プレイバック2022

テレワークなのにプリンタ必須、紙に翻弄された1年 by 小寺 信良

今さらながら購入したエプソン「EP-714A」

今さらながらプリンタを新調

以前なら製品説明会に出かけて行けば、メーカーさんから紙に印刷されたPowerPointの資料などが配付されたものである。しかしテレワークが定着し、説明会もオンラインになれば、紙の資料を手にする機会はほとんどなくなった。

もちろん、自分でも紙を印刷する機会などはほとんどない。以前PTAの広報をやっているときは、広報紙の確認用に数枚印刷することもあったが、今はすでにPTAも卒業してしまっており、A3がプリントできるドデカいプリンタ複合機も邪魔になるばかりである。

そんなおり、久しぶりに東京出張することが決まり、自分の名刺をプリントしようとしたところ、黄色が印刷されない。インクが空になるほどにヘッドクリーニングをかけても、全然出ない。もうこれはヘッド自体がダメになっているのかもしれない。エプソンの「EP-976A3」。調べてみると2013年発売なので、ほぼ10年前ということになる。

名刺印刷も、対面での「はじめまして」がなくなってきている今、あとどれぐらい使うのかわからないが、今はまだそれに代わるものが存在しないのもまた事実である。しょうがないので、今さらながらプリンタを買い直すか、ということになった。

改めて調べてみると、価格は安いものだと1万円以下、中級機は3万円台、上位機種で4~5万円といったところ。昨今は「テレワーク対応」というキャッチコピーで売っているようである。だがそもそもテレワークで紙への印刷が必要なのか。自分ちで書類を出しても、提出する相手もいない。ましてや会社のハンコなど持ち出せないからこそのDXなんじゃ……と問い詰めたいところである。

とりあえず時間もないし、隣がヤマダ電機という地の利を活かして、実店舗で購入した。展示機は30台近くあるが、ほとんどのモデルに「コロナウィルスの影響で在庫なし」の札が下げられており、在庫がない。

コロナの影響でほとんど在庫なし

店員さんを捕まえて、スマホからも印刷できるカラー機で、複合機じゃなくていいんだけど、と伝えると、1台だけエントリー機で在庫があると出してくれたのが、エプソン「EP-714A」だった。今年2月発売、値段は税込み2万円ちょっと。この1台が出ると、当分エントリーモデルは入ってこないという。じゃあそれでいいです、と買って帰った。

そういうことだったのか……

そんなわけで10年ぶりにプリンタをセットアップしたわけだが、今どきはものすごく合理化されて驚いた。セットアップはPCに接続することもなく、ディスプレイ部に表示されるQRコードをスマホで読み取って、専用アプリからBluetoothで接続してからWi-Fi情報を転送、あとはオンラインセットアップである。

画面上のQRコードを読み取ってセットアップ

パソコンからのプリントも今どきWi-Fiでしょと言わんばかりに、USBケーブルも付属しない。スマホからの印刷は、特定のLINEアカウントにファイル添付すると、クラウド経由で印刷される。もはやすっかり浦島太郎状態である。

実際名刺を印刷するだけで出番終了かと思ったら、全然そんなことなかった。県で実施している無料PCR検査を受けるためには、申し込みフォーム入力のほか、ネットからWord形式の問診票をダウンロードし、それに必要事項を入力して検査会場までプリントアウトして持って来いという。家族4人分で、ちょっとした紙束である。

そして採取した唾液のカプセルと書類を1つのビニール袋に入れて検査に回すという、完全に紙管理で回っているのだった。まあ検体という物理物と情報をくっつけるには一番手っ取り早い方法ではあるが、これを毎日数千単位で、処理しているのかと思うと、びっくりである。検査結果はメールで送られてくるわけだが、紙情報と申し込みフォームの情報はなにも結びついていないので、名前と住所で名寄せするしかない。これを全部目視でやってるのだろうか。それもまたびっくりである。

今年の夏は新型コロナウイルス第何波だったか忘れてしまったが、とにかく学校が休みになったり、子供が順番に感染したりと、なかなか大変だった。

自宅待機となれば、学校や塾からの課題が、保護者宛にPDFで送られてくる。それを印刷して、子供に学習させるという段取りになっていた。問題文だけでなく、解答・解説もプリントしなければならない。毎日A4サイズを20~30枚バンバン印刷する日々が続いた。

そうかー、大人はIT化しても、学校はまだ全然紙の世界だった。GIGAスクール構想で各自タブレットは持っているが、課題の元ファイルがただのPDFでは、配付はできても解答を書き込むこともままならない。「テレワーク対応」とはそういうことかーと膝を打ったが、よく考えるとそんなわけないのであった。

印刷量を考えれば少なくともプリンタの元は取れた気がするが、「いざ」となったときの対応が最終的には全部紙という世界は、まだまだなくならないんだなぁと実感した1年だった。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。