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DRMフリーで音楽配信が変わる? iTunes Plusを試す
-ウォークマンでも再生可。アップグレード方法に注意


5月30日サービス開始


 30日、iTunes Storeにて、DRMフリーの楽曲配信サービス「iTunes Plus」がスタートした。

iTunes Storeに新設された[iTunes Plus]

 最大の特徴は、デジタル著作権保護(DRM)無し、かつ有償で音楽を配信すること。さらに音質についても従来のAAC 128kbpsから256kbpsにビットレートが引き上げられるなど、改善が図られている。

 現在、EMI Groupのタイトルが配信開始されており、洋楽ではColdplayやThe Rolling Stones、Norah Jones、Frank Sinatra、Pink Floyd、John Coltrane、Paul McCartneyなど。国内向けでは、東芝EMI所属の椎名林檎や、氣志團、松任谷由実、宇多田ヒカルといったアーティストの楽曲もラインナップ。また、宇多田ヒカルのシングル「Kiss & Cry」も先行配信されている。

 なお、価格はDRM付きが150円/200円で販売されているが、DRMフリー楽曲は200円/270円と、若干高価な価格設定となっている。この差がDRMフリーの「プレミアム分」というわけだ。

 既存の多くの音楽配信サービスでは、DRMを付与し、転送/再生可能な機器数などの制限が設けられていた。Napsterに代表されるような、月額定額制のサービスなど新たな提案もあるが、DRMというものがデジタル音楽配信において、「必要不可欠」という理解は、少なくとも、コンテンツホルダや配信事業者の間では一般的だったといえる。

 もちろん、デジタル著作権保護(DRM)無しで有料で音楽を配信するサービスが今まで無かったわけではないが、大手レーベルが賛同し、世界最大規模のサービスがDRMフリーに乗り出したというのは、大きな変化だ。DRMフリーは音楽配信を変えるのか、早速、iTunes Plusをテストした。


■ 「アップグレード」はライブラリ一括のみ

iTunes PlusをONにしていない場合は、対象楽曲にiTunes Plusへのナビゲーションが現れる

 まずは、iTunes Storeで、DRMフリー楽曲を購入してみよう。注意したいポイントは、iTunes Plusの楽曲は、初期状態ではiTunes Storeで検索しても表示されないこと。購入前に、アカウント情報の設定が必要なのだ。

 iTunes Storeトップページの右上、[クイックリンク]-[アカウント]を選択し、[Appleアカウント情報]の[iTunes Plusを管理する]の項目でチェックボックスをONとする。すると、iTunes Store上にiTunes Plusの楽曲が表示されるようになる。

 [無効]にしていても、対象アルバムなどの検索時に、[iTunes Plusバージョンもあり]と案内されるが、購入はできない。


iTunes Storeのクイックリンクから、アカウント情報を設定。iTunes Plusを有効にする

iTunes Plus無効時 iTunes PlusをONにすると、[+]のマークで対象楽曲があらわれる

 iTunes Plusの楽曲については、iTunes Storeのブラウズ画面で[+]マークつきで表示される。とはいえ、iTunes Storeの膨大な楽曲の中から、iTunes Plus楽曲を探し出すのは至難の業。そのため、iTunes Store内に[iTunes Plus]のコーナーが用意されている。もし、「DRMフリー楽曲だけをブラウズ/購入したい」というのであれば、こちらを利用する。

 また、iTunes Plusのサービス開始とともに、すでに購入済みの楽曲のアップグレードサービスも実施されている。既存のAAC 128kbps/再生許可機器5台の制限が付いた楽曲を、iTunes Plusと同一用件のAAC 256kbps、再生制限無しに更新できるサービスだ。アップルのニュースリリースでも、1曲50円から70円でアップグレードできると記載しているが、どういった具合に「アップグレード」されるだろうか?

iTunes Plusのライブラリアップグレードページ

 まず、Coldplayの「X&Y」がiTunes Plusでも配信されていることを確認しながら、あえて通常の128kbps楽曲で購入してみた。その後、アップグレードを行なおうと、楽曲を右クリックしたり、プロパティを見たりしたが、特にアップグレード用の項目は無し。ヘルプによれば、iTunes Plusへのアップグレードは「専用ページで行なう」とのこと。

 iTunes Plus専用ページに行くと、「ライブラリアップグレード」という表示が現れる。アップグレードはこのページで行なう必要がある。そこには、費用が「170円」と表示されていた。現在のライブラリには、3曲だけEMIグループ楽曲があっため、洋楽2曲(50円×2)、邦楽1曲(70円×1)で、170円ということのようだ。

 1曲づつアップグレードできるものとばかり考えていたが、ヘルプを見ると、「曲、ミュージックビデオ、アルバムを個々に選んでアップグレードすることはできません」とのこと。つまり、ライブラリの対象楽曲を全てアップグレードする否かを選択しなければならない。この曲は「DRMフリーで、この曲はDRM付きで」といった使い分けが、できないのだ。ほとんど聞かないが、せっかく購入したので消すには忍びない曲などもあったりする。できれば、楽曲ごとのアップグレードも用意してほしいところだ。

3曲のライブラリをプラス170円でPlusにアップグレード アップグレードが終了 以前のAAC 128kbps楽曲をデスクトップに保存

 この「ライブラリアップグレード」ページで「購入する」を選択すれば、あとは自動的にアップグレードが実施される。ただし、サービス開始直後で混雑しているのか、一部楽曲ではアップグレード途中で接続が切れてしまうこともあった。

 なお、既存の楽曲については、ゴミ箱にいれるか、デスクトップに保存するかが選択できる。完全に更新されて無くなってしまうわけではなく、デスクトップに保存した場合は、[iTunes で購入したオリジナル]という名称のフォルダに保存され、同ファイルをiTunesに登録して認証すると、問題なく再生が行なえた。


■ SonicStageでもPSPでもウォークマンAでも再生可能

 128kbpsから、256kbpsにビットレートが引き上げられたことで、音質の向上も期待される。

 今回購入したColdplay「X&Y」や宇多田ヒカルの「Be My Last」などをサンプルに、iPodにMDR-EX90SLを接続して簡単に比較してみた。X&Yは聞いている分にはどちらかわからないが、連続して再生すると、違いが見えてくる。あまり聞き比べにいい楽曲ではないが、音の消え際の質感などに微妙に差が感じられる。ブラインドテストでも、かなりの確率で正解できた。Be My Lastでは、冒頭のギターの情報量などもう少し顕著に違いが確認できる。

 オーディオセットなどでの再生時には、その差はさらに顕著となるだろうが、ポータブルオーディオにおいても微妙ではあるものの認識できる程度に違いはある。なお、アップグレードを行なった楽曲は、拡張子が、m4pからm4aに変更されている。

AAC 128kbpsファイル。DRMのFairplay 2との記載もある アップグレード後のAAC 256kbpsファイル。DRMに関する記載は省略されている

SonicStage CPから購入楽曲を転送

 購入/アップグレードしたiTunes Plus楽曲は、AACをサポートしているウォークマン用のオーディオソフト「SonicStage CP」でも登録/再生可能。また、SonicStageからウォークマンA「NW-A800」に転送したところ、何の問題も無く再生が行なえた。NW-A800でAACをサポートしているため当然ではあるものの、「DRMの壁」を超えるメリットというのは、やはり大きい。

 これからはiTunes Storeの楽曲でも、SonicStage/ウォークマン(AAC対応)で再生できるわけで、機器の差を越える魅力というのはやはり感じられる。同様にPSPやPLAYSTATION 3においては、単にコピーするだけで再生できるなど、楽曲の活用の幅は広がる。活用機器が多ければ多いほど、一曲数十円余計に払うだけの価値が生まれてくるといえるだろう。

 また、別途アプリケーションを用意すれば、購入したiTunes Plus楽曲を他のコーデックに変換することもできる。さまざまな機器への応用という点では従来のiTunes Store楽曲より大いに幅が広がるだろう。

ウォークマンA NW-A800でも再生可能 PSPからも認識。ただし、アーティスト名が表示されないので、自分で付与する必要がある


■ 魅力の高いDRMフリー。他サービス、デバイスの影響は?

 ユーザー側からみれば、価格が若干上がる以外に不満点の見当たらない、非常にうれしい「DRMフリー化」。価格をどう考えるかは人それぞれではあるが、少なくとも複数のデバイスでの楽曲共有を念頭においているのであれば、差額分のメリットは間違いなくあるだろう。

 シングル楽曲を買う分には、iTunes Plus楽曲が用意されていれば、全てこちらにしておきたいと感じる。ただし、アルバムの2,000円という価格は、もう少し出すと音楽CDに手が届く価格になってしまうので、そのあたりの冷静な見極めは必要だろう。

 重要な点は、デバイスの選択時にiPodに縛られずに、さまざまな選択肢を選べるようになる、ということだ。AACは、MP3ほど一般的ではないとはいえ、例えばウォークマンシリーズの多くはAACをサポートしており、ほかにも多くの対応機器がすでに発売されている。さらに、iTunes StoreのDRMフリー配信スタートにより、各社がさらにAAC対応に力を入れてくることだろう。

 逆に言えば、iTunes StoreがiPodに限定されたプラットフォームでは無くなったということでもある。iTunes/iTunes Storeが、iPod販売促進のためのツール、iPodの差別化のためのプラットフォームといわれた時代から、より一段上のサービスに移ったともいえるかもしれない。ともあれ、今後はEMIだけでなく、さらなるレーベルの参加と、ライブラリの拡充に期待したい。もちろん対抗する各社のサービス、デバイスが、どのように対応、変化していくかという点においても、非常に重要なサービスのスタートといえるだろう。

□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□ニュースリリース
http://www.apple.com/jp/news/2007/may/30itunesplus.html
□関連記事
【5月30日】アップル、DRMフリーの音楽配信「iTunes Plus」を開始
-国内は1曲200円から。アルバム2,000円など
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070530/apple2.htm
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-「Windows Vistaと互換性があります」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070530/apple1.htm
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-AppleはDRM無し楽曲をAAC 256kbps/1.29ドルで販売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070403/emi.htm
【2005年8月4日】いよいよ日本でスタートしたiTMSを試す
-ユニークなギフトカードとシンプルな購入方法
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050804/itunes.htm

( 2007年5月31日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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