藤本健のDigital Audio Laboratory
第1046回

ヤマハのDSP搭載エントリーUSBオーディオの実力は?「URX22」を試す
2026年4月27日 10:10
今年1月のNAMM Showでローランド、コルグ、ヤマハ、フェンダースタジオなど、大手メーカーがこぞってオーディオインターフェイスを発表したことは以前にも紹介した通り。
その中でも目玉といえたのがヤマハの「URXシリーズ」だ。
DSPを搭載するとともに、4.3インチという大きなタッチスクリーンを搭載したこのシリーズは、HDMI端子も装備したユニークな「URX44V」(126,500円)を筆頭に、「URX44」(79,200円)、「URX22」(63,800円)と、同じ大きさのデスクトップ型が3製品がそろっている。価格を見ても少々高めな設定となっているが、音質的にはかなりハイエンドであることを訴えた製品だ。
名称的には、ベストセラー製品である「URX44C」や「URX22C」とそっくりではあるけれど、見た目も性能も大きく異なる機材。機能的にはかなり強力で、さまざまなことができるようになっている。
今回は主に音の測定に焦点を置いて、「URX22」をチェックしていくことにしよう。
新エントリーUSBオーディオ「URX22」概要
オーディオインターフェイスのベストセラーというと、スタインバーグの「UR22mkII」、そして、その後継UR22Cという時代が10年近く続いてきた。
ある意味、オーディオインターフェイスのエントリー機としての代名詞的存在であったわけだが、昨年10月にそのUR22Cがスタインバーグからヤマハに切り替わるとともに、製品名をUR22CからURX22Cへと変更され、カラーリングが微妙に変更されている。
といっても、企業買収だとかという大げさなものではなく、社内のブランド変更的なものであった。
もともとスタインバーグはヤマハの100%子会社として20年以上の歴史を持っているし、このオーディオインターフェイス自体は日本のヤマハが開発・設計を行なっていたので、特段すごいことがあったわけではない。
Cubaseをはじめとするソフトウェアはスタインバーグ、ハードウェアはヤマハと、整理を行なった形だ。
そうした下地を整えたうえで、その上位ラインナップであるURX44V、URX44、URX22という3製品を発表したわけだ。
スタインバーグブランド時代にUR22Cを出したときは、確かUSB Type-C接続なので、UR22Cという名称にした、と言っていたと思うが、現時点においてはURX22CやURX12CのCはCompactを表すもの、としているようだ。
実際、URX22とURX22Cを並べてみるとかなり大きさが異なることがわかる。
このURX44V、URX44、URX22についてはリリースされたタイミングで、筆者のブログサイトで詳しく紹介しているので、詳細はそちらに譲るが、ここではURX22について、ざっくりと紹介しておこう。
前述の通り、デスクトップ型オーディオインターフェイスで、天面に4.3インチのタッチスクリーンを搭載しているのが特徴的となっているが、入出力端子としてはリアに2つのコンボジャックでの入力と、2つのTRSフォン端子での出力を装備しているので、URX22という名称になっている。
フロントには6.3mmのヘッドフォン端子が独立した形で2つ、さらにその右には3.5mmの端子が3つ並んでいる。
このうち左2つがヘッドセット用のヘッドフォン端子とマイク端子、右側がAUX入力となっている。
またリアにはUSB Type-C端子が3つ並んでいるが一番左は5Vのパワー供給用、中央がメイン端子で右側がサブ端子となっている。
メインが本来のオーディオインターフェイス用として使うためのPCやタブレット、スマホなどと接続するためのものであるのに対し、サブのほうは別のマシンからオーディオを流し込むためのものとなっており、いわばデジタル入力端子としての位置づけだ。
そして、このシリーズに共通するのは、基本的に2chとか4chのアナログ入力しかないのに、論理的には10chとか16ch、18chといった入力を装備している。
ある意味、これはミキサーであり、どのチャンネルにどの入力を割り振るかかなり自由度高く設定できるようになっている。
実際、このURX44V、URX44、URX22とほぼ同じ機能を持ちつつ、ミキサーの形をした機材であるMGX16V、MGX16、MGX12V、MGX12という製品も同時にリリースされている。別の見方をすると、その点を理解しないと、このオーディオインターフェイスを使いこなすのは難しいのも事実だ。
また、その操作をほぼすべて4.3インチのタッチディスプレイを用いて行なう、というのもちょっとユニークな点だ。
一般的に、複雑な機能を持つオーディオインターフェイスの場合、WindowsやMac用のユーティリティも用意されていて、それを用いてルーティング設定をしたり、エフェクト設定をするが、ここにはそうしたものは用意されておらず、タッチディスプレイで行なうのだ。
もっとも、ディスプレイの下には4つのマルチファンクションノブ、右側には大きなタッチ&ターンノブが用意されていて、これらと組み合わせて操作する形になっているので、コンピュータ画面でマウスを使って操作するより使いやすいという面があるのも確か。とはいえ、これと連動する形のユーティリティソフトも用意してほしかった、というのが正直なところではある。
ちなみに、ミキサー的なものであることを理解の上、とことん使っていくのがStandardモードと、初心者がより簡単に操作できるようにしてあるのがSimpleモードの2つのモードが用意されている。
どちらのモードもシームレスに行き来可能なので、Simpleモードでだいたいの設定をしたうえで、細かなところをStandardモードに移って調整していく、といった使い方も可能だ。
実際、StandardモードでURX22を見ていくと10chのミキサーとなっていて、各チャンネルの入力を何にするかも自由に設定できる。
また1ch、2chには内蔵DSPを用いたゲート、コンプレッサ、EQ、INS FX(マルチエフェクト)が用意されており、細かく設定していくことが可能だ。
またセンド/リターンで接続するエフェクトも用意されているので、これがミキサーであることを理解して使っていくと、かなり深い使い方ができることもわかる。
だからこそ、Standardモードを初心者が使うことはなかなか大変だし、詳しいユーザーであっても初めてURX22でStandardモードを使うとなると、最初はかなり手間取りそうではある。ちなみにDAW側からURX22を見ると10in/10outのオーディオインターフェイスとして見えるようになっている。
音質とレイテンシーをチェック
筆者も、数カ月ぶりにURX22を使って、だいぶ手こずったが、いつものようにRMAA Proを使って音質測定を行なうために、まずは工場出荷時の状態に戻したうえで、出力部のEQなどをすべてオフに設定。
一方、アナログのメイン入力であるコンボジャックからの入力のほうもEQ、コンプ、ゲート、INS FXなどすべての設定をオフに。そのうえで過大出力や過大入力ゲインにならないように、バランスよく整えた上で実行してみた。
この過程でちょっと驚いたのはノイズの少なさだ。RMAA Proのモニター画面で見ると、通常はノイズフロアが見えてくるが、それが一切見えないのだ。
もちろんゲートはオフにしているので、ゲートで切っているわけではないのだが、S/Nは抜群に良さそう。
そして実際に、44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzのそれぞれで測定してみた結果がこちらだ。
※画像をクリックすると、全ての測定データを確認することができます
これを見てもS/Nは非常にいいのだが、f特を見ると、高域での伸びがやや足りない様子。EQなどはオフにしているので、この機材の特性らしい。
一方、レイテンシーについてもチェックしようと試みたが、CentranceのASIO Latency Test Utilityだとうまくいかなかったので、以前に使ったRTL Utilityを使って試した。
バッファサイズを一番小さくすると44.1kHzで4.626msec、192kHzで3.297msecとURX22Cなどともほぼ同じで、結構小さなレイテンシーとなっているようだ。
以上、ごく一部の面のみを覗いてみたがだっただろうか。
f特がもうちょっと拡がってくれるとよかったのだが、低ノイズなオーディオインターフェイスであることは間違いなさそうだ。
キレイな音で聴いてみたいという方は、一度試してみてはいかがだろうか。



























