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【新製品レビュー】
ボーズの新小型スピーカー「M2」を兄貴分「M3」と比較
39,480円の低価格モデル。音質に意外な差


11月1日発売

標準価格:39,480円


 ポータブルデジタルプレーヤーの登場で、PCで音楽ファイルを管理したり、再生したりする機会が増えた。一方、PC市場ではデスクトップ型の人気が低迷。ノートPCがメインストリームになったが、ノートの内蔵スピーカーは貧弱なものが多いため、良質な外付けのアクティブスピーカーへのニーズが高まっている。

 音質はスピーカーによって大きく左右されるため、PCと単品アンプを接続し、オーディオ用の大型スピーカーを繋ぐのが理想的だが、それではノートPCの省スペース性が損なわれてしまう。それゆえ、アクティブスピーカーの主流はコンパクトタイプだ。しかし、小型筐体のスピーカーには“低音が出にくい”という宿命がある。PC用スピーカーの上位モデルに、サブウーファを追加した2.1ch機種が多いのはそれを補うためだ。

発売中のM3 シルバーモデル

 そんな市場に一石を投じたのが、2006年3月にボーズが発売した「M3」(Micro Music Monitor)だ。その名の通り、手のひらにも乗るほど小さなスピーカーだが、独自の低音再生機構を取り入れることで、サブウーファ無しでも重厚な低音再生を可能にしたモデル。レビューでも、サイズからは想像もできない低音に驚かされた。

 そんな「M3」から、電池駆動機能を省いた“弟分”とも言える、低価格モデル「M2」が、11月1日に発売される。「M3」はPC用スピーカーとしてはかなり高価な49,980円だったが、「M2」は約1万円安価な39,480円を実現。だが、搭載するユニットや低音再生機構などは「M3」とほぼ同じという嬉しい仕様。読者の関心も高く、ニュース記事はその週のアクセスランキング4位を記録した。

 今回はその「M2」を、「M3」との比較をメインに検証した。


■ 意外な誕生秘話

 製品を見る前に、「M2」の開発経緯を紹介しよう。兄貴分の「M3」は、ボーズの米国エンジニアと日本のエンジニアがコラボレーションして開発したモデルで、その際に日本のエンジニアがイニシアチブを取って開発したのだという。そう言われると、「M3」は狭い日本の住宅事情に即した製品だと頷ける。

アマー G.ボーズ博士

 そのため、まずは日本市場向けに投入され、米国では発売されなかった。結果、「M3」は直販サイト/直営店のみでの販売でありながら、品薄状態が続く人気となり、非常に好調なセールスを記録したという。

 それを耳にした米国本社のアマー G.ボーズ博士は「なぜ米国でも投入しないのか?」と疑問を持ち、米国でも販売するよう指示。しかし、マーケティング側などが「米国では500ドルの小型スピーカーは受け入れられないのでは? せめて400ドルならば……」と逡巡。そこにボーズ博士の「それなら100ドルコストダウンしたモデルを開発すればいいじゃないか」という鶴の一声が響き、「M2」の早急な開発/製品化が実現したそうだ。

 つまり、厳密に言えば「M2」は「M3」の“海外向けモデル”である。それをそのまま日本でも発売すると“低価格モデル”になるわけだ。それにしても住宅事情から「米国で小さいスピーカーは受けない」という話はわかるが、値段の面では「日本人はお金持ちが多い」という意味なのだろうか……。

 「M2」と「M3」の最大の差は、バッテリ駆動の有無。「M3」はACアダプタでの駆動以外に単3電池4本での駆動も可能だったが、「M2」はACアダプタのみの対応となっている。そのため「M3」が旅行先などへの持ち運びも考慮していたのに対し、「M2」は家の中での利用をメインに想定されており、若干製品の位置付けが異なっていることに注意したい。

 また、筐体の構造や搭載しているユニットなどはほぼ共通しているのだが、前述のような開発経緯のため、音質面は“米国市場で受け入れられやすい音”にチューニングされているという。このあたりの違いも気になるところだ。


■ 外観はほぼ同じでも、細かいブラッシュアップ

 エンクロージャはアルミ製で、外形寸法は65×123×122mm(幅×奥行き×高さ)。「M3」の64×122.5×122mmと比較すると僅かにサイズが異なるが、隣に並べてもほぼ違いはわからない。どちらも手のひらサイズだ。

 仕上げが若干異なり、「M2」の方がマット。アルミの光沢を活かした「M3」は見る角度によりキラキラと光るが、「M2」は光沢が少なく、落ち着いたイメージだ。また、手にしてみるとヒヤッとする「M3」に対して、「M2」はザラザラした感触であまり冷たく感じない。

 全体的に「M3」の方が高級感があるが、色味/質感の感じ方は好みの問題だ。なお、「M3」にはブラックモデルが用意されているが、現在のところ「M2」はシルバーモデルのみとなっている。

M2。外観はM3とほぼ同じ 左がM2、右がM3。サイズもほとんど同じと言っていい 仕上げが若干異なるのがわかる。左がM2、右がM3。M3のほうが金属的な光沢があり、M2はマットな仕上げだ

 仕上げの違いだけかと思われたが、細かい違いも発見した。サランネットの奥に配置されている電源ランプの色(電源ON時)が、「M3」の青から、白に変更されている。色が変わったせいか、輝度も上がっているように感じる。また、右チャンネル側面に用意されたコントロールボタンも、「M3」と比べ、大型のボタンに変化した。「M3」のボタンは指の先で押すような小ささだったので、この変更は好印象だ。

左がM3右チャンネルの側面。右はM2の側面。搭載しているボタンはボリュームと電源で共通だが、サイズが大型化したことで、押しやすくなっている

M3は単3電池4本での駆動が可能だった

 前述の通り、「M3」との最大の違いは、電池駆動を省いたこと。これに伴い、「M3」では単3電池4本が収納されていた左チャンネル底面がまっさらに。このため、左チャンネルのみの重量を比較すると、「M3」より大幅に軽い。電池を抜くと600gと500gで、それほど差は無くなる。

 アンプはデジタルアンプで、定格出力は20W×2ch。右チャンネルに内蔵している。左右のチャンネルを繋ぐスピーカー間コードは、左チャンネルからの直出しタイプに変更。可搬性の高い「M3」は着脱式で、製品コンセプトの違いが確認できる。「M3」のケーブルは若干抜けやすかったため、直出しタイプへの変更は個人的に歓迎したい。また、「M3」のケーブルは、電源も通す必要があるため太めだが、「M2」は細くなっている。

M3の左チャンネル背面。電源も通すため、太目のケーブルを使っていた M2の左チャンネル背面。直出しケーブルに変更されたほか、ケーブル自体も細くなっている(写真右)

 右チャンネルの重量は600gで共通。背面の接続端子部に大きな違いは無く、ステレオミニの入力端子は引き続き1系統のみ。PCと接続しただけで埋まってしまうため、できれば2系統用意して欲しかったところだ。

M3の右チャンネル背面 M2の右チャンネル背面。どちらも入力は1系統のみ

 また、付属のリモコンもデザインが変更され、小さくなっている。操作可能な機能は電源ON/OFFとボリューム調整のみで違いはない。「M3」では本体が小型なため、付属のACアダプタの大きさが気になったが、「M2」でもサイズに変更は無さそうだ。

M3の付属リモコン M2のリモコン。小型になったのがわかる 付属のACアダプタのサイズはほぼ同じ

M3に付属するスピーカーカバー

 また、「M3」に付属するスピーカーカバーとキャリングポーチも省かれている。このあたりは据え置きで使うため、不要ということなのだろう。キャリングポーチは別として、スピーカーカバーはまるでプロレスラーのマスクのようなデザインでインパクトがあったため、付属しないのは少し残念だ。


■ 再生音も同じ……ではない!!

 さっそく再生してみよう。プレーヤーはケンウッド「Media Keg」の「HD20GA7」や、iPod touchを使用。サウンドカードに「Sound Blaster Audigy 2 Digital Audio」を使っている自作PCなども接続してみた。

 まっさきに感じるのは、やはりサイズを超えた低音の豊富さだ。イーグルスの「GET OVER IT」のエレキギターの音圧、山下達郎「アトムの子」のドラム乱打など、「こんな小型スピーカーからどうやって?」と首を傾げたくなるほど低音が出る。この秘密は、「M3」と同様の低音再生技術「ハイパーレゾネーター」だ。

エンクロージャを貫通するスリット型ポート。この部分が「ハイパーレゾネーター」 スリットから内部を覗くと、両面に振動板が確認できる

断面図

 搭載しているユニットは「M3」と同様、50mm径のフルレンジユニットを1基だが、スリット型の穴がエンクロージャを左右に貫通しており、その穴の両側に、向かい合うように振動板が設置されている。これが「ハイパーレゾネーター」と呼ばれるものだ。同社は詳しい技術を公表していないが、ユニットの共振周波数で低域を補強するパッシブ・ラジエーターと似たものと考えられる。

 再生中は、2つの振動板から押し出された空気が、スリット型ポートから激しく噴出している。ここを塞いでしまうと低音の量がグッと減ってしまうので、横置きはお勧めできない。

 デジタルアンプならではの、雑味のないクリアな音で、ギターの弦の動きやピアノの左手の動きが良く見える。音圧も高く、鳴りっぷりの良さが印象的だ。「米国市場にあった音質にチューニングしている」とのことだが、「M3」よりも高域が強く、元気が良いイメージだ。

 そこで、「M3」と横一列に並べて、比較再生してみた。外観はほとんど同じなので「チューニングしたと言っても、それほど違いはないだろう」と決めつけていたが、結果は大間違い。かなり音が違う。

 まず低域。「M2」も凄いと感じたが、「M3」はさらに音が下がる。ケニー・バロン・トリオのJAZZ「Fragile」を再生すると、ルーファス・リードのアコースティックベースが「ボーン」というカタマリになって飛び出る「M2」に対し、「M3」は「ゴーン」と、地面の下から響いてくるように音が“一段落ち込む”。

 エニグマ「グラヴィティー・オブ・ラヴ」は神殿の奥から、地獄のマグマのような低音が響いてくるような凄まじい曲だが、エコーを伴う低音がより響くのは「M3」だ。通常の楽曲でもその違いは感じられ、スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトのアルバム「Getz Gilberto」から「Corcovado」を再生すると、低音に芯が通っているため音楽全体に安定感がある。ボサノバやJAZZがより雰囲気良く、余裕を持って再生されているのがわかる。

 中低音が力強いため、音の1つ1つがクッキリと描写され、ボリュームを上げていっても破綻が少ない。逆に「M2」では高域が強くなり、中低域も浮きぎみになってしまうため、ボリュームを上げると“うるさく”感じてしまう。

 この違いは定位にも影響しており、手島葵「時の歌」で聞き比べると、広がる音場に楽器と歌手が横一列にならぶ「M2」に対し、「M3」では歌手が前に、ピアノやベースが後ろにと、奥行きが出る。

 ただ、全ての面で「M3」が勝っているわけではなく、あくまで音質のキャラクターの違いだ。特に音圧の高さを活かしたロックの疾走感や、高域の抜けが良さから来る、ポップス/フュージョンの爽快さなど、「M2」の方が心地良いジャンルもある。

 チューニング方向としては「音圧重視のM2」、「ワイドレンジ重視のM3」と表現できそうだ。「M3」はJAZZやクラシックなどを含め、ワイド/ニュートラルな再生が求められるソースに向いている。


■ M2は量販店でも販売

 思いのほか、音質に違いがあった両モデル。ワイドレンジか音圧かの選択は難しいところだが、このスピーカーシリーズ最大の特徴である「こんなに小さいのに、こんなに低音が!」という面では、「M3」の方が魅力的と言っていいだろう。「M2」のみしか聞かないのであれば、これはこれで十分驚きに値する低音再生能力だが、「M3」と比べてしまうと若干見劣りするのは事実であり、「M3も聞いてから決めてほしい」と思ってしまう。

 電池駆動の有無も含め、「そこに1万円分の違いがあるのか?」と言われると、微妙なところ。音楽の趣向に合わせて選びたい。もともと「M3」や「M2」の購入を検討している人は、低価格なアクティブスピーカーに満足できず、かといって大型のオーディオスピーカーを設置場所/予算が無いという状況だと考えられる。個人的には「M3」のワイドレンジなサウンドに惹かれるため、「M2/3を検討するくらいの予算があるのならば、少し頑張ってM3を買ってしまったほうが幸せになれるのでは?」と感じた。

 なお、嬉しいことに「M2」はM3とは異なり直販サイト/直営店だけでなく、一般の量販店でも販売されるため、視聴が可能な店舗が増えるだろう。店頭で、サイズからは想像できない低音を体験してみて欲しい。購入を検討する際は、直営店で「M3」との比較をお勧めする。

□ボーズのホームページ
http://www.bose.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.bose.co.jp/jp_jp?url=/consumer_audio/consumer_audio_news/new_products/20070927_02.jsp
□製品情報
http://www.bose.co.jp/jp_jp?url=/consumer_audio/multimedia_speakers/computer_speakers/m2/m2.jsp
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【9月27日】ボーズ、小型スピーカー「M3」の低価格モデル「M2」
-39,480円。電池駆動を省いて約1万円低価格化
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070927/bose1.htm
【2006年11月1日】ボーズ、小型スピーカー「M3」のブラックモデル
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【2006年3月10日】【新プ】サイズからは想像できない豊かな低音
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060310/npp83.htm
【2005年12月1日】ボーズ、新低音再生技術採用の小型スピーカー
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051201/bose1.htm

(2007年10月26日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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