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“お家内モバイル”harman kardon「Onyx Studio 9」で聴く懐メロが、音楽好きアラフォーに刺さった

harman kardon「Onyx Studio 9」を自宅で使ってみた

Bluetoothスピーカーは、“家の中で音楽を楽しむ製品”として当たり前のものになった。だからこそ、あまり安っぽくない、部屋のインテリアともマッチするデザインで、音も本格的な製品が欲しいという人は多いだろう。筆者もその1人だ。

定番ブランドの製品も良いのだが、できれば“知る人ぞ知る”というか、詳しい人に見せたら「おぬし、やるな」と思われるようなスピーカーが良い。そんな事を考えていたら、目に止まったのが、アメリカ発の名門オーディオブランド、harman kardon(ハーマン・カードン)。

70年以上にわたり“音質”と“プロダクトデザイン”の両面を突き詰めてきたメーカーで、オーディオ/PC歴が長い人は、UFOのような形状でスケルトンのSoundSticksシリーズに見覚えがあるかもしれない。

「SoundSticks 4」

そんなharman kardonの新製品で、「Onyx Studio」シリーズの第9世代となるのが、2024年11月に発売された「Onyx Studio 9」。パッと見、「おしゃれオーディオ」というワードで説明が終わってしまいそうな製品にも思えるかもしれないが、侮るなかれ。

この見た目なのに、自動音質チューニング機能や、部屋全体に均質にサウンドを届ける「コンスタント・サウンドフィールド」を搭載していたり、バッテリーを内蔵して設置部屋を移動できたり、懐かしの音楽を再生した時のオツな聴きごたえとか、実際に使ってみると色々と所有欲をくすぐられる。音楽好きアラフォーの筆者には刺さった本格スピーカーだ。

ツイーター×3 + ウーファー×1。独創的な2ウェイ・3chスピーカー

Onyx Studio 9の基本スペックからチェックしていこう。本機は、奥行き13cmのスリムな円盤が、斜めに自立したような筐体を採用している。ネットワーク再生などには非対応で、機能的には本当にシンプルな単体Bluetoothスピーカーだ。

ライトグレー色がスタイリッシュ。本体サイズは‎290W×288H×130Dmm、質量は3.4kgで、ずっしり存在感がある

公式ストア価格は29,700円と、Bluetoothスピーカーとしては高価だが、実物に触れると質感が良く、部屋に置いた時に溶け込みやすいデザインと、後述するサウンドの聴きごたえ、大容量バッテリーを搭載している事を加味すると、納得できる価格だ。

内部には、20mm径ツイーターを3基と120mm径ウーファーを1基搭載する、独創的な2ウェイ・3チャンネル構成を採用。さらに、パッシブラジエーターも内蔵する。ここで、「……ん? 単体のBluetoothスピーカーで“3チャンネル”って何だ?」と思う方もいると思うので、ちょっと説明しよう。

実は本機、内蔵する3基のツイーターのうち、真ん中のユニットがボーカルのセンターチャンネルとして機能している構成なのだ。つまり、Lch+センターch+Rchの3チャンネルになっている。この時点で、「あ、これは単純におしゃれだけじゃないやつだ」とピンと来るのではないだろうか。

デザインは上述の通り、歴代Onyx Studioシリーズに共通する“タイムレスなサークル型”で、カラーはライトグレーとクラシックブラックの2色展開。筐体の高い質感は、いかにもharman kardonの名を冠するプロダクトらしく、所有欲をくすぐってくる。

こちらはクラシックブラック。インテリアとのマッチングで選べる
天面のサークル部分に、電源やBluetooth、音量調整などのボタンを配置。インターフェイスにも一体感があるデザイン

個人的に好きなのが、付属の電源ケーブルの色も本体カラーに合わせている徹底ぶりだ。ここまで配慮してくれると、「デザインにこだわった」というのも説得力がある。

ライトグレーには灰色の、クラシックブラックには黒の電源ケーブルが付属。こういうの好き

あと、地味にAUX入力端子を備えているのも良い。というのも、なんやかんやで「昔ながらの有線接続が一番わかりやすくて使いやすい」というニーズは根強くあるからだ。デザイン推しの最新Bluetoothスピーカーでありつつ、幅広く勧めやすいポイントである。

背面端子部には、電源とAUX音声入力のほか、スマートフォンに給電できるUSB-Type C出力も備えていて、緊急時に充電器として使えたりもする

音圧とクリアな広がりを感じられる、今どきっぽいリッチサウンド

サウンドをチェックしよう。筐体はコンパクトだが、120mm径の大きなウーファーにパッシブラジエーターまで搭載するため、基本的にとにかく低音がエネルギッシュ。総合出力50Wのパワフルさで、音量を上げても音が割れず余裕がある。

それだけに終わらず、例の3基のツイーターを、独自のアルゴリズムで制御することで、強い低音に埋もれないクリアな中~高域を実現し、広いサウンドステージを作り出す独自開発の「コンスタント・サウンドフィールド」技術が搭載されている。空間を包み込むような音を再生して、スイートスポットが限定されにくい、没入感もマシマシにする技術だ。

これにより、1台でも音が部屋に広がり、「クラブミュージック的な低音の音圧」と「中~高域の広がり」を感じられる立体的なサウンドを、自宅で満喫できる。特に、低音だけが豊かなグイグイ系で終わらず、3基のツイーターが生きるクリアなサウンドで“今どきっぽいリッチ感”を実現しているのが魅力だ。

リビングの本棚の上に設置。インテリアにもしっくり溶け込む

正直、どの楽曲を例に出そうか迷うほど流行のポップスがなんでも合うが、せっかく本機の魅力を満喫するなら、やはり歌モノ楽曲を再生したい。真ん中のツイーターユニットがボーカルのセンターチャンネルとして機能しているので、豊かな低音に埋もれずボーカルが引き立って立体感があるのだ。

MISAMO「NEW LOOK」は、まさに3人のボーカルにそれぞれ押し出し感があり、引き締まった低域と明るい中~高域の弾むサウンドだ。「低音は骨太で聴きごたえがあるが、トータルではスタイリッシュ」というバランスが好印象。

ヨルシカ「アポリア」は、立体感のあるリズムと、ソフトで透き通ったボーカルが異なる質感で融合して、その対比が心地よい。Official髭男dism「Same Blue」も、ボーカルのハイトーンボイスがとにかく冴えて、特にサビの「なーかーでー」というシャウトが前に伸びる。

ちなみに、2台のOnyx Studio 9を連携させて、それぞれをLch/Rchに振り分けたステレオ再生も可能。1台でも広がるサウンドが、さらに広大かつリッチになり、迫力が凄い。

2台をペアリングすると、より出力が高く音がリッチに広がってすごい

なお、本機のBluetoothコーデックはSBCのみ対応だが、“Onyx Studio 9らしい世界観”を楽しむサウンドなので、特に不満は感じない。音圧と広がりが全て。そこに身を委ねたい。

Auracast機能にも対応していて、他ブランドの対応Bluetoothスピーカーと連携させてのグループ再生も可能。こちらは大人数が集まるホームパーティなどで使えるだろう。

リビングから寝室へ手軽に移動。“お家内モバイル”なスピーカー

Onyx Studio 9は最大8時間再生が可能な充電式バッテリー内蔵なので、電源ケーブルを引っこ抜いて、手軽に別の部屋で音楽を楽しめる。

本体の上部がハンドル形状になっていて、実際に持ち運びやすいのが良い

その時に超便利なのが、独自の自動音質チューニング機能だ。実は本機、電源をONにすると内蔵マイクが室内の特性を自動で測定する仕組みになっており、設置場所に合わせて音質を自動で最適化してくれるのだ。これにより、スピーカーの設置場所が変わっても、安定した再生を実現する。

寝室の出窓に移動させてもサウンドは安定

我が家でも、普段はリビングにある本棚に設置して音楽を流していたが、たまに寝室に持っていって使ったりした。場所を変えても、特に何の違和感もなく、引き続きリッチなサウンドが楽しめた。

テクノやアンビエントの懐メロを今の音で鳴らす醍醐味

しばらくOnyx Studio 9のある生活をしてみたが、とにかく“オツだった音楽”を語りたい。冒頭で述べた、「アラフォーの筆者には刺さった」という部分の核心である。

筆者が個人的に楽しんだのは……ずばり、テクノやアンビエントミュージックなど、エレクトリック系の懐メロだ。10代の頃(’90年代中期~後期)に、CDラジカセで聴いていたクラブ系統の音楽を、“今っぽい音”で鳴らせるのが熱かった。

先ほど、「流行のポップスがなんでも合う」とか言っておいて恐縮なのだが、なんせ心の中に41年分の音楽が蓄積しているので。最新の楽曲と同じくらい、思い出の楽曲も良い感じに満喫したいのが本音で、それが製品選びの大きなポイントになる人は他にもいるんじゃないだろうか。

というわけで以下、筆者と似たような感覚の人に届いたら嬉しいな~という気持ちで、わいわいレコメンドしていく。

まずベタなところで、アンビエント系の名盤、Aphex Twin「Richard D. James Album」(1996年)。Onyx Studio 9の再生では、1曲目「4」の浮遊感あるシンセの下に流れるバキバキのドラムン・ベースが鋭く前面に飛び出してきて、良い具合にメランコリーで暴力的だ。

かと思えば、クリアな中~高域とエッジの立ったビートが、神曲「Girl/Boy Song」の美しい主旋律とピチカートなストリングスを際立たせて、泣かせにくる。Onyx Studio 9のおかげで、今でも全然満喫できちゃうことを実感。というかあの頃、この音で聴いてたら感動で昇天してたな。

あとこちらもお約束だが、YMO「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」(1979年)はやっぱり楽しい。「TECHNOPOLIS」は、冒頭のワード「TOKIO」の押し出し感がインパクト大で自然と体が動くし、細野晴臣のベースが終始ブニブニと弾んで心地よい。「RYDEEN」は、楽曲の匂い立つような帝王感が溢れてきて、立体的に振り分けられたリズムの配置もよくわかる。独自制御されているツイーターのチューニングが、主旋律の聴こえやすさにつながっているのも大きいだろう。

ただの余談ですが、「RYDEEN」を漢字で「雷電」(らいでん)と書くやつがカッコ良すぎて永遠に好き

坂本龍一つながりで、GEISHA GIRLS「Grandma Is Still Alive」(1994年)も再生してみてみたら熱かった。本曲の前半は漫才の掛け合い音声がミックスされているが、やはり人の声が聴こえやすいので、非常に聴きごたえがある。

そして、2分33秒付近「緑のカバンに500万入れて~」のワードをトリガーとして、一気にリズムをぶち込んでくる楽曲構成はまさに天才の所業だが、そんな一番の聴かせどころも、Onyx Studio 9はワードの前方にリズムが強力に飛び出す立体感でガッと決めてくる。この瞬間の満足感、最高。

そんなわけで、現代チックなサウンドと懐メロがクロスする心地よさを体験させてくれたOnyx Studio 9。最新音楽との相性の良さはもちろん、昔CDラジカセで聴いていた音楽も「今この音で鳴らせるなら欲しい!」と思わせてくれた1台だった。

杉浦みな子

オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀……と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハーです。