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「ソニーが最も薄いテレビを投入する」、吉岡事業部長
ファインテック・ジャパンで講演。世界1,000万台出荷達成


ソニー コーポレート・エグゼクティブSVPテレビ事業本部長 吉岡浩氏

4月15日開催


 Display 2008と併催されているファインテック・ジャパンの基調講演では、ソニーのコーポレート・エグゼクティブSVPテレビ事業本部長・吉岡浩氏が、「ソニー テレビビジネスの成長戦略」をテーマに講演した。

 吉岡本部長は、今年4月から現職に就任。同事業部長の肩書きでは、初めて公式の場での講演となった。



■ 業界最薄テレビの投入を検討

 まず吉岡本部長は、ソニーが、2007年度実績として目標に掲げていた全世界1,000万台の薄型テレビの出荷計画を達成したことを明らかにし、「当初市場全体では、7,700万台の規模と見ていたが、結果として8,500万台程度の規模になったようだ。2008年度は、いよいよ全世界1億台の市場規模となる。その市場において、ソニーは、15~20%のシェア獲得を狙いたい。特に、大型テレビの領域で事業を拡大したい。ソニーは、市場成長率を上回る成長を軸に考えており、市場成長期における圧倒的なビジネスボリュームを確保することにより、スケールメリットを追求。これにより、コスト削減を実現するとともに、その原資を新たな差異化技術の開発に投資するというポジティブスパイラルを回していく。これがビジネス成長の鍵になる」とした。

薄型テレビの全世界1,000万台出荷を達成 2008年度には1億台の市場規模になると予測 スケールメリットの追求から原資を得て、それを差異化技術へ投入するポジティブスパイラルを回していく

ビジネス拡大を支える四大要素

 ソニーでは、薄型テレビビジネスの拡大を支える4大要素として、「安定かつ競争力のあるパネル調達」、「確実な商品供給」、「売り抜く販売網」、「魅力ある商品の投入」をあげる。

 「コスト競争力の高いパネルを安定的に調達するために、ソニーでは、2つのジョイントベンチャーを進めている。ひとつは、S-LCDであり、2005年度に第7世代のパネル生産を開始し、2007年度からは、第8世代のパネル生産にも乗り出している。これにより、40インチ以上のテレビにおいて、競争力を確保することができている」。

 「2つめは、シャープと開始する堺の新工場でのジョイントベンチャーであり、ここでは第10世代のパネル生産体制を整える。第8世代では40インチで8枚のパネルが切り出せたのに対して、第10世代では15枚のパネル生産が可能になり、さらに競争力のあるパネルを、安定的に調達できる体制が整う」とした。

 ソニーとシャープは、今年9月に合弁契約を締結することになる。

 「確実な商品供給」としては、全世界11カ所にあるテレビの生産拠点の強化拡大を推進する姿勢を見せた。特に、昨年8月に稼働したスロバキア・ニトラのテレビ工場を、欧州の基幹生産拠点として、今後も強化していくことを明らかにし、世界規模で確実に供給できる生産体制の構築に力を注ぐとした。

 「売り抜く販売網」では、「生産した製品をスピーディーに確実に市場に投入するという意味でも、販売網の構築は重要に柱となる。現在、グローバルレベルで販売チャネルが広がっており、北米市場ではウォールマートなどの大手スーパーや、会員制ディスカウントストアに販売ルートを拡大させている。ここでの販売台数が増加していおり、今後は、こうした市場に向けた製品を作っていきたい。北米市場向けの製品ラインアップの数は50%増になるだろう」とした。


安定かつ競争力のあるパネル調達 確実な商品供給

売り抜く販売網 流通販路別の取り組み

 「魅力ある商品の投入」では、「デザインの進化」、「画質の進化」、「アプリケーションの進化」、「環境対応」、「大型化」の5つをあげ、それぞれの取り組みについて説明した。

 デザインの進化では、今年春に投入したFシリーズにおいて、壁に寄せて設置する新たなスタイルを提案。「デザインという点では、薄型化についても積極的に取り組んでいく。業界で一番薄い液晶テレビの投入について、検討している。これは、時期をみて紹介したい」と、今後、世界最薄となる液晶テレビの発表を計画していることを明かした。新バックライト技術の採用、筐体設計の改善、新たな製造技術によって実現するという。

 画質の進化では、BRAVIAエンジンを幅広く展開してきたことに言及。「BRAVIAエンジンのさらなるバージョンアップに向けて加速している。モーションフローの倍速技術も強化してきた。動画再生に向けたフレーム補完技術は改良を続けており、今後、新たなものが紹介できる」とした。

 アプリケーションの進化では、アプリキャストの機能を紹介。20種類のネットコンテンツを手軽に楽しめることを示した。また、HDMIによるBRAVIAリンクも紹介。春の製品から「リンクメニュー」を強化し、ハンディカムとの連動による機器連携の使い勝手を向上を図ったことなどを紹介した。

 省資源への取り組みでは、ブラウン管テレビのリサイクルによる自社循環再生プラスチックの採用を拡大。新たなプラスチックを利用するよりも、CO2排出量を30~40%の削減できるほか、コストダウンを実現できるという。これを春モデルから採用しており、今後、海外モデルにも対象を広げる考えだという。

 また、日本における省エネ性能では5つ星を獲得し、業界トップレベルを達成していることを示した。

 「大型化が進んでも、消費電力が上昇しないための努力を続けている。パネルモジュールの高効率化など、細部にまで省エネ技術を採用し、2009年には、2007年に比べて消費電力を半減させ、32インチ液晶テレビで、100ワット以下の達成を目指す」と語った。

□関連記事
【2月26日】シャープとソニーが大型液晶の生産合弁会社設立
-シャープ「パネル世界一」、ソニー「テレビ世界一」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080226/sslcd.htm


■ 有機ELパネルの大型化に向けて、220億円を投資

有機ELテレビの今後の展開

 一方、有機ELテレビの取り組みにも言及した。

 吉岡事業部長は、「ソニー独自のオーガニックパネルを採用した有機ELテレビを昨年12月に投入し、未体験の高画質を実現した。オーガニックパネルは、開口率が高く、完全個体構造を採用し、薄型化を実現している。Display 2008のソニーブースでも、薄さを0.3mmとした有機ELパネルの技術展示を行なっている。12月からの国内販売に続き、1月から米国でも販売を開始した。今後、その他地域にも拡大していく」と述べた。

 また、「有機ELテレビでは、薄くて、軽いテレビの提案ができる。そのため、テレビがあるところに人間が移動するこれまでの視聴スタイルではなく、テレビを自在に動かして視聴する新たな提案をしたい。また、薄さを生かして、家庭のなかに溶け込ませる設置スタイルも提案できる。これまでのテレビでは提供しえなかったテレビのライフスタイルを提案できる」とした。

 また、大型化、高精細化に向けて、220億円を投資し、2009年度に生産技術を確立すると発表したことに言及。「歩留まり率向上などの動向を見て、さらに次の投資を検討していく。ソニーは次世代テレビの最有力候補として有機ELテレビを位置づけている。だからこそ、困難なことにも前向きに取り組んでいる」として、有機ELテレビ事業に引き続き投資していく姿勢を示し、講演を締めくくった。

□ファインテック・ジャパンのホームページ
http://www.ftj.jp/
□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□関連記事
【2月19日】ソニー、有機ELの中大型パネル生産に向けて220億円投資
-テレビでの使用も想定。2009年度の技術確立目指す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080219/sony2.htm
【2007年4月11日】ソニー、27型フルHD有機ELディスプレイを日本初公開
-「Display 2007」開幕。FEDや新LCOSも出展
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070411/display1.htm

( 2008年4月16日 )

[Reported by 大河原克行]


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