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パイオニア、TADブランドの民生用新ハイエンドスピーカー
-1本315万円。「シャープな音像と広い音場の両立」


4月上旬発売

標準価格:315万円(1本)


 パイオニア株式会社は、プロスタジオ用スピーカーのブランド「TAD」(Technical Audio Devices)のコンシューマ向け第2弾として、新フラッグシップモデル「TAD Reference One」を4月上旬に発売する。価格は1本315万円。月産台数は8本程度を予定。日本を皮切りに、欧米やアジア地域などでも販売を開始するという。

 同社では'75年にプロ用モニタースピーカーとして「TAD」プロジェクトをスタート。米国を中心にスタジオでの導入実績を積み、現在では国内を含む20カ国以上、スタジオなど300カ所で採用されている。そして2003年10月に、同ブランド初のコンシューマ向けモデルとして「TAD-M1」(1本315万円)をリリース。今回の「TAD Reference One」は、その後継モデルとなっている。

試聴デモのセッティング スタジオでの設置をイメージした写真 3ウェイ4スピーカーのフロア型

 構成は3.5cm径ドーム型ツイータと、16cm径コーン型ミッドレンジ、25cm径のコーン型ダブルウーファによる3ウェイ4スピーカーのフロア型。最大の特徴は、TADの代名詞とも言えるベリリウム振動板を使ったミッドレンジとツイータを採用したこと。ベリリウムは金属材料の中でも軽量かつ剛性の高いものだが、加工が難しく、振動板として使うため、均一にプレスすることなどが難しい。

 そこで同社では、独自の蒸着法を採用。銅で振動板の型を作り、そこにベリリウムを蒸気化させて付着させ、最後に銅を溶かしてベリリウムの振動板だけを取り出す。強度や均一性に優れ、高い内部損失も併せ持つという。

 外観的には3スピーカーのように見えるが、ミッドレンジとツイータは独自のCST(Coherent Source Transducer)同軸ユニットとして組み合わさっている。ツイータの形状はコンピュータ解析で設計。分割振動を可聴帯域外に追いやっている。

上部に装着しているのはミッドレンジとツイータを組み合わせた独自のCST同軸ユニット

周波数特性の概念図。CSTドライバーが多くの部分を担当していることがわかる

 CST同軸ユニット全体の再生帯域は250Hz~100kHzと広く、ウーファは250Hz以下の21Hzまでを担当。全体では21Hz~100kHzで、クロスオーバー周波数は250Hzと2kHz。音楽の主要な部分はCST同軸ユニットが再生している。エンクロージャへのマウントには、新開発の「ISO(Isolation)ドライブテクノロジー」を利用。構造的に分離させることでエンクロージャの振動を防いでいる。

 ハイスピードなCSTドライバーと組み合わせるため、ウーファユニットでもハイスピードなレスポンスとパワーリニアリティを重視。ショートボイスコイルタイプの「OFGMS(Optimized Field Geometry Magnet Structure)磁気回路」を使用。ボイスコイル外側のプレートにスリットを設置することで、37mm厚の回路ながら、その間の磁束密度を均一化。大振幅時でも安定した動作ができるという。

 ウーファの振動板には、発泡アクリルイミドをコアに、アラミドファイバーで挟んだ三層ラミネート構造による「TLCC振動板」を採用した。ネットワークは電気的、磁気的結合を排し、干渉のない給電を実現するというセパレートマウント型を使用。設置するリアパネルにはヒートシンクとしても機能する7mm厚の切削アルミを使用している。

ウーファユニットはダブル構成 発泡アクリルイミドをコアに、アラミドファイバーで挟んだ三層ラミネート構造 磁気回路は37mmと厚く、重量はユニット1個で約10kgもあるという

 エンクロージャは曲線を多用したデザインの「SILENT(Structurally Inert Laminated Enclosure Technology)」を使用。航空機の羽や船舶からヒントを得たという構造で、21mm厚の樺合板の横隔壁を骨格とし、周囲を高周波過熱プレス成型した50mm厚の側板と、最大137mmのCNC加工合板を張り合わせて形成している。

 構造はフロントバスレフで、下部のポート部には流体設計理論をベースにデザインした「エアロダイナミック・ポート・システム」を採用。風切音を抑えている。仕上げには天然木のポメラサペリを使用。手作業で磨き上げ、ハイグロスフィニッシュで光沢を出している。

左がウーファ用のネットワーク。右がCST用のネットワーク フロントバスレフタイプ。ポート部には「エアロダイナミック・ポート・システム」を採用し、風切音の発生などを防いでいる

 外形寸法は554×698×1,293mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は1台150kg。スパイクは円錐型と球面型の2タイプを同梱。3点支持タイプとなっている。

スピーカーターミナル部 2種類のスパイクが付属する 発表会場にはミニチュアも


■ シャープな音像と広い音場の両立

 視聴デモはエソテリックのユニバーサルプレーヤー「UX-1」、プリアンプはパイオニア(エクスクルーシブ)の「C7a」、モノラルパワーアンプはPASSの「X600.5」×2台というシステムで行なわれた。

エソテリックのユニバーサルプレーヤー「UX-1」、 パイオニア(エクスクルーシブ)の「C7a」 PASSの「X600.5」

 音のコンセプトは「シャープな音像と広い音場の両立」。一般的にこの2つの要素は両立が困難だ。デモでのReference Oneは若干内振りのセッティングだったが、クラシックの再生で出現するステージは非常に広く、個々の楽器の位置は明瞭に描き出される。そのままのセッティングで女性ヴォーカルを再生しても、口の動きが見えるほどフォーカス性能は良好に感じられた。

 モニターゆずりのニュートラルな音質のため、音質面での固有のキャラクターは少ないが、音がスピーカーの前に迫り出すような鳴りっぷりの良さとハイスピードなサウンドが強く印象に残る。特にジャズを再生するとシンバルやトランペットの高音が活き活きと飛び出し、体が自然に揺さぶられる。セッティングやソースの変化に敏感に反応するシビアなモニタースピーカーとしての面も持ちながら、音楽を楽しく聴かせる民生用スピーカーとしての魅力も併せ持つ1台と言えそうだ。


■ スピーカーメーカーとして70周年を象徴するモデル

オーディオ事業推進室の西國晴室長

 2007年は、パイオニアの創業者である松本望氏が、世界初のコーン紙を中心にジェラルミンを使ったダイナミックスピーカーを生み出してから70周年にあたる。ホームエンタテイメントビジネスグループ事業企画部、オーディオ事業推進室の西國晴室長は「オーディオが盛り上がりを見せている昨今、我々もスピーカーメーカーとして70周年を迎えており、新製品にどんどんチャレンジしていきたい」と意気込みを語る。

 「Reference One」について西氏は、TADの歴史を振り返りながら「音楽を作る際の基準となるモニターは、スピーカーメーカーにとって、なんとしても作りたい夢の製品。TADはこれまで、理詰めで、コンピュータなども駆使してクオリティを追及してきた。コンシューマ向けモデルでもそれを踏襲しながら、モニターの音を少しでも多くの人に楽しんでいただきたい」と、Reference Oneのコンセプトを説明した。

□パイオニアのホームページ
http://www.pioneer.co.jp/
□ニュースリリース
http://pioneer.jp/press/release565-j.html
□関連記事
【2006年9月21日】A&Vフェスタ2006【ソニー/パイオニア編】
-ソニーがハイエンドスピーカーを展示。PLCオーディオも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060921/avf3.htm
【2003年6月18日】パイオニア、1本300万円の4ウェイフロア型スピーカー
-TADブランド初のコンシューマ向け製品
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030618/pioneer.htm

(2007年2月6日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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