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松下電器産業株式会社は12日、欧州市場における同社デジタル家電事業の取り組みについて、報道関係者を対象に説明した。 同社欧州本部本部長兼パナソニックヨーロッパ会長の大月均氏は、冒頭、「2006年は、4年ぶりの2桁成長と、増収増益を達成。また、連結増収増益も12年ぶりに達成した。松下電器にとっては、2006年が欧州市場における再出発の年となった」とコメント。2006年から、欧州市場での業績が成長基調にあることを示した。
また、プラズマテレビ、デジタルカメラ、液晶テレビの戦略3製品に重点的に力を注ぐことで、これらで1000億円の増販を達成。ブラウン管テレビ事業からの撤退というマイナス要素がありながらも、売上高で前年比10%増となった。
製品別に見ると、プラズマテレビは、2005年12月には18.2%だった欧州市場におけるシェアが、2006年12月には、37.7%にまで上昇。とくに、欧州最大規模の市場となるドイツでは50.2%という圧倒的なシェアを獲得した。「英国、イタリア、スペイン、東欧でもトップシェア。全欧でのシェア40%獲得を目前としている」とした。 また、37型以上薄型テレビ市場では、16.5%と、サムスンに次いで第2位。「液晶テレビの価格下落が激しく、05年12月には21ブランド80モデルだった37型以上の液晶テレビが、今年1月には38ブランド261モデルに拡大している。こうした液晶テレビの攻勢がありながらも、シェアを3ポイント引き上げた」としている。
ドイツ、フランス、東欧では10%を超えるシェアを獲得。なかにはチェコのように約25%のシェアを獲得している市場もある。だが、英国、イタリア、スペインでのシェアが低く、地域落差を解消するのが今後の課題」としている。
■ 年間265万台の薄型テレビ出荷を見込む こうした好調の背景には、先に触れた流通改革などのほか、松下電器ならではのマーケティング施策の成功が見逃せない。 「LAST 1M(ラスト1メートル)作戦」として、レジを通るまでの距離において存在感を出すことにポイントを置き、店頭において、ホームシアターの展示店舗を、2005年度の400店舗から2006年度には1,500店舗に、販売店店頭でデモストレーションを行なうプロモーターを8,500回から1万1,400回に、Shop in Shopの形態を58店舗から206店舗に拡大した。さらに、レックポッドHDと呼ばれる施策を展開。HD環境における再生機を店頭に展示するとともに、パナソニックAVCネットワークス社が独自に開発したHD画質のコンテンツのデモストレーションを行なうことで、欧州市場におけるHDの普及に努めた。これも2005年時点では1,300店舗だったものを、設置店舗を4,600店舗に拡大。さらに、2007年度には7,000店舗に拡大する意向だ。 また、フランスに地盤を置く、大手小売りのFnacとの連携を強化。「A・a」と呼ぶ自動供給契約を、戦略的に結ぶことで、安定した商品供給体制、効率的な販売体制を構築することに成功した。 A・aとは、新製品の発表を前後して、基準在庫数を販売店と合意。週次の実需に基づいて、販売実績に応じた製品在庫補充が自動的に行なわれるという仕組みだ。これにより、欠品率が大幅に下がり、販売機会の損失を回避できるほか、発注に関わる業務工数の削減、在庫日数の削減といったメリットが出ている。また、市場価格が下落した場合には、価格補填あるいは引き取りを行なうが、メーカーの資産として在庫を置くVMI(ベンダー・マネジメント・インベントリ)方式とは異なり、基本的には、すべて販売店資産の在庫の仕組みとしている点も、特徴的だといえる。 「A・aディーラーは、2006年度実績で13社だったが、これを2007年度には39社に拡大し、ドイツ、イタリア、北欧でもA・aディーラーの拡充を図る」とした。
欧州市場における薄型テレビの2006年度販売見通しでは、過去最高を更新する185万台の出荷が見込まれており、「これは、かなり以前に達成した160万台を大幅に上回るもの」という。だが、2007年度は、プラズマテレビでは、前年比44%増となる125万台、液晶テレビでは75%増となる140万台の出荷計画として、あわせて265万台の出荷を見込む。 「欧州市場全体では、プラズマテレビ、液晶テレビともに前年比15%増と予想されているのに対して、それを大きく上回る計画。プラズマテレビでは50%の市場シェア、37型以上の薄型テレビでは21%のシェア獲得を目指す。200万台突破は、松下電器で欧州市場に携わってきた社員にとっては、感慨深く、意味がある数字」と大月氏は語る。 販売拡大に向けて、日本で打ち出しているVIERA Linkの提案を欧州でも開始するのに加え、欧州地区における薄型テレビの宣伝費を前年比50%増に拡大。プロモーターを前年比6割増となる延べ2万人に、店頭展示店舗を同3割増の約8,000店舗に拡大する。 これにより、薄型テレビで先行するサムスンを追随する考えだ。 一方、デジタルカメラのLUMIXと、HDカムコーダーも、2007年は重点商品となる。 プラズマテレビ、液晶テレビ、デジタルカメラ、HDカムコーダーの4製品を、「市販4本柱」と位置づけ、デジカメでは、前年比29%増となる335万台を計画。12%のシェア獲得を目指す。また、HDカムコーダーでは、前年比10倍となる6万3,000台を出荷する計画で、到達シェア目標は26%。独走するソニーを追随することになる。
「大手量販店との結びつきを強化し、汎欧アカウントへの取り組みによる増販を目指す。また、遅れているフランス市場において、デジカメでのナンハーワンシェア獲得を目指すなど市場地位の向上を図る。さらに、英国やドイツに比べて実績が低いイタリア、スペインでの底上げ、英国で苦戦しているデジカメ分野におけるLUMIXブランドの確立が鍵になる」と、欧州における課題を語る。 D・dと呼ばれる工場から量販店への商品の直送、工場からの直販の仕組みの徹底のほか、空港で仕分けし量販店に直送するAir D・dの実現。さらに、成長している量販店との協業を強化するR・rと呼ばれる仕組みによって、販売生産性と利益生産性を重視する考えだ。
その成長の原動力となるのが、「海外2桁増販」であり、1兆円のうち、約7割を海外事業で担うことになる。欧州では、そのうち、25~30%を担うことになり、それに向けた準備が整ったところだといえよう。 「市販4製品に加えて、2009年に向けて、白物家電事業、美容健康関連事業、空調・環境関連事業、パワーツール事業を、それぞれ新規事業として欧州市場で開始していきたい。これにより、欧州市場における中期的な成長を実現する」と大月氏は語る。 2006年を欧州市場再出発の年とした松下電器は、GP3達成に向けて、大きな足がかりを作りあげたともいえる。
□松下電器産業のホームページ ( 2007年3月14日 ) [Reported by 大河原克行]
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