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デジタルラジオで“アニラジ”がアキバと連携
-フォーラムが第2期総会を開催。端末は夏頃


左から第2期のフォーラム代表の杉山知之氏(デジタルハリウッド)、副代表の庄司明弘氏(タワーレコード)、顧問の園城康博氏(エフエム東京)
4月18日開催


 地上デジタルラジオの普及に向け、ビジネス面での環境整備や普及活動を行なう「デジタルラジオ・ニュービジネス・フォーラム」は18日、第2期の総会を開催。2006年後半の本放送開始を目指して、対応端末や試験放送を活用し、これまでより具体的に各種サービスの提案や試験を行なうことなどを含む、第2期活動方針を発表した。

 同フォーラムはTOKYO FMが呼びかけ人となり、約90社の企業が参加。デジタルラジオの実用化に向けたサービスモデルや技術を各メーカーが提案。テーマごとにワーキングループを構成し、興味を持つ放送局やメーカーが参加し、検討を進めている。

 2005年度で終了した第1期活動では、約10個のワーキンググループが成果を発表。主として机上検討を行なってきたが、第2期では現在放送されている実用化試験放送を活用。より具体的にサービスやアプリケーションの実証を行なうことを目的としており、本放送に向けた準備を加速させる。

 さらに、受信機の確保が出来次第、本放送をイメージしたモニター調査を積極的に推進。一般への周知活動も本格的に展開するという。しかし、具体的なモニター実施時期については「活動の進捗に合わせて実施する」と説明するに留まった。

 なお、会場にはピクセラのデジタルラジオ受信機として単体タイプの「PIX-DR050-P00」と、PCカード型の「PIX-DR010-PC0」が展示された。単体タイプは以前の報告会で5月発売としていたが、「夏頃に延期する可能性が高い」(ピクセラ)という。

 デジタルラジオの送信方式が原因で、現在行なわれている試験放送はバージョン2.1で放送されているが、本放送ではARIB(社団法人電波産業会)により規定される3.0、もしくは3.1が使用される見込み。ピクセラでは単体チューナ発売後、ファームのアップデートにより本放送に対応する予定だったが、あらかじめ本放送のバージョンに対応してから製品として発売する方針に変更したという。

ピクセラの単体型デジタルラジオ受信機。デジタルラジオとワンセグ、FMラジオの受信に対応。デジタルラジオの3セグメントに対応し、P2プロファイルデータ放送、H.264の簡易動画再生も可能  PCカード型の「PIX-DR010-PC0」。ノートPC用のデジタルラジオ受信機で、対応OSはWindows XP

 本放送開始当初、NHKを除く民間放送局は、地上デジタルラジオの普及期というビジネス的に厳しい時期を乗り越えるため、アナログラジオのように各局が独立して放送を行なうのではなく、共同で設立したマルチプレックスジャパン社(全国で1つだけの民間免許主体)が放送を行なうことになっている。

マルチプレックスジャパンと各社、フォーラムの関係図

 マルチプレックスジャパンが送信機の整備や維持管理、番組編成などを行ない、各局はそこへ番組を提供。放送してもらうと同時に、電波や施設などの利用料をマルチプレックスに支払う。放送事業者は従来のラジオと同様に広告から収入を得るという仕組みになる。

 そのため、第2期の活動には、フォーラムで検討中のアイデアをマルチプレックスジャパンに採用してもらえるよう、積極的に働きかける事なども含まれている。なお、マルチプレックスジャパンは現在、TOKYO FMやニッポン放送など5社によって設立準備を行なう発起人会が発足した段階。放送免許取得後に正式に設立される予定。

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【2月15日】デジタルラジオ開始に向け、成果報告会を開催
-ピクセラのワンセグ/デジタルラジオ端末も展示
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■ 9月後半と11月後半に大きな動き

 フォーラムでは今回行なわれた総会以外に、定期的な情報交換部会を開催する予定。第1回は5月25日、第2回は9月28日、第3回は11月30日、第4回は2007年2月15日頃を予定している。

 情報交換部会の主査を務めるジグノシステムジャパンの小針俊郎会長はこの日程について「おそらく9月後半と11月後半に、デジタルラジオにとって大きな動きがあるだろう。それに関連して、情報交換部会を開催する」と説明した。

 さらに、部会の意義について「2005年の第1期の活動でも様々な成果が生まれたが、現在に至るもデジタルラジオの受信機が1台も発売されていないという状況には変化が無い。この状況をどうするのか、それを担うのが部会の役割でもある」と語る。

 また、第1期に続き、第2期でもフォーラムの代表を務めることになったデジタルハリウッドの杉山知之学長は、「4月からワンセグが一足速く本放送を開始したが、その認知拡大と普及のスピードは速く、日本人は新しい物が好きなんだなとあらためて感じた。きっとデジタルラジオも本放送が開始され、端末が発売されれば、広まるのは速いだろうと考えている。それまでにフォーラムでできるだけビジネスモデルをつめ、各局がよりよいサービスを提供できるよう支援したい」と決意を述べた。

第2期の役員・幹事の選出も行なわれた。フォーラムの代表にはデジタルハリウッド大学の杉山知之学長が選ばれた 情報交換会の主なスケジュール 情報交換部会の主査を務めるジグノシステムジャパンの小針俊郎会長


■ アニラジはデジタルラジオで大きく変化

 現時点で第2期に活動が予定されているワーキングループ(WG)は8個。その中で「楽曲ダウンロードWG」、「車載機連携WG」、「車載機向け音楽レコメンデーションサービスWG」、「プッシュ型配信サービスWG」、「防災情報データ配信WG」、「マーケティングWG」の6個は第1期から継続するもの。残りの2個は新設されるもので、ゼンリンが中心となって提案する「地図ダウンロードWG」と、文化放送が提案する「コンテンツ別コミュニティ・ビジネスWG AKIBA分科会」。

 地図ダウンロードWGでは、デジタルラジオ端末に放送波を使ってナビシステム用の地図データなどを配信する仕組みを検討。端末側の表示ソフトウェアの開発なども予定しており、GPS携帯電話への地図配信や、広告配信連動型地図配信、ニュースや防災情報と連動した地図配信サービスなども想定しているという。

文化放送デジタル事業局インタラクティブ・コンテンツ・グループの長島太郎氏

 AKIBA分科会は、文化放送が得意とするアニメやゲーム、声優関連のラジオ番組を中心に、新しい広告モデルやコンテンツモデルを検証。さらに、デジタルラジオと秋葉原という街と連携させ、リスナーとの接点を構築することなどを目的としている。

 現在文化放送ではアニメやゲーム関連の番組を放送する専用枠「A&Gゾーン」を設け、AM番組で週32番組を放送。ほかにもブロードバンド配信で週7番組、ポッドキャスティングで週4番組、携帯ストリーミングで週8番組を放送/配信。AMの聴取者数は毎週100万人を越えているほか、サブコンテンツとして用意しているメールマガジンの開封率も高い数値を維持しているという。

 ビジネスモデルとしては、ラジオ番組内でラジオドラマを放送。それをCDやDVDなどにまとめて2次販売しているほか、携帯サイトやネットラジオ、メールマガジンなどのサブコンテンツ展開も実施。さらに、公開録音などのイベントでロイヤルティの高いリスナーを集客し、会場での物販なども行なっている。

 文化放送デジタル事業局インタラクティブ・コンテンツ・グループの長島太郎氏はデジタルラジオで放送するA&Gゾーン番組の可能性について「例えばCD/DVDで販売していたラジオドラマ部分をダウンロード販売することもできる。映像も扱えるのでBS/CD/ネットなどで放送していたサブコンテンツも提供でき、これまでバラバラだったビジネスモデルを1つに集めることができる」と魅力を説明。

 そのうえで、「ユーザーは情報を持っておらず、放送局が一方的に番組を提供するという古い考えを壊したい。放送を入り口として様々なCGM(Consumer Generated Media)を生み出し、動員する方法論を検証し、新しい広告モデルやコンテンツモデルへと繋げたい」と語る。

文化放送では日本が世界に誇る産業として、アニメやゲームを多く取り上げ、近年では声優産業にも力を入れている A&G枠で放送される番組の典型的な構成。メインとなるラジオドラマの有料配信なども、デジタルラジオではその場で行なえる 従来のビジネスモデルの一覧

 さらに、アニメやゲーム番組の聴取者が多い秋葉原にも着目。「秋葉原を1つのソリューションと考え、ラジオというメディアの中にとどまらない“リアル”でのモデルを構築したい。そこで、A&Gリスナーを秋葉原へ動員する。普段から秋葉原を歩いている人達でもあるので、難しいことではない。そのうえで、各社と連携して“A&Gリスナーがもっと楽しめるAKIBA”を実現したい」という。

 その一例として長島氏は情報発信基地として設立された「東京アニメセンター」を紹介。「既に文化放送ではアニメセンターから放送を行なったり、公開録音なども実施している。WGでは様々な力を持ったメーカーと協力して、日本人にしかできないクールな新しいラジオのビジネスモデルを構築したい」と意気込みを語った。

□デジタルラジオ・ニュービジネス・フォーラムのホームページ
http://drforum.jp/
□マルチプレックスジャパンのホームページ
http://www.mpx-japan.co.jp/
□関連記事
【2005年6月7日】デジタルラジオ本放送に向けたフォーラムが設立
-‘06年春に本放送開始。1月にはモニター試験も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050607/dradio.htm

(2006年4月18日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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