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東芝EMIの「セキュアCD」(フェアフリーダムCD技術)を試す
-PCでの音質は改善。CD-RコピーでセキュアCDの複製が


セキュアCDには「フェアフリーダムCD」技術が採用されている
12月31日発売


 東芝EMI株式会社は、8月31日より発売する音楽CDの一部タイトルから、新しい著作権保護/コピーコントロール技術「セキュアCD」を採用すると発表した。編集部では発売前日の30日に、THE ROLLING STONESのアルバムなど、セキュアCDの販売を確認。THE ROLLING STONESの「ア・ビガー・バン」(TOCP-66440/2,548円)を購入して、セキュアCDの利用方法や使用感などを検証した。


■ 「フェアフリーダムCD」技術を採用

 外観は通常の音楽CDと変わらないが、「CD」ロゴはなく、帯に「パソコンでのご使用には制約があります」という但し書きがあり、内蔵する専用ソフトの対応OSなどが記載されている。帯だけでなく、ケースにも小さな注意書きが記載されているが、コピーコントロールCD(CCCD)とは異なる技術が使われているため、CCCDの赤いマークは印刷されていない。また、セキュアCDとして新しいマークなども付いていないため、一見では通常の音楽CDと区別がつきにくい。店頭で購入する際には注意が必要だ。

 なお、同社ではセキュアCDで利用される技術について、「ユーザーが利用する際の疑問やトラブルのサポートは行なうが、技術の詳細な情報は公表しない方針」としており、具体的に採用している技術などは公開していない。

 採用されている技術に関しては、米Macrovisionが開発したコピーコントロール技術「CDS-300」、もしくはIBMの「xCP」が予想されたが、帯裏面の問い合わせ先が「マクロヴィジョン・ジャパン・アン・アジア株式会社 技術サポート担当」となっているため、CDS-300が採用されていると思われる。

帯にPCでの利用時の制限が記載されている 裏面には問合せ先と、情報を掲載しているサイトのURLが記載されている 帯だけでなく、ディスク本体にもPCでの再生に制限があると記載されているが、CCCDやセキュアCDのマークなどは無い

フェアフリーダムCDのホームページ。Q&Aなどの情報が記載されている

 同部分に記載されているURL「http://www.fairfreedom.info/」にアクセスすると、「フェアフリーダムCD」というページが表示され、セキュアCDに採用されている技術名が「フェアフリーダムCD」と名付けられていることが書かれている。ちなみに同技術の解説部分には「CDS - Audio CD Content Protection by Macrovision Corporation」と記載されている。

 また、PC上でディスクの中を見てみると、専用ソフト関連のファイルが多数確認でき、専用ソフト以外の再生ソフトで読み込んだ際のダミー用と思われる、容量数KBの小さなWMAファイルが、トラックと同数入っていた。

 ファイル名に「cds300.dll」などが確認できるため、CDS-300の技術が使われていることに間違いなさそうだ。また、「trackinfo.xml」の中身を開いてみると、「cds300 version="8.0"」という記述も発見した。

ディスクの中をエクスプローラーで表示したところ cds300というファイル名が多くみられる 「cds300 version="8.0"」という記述も発見した


■ 専用ソフトで再生/HDDコピー/CD-Rコピーが可能

 ディスクをPC(Windows XP)に挿入すると、専用ソフトが立ち上がり、使用許諾契約書が表示される。ソフトはFlashをベースにしたもので、CCCDの専用ソフトと比べると若干縦に長い。機能は下部のボタンで切り替える。再生を行なう「トラックリスト」と、HDDへファイルとしてコピーする「トラックの保存」、CD-Rへのコピーを行なう「CDの作成」、「エクストラ」の4モードを用意している。

 再生、停止、ボリュームなどのコントロールはウインドウ下部のプレーヤー部で行なう。再生は「トラックリスト」を押して、任意のトラックをダブルクリックすればスタートする。動作は軽快で、音質もCCCDの専用プレーヤーで低ビットレートの圧縮データを再生しているのとは異なり、良好。おそらくCD-DAデータをそのまま再生していると思われる。

初回起動時には使用許諾契約書が表示される 再生画面。主な操作は下部のプレーヤー部で行なう

 HDDへのコピーは「トラックの保存」から行なう。選択できるフォーマットはWMAのみで、CBR/VBRとロスレス圧縮(可逆圧縮)の3種類から選択できる。CBR(固定ビットレート)では96/128/192kbps、VBR(可変ビットレート)では50~90/85~145/135~215/240~355kbpsが指定できる。

 固定ビットレートの192kbpsを選択し、3分30秒のトラックをエンコードするのに約40秒。エンコード終了直後にDRM関連の作業が入り、そこから約30秒。再び操作が可能になるまで計1分10秒程度かかった。ロスレス圧縮では約1分でエンコードが終了。ドライブの読み込み速度やPCの性能によって所要時間は異なるが、Windows Media Player(WMP)でコピーするより若干遅く感じられる。

CBR/VBRとロスレス圧縮(可逆圧縮)の3種類から選択 ビットレートや保存先も変更できる コピー中の画面

 ちなみに、同じディスクをWMPで読み込むと、マウントすることはできるのだが、短い音声ファイルの再生/停止動作を繰り返すだけという状態になり、再生はできない。また、「取り込み」ボタンを押してもトラックは認識されず、コピーはできない。また、iTunesでも読み込んでみたが、同様に認識されなかった。

WMPやiTunesでの再生/取り込みは行なえない

 作成されたWMAファイルにはDRM保護が付いている。制限事項はタイトルによって異なり、「ア・ビガー・バン」の場合は、再生は制限なく行なえ、共同再生が禁止。CD-Rへの書込みは7回、ポータブルプレーヤーへの同期は無制限、ライセンスのバックアップは可能という内容だった。

ライセンスの詳細 タイトルやアーティストなどの情報も付与されている オーディオコーデックの詳細

同期も行なえる

 作成したWMAファイルは、WMPを利用してWMA DRMに対応したポータブルオーディオプレーヤーに転送できる。転送は通常のWMAファイルと同じで、同期メニューから行なう。アイリバーの「T10」でテストしたところ、問題なく転送・再生が行なえた。

 また、WMAファイルからWMPを使って作成したCD-R(CD-DA)や、元のセキュアCDをDVDプレーヤー(パイオニア DV-578A)などに読み込ませたが、特に問題なく再生できた。


■ CD-R一括コピーでセキュアCDの機能限定版を複製

 WMAファイルからCD-Rへのコピーが行なえるのは前述の通りだが、もう1つのコピー方法として、専用ソフトからCD-Rへの「ディスク一括コピー」が行なえる。CD-R一括コピーを行なうにはメニューから「CDの作成」を選択。CD作成ソフトをインストールする旨のメッセージが表示される。

 「はい」を選択するとインストールが開始されるのだが、通常のソフトのようにインストールするフォルダの選択などはなく、インストールが開始される。どうやらシステムドライブ以下の「Program Files\CDS\CD Burning 4」にインストールされたようだ。ここから、書込みソフトは「CD Burning 4」であることがわかる。

CD-Rへのコピーを行なうためには、ライティングソフトのインストールが必須。インストールドライブを選べず、インストール後には再起動が必要など、少々不便だ

CD Burning 4は削除することもできる

 なお、一度ライティングソフトをインストールすれば、次回からインストールする必要はない。また、CD Burning 4は「プログラムの追加と削除」に登録されているため、不要になったら削除することもできる。

 インストール後には再起動が必要になる。再起動後に専用ソフトを起動し、「CDの作成」を選択すると、書込みドライブの指定や、書込み速度(低速/中速/高速)を選択。また、コピーと同時に、メディアライブラリへのコピー(トラックのリッピングと同じ機能)も行なうかどうかを選択できる。トラックの並び替えや、コピーしないトラックの指定はできず、ディスクすべての一括コピーしか行なえない。

「ア・ビガー・バン」では、3回のCD-Rコピーが許可されていた。CD-Rの内容は一旦テンポラリにキャッシュされるため、読み込みと書込みが同一のドライブでもコピーが行なえる

キャッシュ中のWMAファイルは330kbpsでエンコードされている

 高速モードでTHE ROLLING STONESの「ア・ビガー・バン」をコピーしようとしたところ、一時フォルダにキャッシュコピーする際に22分30秒かかった。ライティングが開始されてからは6分25秒で終了した。

 キャッシュの方に長時間かかったのを不思議に思い、HDD内を検索したところ、各トラックのWMAファイルを作成しているのが確認できた。つまり、セキュアCDから一度WMAファイルにエンコードし、そこからデコードしながらCD-Rへライティングするようだ。テンポラリフォルダ内のWMAファイルのビットレートは320kbps。オリジナルをそのままコピーしていないが、それなりの高ビットレートで受け渡しているようだ。

 CD-Rへのコピーが完了するとキャッシュのWMAは削除される。また、完成したディスクは通常の音楽CDになるのではなく、セキュアCDのコピーとなる。音楽データだけでなく、専用の再生/コピーソフトも一緒にコピーされているのだが、完全なコピーではなく、PCで読み込むと「トラックの保存」と「CDの作成」がメニューから消えている。

 つまり、HDDへのコピー機能と、CD-Rへのコピー機能を削除した、機能限定版のセキュアCDを複製していることになる。なお、ここまで検証する際に、複数台のPCで認証エラーや、書込みドライブが認識されないなどの問題が発生した。PC固有の問題の可能性もあるが、より安定度の向上を期待したいところだ。

 なお、一括コピーを行なう際、「メディアライブラリへ同時にコピーする」にチェックを付けた場合、テンポラリフォルダは作成されず、「トラックの保存」で設定されているフォルダに保存され、そこからCD-Rに書き込まれる。ビットレートの設定には、HDDへのコピー時に設定した数値が使われる(ただし、下限は320kbpsになっているようだ)。これにより、一括コピーで、WMAのロスレス圧縮ファイルをライブラリに保存し、そのファイル経由でCD-Rに書き込むことが可能だ。

機能を制限されたセキュアCDが完成する。専用ソフトから「トラックの保存」と「CDの作成」ボタンが消えている


■ 音質面での不満は改善されたが、依然として不便な点も

 CCCDはPCでの再生する際、低いビットレートの圧縮ファイルを強制的に再生することから不満の声が多かったが、セキュアCDでは再生音質の面では改善されている。専用ソフトの使い勝手もわかりやすく、トータルプラットフォームとしては完成度は高い。

 しかし、HDDへのコピーやCD-Rのコピーも専用ソフトからしか行なえないことや、CD-Rコピー時に、ライティングソフトが既にPCにインストールされていても、強制的に新たにソフトをインストールするなど、不便に感じる点も依然多い。

 また、前述の通り作成したWMAファイルから、Windows Media Playerを使って音楽CDとしてライティングすることは制限回数だけ可能なため、CD-Rへのコピー機能自体が不要にも思える。なぜなら、Windows Media Player経由であればセキュアCDとしてのプロテクトのないCD-R(CD-DA)が作成できてしまうからだ。「ア・ビガー・バン」の場合は、WMAのCD-Rへのコピー回数(7回)よりも、CD-R一括コピー(3回)の方が回数が少なく設定されているのも不思議ではある。

 また、専用ソフトの対応OSはWindows XPのみで、64bit版WindowsやMac OSには対応していない。前述の通り、iTunesもサポートしていないほか、MAGIQLIP2、SonicStageなどにも対応していない。WMAのみのエンコードになっているため、そのままiPodに楽曲が転送できないというのは、現時点では致命的と言っても良い、大きなマイナスポイントだろう。

□東芝EMIのホームページ
http://www.toshiba-emi.co.jp/
□フェアーフリーダムCDの解説ページ
http://www.fairfreedom.info/
□セキュアCDについての解説ページ
http://www.toshiba-emi.co.jp/securecd/
□関連記事
【8月19日】東芝EMI、8月31日より音楽CDに「セキュアCD」を導入
-専用ソフトでWMAコピー。既定回数CD-Rコピーも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050819/temi.htm
【コピーコントロールCD関連記事リンク集】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/cccdlink.htm
【1月31日】ワーナー、CCCDを終了。昨年12月から新譜は通常CDに
-HDDプレーヤーなど音楽再生環境の変化に対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050131/wmg.htm
【2004年9月17日】エイベックス、CCCDの採用を弾力化。現場スタッフが採用決定
-HDDプレーヤーへの対応を重視。SACDやDVDオーディオも積極採用
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040917/avex.htm
【2004年9月30日】SME、CCCDの「レーベルゲートCD」を終了へ
-11月17日より全タイトルを通常の音楽CDでリリース
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040930/sme.htm
【2003年1月20日】Macrovision、コピーコントロールCD技術「CDS-300」を発表
-HDDへのコピーも可能に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030120/macrov.htm

(2005年8月30日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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