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音質とデザイン最優先、スピーカーの技術も投入“B&Wヘッドフォン/イヤフォン”知られざる魅力

Bowers & Wilkins(B&W)というと、多くの人はスピーカーを思い出すだろう。その歴史をあえて振り返ると、1966年創業のイギリスのメーカーで、'80年代に発表した「Matrix 801」というスピーカーで一躍世界にその名を知らしめた。

スピーカーのキャビネットの振動をなくすために内部に強固な補強を加えたマトリックス構造。そして、エンクロージャーの角での音の不要な回り込み(回折)を防ぐためにエッジを落とし、ミッドレンジやトゥイーターはエンクロージャーの影響を最小にするためドライバーに合わせた最小のバッフル面積を持つ専用エンクロージャーを組み合わせた。

その独創的な設計のスピーカーは、ロンドンのアビーロードスタジオにモニタースピーカーとして採用されたことをはじめ、偉大なるドイツの指揮者であるヘルベルト・フォン・カラヤンが自宅の再生装置として使用するなど、世界中で高く評価された。

筆者宅の「MATRIX 801 S3」(両脇)

その独創的な設計を美しいデザインに昇華したNautilus(ノーチラス)やその技術を受け継いだNautilus 800シリーズと世代を重ねたB&Wはスピーカーのトップブランドとして知られるようになっていく。

高級スピーカーブランドは世界中にあるが、量産メーカーとしてモデルによっては何万台もの生産を可能にしているメーカーは決して多くはない。そして、最新モデルである「800 D4」シリーズは歴代モデルと同様に2024年にアビーロードスタジオにモニタースピーカーとして採用されている。

現在ではカーオーディオの分野にも進出し、VOLVOなどの高級車のオーディオシステムに採用されるほか、デビッド・ベッカムを音楽の側面から支えるパートナー・シップを結んでいるなど、幅広く展開している。

Nautilus
アビーロードスタジオでもモニタースピーカーとして活用されている

B&Wのスピーカーが世界でも最高峰のものの一つであるというのは、誰もが認めるところだろう。しかし、同社のヘッドフォンやイヤフォンというと、まだスピーカーほど確固たる地位を持っているとは言えない。

もちろん、ヘッドフォンやイヤフォンにおいてもB&Wの考える優れたトランスデューサーとしての性能や音質を追求した作りはまったく同様なのだが、残念ながら“知名度”や“ブランド力”という点では、B&Wのスピーカーには及んでいない。これはもったいない話でもある。

そこで、ここではB&Wのヘッドフォンやイヤフォンの知られざる魅力について紹介したいと思う。

レトロモダンなデザイン、質感にもこだわったB&Wのヘッドフォン・イヤフォンの歴史

B&W初のヘッドフォンは2010年発売の「P5」。オンイヤータイプのコンパクトなモデルで、ハウジングには革が使われ、ヘッドバンド部やブリッジ部分は金属。デザインの自由度や軽さを考えると樹脂製が有利だが、目につく部分にはなるべく使わない。デザイナーはモートン・ウォーレン。現在は独立しているが、独立後も多くのB&W製品のデザインを手がけている。

B&W初のヘッドフォン「P5」

B&Wのデザインの美しさは、ケネス・グランジなどの歴代デザイナーの名前を挙げるまでもないが、機能性と音、そして優美な外観が美しく調和しているのが魅力だ。800Dシリーズでさらに洗練されたものとなっている。

B&Wのヘッドフォンやイヤフォンは、開発チームこそ異なるものの、最終的には800シリーズを開発したチームがその音を確認しているというのは有名な話だ。ヘッドフォンやイヤフォンも“B&Wの音”になっているのである。

そして、Bowers & Wilkinsには、「スピーカーと違って直接身につけるヘッドフォンやイヤフォンはなおさら美しくあるべきだ」という思想がある。そうした優れた音質とデザインは当初から高く評価され、P7やP9 Signatureといった名機を次々に生み出す。

P9 Signature

が、ヘッドフォンやイヤフォンは急速にワイヤレスの時代を迎える。このあたりのエレクトロニクスの技術の蓄積が当時のB&Wには十分ではなく、ヘッドフォンやイヤフォンで知られる有名メーカーからは出遅れてしまった。

しかし、Sound United傘下となったことで、苦手としていたワイヤレス技術やアプリ開発といったエレクトロニクスの分野を補強でき、基本的な実力は大きく向上した。そして、現行モデルでもある「Px7 S2e」や「Px8」、そしてイヤフォンでは「Pi8」や「Pi6」の発売へとつながっていく。

Px7 S2e
Px8
Pi8
Pi6

B&Wが苦手としていたエレクトロニクスの分野は急速に改善した。現代のイヤフォンやヘッドフォンは単純に音やデザインが良ければよいというものではなく、アクティブノイズキャンセリング性能や、通話品質、バッテリー寿命、アプリの多機能化など、性能に対する要求も大きい。この点において、例えばアップルやソニーなどに追いつくのはなかなか難しい。

だが、最新世代のイヤフォン、ヘッドフォンに目を向ければ、バッテリー寿命や通話品質などでも、トップメーカーと比べて明らかに見劣りするものではなくなってきた。

装着感についても、現在は日本でもフィットテストが行なわれるようになり、日本人が使うと側圧が強すぎるとか、装着感がいまいちと言われることもなくなっている。そうした部分をクリアし、B&Wの強みである音質とデザインで勝負できるようになったわけだ。

そのあたりが一番よくわかるのが、ノイズキャンセル機能に対する考え方だ。B&Wはノイズキャンセリング性能No.1を目指していない。それは、ノイズキャンセリングには“強くかけるほど音質を変化させてしまう”という副作用があるためだ。B&Wはなによりも一番大事にしている“音質”への悪影響を避けることを重視しているわけだ。

Pxシリーズで重視している部分を表したもの。音質が、何よりも優先されているのがわかる

ノイズキャンセルの基本的な仕組みは、イヤフォンやヘッドフォン越しに入ってくる外界の騒音を検知し、それと逆相の音波を使って相殺するというものだ。スピーカーの配線で片方だけプラスマイナスの配線を間違ってしまう逆相接続をすると、スピーカーの間に定位するはずのボーカルなどが消えてしまうことがある。音が完全に消えるわけではないが、音像定位はなくなってどこかからなんとなくボーカルが聞こえる感じになる。こんな経験をした人は少なくないと思うが、ノイズキャンセルの仕組みも似たようなものだ。

つまりノイズキャンセル使用中は、ドライバーユニットから“音楽以外の音”も出ているわけだ。音としては相殺されて耳には届きにくくなるが、ドライバーユニット自身は余計な音も出しているのは変わらない。ドライバーへの負担も増えるし、音質には少なからず影響がある。ノイズキャンセルの効果を無理に強めようとすると、どうしても音質への影響が増えてしまう。「それならばノイズキャンセル性能はほどほどでよい」というのがB&Wの考え方だ。だから、絶対的なノイズキャンセル性能よりもオン/オフでの音質の違いが生じないことを重視する。あくまで音質最優先のアプローチだ。

着々と評価とシェアを高めてきているB&Wイヤフォン/ヘッドフォン

こうしてB&Wのイヤフォンとヘッドフォンは着実に評価を高めてきた。国内海外のオーディオアワードも数多く受賞しており、肝心の音質の評価では高い評価を得ている。

興味深いのは、ヘッドフォンならばPx8、イヤフォンならばPi8といった現行モデルの最上位機種が登場すると、Px7 S2eやPi6の人気が上昇していることだ。たしかにPx8は実売で9万円前後、Pi8は実売で6万5,000円前後と、高級価格帯においても、他社より価格が高い。だが、その良さを知らしめる実力の高さはあるのだろう。結果として下位モデルであり、競合モデルと価格的にも近いPx7 S2eやPi6の人気が高まるというわけだ。

また、高価格帯のヘッドフォン/イヤフォンとしては珍しく、カラーバリエーションが豊富に用意されていることも人気だそうだ。

Px7 S2e
Px8。どちらもカラーバリエーションが豊富だ

たしかに身につけるアクセサリーとして考えた場合、色を選べるメリットは大きい。高級品であるほどその傾向も強まるだろう。そのあたりのことをきちんと行なっているのは立派だ。

D&Mホールディングス国内営業本部企画室の髙藤正弘氏によれば、こうした取り組みが実を結び、金額シェアも上昇、今ではアップルやソニー、ボーズには及ばないものの、レースで言えばセカンドグループの上位を狙える位置に来ているという。

なお、Px8とPx7 S2eは、素材は異なれど形状がほぼ同じで、機能的な差異はない。Pi8とPi6の場合は、Bluetooth ICが異なっており、対応コーデックやノイズキャンセリング性能などに違いがある。だが、重要なのはそこではない。上位モデルと下位モデルの最も大きな違いは音質だ。

では上位と下位でどう違うのかというと、具体的にはドライバーの振動板が異なる。

ヘッドフォンのPx7 S2eは40mmのバイオセルロースで、Px8は40mmのカーボン。イヤフォンのPi6は12mmのバイオセルロース、Pi8は12mmのカーボンを使っている。バイオセルロースはヘッドフォンやイヤフォンの振動板素材としては理想的な素材のひとつで、B&Wに限らず多くのメーカーで使用されている。これに対してカーボン振動板はB&W以外のメーカーではあまり使われていない素材だ。

Px7 S2eの振動板は40mmのバイオセルロース
Px8は40mmのカーボン振動板

だが、少し調べると面白いことに気づく。振動板の素材は剛性と内部損失のバランスが重要になるが、バイオセルロースなどの樹脂系素材に金属皮膜の蒸着、あるいはDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)などを塗布した2層構造で剛性を高めた振動板が増えていること。またはアルミ振動板など金属素材が使われることもある。傾向としては、内部損失よりも剛性を高めることが現代のトレンドにあるようだ。剛性が高まるほど素材特有のクセが出やすくなるので設計は難しくなるが、それらを使いこなすことでより良い音を追求する動きはある。

触れるとわかるが、カーボン振動板はより剛性が高い
ヘッドフォンのPx8、イヤフォンのPi8は、どちらもカーボン振動板を使っている

その意味でも、カーボンの採用は珍しい。どこからそんな素材を持ってきたのかと思うくらいだ。その答えはB&Wのスピーカーにある。現行の702 S3がツイーターの素材にカーボンを使用しているのだ。702 S3がカーボンを採用した理由は比較的わかりやすい。最上位の800 D4でツイーターの素材にダイヤモンドを使っているからだ。スピーカーの開発でダイヤモンド振動板を使いこなし、702 S3には物性が近い(ダイヤモンドもカーボンも炭素系の素材)カーボンを採用。当然以前から時間をかけて研究開発を重ねていたのだろう。そのカーボンをヘッドフォンとイヤフォンにも採用している。このあたりは他のメーカーではなかなかできないことだろう。

800 D4シリーズのツイーターはダイヤモンドを使っている

高域特性に優れるカーボンだが、もちろんカーボン振動板のフルレンジで設計するとなるとまったく別のノウハウが必要になるだろう。組み合わせるエッジもロングストローク設計とかフリーエッジ設計で素材も含めて検討する必要があるし、素材のクセをなくすための技術課題は膨大だ。磁気回路も含めてまったく別物のドライバーとなっていることが予想できる。

結論としては、Px7 S2eやPi6では使い慣れたバイオセルロースを使用し、上位モデルでカーボンを採用するというアプローチは、スピーカーのラインアップとほぼ同じだ。600シリーズではチタニウム振動板(これも価格帯を考えると高価な素材だ)を使い、700シリーズでカーボン、800シリーズでダイヤモンドと、より上位のモデルとなるほど他では使用例のあまりない素材を使っている。Px8やPi6は高級ワイヤレスヘッドフォン/イヤフォンとしてみても価格は高めの部類になるが、それだけのコストをかけて、未踏の高音質を追求したモデルだとわかる。

その音で良さでユーザーを魅了し、Px8やPi8は買えないとしても、その下に手の届く価格のモデルを用意する。800/700/600シリーズのアプローチと同じだ。

色づけの少ないストレートな音調はそのままに、表現力をさらに高めた音質

古典的とも言えるバイオセルロース振動板、そして最先端とも言えるカーボン振動板、これらの異なる振動板を使ったB&Wのヘッドフォンやイヤフォンは果たしてどのような違いがあるのだろうか。

Px7 S2e

まずはPx7 S2eを聴くと、不要な色づけのないニュートラルな音質で非常にバランスが良い音だと感じる。クラシックを聴いても各楽器の音色が自然に再現され、木管の柔らかい感触や金管の少し鋭さのある輝きまできちんと描く。音色の色づけが少ないので耳なじみが良いし、不自然さを感じない。情報量としても細かな音の再現や微少音の余韻まで丁寧に描き、大きな不満を感じない。このバランスの良さがPx7 S2eの魅力だと感じる。

Px8

これをPx8に切り替えると、驚くくらいB&Wの音になる。音調としては大きくは変わらない。カーボン振動板だからといって硬い音にはならない。振動板素材に由来する固有の音はほとんど感じない。

変わるのは情報量だ。音色自体はますます透明度を高めて楽器の持つ音や録音の質までわかるようだし、その精密感のある描写は800シリーズに近いものがある。プレーヤーはAstell&Kern「SE300」でaptX HDで聴いているが、ワイヤレス接続でもここまで情報量豊かな音が聞けることには驚く。

もう有線とかワイヤレスで音質を問う必要はないかと思うが、いざUSB DAC機能を使って有線で接続すると、これまた情報量が増えて有線接続のメリットというか音質的な優位性を再認識してしまう。おそらくプレーヤーによる変化とか接続するケーブルの変化といったわずかな差もストレートに再現する情報量を持っていると思われる。

イヤフォンとなるPi6とPi8の違いも近いものがあり、非常にバランスがよく聞き心地の良いPi6に対して、Pi8はより忠実度を高めて情報量たっぷりの音を出す。こちらも基本的な音調はニュートラルでクセがないのに、情報量には大きな差があると感じる。Px8も同様だが、Pi8の音が気に入ってしまったら価格の差は考えないと思うし、それくらいかけがえのない音だ。その一方で、Pi6も十分に良い音で基本的な音調に大きな違いがないので、情報量の圧倒的な差を別にすれば大きな落差を感じない。

Pi6
Pi8

移動しながら、騒音の大きな環境で使うことを考えたらPi6で実用上は十分と考える人が多いだろう。Pi8は移動中などに使っても問題ないが、周囲のノイズの少ない環境でじっくりと音楽に浸るような使い方をしたいと考える人が多いのではないかと思う。

例えば、クラシックのオーケストラ曲を聴くと、Pi6は情報量が豊富で各楽器の音をきちんと描き分け、コントラバスの胴鳴りや大太鼓などの響きの余韻まで丁寧に再現する。微少音の再現がうまいので、ピアニッシモの静かな演奏からフォルティシモの大音量まで雄弁に描く。単独で聴いていれば、ほとんど不満を感じないほどよく出来ていると感じる。これをPi8に変えると、各楽器の音はディテールに富み、より生き生きとした音になる。弦楽器、木管楽器、金管楽器の音色の描き分けはさらに明瞭になり、色彩感に富んだ演奏になる。Px8もそうだが、カーボンを思わせる硬い音はしない。軽く硬い素材をイヤフォンのような小口径ドライバーで使うと素材のクセが出やすいはずだが、そういうクセはいっさいなく、楽器の音をありのままに再現してくれる。低音は量感も豊かになるが、音の芯が出るというか解像感も高い。弦をつま弾くときの指ではじく感じや弾力感がよく出ている。

ボーカル曲は、Pi6でも実体感豊かでクリアな声だ。ニュアンスもたっぷりでやはりよく出来ていると思う。情報量に不足はないしバランスの良さがあるので聴きやすさもある。外出中や屋外で気軽に聴いて気持ちよく音楽を楽しめる音だ。Pi8はより本格的な表現になり、ついつい音楽に夢中になってしまうので外を歩いている時は注意が必要。声のなまめかしさ、コーラスの和声の美しさ、楽曲の良さをしっかりと味わえるHiFiの音。これはやはり静かな場所で腰を落ち着けてじっくりと聴きたい音だ。情報量はかなり多いのに、アニメソングを聴いてもガチャガチャと耳障りな音にならないのも良い。声はもちろん、バックの演奏の音も厚みのある音で再現し、スタジオでミキシングされたときの声や個々の音の絶妙なバランスがそのまま再現されているイメージだ。こうしたノイズや歪みのような不要な音が出ないので、わりとにぎやかな曲であっても、むしろ静かに感じるほど。こういう音作りはまさにスピーカーと同様でそのうまさに感心する。

筆者は自宅の試聴室でもB&WのMarix 801 S3を使っていて、800シリーズの元祖とはいえ今となっては老兵であるMarix 801 S3は、製品の実力では現行800 D4と比べるまでもないが、基本的な素性の良さは共通していると感じる。もちろん、今では珍しい30cmウーファーの低音はしっかりと鳴らしてやると他にはない音が出るが、今となってはPi6やPx7 S2eに通じるバランスの良さが大きな魅力だと感じる。さらに現代的に情報量や精密さを求めていくと、Px8やPi8の音がフィットするイメージだ。

ところで、音色はニュートラルでクセがなく、色づけのないスピーカーやイヤフォン、ヘッドフォンというと、味わいとか個性が足りない。はっきりと言ってしまえば“面白くない音”と感じる人もいるだろう。僕は楽譜が読めるわけではないので余計にそう感じるが、楽譜が明瞭に浮かぶような音は確かにつまらない。モニタースピーカーはそういった性能も必要ではあるが、筆者としてはその楽譜を演奏者がどのように解釈して音楽として表現するかを聴きたい。

B&Wは単にトランスデューサーとして高性能なだけでなく、それがあると思う。その根拠は出音の勢いとかリズム感が豊かに出ること。低域から高域まで出音が揃った感じがあること。

指揮者の指揮に従って楽団員が一斉に音を出すときの揃い方、機械のように正確に揃うわけではない微妙なゆらぎまでしっかりと描くから、奇跡のように出音が揃ったときの高揚感がいっそう高まる。音楽に躍動感とか生命力とかそういう感じを求める人にはB&Wの音はつまらない音どころか、これだけ表情豊かなスピーカーはあまりないと感じるだろう。イヤフォンやヘッドフォンもそのあたりがB&Wなのだ。

iPhoneユーザーは試して欲しい、aptX接続の小技

最後に取材で聞いた面白いテクニックを紹介しよう。Pi8やPi6はaptX Adaptiveに対応しているが、非対応のiPhoneなどではAAC接続になってしまう。良好な電波環境ならばハイレゾクオリティで伝送できるaptX Adaptiveが使えないのは音質的にももったいない。

このような場合は、USB Type-CのBluetoothアダプターを使うといい。当然aptX AdaptiveやaptX LLなどに対応しているものを選ぼう。そのアダプターをiPhoneに接続すればiPhoneからはUSBデジタル出力となり、Pi8やPi6との接続はaptX Adaptiveとなる。iPhoneでもより高音質でワイヤレス再生を楽しむテクニックだ。

iPhoneにaptX Adaptive対応のBluetoothアダプターを接続したところ。所有のiPhoneはLightning端子のため変換アダプターを使用している

そして、Px8ならばもっと簡単だ。実はPx8の充電ケースはBletoothトランスミッター機能を持っている。このため、iPhoneと充電ケースをUSB接続すれば、充電ケースを介してiPhoneとaptX Adaptiveで接続されるのだ。こうした機能を持っているワイヤレスイヤフォンは決して多くはない。iPhoneでより高音質で音楽を楽しみたい人は知っておくと役立つだろう。

iPhoneとPi8の充電ケースを変換アダプターを介してUSB接続。これでaptX Adaptiveでのワイヤレス接続ができる

B&Wのヘッドフォンやイヤフォンは、単純にスピーカーの開発チームが最終的な音の確認をしているどころではないレベルで、B&Wとしてのまったく同じような製品づくりが行なわれているいることが改めてわかった。音質へのアプローチはもちろん、デザインへのこだわりなど、B&Wらしさがしっかりとあらわれている。

B&Wのスピーカーに関心はあっても、イヤフォンやヘッドフォンにはあまり関心がなかった人、関心はあっても高価なことで敬遠していた人は、ぜひともこの機会にB&Wのヘッドフォンやイヤフォンを試してみてほしい。スピーカーに比べればははるかに安い価格でB&Wの魅力を知ることができるはずだ。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。