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松下、3期連続の増収増益を達成
-「次世代メディアの歩み寄りを注意深く見ている」


中村邦夫社長
4月28日発表


 松下電器産業株式会社は28日、2004年度連結業績を発表。売上高は前年比16%増の8兆7,136億円、営業利益は58%増の3,085億円、税引前利益は45%増の2,469億円、当期純利益は39%増の585億円と、増収増益となった。

 中村邦夫社長は、「3期連続の増収増益を達成し、利益は2月の公表値を上回った。大規模な構造改革は2004年度で終了し、今後は成長戦略を加速する段階に入ってきた」と、これまでの構造改革の成果を振り返った。

 AVCネットワークは、前年並の3兆8,588億円、営業利益は1%減の1,274億円。PDPテレビやデジタルカメラ、カーエレクトメロニクスが好調だったものの、携帯電話が中国市場を中心に不振だったのが影響。さらに、オーディオの不振も響いた。

2004年度の連結業績 AVCネットワークの業績

 同ドメインの主要会社別の業績では、携帯電話事業を担当するパナソニックモバイルコミュニケーションズが売上高で1%減の5,595億円、営業損失ではマイナス89億円の赤字となった。だが、デジタル家電などを担当するパナソニックAVCネットワークス社は、売上高が前年比10%増の1兆3,246億円、営業利益は5%増の301億円となり、営業利益率は2.3%となった。

 主要製品別では、テレビは前年比2%増の4,886億円、PDPテレビは71%増の2,172億円、DVDレコーダーおよびDVDプレーヤーは1%減の1,499億円、音響機器は20%減の2,268億円、情報機器は4%減の1兆2,153億円、通信機器は9%減の8,609億円。通信機器のうち携帯電話は8%減の4,924億円となった。

 白物家電などが含まれるアプライアンスは、売上高が9%増の1兆3,328億円、営業利益は47%増の776億円となった。営業利益率は5.8%。エアコン、洗濯機、食器洗い乾燥機が増益に貢献したという。

 デバイスは、売上高が11%減の1兆4,690億円、営業利益は15%増の578億円。電子部品やモーターが増益に貢献するとともに、合理化による経営体質の強化が利益体質を高めることにつながった。

 「デバイス部門は、松下電器の強みを発揮できる分野であり、外販の数字が少なくても、内製の製品に大きな貢献がある」(中村社長)としている。

 今年度から加わった松下電工およびパナホームは、売上高が1兆5,561億円、営業利益が639億円となった。

アプライアンスではエアコン、洗濯機、食器洗い乾燥機が増益に貢献 デバイス部門は合理化による経営体質の強化が利益に繋がった 松下電工およびパナホームは今年度から加わった


■ 「2005年の当期純利益は1,100億円を目指す」

2005年度の連結業績見通し

 2005年度の連結業績見通しについては、売上高は前年並みの8兆7,200億円(国内4兆6,000億円、海外4兆1,200億円、いずれも前年並み)とする一方で、営業利益は7%増の3,300億円、税引前利益は17%増の2,900億円、当期純利益は88%増の1,100億円とする増益計画を明らかにした。

 「2005年は、原油高、材料高が続いているのに加え、製品価格の下落もあるなど、経営環境は向かい風のなかでのスタートとなった。今年度は躍進21の中間年度にあたり、まさに正念場である。大規模な構造改革は終えたこともあり、営業利益は7%増の3,300億円、純利益は約2倍の1,100億円を目指す。今後は、利益体質を強化していく」(中村社長)と意欲を見せた。

 2004年度には1,300億円の構造改革費用を計上していたが、2005年度はこれが350億円にまで縮小。最終利益の引き上げにも影響する。

 前年並となる売上高については、松下リース・クレジットへの住友信託銀行への譲渡などがあり、「これらを差し引けば、実質4%増になる」(川上専務取締役)とした。

 主力となるAVCネットワークは、売上高が1%増の3兆9,100億円、営業利益は30%増の1,660億円と大幅な増益を見込む。「過去2年間に渡って、大量の流通在庫問題に追われた中国の携帯電話が、いよいよ今年度後半から回復してくる」(中村社長)のが要因であるほか、PDPテレビの需要拡大、デジタルカメラの利益貢献が期待できるとしている。

 「PDPでは、問題となっていた消費電力に関して35%の低消費電力化が図れ、液晶テレビを凌駕するところまできている。北米、欧州を中心に積極的な広告展開を仕掛け、出荷台数を大幅に伸ばしたい。また、デジタルカメラは、昨年投入したFX7によって、国内ナンバーワンシェアを獲得した。手ぶれ補正のブラックボックス技術を生かし、ラインナップの拡充と海外販売強化で、2006年度グローバルシェア10%に向けた取り組みを行いたい」(川上徹也専務取締役)とした。

 携帯電話を担当するパナソニックモバイルコミュニケーションズも、今年度は営業利益で80億円と前年度の赤字から黒字転換を目指す。

PDPの弱点だった消費電力も改善。出荷台数の大幅増加を狙う デジタルカメラはラインナップの拡充と海外販売を強化


■ 「次世代メディアの歩み寄りを注意深く見ている」

 また、中村社長は、「デジタル家電は価格下落が激しく、しかも、原材料の価格高騰をそのまま転嫁できないという厳しい状況にある。生産プロセスの合理化、設計の見直し、生産性の向上といった努力によって、価格下落と原材料の高騰による利益圧迫を吸収する形にしなければならない。この体質ができなければ勝てない。消極的に対応するのではなく、積極的に立ち向かって問題解決に挑みたい」として、当初、今年11月に予定していたPDPの尼崎工場の稼働を、遅くとも10月に稼働させることを明らかにした。

 さらに、現在主力の茨木第2工場の生産ラインの強化などによって、生産体制の強化と合理化を推進。AVCネットワーク事業の営業利益率を4.2%にまで引き上げる考えを示した。

 アプライアンスは、売上高で前年比2%減の1兆3,000億円、営業利益で3%減の750億円と減収減益とした。だが、営業利益率は5.8%を維持するほか、電工・パナホームが売上高で10%増の1兆7,100億円、営業利益で2%増の650億円としており、今後は電産・電工のシナジー効果が期待されるところだ。

2005年のV商品は全社で67件。1兆5,000億円の売り上げを目指す

 4月1日からの電工・電産のシナジー型の新体制スタートによって、重複事業の再編に取り組んでおり、今後2年間では連結売上高1,000億円の増加が見込まれるという。また、デバイスは、売上高が6%減の1兆3,800億円、営業利益が7%増の620億円とした。

 なお、今年度のV商品は、全社で67件となり、これらで1兆5,000億円を売り上げる計画を明らかにした。

 また、ソニーと東芝の次世代メディアを巡る一連の動きに対しては、「当社は第3者である。ただ、0.1mm(記録層、読み取り保護層)は譲れない部分。どういう歩み寄りになるのか。興味深く見ている」(中村社長)とした。


■ 松下方式の大規模株式買い付け防衛策

 一方、同社では、敵対的買収についての対策として、株主への年間配当の拡大、自己資本比率の向上、さらに、大規模な株式買い付け行為に関する対応方針を示し、「事前予告型の防衛策」(中村社長)に取り組むことを発表した。

 中村社長は、「これは1年以上前から検討を重ねてきたもの」と、ニッポン放送とライブドアの問題とは別の動きであることを強調した上で、「松下電器は1兆6,000億円程度の資産があるが、LBOをかければ簡単に資金が集まるだろう。また、時価総額でも3兆6,000億円程度であり、3兆円を集める投資ファンドの可能性もあり、常に買収の対象になりうると危機感を持っていた。メーカーは10年以上をかけて技術を製品化するが、企業がまるで商品のように売買され、経営者の活力がそこに割かれれば企業は衰退に向かわざるをえない。そうした事態に陥らないように事前に準備をしておく必要がある」とする。

 同社では、今年度の年間配当を15円から20円に引き上げるとともに、取得金額で1,500億円、取得株式数で1億2,000万株を上限とした自己株式取得を行うほか、ESV(エンハンスメント・オブ・シェアホルダー・バリュー)プランを策定し、20%以上の大規模買付の提案があった場合には、買付者に対して、買付の目的や内容、経営方針、事業計画などの情報請求をし、これを株主へ情報提供する透明性を持たせるルールを作った。

 「このルールが順守されない場合には、法律ならびに定款に則り、取締役会が、株式分割、新株予約権付与などの手段を講じることになる」(川上専務取締役)という。こうした事前に防衛策を明確に提示する例は、日本の企業にはなく、「いわば松下方式といえるもの」(川上専務)とした。

□松下電器のホームページ
http://panasonic.co.jp/
□決算情報
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn050428-3/jn050428-3.html
□関連記事
【2月4日】松下、第3四半期連結決算は増収増益に
-プラズマテレビの優位性を強調
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050204/pana3.htm
【1月12日】松下電器、2005年度経営方針を発表
-「躍進21達成に向け、正念場の1年に」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050112/pana.htm
【2004年10月29日】松下、「満足すべき」上期決算
-「まだ危機は脱していない」と上方修正は見送り
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041029/pana.htm

(2005年4月28日)

[Reported by 大河原克行]


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