◇ 最新ニュース ◇
|
||
【11月30日】 【11月29日】 【11月28日】 |
||
|
株式会社オプトウェアは3日、同社が開発を進めているコリニアテクノロジーを採用したホログラムデータ記録ディスクに関して説明会を開催。同社を含む6社が提案するホログラムディスク規格「ホログラフィック・バーサタイル・ディスク(HVD)」の推進団体「HVDアライアンス」の設立が発表された。
HVDは、国際標準化団体であるEcmaインターナショナルの技術委員会「TC44」で規格化が検討されているホログラムデータディスク。オプトウエアのほか、CMC Magnetics Corporation、Strategic Media Technology、東亜合成株式会社、パルステック工業株式会社、富士写真フイルム株式会社の6社がEcmaに共同提案を提出し、2004年12月9日のEcma総会においてTC44の設立が決定されている。 今回、「HVDアライアンス」を立ち上げたのも同提案を提出した6社。TC44で現在検討が進められているHVDの実現に向け、ディスクメーカーや材料メーカー、デバイスメーカー、評価機メーカーなどの情報交換や、プロモーション活動を予定している。今春の正式発足に向け、会員規約の制定や組織体制の整備などの準備を進めていくという。
オプトウェアの青木芳夫社長兼CEOは、オプトウェアのHVDへの取り組みとロードマップ、製品戦略などについて解説した。TC44に提案されたHVDは以下の4つの規格で、2006年中に検討を進め、ファイナルドラフトが出来上がり次第、順次ISOに提案していく。
200GBの記録型HVDメディア(HVD-R)ではカートリッジが必須となるが、ROMメディアではカートリッジはオプションとなる見込み。EcmaでFastTrackと呼ばれる早期の規格化作業を2006年6月より順次終了し、ISO(International Organization for Standardization)での規格化を図る。「デファクト(事実上の業界標準)でなく、デジュアスタンダード(公的機関による標準)を目指す」という。 ロードマップとしては、HVD-RとHVCが2005年5月にファーストドラフトをまとめ、2006年6月にEcmaで承認。ISOへ提出し、12月頃での承認を目指す。HVD-ROMについては、2005年8月にファーストドラフト、12月にEcmaでの承認を見込んでいる。
青木社長によれば、「まずは2006年中にデータストレージとしての導入を目指す」という。「米国や欧州では、コンプライアンス(法令遵守)の機運がますます高まっており、政府関連などでは、数年以上の保存が定められたデジタルデータが増えてきている。また、医療関連のデジタル化も進み、この分野の市場も年率80~100%以上の成長を見せている」としており、現在同市場で主流となっているテープドライブなどの置き換えを狙う考えだ。 データストレージ市場は、EMCやストレージテックなどのストレージメーカーや、HPやIBMなどのコンピュータメーカーが中心となるため、米国市場に注力。2005年中に米国法人を立ち上げる予定という。 また、HVDの特徴としてはランダムアクセス性と、改ざんできないこと、の2点をあげ、「特にデータストレージのマーケットでは“改ざんできない”ことが、非常に重要になっている。現在の光ディスクではソフトウェア的な保護を施しても、解除できることが多いが、HVD/HVCでは一度書いてしまうと破壊はできても絶対に改ざんできない。さらにこのマーケットではテープストレージが主流。HVDのランダムアクセス性を訴求し、これらを置き換えることができる」とした。 また、データ改竄ができないことについて同社では「Phi(パーマネント・ホログラフィック・インフォメーション)」というコンセプトを提案。情報保全が求められる業務市場を中心にPhiのコンセプトをアピールし、HVD/HVCのプロモーションを行なっていくという。
なお、HVD/HVCでは書換型のメディアは用意されていない。「検討はしているが、Ecmaへの提案などの予定は無い」としている。民生向けの市場については、ブルーレイやHD DVDの市場が落ち着いてくる2008年頃からの展開を予定しているという。 オプトウェア自身のビジネスとしては、ドライブの製造とメディア関連のライセンス事業を中心とし、メディアは製造しない。「ビジネスモデルとしては、(DLTテープドライブの製造やライセンスを行なう)米Quantumに近い」としている。
堀米秀嘉CTOはHVDとHVDで採用予定のコリニア方式のホログラムデータ記録について説明した。現在の光ディスクではNA(対物レンズの開口数)を高めて、ビームスポットを微小化。ブルーレイでは保護層は0.1mmにまで薄くなっている。 ここまで保護層が薄くなってしまうのは、レーザーでディスク上のデータを1bitずつ面記録するためだが、ホログラムディスクでは厚み(体積記録層)に記録するため、保護層の薄さなどの問題は無くなるという。 ホログラム記録の原理は、情報光と参照光の2つの光から細い光の束を生成、それぞれにメディアに入射させ、その干渉パターンを記録するというもの。このパターンは「ページデータ」と呼ばれる、白黒のドットで構成された2次元バーコード状のデータで、記録再生の最小単位となる。ページデータの容量は1ページ32kbitとなる予定。
同社のコリニア方式には、大きくわけて2つの特徴がある。まず、情報光と参照光を同軸上の1つのレーザーに集約したため、従来の二光束干渉法に比べ、光学系を簡素化できる。また、2種類のレーザー光源を利用する2波長光学系を採用し、メディアに波長選択反射膜を採用することで、情報光は青紫レーザーでフォトポリマーの記録層に記録、参照光は赤色レーザーでアドレス情報を読み出しながらも光の散乱の影響による信号品質の劣化が防止できるという。 もうひとつの特徴は、従来の光ディスクと同様に、アドレス情報や位置決め用のクロックをピットとして刻んだプリフォーマット層を用意。ディスクにアドレスを刻んだことで、CDやDVDなどと同様に「オンザフライ」での記録が可能となった。
ホログラム記録が発明されてから約40年間実用化にいたっていなかったが、記録媒体に高い平滑性や平面度が求められるなどの技術的ハードルが高かったほか、いかに記録し、読み出すか、という基本的なルールが決められなかったことも大きかったという。 EcmaでTC44が立ち上がったのも、ディスク上にアドレスを刻むというアドレスの読み出しのルールがしっかり決まったことが高く評価された。なお、Ecmaでは標準化を進めるのは当面コリニア方式で、標準化の内容もメディアの記録/再生互換性に関するものとなるという。 なお、実用化に向けた課題としては、レーザーパワーや、フォトポリマの感度などが挙げれるが、「今はまだ参入社が少ないため競争があまり無い状態だが、多くの会社が取り組みを開始すれば競争が進み、開発の速度も上がるだろう。アライアンスを立ち上げたこととあわせて賛同メーカーが増えてくれば、多くの問題は解決できる(青木社長)」としている。 □オプトウェアのホームページ (2005年2月3日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |