プレイバック2022
配信しないのにマイク&ミキサー投入! 複雑化するマイWeb取材環境2022 by 日沼諭史
2022年12月22日 10:00
リアル取材が徐々に増えてきたとはいえ、それでも2022年はオンライン取材の機会がそこまで減ることはなかった。オンラインだと往復の移動時間が省ける分効率は良いものの、やっぱり直接会うことで引き出せる話もある(あと写真も撮れる)。どちらにせよ一長一短があるわけだけれど、せめてオンラインのときは、できるだけ音質を良くして相手が聞き取りやすくなるようにしたいなあ、なんて思った。
そんなこともあり、本誌の連載でも紹介したように、なんとなくダイナミックマイクが気になって「SAMSON Q9U」を導入。USB接続とXLR接続の両対応のマイクで、とりあえずはUSB接続で使い続けていたのだが、おそらくはUSBケーブルの接触不良の問題からノイズが入り込んだり、接続が不安定になっていたりしたので、2022年後半になってついにミキサーも追加した。ヤマハのライブストリーミングミキサー「AG03MK2」である。
で、これらマイクやミキサーを導入したことも含めて、2年以上にわたって環境の更新を繰り返してきたことで、パソコンのオーディオ周りのセッティングがそこそこ込み入った感じに……。図にしてみると以下のようになっている。
ざっくり説明すると、バーチャルオーディオミキサーの「VoiceMeeter Banana」を軸に、物理音声出力2系統(光デジタルおよびアナログ)と、仮想音声出力1系統を使用。光デジタル出力からはオーディオアンプに入力(相手の音声のみ)し、もう一方のアナログ出力からは音声録音用のICレコーダーに入力(相手と自分の音声)している。
オーディオアンプに入力した音声はBluetoothトランスミッターへ送り、そこからさらにShokzの骨伝導ヘッドセット「OpenMove」に飛ばして、相手の声を聞く専用イヤフォンとして使う(マイクは使わない)。これは、大げさなヘッドフォンとか、ぶらぶらした有線ヘッドセットとかが相手から見えないように、という筆者のこだわりのためである。
ちなみにマイクはXLRでAG03MK2に接続しているが、そのままの音声は使っていない。NVIDIA GeForce RTX用のツール「NVIDIA Broadcast」を通してマイク音声のノイズを軽く除去したうえで「VoiceMeeter Banana」に入れ、そこから物理音声出力1系統(アナログ)と仮想音声出力に流している。
仮想音声出力の方は、オンライン取材に使う「Zoom」などのWeb会議ツールと、録画用に使っている「OBS Studio」への音声入力で利用する。こうすることにより物理音声出力でICレコーダーに音声を送って録音すると同時に、OBS Studioでも録音(録画)するという二重のバックアップ体制としているわけだ。さらにWeb会議ツールが備える録画機能も加えれば、三重のバックアップになって取り逃しはほぼなくなる。それぞれ入出力系統を別にして冗長性を確保……しているような雰囲気で、安全性も高いような、そうでもないような。
そんな面倒なことをせず、Web会議ツール側の録画機能だけ使っていればいいのでは、と思うかもしれないが、だいたいは1ライターの自分がコントロールできるものではなかったりする(ホストとなるのが相手方や間に入っている会社になる)ので、自分で独自に録音・録画できるようにしておくことはとっても大事なのだ。
でもってポイントとなるところがもう1つ。最近になってミキサーを導入したので、自分がしゃべっていないときにマイクをオフにするのもある程度楽になったのだが、置き場所の関係でいまいち使い勝手が良くない。そういうこともあって、ミキサー導入以前から活用しているのがeMeetのダイヤル型コントローラー「eMute」だ。
eMuteというデバイス自体は、標準で割り当てられるボリューム調整などいくつかのアクションしか実行できない。しかし、「AutoHotkey」というWindows用のスクリプト実行環境と「VoiceMeeter Banana」のキーフック機能を組み合わせることで、マイクの入力音量調整が静かに、素早く行なえる。eMuteを1ノッチ分回すだけで12dB上下できるようにしているので、2、3ノッチ回せばほぼミュートになる。キーボードのすぐ横に置いて操作することで、視線も姿勢も変えずにスタイリッシュな感じでマイクのオンオフができるのだ。
ここまで環境を固めてしまったせいで、外出中に別件のリモート取材が入って、ノートPCで対応することになったときには同じ環境にできず、不安が増してしまうのが悩みではある。もっとシンプルにしたいところだけれど、万が一でも録り逃すと致命的なだけに、安全確実なバックアップ体制をキープするのは不可欠で、ここから省略するのは難しい。他のみなさんはどんなWeb取材環境にしているのか、気になる今日この頃である。