小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1230回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

商品企画段階で“勝ち確定”。Xiaomi デスクトップスピーカー Pro Set

8月より販売開始の 「Xiaomi デスクトップスピーカー Pro Set」

PC向けサウンドバーの世界

PC向けスピーカーは、長らくDTMやハイレゾ志向の製品が多かったため、ステレオペアスピーカーが定番であった。しかし2022年頃から、PC向けサウンドバーというジャンルが注目され始めてきた。

従来サウンドバーと言えばテレビに合わせるものであり、全長が長いのが普通だった。だがPC向けとして企画されたサウンドバーは、全長が50cm台でUSB接続可能、音楽・ゲーム・映画などのモードを持ち、1万円以下ながら十分なステレオサウンドが得られる。筆者も2024年にCreativeの「Sound Blaster GS3」を購入し、しばらく仕事中に音楽を聴くスピーカーとして愛用した。

小型のテレビ用サウンドバーとの最大の違いは、USBでPCと直結できるところだ。この分野は意外と手薄で、有名メーカー製としてはCreativeかEdifierぐらいである。

そこにXiaomiが参入してきた。8月3日より発売が開始された「Xiaomi デスクトップスピーカー Pro Set」は、公式ストア価格16,980円と1万円を超えるが、その代わり専用サブウーファが付属する。

多くのPC向けステレオペアスピーカーやサウンドバーは、サブウーファ接続を想定しないスタンドアロン機なので、これは盲点であった。もうその商品企画ですでに勝ち筋である。

地味ながら新機軸のPC向けサウンドバーセット、一体どんな音がするのか。早速試してみよう。

想像以上にコンパクトなセット

一般にサブウーファ付きセットとなると、持ち上げるのによっこらせと掛け声が必要なサイズと重量だが、本機はサウンドバーが約960g、サブウーファでも約1,308gと、非常に小型・軽量だ。サウンドバーフルセットのミニ版といったサイズ感である。

まずメインスピーカーとなるサウンドバーは、全長51.1cm、直径7.5cmの円柱形だ。底部は転がらないように平たくなっているが、正面からの見た目は円柱である。

メインスピーカーは全長約51cm
真横から見るとほぼ円筒形

内蔵スピーカーは、両脇に10Wの楕円形フルレンジドライバが2つあり、上向き53度に角度が付けられている。またその内側にはほぼ同サイズと見られるパッシブラジエータが2つ付けられている。

中身は2スピーカー、2パッシブラジエータの4ユニット構成

公式サイトでは「4ドライバ構成」と説明されているが、普通はパッシブラジエータはドライバにカウントしないのではないか。ユニット数というなら4でもいいが、パッシブラジエータは電気信号を直接受けて能動的に動くドライバ(駆動部)ではないというのが筆者の考えである。

入力はUSB-C、アナログAUX、Bluetoothの3系統。入力端子と電源端子は背面。電源は専用ACアダプタが付属する。底部にはライティング効果用のLEDライトがある。

背面の入力端子
数パターンのライティングが楽しめる

天面にはボタンが2つ、左がアクションボタン、右がライティングボタンだ。右側面にはボリュームノブがあり、ここも押し込み式のマルチファンクションボタンとなっている。ボタンの機能は以下にまとめておく。

上部に2つのボタン
ボタン名称1回押し2回押し3回押し長押し
アクションサウンドモード切替入力切替-Bluetoothペアリング
ライティング効果モード切替--LEDのON/OFF
マルチ電源入/音楽再生・停止次のトラック前のトラック電源切
タイトル仕様音声品番価格

サウンドモードは「音楽」、「低音」、「ボーカル」、「ゲーム」、「映画」の5種類。切り替えると英語のアナウンスが出るが、聞き取ると順に「Balance Mode」、「Deep Bass」、「Clear Vocal」、「Game Mode」、「Cinema Mode」と言っているように聞こえる。

サブウーファは高さ約22cm、直径15cmの円柱形だ。96mm径のウーファが下向きに取り付けられており、筐体底部に音の出口がある。また背面にはバスレフポートもあり、内部のパイプを通って重低音が排出される。全体の周波数特性はスペックでは示されていないが、公式サイトによれば下は60Hzまで出るようである。

直径15cmの小型サブウーファ

背面に電源ボタンと電源端子があるのみで、メインスピーカーとはワイヤレス接続される。こちらにもACアダプタが付属するが、メインスピーカーとは端子の径が違うので、差し間違えることがないようになっている。

背面にバスレフポート
ACアダプタが2個必要だが、端子径が違うので差し間違うことはない

こちらも底部にはLEDライトが仕込まれており、メインスピーカーと同期して同じように光る。電源はメインスピーカーと同期しており、メインを入れるとサブウーファも自動的に電源が入るようになっている。

サブウーファ底面にもLEDライトがある

設定用のスマホアプリはないが、WindowsとmacOS用にコントロールアプリの「Xiaomi C-HUB」が提供されている。どちらもWEBサイトを検索しても出てこないが、各OSの専用ストアで検索すると出てくる。

設定用アプリの 「Xiaomi C-HUB」

本体だけで十分楽しめるサウンド

本セットは、ソフトウェアなしの本体だけでも十分操作できるように作られている。まずはPCからの音楽再生を試してみよう。今回はMacBook ProとUSB接続している。接続可能なフォーマットは最大24bit/48kHzまでである。

Amazon Musicで配信中のHoward Jones「Celebrate It Together」を聴いている。デビュー40周年を記念したベストアルバムで、なんと64曲・4時間52分という大作である。

サウンドモード「音楽」は、本機のデフォルトとも言える音だ。比較的フラットに見せかけて、中域の美味しい部分はちゃんと盛り上げてあるので、全体的に明るいトーンである。

サブウーファの効きはそれほど強くないが、バスドラムとスネアは、ドン・タンではなく、ドス・タスといった空気のパルスを感じさせる力強さがある。昨今の小型スピーカーは低音までよく出るようになっているが、サブウーファが足されるとやはり空気圧が違う。

音の広がり感はスピーカーサイズなりだ。音像はスピーカーの幅に収まる印象である。ただ離れた位置から聴いても低音が痩せず、しっかりしたバランスを保っている。

サブウーファの設置位置は、公式サイトでは商品撮りの都合からか同じテーブル上に置かれているが、実際には足元に置くといいだろう。そのほうがサウンドに立体感が出る。ワイヤレス接続による遅延は、ほとんど感じられない。

「低音」モードは、「音楽」モードにサブウーファを強く被せたようなサウンドだ。低音好きにはたまらないかもしれないが、通常音量ではちょっと低音が出過ぎのように思う。小音量でも低音が痩せないので、小さくBGM的に聴く場合はこのモードがお勧めだ。

「ボーカル」は声の周波数のあたりを立てるわけだが、サブウーファはOFFになる。よってかなり腰高の音だ。音楽の入らない音声コンテンツなどを聴くときにはスッキリしていいだろう。なおメインスピーカーにはマイクが内蔵されており、リモート会議などのマイク兼スピーカーとして機能する。この時もボーカルモードは重宝するだろう。

「ゲーム」モードはサブウーファもONになり、全体的に高音が強調された、いわゆるドンシャリ傾向の音になる。音楽再生でも明るいサウンドとして聴けるが、長時間のリスニングには若干疲れが出るかもしれない。

「映画」モードは、一番面白いサウンドだ。サブウーファによる重低音と、メインスピーカーの低音が繋がっておらず隙間ができたような特性で、極端に重低音に寄せた音である。またメインスピーカーの音は広がり感が強調され、スピーカーの幅以上のサウンドフィールドとなる。これで音楽を聴いても面白いが、オリジナルの音質とはかなり違ったイメージとなる。

実際にこれで映画を見るとどう聞こえるのか、Amazonプライムで配信中の「マスターズ・オブ・ユニバース」を視聴した。男性の低音のセリフなどは、かなり映画館っぽい。注目は1時間10分頃のドンパチのシーンだ。爆発や衝突などの効果音は、小型セットとは思えない迫力で迫ってくる。PCをデカいテレビやプロジェクターに繋いで鑑賞したいところだ。

Bluetoothでの接続も試してみた。こちらはGoogle Pixel 10 Pro XLと接続したが、開発者モードで確認したところ、44.1kHz/16bitのAACが最高のようだ。音源はハイレゾなのだが、コーデックとしてここまでしか対応していないようである。そもそも本機はハイレゾ認証機器ではないので、多くを求めるのは筋が違うところだが、スマホ接続であってもUSB接続した方が音質的には有利だろう。

アプリでいじっても面白い

せっかく設定用ツールが提供されているので、こちらも試してみよう。「Xiaomi C-HUB」の「Device Information」では新ファームがあると表示されるが、ファームアップはWindowsでしかできないようだ。

そこでWindows版でも試してみたが、なぜかサブウーファのACアダプタが繋がっていないというエラーが出て、アップデートできなかった。現状のファームでも特に不具合は見られないが、ちょっと気になるところである。

Windows版でアップデートしようとしたが、サブウーファの電源接続が認識できない

改めて「Xiaomi C-HUB」のMac版で機能を見ていく。「Speaker features」のSettingsでは、アナウンスの言語切り替えができるが、中文か英語のみである。

言語切り替は中文と英語のみ

「Channel and volume」の「Channel Selection」では、本体で切り替え可能な入力以外に、USBとAUXの両方をミックスして鳴らせる「Mix Channel」が選択できる。常時繋がっている音源があるなら、入力切り替えしなくても鳴るので便利だ。

USBとAUXの両方が鳴らせる 「Mix Channel」

「Sound effects」では、各サウンドモードに対して10バンドのグラフィックEQが設定できる。±6dB可変できるので、気になったところはかなりいじれる。おそらく多くの人がいじりたくなるのは、サブウーファとのバランスだろう。例えば「映画」モードをもうちょっと音楽寄りにしたいと思えば、低音を下げてやるなどして、バランスを取ることができる。

各モードごとに10バンドのEQが設定できる

パターンが1つしかセットできないのが惜しいところだが、各モードをカスタマイズして自分なりのサウンドセットを作っても面白いだろう。

総論

ノートPC単体にスピーカーを繋ぐのであれば、ディスプレイの両脇に配置できるステレオペアタイプのほうが便利である。一方デスクトップ固定でPCを使う場合、多くは外部ディスプレイを繋いで拡張するだろう。ディスプレイが大きいと、さらにその横にステレオペアスピーカーを置くスペースまで確保できない。

そうした環境なら、ディスプレイの手前下に収まるバー型のスピーカーが便利だ。こうしたニーズは主にPCゲーミングの世界で主流だったが、サブウーファが使えるバー型スピーカーは少ない。テレビ向けではなく、PC向けにサウンドバーとサブウーファのセットをまとめたという点で、「Xiaomi デスクトップスピーカー Pro Set」はユニークな製品である。

価格もこなれており、このデザインと音質なら十分高コスパと言っていいだろう。こうした周辺機器はXiaomiとしては一応幅広くやってるが本流ではないということなのか、複数の新製品と一緒くたになってあまり詳しい情報が出てこない。せっかくいい商品なのに、露出が少ないのはもったいない限りだ。

おそらく今後は、こうした製品が増えていくのではないだろうか。コンパクトPCオーディオも、ちょっと質が変わってくることだろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。