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ソニー、第3四半期はエレキ、ゲームが牽引し好決算に
-QUALIA、QRIO、PDPなど撤退9カテゴリーを公表


執行役エグゼクティブバイスプレジデント兼CFOの大根田伸行氏

1月26日発表


 ソニーは27日、2005年度第3四半期(10月~12月)の連結決算を発表した。売上高は、前年同期比10.2%増の2兆3,676億円、営業利益は46.8%増の2,028億円、税引前利益は51.4%増の2,259億円、当期純利益は17.5%増の1,689億円の増収増益となった。売上高と当期純利益は四半期ベースとしては過去最高を記録したという。なお、持分法による投資利益は前年同期比735.6%増の195億円となった。

 年末商戦においてエレクトロニクス事業とゲーム事業が好調に推移したこと、金融分野の拡大などが好調の要因。

 同社では、今回の業績を受けて、2005年度通期の見通しを上方修正し、9月時点での売上高7兆2,500億円の見通しを、7兆4,000億円に、営業利益をマイナス200億円の赤字から1,000億円の黒字に、税引前利益を400億円から1,900億円へ、当期純利益をマイナス100億円の赤字から700億円の黒字とした。「第3四半期の為替レートが想定よりも円安で推移したことも上方修正の要因のひとつ」としている。

第3四半期の連結業績 2005年度の連結業績見通し


■ エレクトロニクス事業に回復感

エレクトロニクス事業の売上高、営業利益

 エレクトロニクス事業は、売上高が4.7%増の1兆5,958億円、営業利益は56.2%増の789億円となった。

 液晶テレビのBRAVIAが全世界で好調な売り上げを記録。特に、米国では市場シェア1位を獲得したほか、金額シェアでは約30%を確保したことが影響。

 さらに、米国市場で好調なリアプロジェクションテレビ、新たに投入したウォークマンAが欧州市場で貢献したこと、DVD対応およびハイビジョン対応が好調なビデオカメラの世界的な好調ぶりなどが増収増益の要因となった。


コーポレイトエグゼクティブシニアバイスプレジデントの湯原隆男氏

 コーポレイトエグゼクティブシニアバイスプレジデントの湯原隆男氏は、「テレビ事業における商品力の強化、認知度の向上、コスト削減による原価率の改善、大型化による価格維持などがプラス要素となっている。BRAVIAは、全世界の液晶テレビの実売金額では、リーディングポジシションを獲得した。リアプロをあわせた薄型テレビの領域においても、第3四半期にはトップグループに入ったと判断している」とした。

 また、執行役エグゼクティブバイスプレジデント兼CFOの大根田伸行氏も、「テレビ事業の回復には手応えを感じている」とコメントした。

 確かに、テレビ事業は、第3四半期の売上高では16.2%増の3,611億円と増加した。だが、営業損失はマイナス19億円の赤字と、依然として赤字体質からは脱却できていない。

 大根田CFOは、「赤字とはいえ、当初の見込みよりは約250億円程度改善しており、その多くが液晶テレビによるものだ。その点では、回復の感触はある。だが、黒字化は、2006年下期からという見方は変えていない。損益はブレイクイーブンが視野に見えるところまできたが、第4四半期は他社の価格下落の影響も見込まれ、楽観はできない。むしろ、慎重な見方をしていきたい」とした。

 大根田CFOは、32インチの液晶テレビを例にあげ、過去1年間では、約28~29%の価格下落が見られたと指摘。「当初想定していた35~36%の値下がりに比べると、昨年秋以降、下落の勢いは弱まったと見ている。第4四半期は4~5%の価格下落が想定され、年間では20%程度の価格下落を目安にしている」などとした。

 なお、液晶テレビの出荷目標を10月時点発表の250万台から280万台に上方修正。その一方で、プラズマテレビは15万台から10万台に、液晶リアプロジェクションテレビは140万台から125万台にそれぞれ下方修正した。

 オーディオ事業は、売上高が前年同期比0.3%増の1,846億円、営業利益は34.4%増の121億円。携帯オーディオプレーヤーは、「前年にはほとんど貢献していなかったことからシェアは上昇している」としたものの、「ソフトウェアのバグの問題などもあり、期待よりは低かった。とくに日本での出荷が見込みを下回っている」(大根田CFO)とした。

 ただし、当初から日本、欧州、アジアといった地域を限定していたこと、欧州が比較的好調であることから、年間の450万台の計画は修正しないことを明らかにした。

 ビデオ事業は、売上高は6.1%減の3,139億円、営業利益は63.0%増の308億円。DVDビデオカメラ、ハイビジョンビデオカメラの好調がプラス要因。パソコンなどが含まれる情報・通信事業は、売上高が2.4%減の2,247億円、営業利益は231.3%増の212億円。VAIOが、欧州、アジア、中国で堅調な動きを見せたことが、情報・通信事業の増益につながったという。

 オーディオ、ビデオ、テレビ、情報・通信の4つをあわせたAV&ITでは、売上高が前年同期比2%増の1兆843億円、営業利益は、216億円増加の622億円となった。

 なお、エレクトロニクス事業のうち、半導体&コンポーネント事業は、売上高が22%増の4,340億円、営業利益は、101億円増加の154億円となった。ゲーム向け半導体、リチウムイオン電池、メモリースティック、光学ドライブなどがプラス要因となっている。


■ ゲーム事業は過去最高を記録

ゲーム事業

 一方、ゲーム事業は売上高が48.3%増の4,192億円、営業利益は52.1%増の678億円と、四半期としては過去最高の実績となった。

 売上高の3分の2を占めるハードウェアは、PS2が536万台と引き続き堅調に推移したほか、PSPが日米欧の全地域で順調に拡大し622万台を出荷。さらに、ソフトウェアもPSP向けが好調で、自社製ソフトの比率も前年同期の14%から16%へと上昇した。営業利益もPS3の研究開発投資や宣伝広告費の増加という要素はあったものの、PSPおよびPS2ビジネスの好調ぶりがこれを吸収した格好だ。

 なお、昨年12月末にはPSPの累計出荷台数が1,200万台を突破している。

 また、「PS3の発売時期、価格などについては現時点では申し上げられない。そのため、来年度のPS2事業への影響にも言及できない」(大根田CFO)とした。

 映画事業は売上高が0.4%減の2,022億円、営業損失はマイナス4億円の赤字。前年同期には、スパイダーマン2のDVD/VHSソフトによる売り上げ貢献があったものの、今四半期は「The Legend of Zorro」や「ザスーラ」の不振による劇場興業収入の減少が影響した。

 だが、大根田CFOは、「この第3四半期は少し悪かった。第4四半期から来期にかけては大型作品も出てくるので、今後は回復することになるだろう」との見通しを示した。

 金融事業は、収入が31.3%増の1,904億円、営業利益が238.4%増の470億円。ソニー生命の増収などが影響。その他事業では、約4割を占めるSMEJが、平井堅のアルバムのヒットなどにより増収となり、売上高で8.1%増の1,181億円、営業利益で11.1%増の149億円となった。

映画事業 金融事業 音楽、アニメなどその他の事業



■ 構造改革の進捗状況も明らかに

構造改革の進捗報告

 一方、同社では構造改革の進捗状況についても報告した。

 これは、昨年9月22日に行われた経営方針説明会のなかで、同社・ハワード・ストリンガーCEOが、「定期的に進捗状況を報告していく」と言及したのを受けたもの。2007年度末までの目標とした、いくつかの数値についての進捗状況が明らかになった。

 連結営業利益率については、全社で5%、エレクトロニクス事業で4%としていたが、第3四半期までの実績では全社で4.3%、エレクトロニクス事業で1.5%。また、コスト削減については、2,000億円のうち第3四半期までで150億円、今年度末までに330億円の削減が可能とした。

「11製造拠点集約プラン」の進捗状況

 さらに、製造拠点の統廃合では、65拠点のうち11拠点の統廃合を行うとしたが、第3四半期までに3拠点の集約を完了。さらに、今年度末まで4拠点を集約することが決定しており、年度内に7拠点の統廃合が完了するとした。

 人員削減については、1万人の目標に対して、2,400人を第3四半期中に削減。年度内には約4,500人の削減が完了するという。資産売却については、1,200億円の目標に対して、560億円の売却を完了。年度内には600億円と、目標の半分の資産売却を完了予定としている。



■ プラズマ、エアボードなど9つの見直しカテゴリーを明確化

 ソニーでは、9月の経営方針説明会において、15のカテゴリーについて、収益性、成長性、戦略性の観点から事業モデルの抜本的見直しを行うとしたものの、その具体的なカテゴリーについては、クオリア事業とエンタテインメントロボット事業以外には明らかにしなかった。

 今回、同社では、対象事業が、エアボード、車載機器、プラズマテレビ、プラウン管テレビと、業務用機器分野で3カテゴリーに及ぶことを明らかにし、クオリア、エンタテインメントロボットを加えた9カテゴリーへの取り組みを公表した。

 エアボードは、2005年秋にパソコンやPSPへの接続が可能なベースステーション「ロケーションフリー」を発売したことで事業モデルを大きく変更。ロケーションフリーの事業拡大に向けた地盤が整ったとしたほか、車載機器については、海外事業の変更はないものの、国内向け事業に関しては昨年末の段階で事業を終了し、今後、再参入を含めた事業再構築の検討を開始するという。

 プラズマテレビは、自社開発および生産は行わないことを明確化、ブラウン管テレビについては、全世界での販売は継続するものの、中南米、パンアジア地域などに注力することで収益性の健全化を図り、生産拠点もアジア地域に集約する方針。

 クオリアおよびAIBO、QRIOなどのエンタテインメントロボットは新規開発をすでに終了。サービス、サポートは継続するほか、AIBOおよびQRIOで培ったAI技術開発は継続し、今後のコンシューマ機器に応用するという。業務用機器3カテゴリーについては、すべて自社開発という方針を見直し、外部リソースの積極活用を前提とすることになる。

 なお、残りの6カテゴリーについては、「今後の決算発表の場などで開示していく。現在、ビジネスが進行している分野であり、販売店などとの関係もあり、むやみに開示することは影響力が大きい。慎重に発表したい」とした。今回公表した業務用機器分野の3カテゴリーについても、同様の理由から、具体的なカテゴリー名については明らかにしなかった。

 一方、一部報道のあった韓国サムスンとの液晶パネル工場への投資に関しては、「フラットテレビは急激な成長を遂げており、来年度はさらに出荷台数が伸びるだろう。サムスンとの件に関しては、なにも発表できる段階にはないが、増産の手当については考えている」(大根田CFO)とするに留まった。


■ 回復の兆しには高い評価

 今回のソニーの第3四半期連結決算は、ソニーの業績が回復基調にあることを裏づけるものとなった。また、構造改革も予定通りに進捗していることが明らかになったといえよう。

 だが、テレビ事業の黒字化が先送りとなっていること、エレクトロニクス事業においてもカテゴリーごとに回復感に温度差があること、そして、為替差益によって業績が回復したという外部要因が影響していることなど、手放しで評価できる内容ではないともいえる。

 同社幹部が指摘するように、第4四半期から来年度にかけての価格下落の進展を含め、競争激化が加速するのは明らかで、そのなかでソニーの勝ちパターンをいかに作り上げるかが課題ともいえる。だが、回復の兆しが見え始めた決算として、今回の内容は十分評価できるものだといえそうだ。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/financial/fr/index.html
□関連記事
【2005年10月27日】ソニー、テレビ事業は依然として赤字に
-第2四半期決算。通期見通しに変更なし
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051027/sony.htm
【2005年9月22日】ソニー、新経営方針を発表。05年度営業利益は200億円の赤字
-エレクトロニクス15事業撤退。HDやCellを積極推進
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050922/sony.htm
【2005年6月23日】ソニー、新経営陣就任会見を開催。新経営戦略は9月発表
-テレビやウォークマンに注力し、復活を期す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050623/sony1.htm

(2006年1月26日)

[Reported by 大河原克行]


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