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携帯電話を皮切りに、カーナビやパソコンなど、4月の本放送の開始以降、ワンセグ放送対応製品が多数リリースされている。そうした中、ウィルコムのキーボード搭載PHS端末「W-ZERO3[es]」にも、専用のワンセグチューナが5日に発売された。それが、ピクセラ製の「W-ZERO3 [es]”専用ワンセグチューナー」だ。 W-ZERO3[es]は、W-SIMを利用するシャープ製PHS端末で、2.8型/480×640ドットのモバイルASV液晶を搭載。通常の携帯電話風の入力に加え、QWERTY配列のスライド式キーボードを備えており、日本語入力用にATOKを内蔵した横長のキーボード付き端末としても利用可能。OSはWindows Mobile 5.0を搭載する。 専用チューナは、このW-ZERO3[es]をワンセグ対応とするもので、W-ZERO3[es]のUSBホスト機能を利用して接続し、背面に固定。ワンセグ視聴や、番組表の表示に対応する。直販価格は14,800円で、ウィルコムのオンラインストア「ウィルコムストア」や販売店・販売代理店で販売。また、「W-ZERO3 [es] Premium version」とのセット販売も行なわれる。今回はこのチューナを利用し、W-ZERO3[es]のワンセグ機能をチェックした。 ■ W-ZERO3[es]とUSB接続で利用
同梱品はチューナユニット本体のほか、白/黒のプレート、ロッドアンテナ、W-ZERO3[es]とチューナを離して接続するためのケーブル、フェライトコア、ソフトウェアCD-ROMなど。 チューナは、W-ZERO3[es]のUSBホスト端子と接続し、背面に固定する。チューナの外形寸法は87.0×52.2×6.8mm(縦×横×厚み)、重量は約42g。W-ZERO3[es]自体の外形寸法が約135×56×21mm(本体閉時)、重量約175gのため、組み合わせると厚みが約28mmとなり、手のひらに収まりづらくなる。 また、接続用のUSB部がはみ出してしまうので、慣れるまではちょっと持ちづらい。さらに、キーボードをスライドさせる際は、開くときは問題ないが、閉じるときにUSB端子用のカバーが接触して引っかかることがある。こうした取り回しには慣れが必要かもしれない。重量も合計で約217gで、ケータイとしては重いが、gigabeat V30E(230g)などのポータブルプレーヤーと考えるとさほど重いわけではない。もちろん、電話や通信端末としても利用できるので、このあたりは、どの機能を重視して選択するか、という問題になる。 本体とチューナの接続前に、パソコンとW-ZERO3[es]を接続し、ワンセグ視聴ソフト「StationMobile for W-ZERO3[es]」をインストール。本体接続時には同梱のプレートをチューナユニットに貼り付け、プレートとチューナの凹凸を合わせながらスライドさせて本体に装着する。その後USBケーブルを接続すると、ワンセグ機能を利用可能となる。
■ シンプルな視聴機能と操作性
ワンセグ機能の起動にはメインメニューやWindowsキーからStation Mobileのアイコンを選択する。すると現在起動中の他のアプリケーションを終了するよう促すダイアログが表示され、終了後に決定を押すとStation Mobileが起動する。 他のアプリケーションを終了せずにStation Mobileを起動することもできるが、基本的にワンセグ視聴時には他のアプリケーションを落とすことが推奨されている。なお、ワンセグ機能利用時に着信があった場合は、自動的にStation Mobileを終了し、応答できる。その場合、通話終了後は手動でStation Mobileを起動し直す必要がある。 初回起動時にはチャンネルスキャンを実行する。スキャンを実行すると現在受信可能な放送局を自動的に登録でき、不要なチャンネルの削除なども可能。チャンネルリストは5つまで設定可能なので、自宅や職場、帰省先などの様々なチャンネル情報を登録可能だ。
ワンセグ機能は非常にシンプルで、ワンセグの受信と、ワンセグの電波を介した番組表(EPG)機能、字幕や音声表示切り替えなどを搭載。データ放送の受信や録画機能は備えていない。 基本操作画面は縦位置表示で、上部に音声や受信強度、時刻などの情報を表示。受信強度は3段階で確認できる。付属のスタイラスを使った液晶のタッチパネル操作が基本だが、テンキーによるチャンネル切り替えが行なえるほか、W-ZERO3[es]側面のボリュームボタンでワンセグ放送のボリューム変更が可能。また、ボリュームの隣のボタンで全画面(横位置)/縦位置切り替えが行なえる。 縦位置時には「字幕ビュー」と「番組表(EPG)ビュー」の2パターンの表示画面を用意。字幕放送を見る場合やチャンネルや音声などの各種設定を行なう場合には「字幕ビュー」を、番組表を確認する場合には「EPGビュー」を選択する。 EPGビューでは、放送中の番組情報と、次に放送される番組などを表示できるが、録画機能は備えていないため、現時点では単に情報確認用という位置づけだ。 字幕/EPGビューの下にはチャンネルバーを用意し、チャンネル情報と視聴中の番組名を表示できる。休止中や(放送波の)圏外といった情報もここに表示される。縦位置表示時の最下部には表示モード切替バーがあり、字幕ビューとEPGビューの切替が行なえるほか、右の四角アイコンで全画面表示モードに変更できる。
全画面モードにすると画面が横方向に切り替わり、W-ZERO3 [es]のVGA液晶をフルに生かした表示が可能だ。また、設定メニューで[パンスキャンを有効にする]をONにしておくと、放送波のパンスキャン情報を識別し、4:3の映像ソースの場合、液晶にフル画面表示が行なえる。モード切替や基本操作のレスポンスは良く、大きな不満は感じない。 ■ 受信性能はイマイチだが、ワンセグに適した高画質
ただし、受信感度はイマイチだ。編集部のある東京都千代田区のビル内は、バッファロー「ちょいテレ」をはじめほとんどのワンセグ機器は、NHKや民放キー局が問題なく受信できており、MXテレビのみ受信状況が厳しく、機器によっては全く受信できない場合があるという環境だ。 しかし、W-ZERO3[es]ワンセグチューナは、他製品と比較して受信性能がかなり見劣りする。ビル内では、NHKは時折ノイズが入るものの一応視聴できるが、フジテレビ、日本テレビは受信可能だが、音声/画像ともに途切れがち。ただし、窓際に移動するとかなりしっかり受信できる。窓際まで行くとMXテレビも受信できたが、テレビ朝日は窓際でもほとんど受信できないといった状況だった。受信感度は最近のワンセグ機器の中では今ひとつ、という印象だ。
また、調布市の自宅でも試したが、屋外では受信できたが、屋内ではほとんど電波を取れなかった。チューナとW-ZERO3[es]を離した状態で接続できる「接続ケーブル」も同梱されるので、家庭内での利用時に調節しながら最適なチューナ位置を選択したいところだ。 また、NHK総合に固定して、京王線に乗ったところ、停車時は駅によっては電波が取れるところもあり、移動中でも環状8号線を渡る際の高架や、比較的遮蔽物の少ない駅周辺では受信できることもあった。しかし、基本的に移動中はきちんと番組を見ることができなかった。 チャンネル切り替えは、テンキーもしくは、チャンネルバーから任意の局を選択するという形。切り替え時間は6~9秒程度とやや遅く、受信状況が悪いと、さらに時間がかかってしまうので、気軽に使うにはややストレスがたまる。 しかし、受信状況がしっかりしていれば画質は非常に良い。縦位置表示の場合は、上部に320×180ドットのワンセグ映像を表示、下部にEPGや字幕情報が確認できる。クリアでしっかりとした発色でワンセグ放送を楽しめる。ニュースのスタジオ映像のセットの装飾もしっかりと確認でき、「安倍首相のいう再チャレンジをしっかりやってもらう」といった画面上の字幕がしっかり判読できる。また、字幕/EPGビュー部の文字も鮮明で、4型VGA液晶の精細さをきっちりと伝えてくれる。
さらに、全画面表示モードも高クオリティだ。スケーリングが非常にしっかりしており、例えばアニメ「名探偵コナン」を見ると、コナンのアップでも顔の輪郭線にジャギーが生じず、しっかり線として表現されている。櫛状のノイズなどは全く感じず、クリアで解像感が高いワンセグ映像が楽しめる。受信状況が良ければ、かなり高性能な「テレビ」として活用できそうだ。 大型液晶を備えたワンセグ機器が増えてきているが、液晶サイズが大きくなりすぎると、あらが目立ちがち。しかし、320×180ドットのワンセグ映像は、2.8型/480×640ドットというW-ZERO3[es]の液晶にとっては、非常に適したソースとなっている。 以前「VAIO type U<ゼロスピンドル>」を試用した際も、4.5型/1,024×600ドットの液晶への全画面表示のスケーリングが非常にきれいだった。PCをベースとしたプラットフォームの方が、こうしたスケーリング処理がうまくいくのかもしれない。 【訂正】 連続視聴時間は約120分。ワンセグが利用不可能となった後も、通話や通信向けにW-ZERO3[es]自体のバッテリは余裕を持たせて残っているので、ワンセグの使いすぎで電話まで使えないということはなさそうだ。 また、電話番号情報などを記録した通信モジュール「W-SIM」を抜いてワンセグ機能を利用してみたが、問題なくワンセグ視聴ができた。 ■ VGA液晶を生かした新提案。ユーザーには魅力的 VGA液晶というW-ZERO3[es]の大きな特徴を生かす、ユニークなオプション製品だ。機能はシンプルながら、ワンセグを気軽に楽しみたいW-ZERO3[es]ユーザーにとっては魅力的だろう。 W-ZERO3[es]本体の新規で29,800円、機種変更で29,800~48,800円という価格を考えると、W-ZERO3[es]ユーザー以外には敷居が高いが、W-ZERO3[es]そのものに魅力を感じている人の購入を後押しするようなソリューションとなるだろう。 ただし、専用のワンセグチューナとしてはもう少し受信感度を向上させてほしかった。録画やデータ放送機能を備えていないこと自体は割り切れるが、手軽な「どこでもテレビ」として利用するためには受信性能が最も重要。自分が使う環境で、どこまで利用できるかは、実際に使ってみないとわからないだけに、もう少し強化してほしいポイントだ。 ともあれ、ワンセグもケータイやポータブルプレーヤー、パソコン、カーナビなど一通り対応が進み、ポータブルデバイスにおいて「当たり前のもの」になりつつある。ユーザーに選択肢を提供することで、機器自体の魅力を高めていく新しい提案として歓迎したい。 □ウィルコムのホームぺージ ( 2006年12月5日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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