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三菱電機、自社研究所内で研究成果を発表
-MPEG-21配信デモやシームレスDLPマルチシステムなど


2月13日公開


 三菱電機株式会社は13日、神奈川県鎌倉市の東部研究地域において、マスコミやアナリスト向けに研究開発成果の披露を行なった。

野間口有社長
 公開に先立ち、野間口有社長が挨拶を行なった。まず、「以前はここの所長だった」との前置きの後、「その当時から製品化の前の段階を見ていただこうと考え、こうした場を持ち続けた。当時の技術が現在、多数の主力製品となっている」と説明した。

 また、今後の展望としては「2001年度は大赤字だったが、2002年度は半導体、携帯電話などを中心に再生へと取り組んできた。収益力増加の方向性がだいたい見え始めたので、2003年度は成長に力を置きたい。その一翼を担うのが技術力。本日紹介する技術が、何年後かに三菱を支えるものとして、皆さんの前に登場するだろう」と述べた。


■ MPEG関連技術

 MPEG関連では、MPEG-2とMPEG-4の両方の符号化に対応した「リアルタイム電子透かし技術」をデモンストレーションした。NHKとの共同開発によるもので、コンテンツをほかの方式に変換後、2次利用するケースを想定しており、変換後も著作権保護が有効となるのが特徴。実用化は未定としている。

MPEG-21のデモで使用された携帯電話

 またMPEG-21標準化技術を使い、動画コンテンツを端末ごとに最適化して自動配信するデモを行なった。現在MPEG-21では、コンテンツの効率的な配信に必要となるフレームワークを検討しており、「Digital Item Adaptation」として7月に最終ドラフトをまとめるという。今回の展示はこれに即したもの。

 会場では、携帯電話を使ってテレビ、PC、PDAで同じ動画コンテンツを視聴するデモが行なわれた。携帯電話でコンテンツの視聴キーを取得し、赤外線経由でPCやテレビなどにキーを転送すると、ビデオサーバーからMPEG-4化されたコンテンツがストリーム再生される仕組み。さらに再生停止後、続きをテレビなどほかの端末で視聴することもできる。今回のデモの場合、フォーマットはテレビがMPEG-2、PCや携帯端末がMPEG-4を採用していた。

 さらに、HD映像のネットワーク配信技術も紹介された。埼玉県川口市の「NHKアーカイブス」で採用された技術で、最大20MbpsのHD映像(1080i)をオンデマンドで配信できる。配信パケットの最適化と新開発の配信制御技術によりIPネットワーク上で実現したとし、大型フラットパネルと組み合わせて、公共施設などへの導入を図るという。

NHKアーカイブスでも採用されたMPEG over IP技術の展示 8.5GBに2時間のHD映像を記録できるMPEG-2の高圧縮技術を紹介

■ DLPプロジェクタ

 リアプロジェクタコーナーでは、非球面ミラーを応用した「鋭角投射型シームレスマルチ大画面」を参考出品した。これは、2002年12月発売の「LVP-60XT20」と同じく、非球面ミラー搭載の超広角光学系を採用したシステム。光学系とDMD素子をスクリーン前方上下に2基ずつ設置し、フロント投写で4画面マルチシステムを構築したもの。特徴は、投影画面を一部重ねあわせ、重なった部位を「目地補正回路」で補正すること。また、超広角の非球面ミラーを採用することで、DMDおよび光学系を配置した張り出し部分を業界最短の55cmに収めている。

 会場では100型相当のマルチシステムを展示していた。解像度はDMD1基あたり1,024×768ドット。重ね合わせ部位はほとんど判別不能だった。ただし、今回は静止画でのデモで、動画の場合は「同期の関係などで多少重ねあわせが難しい」(三菱電機)としている。

シームレスマルチシステム。上下に2基ずつ投影システムを搭載し、中央に向けて斜めに投写している 6画面マルチで展示された3Dグラフィックス表示システム

 また、リアプロジェクタのマルチ画面による3Dグラフィックス表示システムの展示された。クライアントPC1台と、画面分の描画サーバーを必要とするシステムで、同社が開発したのはクライアント側の3Dグラフィックスミドルウェア。3Dグラフィックスのライブラリをエミュレートし、データを描画サーバーにマルチキャストできる。OpenGLにも対応し、将来的にはアミューズメント向けなどへの展開を図るという。

■ そのほか

 15型液晶ディスプレイを利用した家庭内ネットワーク端末も参考出品された。これは、NMビジュアルのWindows CE 3.0端末「ヴィシム」をベースにしたもので、インターネットや家庭内サーバーへの接続のほか、家庭内のAV機器や家電の制御をコンセプトに掲げている。AV機器との接続にはHAVIを想定している。単体でもWindows CE端末として動作するほか、PCのディスプレイとしても作動。無線LANは内蔵していないが、PCカードスロットで対応する。

 主婦やお年寄りがターゲットのため、「画面は15型、バッテリ持続時間は2週間以上」という設計思想に近かったのが、ヴィシムだったという。将来的には、自社販売のほか、システム構築の得意な企業とNMビジュアルとのコラボレーションといった展開を視野に入れている。

Windows CEを採用し、PCのディスプレイとしても使用可能。担当者も「期せずしてSmart Displaysみたいになった」と苦笑 今回はNMビジュアルのヴィシムをほぼそのまま展示していた

 「車載情報機器の新しい操作インターフェイス」という展示では、車の走行、または停止の状態に合わせて表示を変化させるカーマルチメディア用のインターフェイスが紹介された。走行中にはメニュー項目を最低限にまで減らし、文字も大きくするなど、運転のさまたげにならないよう変化させるという。また、HDDなどの車載ストレージを持ち、音楽などのデータベースを構築できる。

車載端末用インターフェイスの展示 走行時と停車時でインターフェイスが変化する。写真は走行時 ハンドルにはダイヤルとジョイスティックが設けられている。ハンドルから手を離すことなく操作が可能

 また、デザイン研究所管轄の「ユーザビリティ評価室」も公開された。これは、開発品のモックアップなどをモニタに体験してもらい、インターフェイスデザインを第三者的見地から評価検証するためのもの。近年ではカーナビゲーションシステム、携帯電話などで利用され、成果を上げたという。

 なお、モニタは基本的に同社社員から選抜する。もちろん評価を適切なものにするため、被験者には開発の意図は伝えないそうだ。

エレベータの実験風景。一般的なエレベータと異なり、インターフェイスが側壁に取り付けられている カーナビゲーションシステムの実験には、ドライビングシュミレータも利用する 携帯電話のインターフェイスをチェックするデモ

□三菱電機のホームページ
http://www.mitsubishielectric.co.jp/
□ニュースリリース(リアルタイム電子透かし)
http://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2003/0213-a.htm
□ニュースリリース(鋭角投射型シームレスマルチ大画面)
http://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2003/0213-o.htm
□ニュースリリース(マルチ大画面3Dグラフィックス表示システム)
http://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2003/0213-p.htm
□関連記事
【2002年9月20日】三菱電機、奥行き26cmの59V型DLPリアプロジェクタ
―天体望遠鏡「すばる」の開発メンバーも参加
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020920/mitsu.htm
【2002年2月8日】三菱電機、HDTVを9.8Mbpsに圧縮するMPEG-2符号化技術を発表
―片面2層のDVDビデオに約2時間のHDTV映像の収録が可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020208/mitsu.htm
【2001年5月15日】デジタル家電ネットワーク仕様「HAVi Ver.1.1」が公開
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010515/havi.htm

(2003年2月13日)

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]


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