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auは16日、国内初となるデジタルラジオの受信に対応した携帯電話「W44S」を発表、12月上旬より発売する。デジタルラジオに加え、ワンセグ放送や、LISMOを介したビデオクリップの新ダウンロードサービスなどにも対応する。 ソニー・エリクソン製の端末。最大の特徴は、現在実用化試験放送が行なわれているデジタルラジオの受信に対応したこと。デジタルラジオの受信端末は、ワンセグ/FMラジオの3波対応レシーバ「Prodia」をピクセラが9月に販売。ただし、評価用として法人向けに出荷しているもので、一般消費者への販売がアナウンスされたのは「W44S」が初めてとなる。
デジタルラジオは、送信にVHF帯を利用するラジオのデジタル版放送。テレビ放送が2011年にUHF帯に完全移行し、空いたVHF帯を利用して全国的な本放送を開始する計画。それまでの期間は「先行普及時期」として、VHF帯の隙間を使って大都市を中心に展開していく。現在は東京と大阪で試験放送が行なわれており、「名古屋や福岡でも検討しているが、福岡で実施できる可能性が高い」(エフエム東京の後藤亘代表取締役会長)という。
本放送の前倒しが急がれていたが、在京民放ラジオ局5社(エフエム東京、TBS R&C、文化放送、ニッポン放送、J-WAVE)が、民間免許主体として設立する予定だったマルチプレックスジャパンの発起人会を一旦解散することを決定するなど、本放送の開始時期が不透明になっていた。現在では社団法人デジタルラジオ推進協会(DRP)が免許人となっている。詳しくは既報の通り。
現在はまだ試験放送の状態で出力も800Wと小さいが、近々に2.4kWに増力する予定。東京の場合、800Wでは東京タワーから三鷹あたり、2.4kWでは八王子あたりまで受信できるという。「W44S」のリリースに合わせてTOKYO FMは、12月1日より試験放送の中で「本格的3セグメントデジタルラジオ放送」を開始すると発表。TOKYO FM以外のチャンネルでは引き続き試験放送が行なわれる見込み。
■デジタルラジオ/ワンセグの両方に対応 デジタルラジオでは、音声をMPEG-2 AACのステレオで放送するほか、簡易動画として320×240ドットのMPEG-4 AVC/H.264の動画も配信。放送局によって3セグメント、もしくは1セグメントを利用。音声に容量を割いた5.1chサラウンドや高音質放送、簡易動画やデータ放送を併用した視覚情報の多い放送など、様々な番組形態が実現可能。番組表データの提供や、通信と連携した楽曲ダウンロードサービス/通販番組など、新たなサービスも計画されている。 「W44S」では、3/1セグメント両方のデジタルラジオ受信に対応。簡易動画の表示にも対応している。また、TOKYO FMでは放送波を使った楽曲配信も実施。W44Sではそれを受信/保存することもできる。これは、オンエア中の楽曲をKMF形式の着うたフル用ファイルとして配信するというもの。TOKYO FMでは楽曲のオンエア中にのみダウンロードできるようにする予定で、平均1.7MB程度の楽曲ファイルを約1分で受信可能。動画配信も予定しており、6~9MBファイルを約4分で受信できるという。
放送波を使ってファイルを配信するため、パケット通信料は不要。さらに、アクセスが集中してダウンロードが遅くなることもない。番組データに着うたフルの楽曲ファイルが付いた状態で放送されており、「オンエア中の楽曲をダウンロードする」と選択した時のみ、放送波の楽曲ファイル部分をメモリに保存することになる。 そのため、オンエアが終わってしまうと楽曲をダウンロードできなくなる。ダウンロードには1分程度かかるため、例えば3分の楽曲をオンエアしている場合、楽曲のスタートから2分以上が経過し、ダウンロードが終わる前にオンエアが終わってしまう場合はダウンロードボタンが消えるという。 ダウンロードした楽曲は、通信機能を利用して暗証番号を購入することで再生可能となる。楽曲データはレーベルゲートが提供しており、着うたフルは1曲210~420円、ビデオは315円~630円。会費などは不要。購入後は通常の着うたフルのファイルとして利用でき、着信音などにも設定可能。ヤマハ製の音源チップを搭載しており、音質補正技術の「DBEX」を採用。ソニー製のイヤフォンも同梱している。
なお、デジタルラジオ放送そのものを録画/録音することもできる。ただし、著作権保護の観点から、保存できるのは本体メモリのみで、保存可能時間も最大3分に制限される。予約録画/録音機能は備えていない。 デジタルラジオとワンセグ、EZチャンネルプラスの3機能を効率的に楽しむため、新たに「au Media Tuner」を搭載。メニューではなく、1つのプログラムとなっており、液晶ヒンジ部に設けられた「TVキー」を押すことで、プログラムの終了/起動を行なうことなく、ワンセグ/デジタルラジオ/EZチャンネルプラスの表示を切り替えられる。
音楽配信サービスの「LISMO」に対応しており、新たにスタートするビデオクリップの配信サービスにも対応。クリップはMPEG-4 AVC/H.264形式の動画で提供され、解像度は320×240ドット。最大ビットレートは映像が256kbps、音声が48kbps。LISMO用のソフトウェア「au Music Port」は12月上旬を目処に3.0へアップデート。GUIの変更や読み込み対応フォーマットの増加などが行なわれる。
本体メモリのデータフォルダ容量は約115MB。本体にステレオスピーカーも備えている。デジタルラジオの連続視聴時間は、イヤフォン/スピーカーともに約5時間。ワンセグはイヤフォン時で約4時間の視聴が行なえる。ワンセグの最大録画時間は約38分。
■デュアルオープンスタイル ハードウェア面の特徴は、縦方向の開閉に加え、横方向にも開くことができる新機軸の「デュアルオープンスタイル」を採用したこと。横方向に開いた場合を「モバイルシアタースタイル」、縦方向を「ケータイスタイル」と名付けている。
メインディスプレイは3インチで、解像度は240×432ドット。ソニーのBRAVIAに搭載された高画質エンジン「RealityMAX」も使用している。モノクロ120×27ドットのサブディスプレイも装備。なお、ディスプレイを閉じた状態でもデジタルラジオを聴取することが可能。クレードルに乗せた場合でも「モバイルシアタースタイル」で視聴できる。
音楽再生用ソフト「Music Player」を搭載。PCサイトビューワーやPCドキュメントビューワーなども備えている。外形寸法は約101×49×24mm(縦×横×厚さ)で、重量は約146g。連続待ち受け時間は約270時間、通話時間は約210分。
■12月1日から20時間の放送に
エフエム東京の後藤亘代表取締役会長は、FMチューナを搭載した携帯電話が1,000万台を突破したことに触れ「ラジオの復活にとって、携帯電話は無くてはならない役割を果たしてくれ、感謝している。デジタルラジオで新たな楽しみを提供するため、TOKYO FMでは12月1日から1日20時間のプログラムを放送する」と説明。
実用化試験放送の段階で、「本格」放送を開始することについては「試験放送というと、大丈夫なのか? と心配されることが多い。しかし、まったく本免許と変わらない放送ができることを認められており、CMも流せる。FMのアナログラジオでも、10年近い試験放送を経て本放送がスタートした。試験放送の段階で既に“ジェットストリーム”は人気番組となっていた。デジタル時代の“ジェットストリーム”を生み出せるよう、アグレッシブに活動していきたい」と意気込みを語った。
また、12月から放送される番組内容を紹介。701chの「AGGRESSIVE LIFE STYLE CHANNEL」では、人気DJが担当する音楽ランキング番組が中心。山陰ヒーロや丸山周などによるトークと最新の音楽が提供される。
702chの「HIGH QUALITY channel」は、各界の著名人がDJとして参加する落ち着いた雰囲気の放送。ピーター・バラカンや赤坂泰彦などが登場。さらに、703ch「NEWS CHANNEL」では10分毎に最新ニュースを提供。政治経済、スポーツ・芸能まで網羅するという。
KDDIの小野寺正代表取締役社長兼会長は、「W44S」について「大型の液晶を備え、本格的なAV機器としてのたたずまいがある。新たな楽しみを提供できるモデルだ」と説明。今後のデジタルラジオ対応機種については「デジタルラジオとワンセグの両方受信できるという形が多くなるだろうと考えている。よって、対応機種は今後も当然増えていくだろう。増加スピードについてはデジタルラジオの魅力が鍵になる。魅力ある放送ならば、黙っていてもユーザー数は増えていくだろう」と語った。
また、他社がデジタルラジオ対応モデルをリリースした場合については「auでは常に新しい技術を先行して取り入れている。今回のデジタルラジオもその1つだが、他社の参入はデジタルラジオの普及にとって絶対に必要であり、我々としても歓迎したい。業界全体でデジタルラジオを普及させることが、経済全体の活性化にも繋がるだろう」と語った。
□auのホームページ
(2006年11月16日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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