プレイバック2022
Amazon Music対応オーディオを活性化させる「ITF-NET AUDIO/Taktina」by 逆木 一
2022年12月23日 10:00
現在、音楽ストリーミングサービスのAmazon MusicとApple Musicでは、最大で192kHz/24bitのロスレス/ハイレゾ配信が行なわれている。このような高音質志向の配信自体は既にTIDALやQobuzといったサービスで以前から行なわれていたが(日本未サービス)、AmazonやAppleという大手も参入してきたことは、近年の音楽シーンとオーディオシーンの両方で大きな出来事だったといえる。特に豊富な邦楽のラインナップはメジャーサービスならではの強みといえ、実際にAmazon MusicやApple Musicを愛用しているユーザーも多いものと思う。
一方で、オーディオファンとして気になるのは、それらのストリーミングサービスとオーディオ機器との連携/機能統合について、である。どれだけサービスの側で高品質な音源を用意したところで、実際にそれを再生する環境が整っていなければ、トータルでの高音質は期待できず、まさに宝の持ち腐れになってしまうからだ。
AirPlay以外の取り組みをするとは到底思えないApple Musicはこの際置いておくとして、ロスレス/ハイレゾ配信の開始から既に3年以上が経過したAmazon Musicの状況はどうなっているのか、年末を機に見ていきたい。
はっきり言って、オーディオ機器との連携/機能統合という点では、Amazon Musicを取り巻く状況は3年前からほとんど変わっていない。
ネットワークオーディオの文脈ではもはや世界的に対応しない製品が圧倒的少数になるほど、連携/機能統合が進んでいるTIDALやQobuzとは正反対である。ネットワークオーディオの世界を牽引してきた世界中の名だたるブランドでさえ、現状ではまったくと言っていいほどAmazon Musicに対応できていない。
もちろん、ロスレス/ハイレゾ配信の開始時点からすれば、Amazon Music対応を実現したメーカー/ブランドは徐々に増えてはいる。しかし、依然としてごく少数に限られていることも確かだ。また、Amazon Music対応製品は比較的廉価な価格帯が中心で、ハイエンドクラスの製品が日本にはあまり存在しないということも、問題と言えば問題だろう。
いずれにせよ、「Amazon Music対応のオーディオ機器」を導入しようと思っても、2022年末現在、多種多様な選択肢の中から自由に選べるような状況とは程遠い。ただ単に「Amazon Musicが聴けます」というだけでなく、ユーザビリティ等を含めた製品全体の完成度の高さを求めるなら、選択肢はさらに狭まる。
さて、このようにパッとしないAmazon Musicの状況に風穴を開けてくれると筆者が期待しているのが、「ITF-NET AUDIO」と「Taktina」の存在だ。
「ITF-NET AUDIO」はインターフェイス株式会社が開発したハード(モジュール)とソフトから成るネットワークオーディオのソリューションであり、オーディオメーカーはこれを採用することで製品開発を行なう。
そして、ITF-NET AUDIOがアップデートで各種ストリーミングサービス(TIDAL・Qobuz・Amazon Music)に対応することに合わせて、それらの再生操作を行なうために開発された純正コントロールアプリが「Taktina」である。ユーザーはTaktinaからストリーミングサービスにアクセスし、ITF-NET AUDIOを採用するネットワークオーディオ機器を使って再生が可能になる。
ここで重要なのは、インターフェイスはあくまでソリューションベンダーであり、ITF-NET AUDIOやTaktinaは特定のオーディオブランドに帰属するプラットフォームではない、ということ。すなわち、ITF-NET AUDIOを採用するオーディオメーカーやブランドが増えれば増えるほど、それはそのまま「Amazon Music対応のオーディオ機器」が増えることに直結する。
世界中のオーディオメーカーがAmazon Music対応に苦戦している状況を考えれば、このように先進的なソリューションが日本発で登場したことは実に喜ばしいし、採用するメーカーが増えることを願わずにはいられない。
筆者はITF-NET AUDIOを採用するSFORZATOのネットワークトランスポート「DST-Lepus」のユーザーであり、その縁もあって、ストリーミングサービス対応のファームウェアとTaktinaを先行して自宅で試用させてもらっている。
言うなれば「純国産」のDST-Lepusが、Amazon Musicの192kHz/24bitのハイレゾ音源をビットパーフェクトで再生している様は、見ていてなかなか感慨深い。
当初年内を予定していた新ファームとTaktinaの提供は残念ながら遅れてしまうとのことだが、ここはいちユーザーとして、対応に向けてじっくりとブラッシュアップをしてもらいたいところだ。また、SFORZATOからはITF-NET AUDIOのストリーミングサービス対応と同じタイミングでエントリークラスのネットワークトランスポート「DST-Lacerta」の登場も予告されており、ユーザー層の拡大にも期待が持てる。
2022年末、オーディオ機器との連携/機能統合という点で相変わらずAmazon Musicはパッとしないが、状況は間違いなく変わりつつあり、すぐそこに大きな可能性が広がっている。