はスマートフォンのアーキテクチャを使ったカメラ、といっても過言ではないだろう。もちろん通信機器としてSOCやディスプレイといったスペックも訴求されてはいるが、公式サイトの90%ぐらいカメラに関する説明となっており、まさにカメラに全振りした製品となっている。
ケース側のバヨネットマウントを使って拡張できるようになっており、このマウントが今後規格化されれば、カメラ周辺機器メーカーもフィルタやコンバージョンレンズなど、様々なものが作れるだろう。その点では、今後のスマホカメラの道筋を作るかもしれない製品となっている。
動画カメラとしては、Hasselbladのレンズやカメラで動画撮影できるものは現行機では存在しないため、貴重なスマホとなっている。また写真機として見ても、本物のHasselbladカメラやレンズより安い。センサーが中判でないのは仕方がないにしても、Hasselbladの色が出せるカメラとしては、274,800円は手が出ない価格でもない。
スマホカメラ設計として、メインと3倍をほぼ同スペックにしたことで、「寄りに強いスマホ」に仕上がっている。これまでとにかく人間込みで風景が映るよう、広角広角で進んできたスマホカメラに一石を投じる製品だ。











































